第18話 おやすみ前の談話
ちょっとした乱痴気騒ぎが幕を引き、疲れ果てた俺は喫茶店の二階、愛しの我が家のソファに寝転がる。
「はぁ~、疲れたぁ。たった一日で色々ありすぎだろ」
バイトに受かり、バイトをクビになり、ぬいぐるみに憑依した幽霊さんと出逢い、ギルドの冒険者から逃げ、打楽器女とパチモンバトルを繰り広げる……なかなか濃密な一日であった。
「おう、いやホントにお疲れ様だったな。色々あったが、まぁ、とにかく今日は厄日だと思ってさっさと寝てしまいな」
幽霊さんは半開きにしたタンスをベッド代わりにして衣類に包まって寝転がっていた。中にはタオルや着古した衣服などが入っている。
「そうだな幽霊さん。明日からも頑張らないとだし、このままニトニトのプー太郎状態じゃ、お先真っ暗まっくろく◯すけだって話だぜ」
「あー……そういえば夏野? その幽霊さんって呼び方そろそろやめねぇ?」
「ん? どうして? 幽霊さんは幽霊さんだろ?」
俺がそう言い返すと、幽霊さんは不満げに唸っていた。
「バカ言え。あたしにゃ、ちゃんとした名前があんだよ。レイナ……いや、死んだ身だからな。生前の名前使うのは縁起でもねぇ。せっかくだ。お前が決めちまいな」
「えっ? 俺が幽霊さんの名前決めるのかよ!?」
「まぁな、自分の名前を自分で決めんのは気持ちわりぃしよ。偽名とはワケが違うんだぜ? 二度目の人生の名前だからな」
俺は幽霊さんにそう言われて悩んでしまった。
名前なんて、元の世界で買ってたペットにしか付けたことがない。ちなみに買ってたペットはカメである。増水した川から流れて来たヤツを拾って、こっそり部屋で育てていたのだ。
「んじゃ……、ゆうれいから名前を取ってレイさんでどう?」
「まったく、面白みも捻りもねぇな」
「ネーミングセンスには自信がないからな」
「……まぁ、それでいいけどよ。生前の名前と似てるし」
幽霊さん改め、レイさんはそう言うと溜息を吐いていた。
「ところで夏野よ」
「なんだい? レイさん」
そろそろ瞼が重くなってきた頃合いにレイさんが俺の名前を呼んだ。
「お前がこの世界に来た経緯ってヤツを聞いておきたいんだがよ。構わねぇか? 気になるんだよなぁー」
「ああ、それ? 話すと少し長くなるけどいい?」
「おうとも、聞かせろよ」
まるで恋バナでもしようぜ、と言わんばかりのノリで夏野の異世界行きの話が語られようとしていた。
「あれは、休日の昼間だった……」
そうして夏野の口から語られる真実。
彼が死の瀬戸際に出会った女神とやらの存在が明らかになろうとしていた。




