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第14話 それはリアルの都合です

 幽霊さんが手をアルチュウに差し向けた瞬間、どういうわけかヤツの肉体が宙に浮く。


「これは……まさか!」


 俺は悟った。あれはポルターガイストであると。


 側から見れば念力などの類に見えるだろう。


「な、なな……っ? アルチュウが宙に浮いて……さては、サイコキネシス……!? あなたのパチモンがそんな強力な技を覚えているなんて……っ。く……っ、この丹波凛、思わぬ誤算よ!」


 打楽器女はまたもや誤解をしているようだった。


「ぐああ……っ! か、体全身が、痛いアル! 外側に引っ張られるような感覚が……! ぐおお……!」


 アルチュウは何やら痛みを訴えているようであった。それにしても名前のせいで語尾がちょっとしたチャイニーズ味があるものになっている。


「そ、それに……頭痛がする! は、吐き気もだ……くっ、ぐう……な……なんてことだ……このアルチュウが……」


 それはたぶん二日酔いのせいなんじゃないかな?と俺は酒瓶を意地でも手離さないアルチュウの姿を見て思う。


 それにしてもスター◯ラチナの一撃をこめかみに喰らった時のデ◯オ様のような台詞を吐くんじゃないよ。


「おらおら、どうした? 手も足も出ないかよ? ケケ、無様なもんだな。こちとら伊達に何年も幽霊やってねぇぜ」


「あ、ちょっと揺らすのやめて。吐きそう……」


 幽霊さんはアルチュウの身を揺らしながら下衆な笑みを浮かべていた。


「ふん、このアル中ネズミ。あたしに楯突いたことを後悔させてやるぜ」


 幽霊さんは更に力を込めると、アルチュウの全身からミチミチ、と不愉快な音が鳴り始めた。


 俺は嫌な予感がして、幽霊さんを止めに入った。


「……っ! いけない幽霊さん! それ以上はマズイ!!」


「は? 何がマズイってんだ? この作品、こんなこともあろうかとセルフレイティングに【残酷描写有り】を指定してんだぞ?」


「あっ、この時のために!? いやいや! ちょっと待ってくれよ! それでもグロいの苦手な人だっているかもしれないし、せっかく来てくれた読者様が逃げてしまうだろ!! 考え直すんだ幽霊さん!!」


「お、おう…………それは、まぁ、そうだな……それは、いけないよな。リアルの都合的に……」


 とはいえ、誰もアルチュウ自体の心配はしてないのである。


 このまま幽霊さんの暴挙を放っておけば『へっ、きたねえ花火だ』とか言いかねない。アルチュウが爆散四散する光景が安易に眼に浮かぶというものだ。


「こらーっ! アルチュウを離しなさい! 正々堂々と戦いなさいよ! エスパータイプの技を使うなんて卑怯よ!」


 地団駄を踏みながら大声で訴える打楽器女こと丹波凛。


 そして、何もできないまま宙ぶらりんになっているアルチュウは今にも死にそうな顔をしていた。

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