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第12話 開幕! パチモンバトル!

 いきなり何を言い出すんだこの打楽器女は……。


 俺は信じられないといった顔を凛に向けていた。


「マスター、ちょっとアイツ借りていいかしら?」


「ああ、別に構わんが」


 マスターはまた葉巻を吸いながら適当な返事をしていた。


 凛はリュックサックを背負うと、ズカズカと俺の前に歩み寄り、そして勢いよく人差し指を俺の眼前に突き立てるのだった。


「異世界転移者……私と同じ存在はこの世界に二人もいらないわ。勝負よ、あなたのパチモンと私のパチモン、どちらが強いかシロクロつけましょう」


「パチモン……?」


 聞いたことがあるような、ないような……そんなワードに俺は激しく戸惑った。


「そうよ、パチモントレーナーは目が合ったら勝負する決まり。そして、買った方は相手の有金を全部ちょうだいし、何でもいうことを聞かせることができるのよっ!」


「なんて横暴な……」


 ていうかパチモントレーナーって何だよ?

 

 そもそもパチモンなんて持ってねぇよ、と思った俺だったが、ふと肩口で仁王立ちで乗っている頼もしい相棒こと幽霊さんに視線が向かった。


 なんか誤解されてない?


「表に出なさい。あんたをこれからフルボッコにして負かしてやるわ!」


「……ちょっ、ちょっと待ってくれよ! 俺はそもそもこの世界に来たばっかだし、あんたと戦う気なんて……!」


「問答無用!」


「聞けよ!」


 凛はモンスターボックスなる野球ボールサイズの上下赤白の球を取り出して構えた。


「外でやれ」


 凛の行動を見かねたマスターは紫煙を吐き出しながら俺達に言った。


 というわけで否応なく、外に連れ出された俺は凛と距離を取って向かい合う形となる。


「いい? パチモンバトルは相手の手持ちを全滅させた方が勝ちよ」


「おい、打楽器女。だから俺は別にパチモントレーナーじゃ……」


「さぁ、いくわよ!!」


 パチモントレーナーの丹波凛が勝負を仕掛けてきた!


「ダメだこいつ。人の話を聞かないタイプだ」


 凛は腰にぶら下げたモンスターボックスのひとつを手にすると、大きく振りかぶってそれを前方に投げつけた。


「いきなさいアルチュウ!! キミに決めた!!」


 パチモントレーナーの丹波凛はアルチュウを繰り出した!


「いろいろアウトだぜ」


 訴えられても知らない。


 へなへな、とボールは弱々しい軌道を描きながら二人の境界線たるバトルフィールドに落ちると、上蓋が開かれ勢いよく中から何かが現れる。


 全身が黄色く、飲酒で頬が真っ赤に紅潮している、そしてやさぐれたような顔付きをした巨大なネズミ型の生物。酒瓶を片手に、しゃっくりを繰り返す、そんな何とも言えないオッサン臭いヤツが目の前に現れた。


「酒ぇえ!!」


 しかも普通に人語を話す。


「いったいこれはどういう展開なんだ……?」


 俺は呆れながら、肩口の幽霊さんに視線を向けた。


 幽霊さんは困っている様子の俺に「仕方ねぇな」と言わんばかりに肩を竦めていた。


「ここはあたしの力が必要みてぇだな。やれやれ、夏野はあたしがいねぇと何もできないへっぽこくんだな」


「幽霊さん……!」


 なんて頼もしいんだ!


「一ラウンドで仕留めてやるよ。まぁ、見てな」


 幽霊さんは俺の肩口から跳び上がると、凛が繰り出したアルチュウの前に立ちはだかった。


 パチモンバトルの開幕である。

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