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【連載版】宮廷侍女に頼りすぎ ~乙女ゲームクリア後の世界で楽しくDIY侍女ライフ~  作者: 雉子鳥幸太郎


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37/41

演奏会

王宮に繋がる街道には、各国から集まった貴賓の馬車が列をなしていた。

街道脇には、一目、他国の有名貴族や王族を目にしようと大勢の人たちが集まっている。


等間隔に配置された警備兵。

そして、それを指揮するは我らが深紅のロゼッタ。

侍女達は黄色い声援を上げている。


私はと言うと、宮廷の一室でアデールさん達の手で淑女に変身させられていた。


「うん、いいわね。これでどこから見ても貴族令嬢よ」

「ありがとうございます……」


鏡に映る、偽りの婚約者は――マイカ・オブライエンという設定だ。

さすがに私も一応はダンピエール子爵家の令嬢ではあるのだが、いまさら言い出せる雰囲気ではなかった。

まあ、田舎の小さな領地だし、名ばかりの爵位でほとんど平民と同じような生活をしてたんだけどね……。


「マイカさん……良く似合ってます」

正装したレオナルドさんが優しい笑みを浮かべた。


たぶん、本心で言ってくださってると思う……。

でも、こういうのは真に受けちゃだめ。

よしっ、頑張ってこの大役を演じきって見せる!


「ありがとうございます、レオナルド様」

私は令嬢っぽく膝を折る。


「あら、上手じゃない」とアデールさんが褒めてくれた。


「えへへ」


「では、両親が来るまで、少し会場を回りませんか?」

「はい、よろこんで」


「頑張るんだよ」とアデールさん。

「「頑張ってね」」

手伝ってくれた綺麗なお姉様方も声援を送ってくれた。


「行ってきます」

私は丁寧に挨拶をした後、レオナルドさんの腕に手を回した。


「では――」

レオナルドさんが私を見る。

私は頷き返した。


エスコートされながら宮廷内を歩く。

ゆっくりと奏楽舎へ向かっている。


私はオブライエン……宮廷住まいの男爵令嬢でレオナルド様とはとある立食パーティーで知り合った。

えーっと、酔いを覚まそうとベランダに出たところ、偶然一緒になって……えーっと、なんだっけ?


私はそっとメモ書きを盗み見る。


そうそう、演奏のリズムに合わせて……あぁ! もういいや、細かすぎるっ!

こういうのは成りきったもん勝ちだわ!


内心で開き直りつつ、私は静かに廊下を歩いた。



    *  *  *



馬車の窓から、流れゆくバルティスの街並みを眺めながら、オライリーは悪態をついた。


「フンッ、田舎くさい街だな……」

「ええ、まったくです」


向かいの席に座るガメッセが大袈裟に同意を示す。


「で? 準備はできているんだろうな?」

「は、はい、そりゃあもう……へへへ」


グイッと顔を近づけ、オライリーはガメッセを見据える。


「いいか、失敗したら私の領地にお前の居場所はないと思え」

「は……はい……」


オライリーは「よし」と言って、座席の背にもたれる。


「さてさて、飯くらいは期待できるといいんだが……」


そう言って、手に持った杖で自分の手の平を軽く叩いた。



    *  *  *



「ローリンデン王国、アーサー王子、ならびにソフィア王女のご到着でございます」


スチュワートがよく通る声で言う。

先に到着していた貴賓達が一斉に目を向けた。


それはそのはず、最強の大国であるローリンデンの次代を担う二人だ。

誰もがコネクションを持ちたいと思うだろう。


同時に、この二人を呼ぶことのできる我が国の評価も上がる。

スチュワートは内心でミシェル王子の人望に舌を巻いていた。


今日、ここに集まっている面々だけで、世界を動かすことができるのだから――。


「こちらの席へどうぞ」


「ああ、ありがとう」

「ありがとうございます」


二人は優雅な所作で最上位の貴賓席へ座った。


スチュワートはさりげなく周囲に気を配る。

ナイフ、フォークの位置、料理の不備、テーブルクロスは汚れていないか。

瞬時にそれらを平行に判断しながら、会場の上段通路に立つロゼッタとアイコンタクトを交わす。


不審な人物は今のところいないようだ。

スチュワートは再び会場内を歩いた。



――ファンファーレが鳴り響いた。



同時に、会場のざわめきが潮が引くように静まっていく。


今回、主催はミシェル王子だ。

よって、会場にはすでにホワット陛下がローリンデンの二人と同じ席に座っている。


ミシェル王子が壇上に姿を見せた。


「お集まりの皆様、バルティス・ミシェルです。本日は遠路はるばるこの演奏会へお越しいただき、誠にありがとうございます」

ミシェル王子は丁寧に頭を下げた。


「さて、こうして見ますと、久しぶりにお目にかかる顔もちらほら……おっと、苦手な学友の姿もありますね。招待状を出した覚えがないのですが……」と、笑いを誘うミシェル。

「「はははは」」


「冗談はさておき、ここに集まった皆様は私と同じく、それぞれの国で次代を担う方々……共に、平和な世を作りたいと願う一心でご招待をさせていただきました。これを機に、互いに手を取り合えることを祈っております」


会場に拍手が鳴り響く。

ミシェル王子は胸に手を当て、それに応える。


そして、楽士達に手を上げて合図を送った。


優雅な音楽が会場に流れ始める。

演奏会が始まったのだ――。


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