4話 地獄のような
ドラゴン族の村は各地にあると記録場では記されている。今からおよそ200年前には、ひとつの大陸にドラゴンが多く生息していたと言う。
ユウガはそんな記憶を思い出しつつ、目の前を見る。
……それは、焼かれていた。
……焼き焦がれた家。焼き焦がれた井戸。焼き焦がれた屍。焼き焦がれた……全て。
土地も、空も、人も、何もかもが焼き払われ、黒と化していた。
ユウガはその屍を触り、骨であることを確認してから立ち上がる。
ユウガの目には、怒りとは違う何かが宿っていた。
……これは、人間の所業なのか? と。
これが元、村の姿である。と、何も知らない人間に伝えたらどう答えるのだろうか。答えは簡単である。
……そんなわけが無い、と。
「っぁ……ぁあ……ああぁ……!」
ラナが隣で膝まつき、大きく目を見開いて叫ぶ。
ユウガはそんなラナを見ながら目を細める。
「……クソッタレ。あんまりだな」
ラナが大きく悲鳴をあげる。
その声は大きく木霊し、遠く遠くに響く。
何があったのかは誰にも分からない。しかし、大きな抗争があった訳でもない。まるで、一気に何かに焼き払われたかのような……そんな跡が残っている。
……ドラゴンのブレス? 否。
……砲撃の後? 否。
明らかにおかしい。
ドラゴンのブレスならば、家が所々焼き落ちてるだけ、というのは不自然だ。
そもそも、ドラゴンのブレスの破壊力には乏しい。乏しすぎる。
ならば何か?
「……能力者か」
ユウガは推察する。
砲撃の後ならば、動かした跡があるはず。そして、どちらも発射された際の跡がない。
まるで円状に囲まれているのだ。
村を囲うように。まずブレスや砲撃ならば扇形に拡がっていくはずなのだ。しかしその後もない、痕跡もない。
ユウガは立ち上がり、ラナに近づく。
ラナは村の方に手を合わせて、涙目のまま彼女は呟く。
「こんなことしたやつを、私は許さないよ」
「……復讐か?」
ユウガが呟く。
ラナは、ユウガの方に向き直る。そして、目に光をともさずに、頷いた。
「うん」
◇◆◇
その場を後にしたユウガ達は次なる街へと向かっていた。
その街とは「オンズマリズバーグ」と言う街であった。歴史はまだ浅いながらも、様々な人間や獣人が生活をしていて、栄えていた。
ユウガとフードを被って角を隠したラナはオンズマリズバーグに着き、一息つく。
焼き払って間もなくならば、ここの街に来るはずだという思惑だ。
ユウガ達は宿を取り、部屋の中に入る。
「俺はちょっと歩いてくる。お前はどうする?」
「……ん、ごめん。休ませて?」
「…………わぁった」
ユウガと言えど、精神が疲弊している人間に対して「来い」などと強い言葉は使えない。
そもそも、ユウガ自身が『一人で動けた方が楽』と考える人間なので言わないのだが。
ユウガが立ち去った後、ラナは枕に顔を埋める。
(……お母さんとお父さん、どこいったんだろう……)
ラナはそう考えて、黒色の屍を思い出して再び目を見開いた。
ラナは再び吐きそうな衝動を抑えて、耐える。
近くにあった水を飲み干すと、胸に手を置いて落ち着かせる。
「とにかく、敵を探し出して……倒さなくちゃ」
ラナは自分の拳を見つめて呟く。
ドラゴン族である自分が、敵を倒し、仇を取らなければならない。
そう思い立ったらラナはベッドにインする。
「……今は、休まなくちゃ。ユウガに、迷惑はかけれないからね」
ラナはそう言って目を閉じる。
……ユウガが帰ってきた頃には。
「スヤァ!」
「……………………」
鼻ちょうちんを膨らませながらぐっすりと寝ていたが。
ユウガはため息をついて、部屋の電気を消すのであった。
Q.ラナちゃんって実は図太い?
A.ドラゴン族ですしお寿司。