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それでも君でした

作者: 春野翡翠

 東京の夜、ビルの明かりがキラキラと輝いている。あの時、彼女の笑顔が頭から離れなかった。彼女との出会いは偶然だったが、その偶然が俺の人生を大きく変えることになるとは思わなかった。


 あの日、俺はいつものように仕事で疲れ果て、家に帰る途中だった。新宿の交差点で、人混みに揉まれながら歩いていると、ふと目の前に彼女が現れた。彼女の髪は風になびき、目が合った瞬間、時間が止まったように感じた。


「すみません、大丈夫ですか?」と声をかけると、彼女は驚いたように俺を見つめた。


「あ、はい。ちょっとぼんやりしていて…」と彼女は微笑んだ。その笑顔が、俺の心に深く刻まれた。


 その後、彼女とは何度か偶然会うことが続いた。カフェで、お気に入りの本屋で、そして公園のベンチで。会うたびに少しずつ話すようになり、気づけばお互いの存在が日常の一部になっていた。


 ある日、彼女からの誘いで一緒に映画を見ることになった。映画が終わった後、彼女は少し真剣な顔をして言った。


「ねえ、あなたって本当に不思議な人ね。何か特別な力を持っているみたい。」


 俺は笑いながら答えた。「特別な力なんてないよ。ただ、君に出会えてよかったと思ってる。」


 彼女はその言葉に驚いたようだったが、やがて笑顔を浮かべた。「ありがとう。私もそう思ってる。」


 しかし、幸せな時間は永遠には続かなかった。彼女が急に姿を消したのだ。連絡も取れず、どこにいるのかも分からなかった。俺は彼女を探し続けたが、何の手がかりも見つからない。


 それから数ヶ月が過ぎたある日、ふとしたことで彼女の名前を耳にした。彼女は遠くの町で新しい生活を始めていたらしい。その理由を知った時、俺は胸が締め付けられる思いだった。彼女は自分の夢を追いかけるために、あえて俺と距離を置いたのだ。


 それでも、彼女が幸せならそれでいいと思った。俺は彼女のことを忘れようとしたが、心の奥底ではいつも彼女を想っていた。


 ある冬の夜、ふとしたことで彼女から手紙が届いた。その手紙にはこう書かれていた。


「あなたに会えて、本当に良かった。あなたのおかげで、私は自分の夢を追いかける勇気を持てた。ありがとう。」


 手紙を読み終わると、俺は涙を流しながら彼女の幸せを願った。そして、その時、俺は気づいた。やっぱり、彼女が俺の心の中で一番大切な人であることに。

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