エルフの少女に叫んだ第二話
「っ!!」
フードが脱げてしまったことに気づいた少女は慌ててフードを被り直した。
驚いたな。まさか俺と同じく"パーティー追放"を受けた少女がエルフだったとは。
エルフとは風の魔法に長けた種族のことで、滅多に人の前には姿を見せない。それゆえ、幻の種族と呼ばれている。
「何の用ですか」
怪訝な目を向けてくるエルフの少女。
「いや。えっと......。さっきのやつ見てて。大丈夫かな、と思って」
「大丈夫、とは」
「えーっと、実はさ!! 俺もパーティー追放されたんだよ。ほんとつらいよな。俺にもわかるんだその気持ち。だから、なんかどっかで一緒に慰め合わないかな、と思ってさ」
「あなたも、ですか」
「え?」
「エルフだから何か強力な風魔法を使えるんじゃないかって期待しているならやめておいた方がいいですよ。たとえどんなすごい魔法を持ってたってそれを操れるだけの力が無ければ意味がないんです」
「? それはどういう」
その問いは少女に遮られる。
「とにかく。私はあなたのお役には立てません。エルフの村でもこの街でも結局私は"役立たず"なんです」
「っ!?」
そう言い残し、去って行こうとするエルフの少女。それを俺は。
「待ってくれ!!」
腕を掴み、止めた。
「なんなんですか一体」
めんどくさそうに振り向く少女の目を強く見て俺は叫ぶ。
「"役立たず"なんて誰が決めた!!」
俺の心からの悲鳴を。
「急に何を」
「お前らが俺たちの何を知ってる!!」
「だから何を言って」
「確かに俺は"無能"だ!! だからって何が悪い!! 能力は使えないかもしれないがその分サポートは全力でしてきたつもりだ!!」
今まで押さえてた思いが溢れ出す。
「......」
少女はもう何も言わない。
「今まで仲良くやってきたじゃないか!! どんなときだって助け合ってきてじゃないか!! "無能"の俺でも受け入れてくれたんだって思ったのに!! なのに!!」
情けない。何をやってるんだ俺は。仕方ないって思ってたんじゃないのか。自分でも"役立たず"だって思ってたんじゃないのか。いつかはこんなことが起きるって分かってたはずだろ。なんで、なんで泣いてんだよ。
「仲間だと思ってたのは俺だけだったのかよ......!!」
決壊したダムはもう止まらなかった。