パーティー追放をされたプロローグ
「この''役立たず''が。お前は俺らのパーティー''ベスト・オン・アース''から出て行ってもらう」
ある日、俺、リスト・ポビルは冒険者を始めた頃から所属していたパーティーである"ベスト・オン・アース"のリーダー、スレインから''追放''宣告を受けた。
「ちょっと待ってくれ。急にそんなことを言われても困るよ。何年も一緒にやってきてそれはひどいんじゃないか?」
突然の宣告に当然俺は抗議する。
「急に? 本気で言っているなら笑えないわよ。自分がパーティーのお荷物だってこと理解してなかったのかしら?」
そう馬鹿にしたように言うのはパーティーの"魔法使い"、リアス。
「ただでさえ役立たずの無能サポーターのくせに前線でガンガン戦闘してる俺らよりも毎回疲れた顔しやがってよ。今までは昔からのよしみでパーティーに居させてやったけどもう限界なんだよ」
そう言うのは"格闘家"、ライズ。
「俺達はもうこの街で一番のパーティーになった。次はこの街を出てこの辺りで一番大きな街、グラスタで一番を目指す。だから、お前がいると邪魔なんだよ」
スレインの言う通り、俺達のパーティー、"ベスト・オン・アース"は今いる街、エステラで一番の強さを誇るパーティーだ。俺以外の4人がSランクというまさに最強パーティーである。
ちなみに俺は最低ランクのEランク。Sランクメンバーの中でなぜ俺だけがEランクなのかというとそれは俺の"役職"に関係する。
俺の役職は"サポーター"。サポーターは直接戦闘には参加せず、戦闘以外の面で仲間をサポートする役職だ。
そのため、モンスターを倒すことは無い。モンスターを倒さなければこの世界では冒険者ランクは上がることは無い。
「あなたのような"無能"サポーターよりも役に立つサポーターは山ほどいるでしょうしね。もうあなたはこのパーティーには必要ないんですよ」
"僧侶"のマリネが言う通り俺は"無能"だ。この世界には魔法というものが存在する。
それぞれの人間に違った魔法の力が託される。
その力を人々は"能力"と呼ぶ。
それが俺には無い。いや正確にはあるのだが全く役に立たないスキルなのだ。
俺が持つスキルの名は『魔力貯蓄』。
名前の通り、魔力を貯める魔法だ。
食べ物を食べたり、睡眠をとったりすると魔力が増える。
上限に限界はない。
魔力はスキルを使うために必要なもので、これがなくなってしまうとスキルが使えなくなる。
だから俺のスキルはとても便利なスキルと言える。
あくまで他のスキルを持っていればの話なのだが。
俺はこの『魔力貯蓄』以外のスキルは持ち合わせていない。つまり、無駄スキルなのである。
原則、この世界では新しいスキルを得ることはできない。
生まれながらに持ったスキルだけが己のスキルなのだ。
だから俺がこのスキルを活かすその時は訪れない。
だから俺は"無能"なのだ。
それに俺は昔から体力がない。
いつもクエスト終わりはかなり疲れてしまうのだ。
俺よりも動いているはずの他のメンバーはピンピンしているというのにだ。
「わかったら俺たちの前からさっさと消えてくれ。お前がいると次のメンバーを探しづらいだろ?」
スレインのその言葉に俺は何も言えない。
スレインの言う通り俺はこのパーティーの"役立たず"なのだ。
「わかった。このパーティーを出ていくよ。今までありがとう」
そう残して俺はその場を立ち去った。