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喜んだらレベルとステータス引き継いで最初から~あなたの異世界召喚物語~  作者: 中島健一
獣人国編

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その97

~ハルが異世界召喚されてから1日目~


<図書館>


 フレデリカは鈍った身体を伸ばして、欠伸をした。無意識に大きな口を開けてしまっていたのに気が付き、慌てて口元に手をやり、誰も見ていないことを確認した。


 ──ふぅ…よかった誰も見てない…


 と安心したのも束の間、訪問者がやってきた。


 姿勢をいつものポジションに正し、さっきまで大きな欠伸をしていた自分とは別人のように振る舞う。


 身なりの整った少年に手を引かれフードを被った小さな子供がこちらに向かってくる。


 フィルビーには新しいフード付きローブを購入して、図書館へと入館した。流石にボロボロ過ぎて奴隷の名残を感じたからだ。


 ハルは受け付けにいるフレデリカに尋ねる。


「あの、いきなりで申し訳ないんですがスキルの鑑定から逃れる魔法ってありますか?」


 フレデリカは魔法の知識なら誰にも負けないと自負している。なんでこんな質問してくるんだ?と疑問に思ったが、その知識を披露する喜びが先行した。


「はい。第四階級の聖属性魔法と第三階級闇属性魔法、あとは第四階級光属性魔法に鑑定を阻害、或いは偽装する類いの魔法があります」


 第三階級闇属性魔法『ブラックアウト』に関してはステータスウィンドウを闇が覆い鑑定者に数値を読めなくする、という魔法だ。


 これを唱えていれば確かにステータスは明るみに出ないが、自分が第三階級魔法を使えることが鑑定者にわかってしまう為、ハルはこの魔法を心のなかで却下した


 第四階級聖属性魔法もまだ聖属性魔法を顕現させていないため却下。


 残るは第四階級光属性魔法『テクスチャー』


 これはステータスの書き換えができる魔法だ。勿論書き換えても実際にその数値の能力になるわけではない、またこの魔法は他者にもかけることができる優れものだった。


 フィルビーは自分の届く範囲の本を手に取り、開いていた。字は読めないため、挿絵や図形を眺めている。一応、人族に見えるように尻尾は隠している。


 ──おそらく帝国の者達はこの魔法を使っていた。と言うことはやっぱアイツらめっちゃ強くね?


「このテクスチャーが使える人ってこの世界にいますか?」


「ん~いないと思います。でも噂ではテクスチャーが付与された魔道具が発見されたのは聞いたことがありますね」


「それって今どこにあるの!?」


「何処かの富豪か貴族がコレクションの為に購入したんじゃなかったかしら…それでも噂程度ですよ?」


 フレデリカはいつの間にか所々タメ口になっていた。


「そうなんですね。ちなみにそのテクスチャーに関しての本はありますか?」


 ハルはその本をフレデリカに教わった通り天井付近にある本棚から取り出し、一階にある机の上に広げた。


 フィルビーは隣で本を広げて眺めている。


 ハルは無意識にフィルビーの頭に手をフードごしにおき、撫でながら本を読んでいた。


 その光景を見たフレデリカは微笑ましい表情になる。そして妹リコスのことを思い出していた。


「よし……」


 粗方魔法の概念が理解できたハルは自分のステータスウィンドウを出して、唱えた。


「テクスチャー」


 ハルの指先が光だし、自分のステータスウィンドウに近付けるが、何も起きない。


 ──ん~数値を一度消してから、書き換えるのではなく、始めから書き換えるイメージかな?


「テクスチャー」


 そう思いながら唱えるが、今度は指先が光らない。


 ──難しいな……


 フィルビーは字が読めないため、本には早々に飽きてしまったのだろうか、ハルが魔法の練習をしているのを眺めている。


「ん~もうちょいなんだよなぁ」


 ハルが小声で呟くとフィルビーと目があった。不意にハルはフィルビーがどんな本を眺めているのか手に取ってみた。


『ミストフェリーズ怪物退治編』と『ランスロットの冒険譚第Ⅲ章』


 この世界の子供達は男女関係なくこう言った物語が好きなのだろうか。


 しかし、この2つの物語にはある共通点があった。


 その2つの本には獣人族が登場するのだ。


 ミストフェリーズの方は獣人国が舞台で、ランスロットの方はパーティーにロンゾという獣人族が加わる。


 そのことをフィルビーに告げると意図的にこの2つを選んだとのことだ。


「お兄ちゃんがこの物語好きだったの……」


 フィルビーは兄のことをとても慕っていた。図書館に向かう最中、兄について話してくれた。


◆ ◆ ◆ ◆


「よぉーーし!俺は英雄になる!!」


 木造の家の中から突然大きな声が響き渡る。


 その家の床でせっせと布を織っているフィルビーはピクリと耳をそばだて、声のする方を向いた。


 兄ダルトンは自室から飛び出し、フィルビーのいる居間にやって来ると、急に腕立て伏せをし始めた。


「お兄ちゃんどうしたの?」


「フッ、フッ、俺はいずれここを出て……フッ、凄腕の冒険者に、ウッ、なって……獣人族で最も偉大な英雄になるんだぁ!!」


 腕立て伏せがきつくなったのか、最後は叫びながら腕の力で身体を起こした。


「フィルビーも連れてって!!」


「勿論さ!」


 腕立て伏せのスピードが先程よりも落ちるダルトン。


 兄に連れていって貰えることを喜ぶフィルビー。


「わーーーい!!」


 その場を走り回るが、転びそうになった為、必死に腕立て伏せをしている兄ダルトンの背中に手をつき、体重をかけた。


「うぉぉい!!」


 ダルトンはフィルビーの体重を支えきれず、力尽き、床に倒れた。


 2人は笑った。その笑い声は風に乗り外まで聞こえていただろう。


 風が通るダルトンの部屋。そこには先程までダルトンが読んでいたであろう本が開きっぱなしで置いてあった。


 風によりページがめくられる。


 丁度挿し絵のページで風がやんだ。ミストフェリーズが大魔法で怪物バハムートを倒すところだった。


◆ ◆ ◆ ◆


 現在その絵をハルとフィルビーは見ている。


 フィルビーの眼が過去を懐かしむような、或いはもう戻らない時を嘆いているようにも見える。


 ハルは獣人国のクーデターを止めるのが最も優先されることだが、同時にフィルビーの兄を探すこともミッションの1つに加えている。

 

 今直ぐにでも獣人国に向かいたいが、この魔法を習得する必要がある。


 そして、ハルは図書館の中から外の様子を眺めた。


 日が沈みかかっている。


 そう、ルナの救出イベントがこの後待ち構えているのだ。


─────────────────────


 エレインは主に指令を出されていた。


 ここフルートベールにやって来るのはとても感慨深い。いつもはこんな表舞台には現れないからだ。


 ミスをするわけにはいかない。あの方に指示されたからだ。


 日も暮れ、騒がしかったこの王都に静寂が訪れる。


 酒場などがある繁華街にはまだまだ活気はあるが、一つその通りから外れるとまるで別の世界が広がっているかの様相だ。


 エレインはそれを上空から眺めていた。


 目標はここにやってくる。


 エレインは配置につこうと地上へ降り立とうとすると、魔法の光が点滅しているのを目にする。


「ん~そこにいられると邪魔なのよねぇ」


 光源の元へ近付くと、エレインの口元が緩んだ。


【名 前】 ハル・ミナミノ

【年 齢】 17

【レベル】 37

【HP】  316/316

【MP】  344/344

【SP】  372/372

【筋 力】 277

【耐久力】 280

【魔 力】 341

【抵抗力】 299

【敏 捷】 311

【洞 察】 309

【知 力】 931

【幸 運】 15

【経験値】 8754/84000


・スキル

『K繝励Λ繝ウ』『人体の仕組み』『諠第弌縺ョ讎ょソオ』『自然の摂理』『感性の言語化』『アイテムボックス』『第四階級火属性魔法耐性(中)』『第三階級火属性魔法耐性(強)』『第二階級以下火属性魔法無効化』『第一階級水属性魔法耐性(中)』『槍技・三連突き』『恐怖耐性(強)』『物理攻撃軽減(弱)』『激痛耐性(弱)』『毒耐性(弱)』『受け流し』 

 

・魔法習得

  第一階級火属性魔法

   ファイアーボール

   ファイアーウォール

  第二階級火属性魔法

   ファイアーエンブレム

   フレイム

  第四階級火属性魔法

   ヴァーンストライク

   ヴァーンプロテクト 

  第五階級火属性魔法

   フレアバースト


  第一階級水属性魔法

   ウォーター


  第一階級風属性魔法

   ウィンドカッター

  第二階級風属性魔法

   ウィンドスラッシュ


  第一階級闇属性魔法

   ブラインド

  

  第一階級光属性魔法

   シューティングアロー

  第四階級光属性魔法

   テクスチャー


  無属性魔法

   錬成Ⅱ


「こんな素敵な出会いがあるなんて……」


 ハルという少年は今まさに第四階級光属性魔法テクスチャーを使ってステータスを書き換えているところだった。


「フフフフ…これは見逃してもあのお方には叱られないわよね?寧ろ誉められるんじゃ……」


 エレインは着ている紫色のドレスをはためかせて去っていった。


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