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喜んだらレベルとステータス引き継いで最初から~あなたの異世界召喚物語~  作者: 中島健一
チュートリアル

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その68

~ハルが異世界召喚されてから9日目~


 代表選考会が終わった。宮廷魔道師ギラバは満足していた。また三國魔法大会の日にハルに会える。


 ──獣人族がなにもしてこなければの話だが…


 ギラバが闘技場から出るところにスタンは待ち構えていた。


「ギラバ様!」


「あなたは……」


 ギラバは目の前の者を思い出そうとするが、思い出せない。そんなときはその者のステータスを見る。


 ──レベル18の名前がスタン・グレンネイド……


「…あぁ。魔法学校の先生ですか。私に何のようです?」


「私はハル・ミナミノの担任をしております」


「おぉ!?そ…そうでしたか!!それで何か?」


「彼は入学試験に第二階級魔法を唱えることができました。彼のステータスを教えて頂けると今後の指導にお役立てできるかと思い。お声を掛けさせて頂きました」


 本来は入学試験の際、受験生のステータスをギラバが見るのが通例だった為、それを訊くのは当たり前のように思える。しかし、ギラバは訝しんだ。


 ──自分の生徒全員のステータスを知りたいと思うはず、それを何故ハル・ミナミノだけを訊くのか。それはハルの強さを目の当たりにしたからなのか。それとも何か違う目的があるのか……


「彼のレベルは国家機密に当たります。それに彼の指導については今後王国の管理下に置こうと考えておりますのでそのつもりで」


「……」


 スタンは何も言わずにギラバを見送った。


<フルートベール王国、王城執務室>


 選考会が終わりもう夕刻を回った。ギラバは息巻いて国王フリードルフⅡ世に言う。


「陛下!フルートベール王国に救世主が現れました!」


 ギラバのテンションに驚いたフリードルフⅡ世は取り敢えず彼を落ち着かせることにした。


 ギラバはフルートベール王国の軍師オーガストと有力貴族を数名この部屋に呼んでいた。


「…して救世主とは一体?」


「はい!現在王立魔法高等学校1年生のハル・ミナミノという孤児です」


 室内が少しざわつく、救世主と銘打つがその中身は学生でまだ1年生、そして孤児と来たら皆戸惑う。


 しかしフリードルフⅡ世だけは動じずにギラバの次の言葉を待った。国王の貫禄が成すことだ。


「彼のレベルは現在23です!」


「23!?」

「おおっ!?」


 信じられないと言った声が上がる。


「必ずや三國魔法大会で優勝できます!そして、その後に控えている帝国との戦争にも主力として参戦してもらおうと考えております」


「ならん!」


 大きな声で丸坊主で恰幅のいい公爵バトラーがギラバの提案を遮る。彼はハルのレベルを聞いた際、唯一眉をひそめていた。


「静粛に」


 フリードルフⅡ世は厳かに叱責したが、バトラーの語気は強いままだった。


「どこぞの者とも知れぬ者を国の命運がかかる場におくなど言語道断!」


 この意見にはこの場にいる他の有力貴族は肯定する。また貴族の面子だけではなく、共に戦闘訓練もろくにせず、主力として据えることはとてもじゃないができないと考えているようだ。


 ギラバはその答えに返答する。


「しかし、現在王国最強の剣聖様があの状態なのですよ?それに戦士長イズナ殿に負けず劣らずの戦力であるのならば利用しない訳にはいかないのでは?」


 またもざわつく室内。


 バトラーがざわつく意見を総括する。


「レベル23と戦士長のレベルは30!これのどこが負けず劣らずなのだ?」


 多くの者が頷いた、フリードルフもその内に含まれている。


「レベルは確かに違えど戦士長殿と同じくらいのステータス数値なのです」


「それはまことか?」


「宮廷魔道師の名に誓って」


 しばし静寂がこの部屋を支配する。


 バトラーは次の反対意見を考えていたがギラバは更なる追い討ちをかけた。


「この時期にハル・ミナミノのような新たな戦力がいかに大事か軍師オーガスト殿もお気づきのはず」


 この会話に入りたくなかったオーガストは仕方なく参加する。


「ギラバ殿の仰る通りです……」


 ギロリとバトラーがオーガストを睨む。その視線を飲み込みながら話を続けた。


「…西の獣人国のクーデター成功により現在我が国は、東の帝国と板挟みになっているこの状況で戦力を二分しなくてはなりません」


「それくらいわかって……」

 

 またもバトラーが遮るが、オーガストは構わず続けた。


「いいえ、わかっておりません。ではこの場合最も注意しなければならないのはどのような状況かお答えして頂きたい」


「それは7日後の帝国との戦争中、背後から獣人国が我が国に攻めてくることだ!」


 それに同意するバトラー派閥の者達。


「やはりわかっておりません。帝国が7日後に仕掛けて来なければ?もしくは6日後に仕掛けて来ればどうですか?」


「フッ、そうすれば帝国の信用は失墜するだけだ」


「では、獣人国が5日後に攻めてきた場合はどうでしょうか?帝国は7日後まで侵攻を待ってくれますか?」


「……」


 流石のバトラーとその派閥もオーガストの意見には逆らえなかった。


「しかし今すぐに獣人国が攻めて来ることはあまり考えられません。まだ混乱の癒えぬ状況、あと数週間、あるいはそれ以上の猶予があると考えられます。しかし、最悪のことを想定すべきかと……」


 フリードルフが自身の疑問を投げ掛ける。


「獣人国と帝国が手を組む可能性はないのか?」


 今度はオーガストに、代わってギラバがその疑問に答える。


「その心配はありません。いくつか理由があります。一つは反人派の獣人達がクーデターをおこした為、帝国と手を組むなんてことは考えられません。2つ目は手を組む為には、情報を共有する必要があります。つまり伝者が我が国、あるいは他国を通らなければならない為かなりの時間を要すること、そしてもし万が一そのような情報があれば我が国が散らした密偵は勿論、友好的な他国がこれを報せてくれるはずです」


 ギラバは少し間をおいて皆の理解を待ってから続ける。


「もし陛下の仰ることを推考すると2年前のクーデターが発生した初期の頃から獣人国と手を組まなければならないと考えられます」


「その可能性はないのか?このクーデターの成功と帝国の宣戦布告があまりにも帝国が有利な展開になりすぎていると思うが?」


 今度はオーガストがその質問に答える。


 まるでギラバとオーガストは意見を共有していたかのようにお互いの思考が通じあっていた。


「確かにその可能性も考えました。しかし、2年前から今に至る侵略作戦は時間と費用がかかりすぎております。クーデターを起こした反乱軍は獣人国軍を通り抜け、我が国、或いは他国を通り抜け、帝国領へ情報を伝者が渡さなければなりません。2年間一度も捕まらずにこのようなことができるとは考えられません。これが伝者という人間ではなく鳥であっても同じです。かようなリスクを取るのは帝国軍総司令のマキャベリーらしくありません。同じ時間と費用をかけるならもっと別の手で攻略する方が建設的かと……」


 ギラバならば先程と同じように他者に理解をさせるために間をとるのだが、オーガストはそんなことをせずに話しを続けた。


「少し話は逸れましたが、獣人国が我が国に攻め込んで来ないよう此方の国境に兵を増やし、ダーマ王国とヴァレリー法国には同盟を申し出るのが宜しいかと……」


─────────────────────


<帝国帝都ノイッシュバンシュタイン城>


 マキャベリーは水晶玉に手を翳した。


「サリエリさん?いや、今はモツアルトさんでしたね、そちらの軍の現状について教えてもらってもよろしいですか?」


<獣人国>


 狐のように尖った両耳をパタパタとさせる年老いた獣人が水晶玉に手を翳し、そこから聞こえてくる帝国軍総司令マキャベリーの声に答える。


「はい。つつがなくいつでも出撃できます」

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