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喜んだらレベルとステータス引き継いで最初から~あなたの異世界召喚物語~  作者: 中島健一
英雄戦争編Ⅰ

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335/395

その333

~ハルが異世界召喚されてから23日目~


 いくつもの大理石で出来た石柱が闇に覆われる程高い天井を支えている。床にも磨かれた大理石が敷き詰められており、歩く度にコツコツと硬質な音を遠くまで鳴り響かせるだろうと予測できた。ヒヤリとしたこの薄暗い場所に豪奢な玉座が彩る。


 そこに座するは、竜の王にして、生と死を司る王、ペシュメルガだ。


 ところどころ金色の紋様が刻まれた漆黒のフルプレートを着込んだペシュメルガは眼前に漂う長方形のスクリーンを眺めている。そこに写し出されているのはハルとレガリアの戦闘だ。


 しかしペシュメルガは踞るミラにカメラ位置を切り替えた。


 待ち望んだスキルが発動されたからだ。


『M繝励Λ繝ウ』


 今まで、ミラがダンジョンに潜り込んで来た時から目を付けていたこのスキルがとうとう発動されたのだ。M繝励Λ繝ウ、文字化けを直せば、


 ──Mプラン。一体どんなスキルなのか……


 すると、ペシュメルガが構築したダンジョンのシステムコードが音を立てて組み替えられ始めた。


「なっ!?」


 ペシュメルガは直ぐ様コードを元に戻す。


 ──このスキルはやはり、天界による者達の……


 そんな分析をしている最中にも、ダンジョンのコードがまた組み替えられ始めた。


「ちっ」 


 これはミラのスキルが強制的に発動し続けているせいだと思ったが違った。


 ──これは……惑星の概念を検知したことによって、システムが対応しているのか……


 そう思った矢先、ペシュメルガは目を疑った。ハルの持つK繝励Λ繝ウが発動したのだ。


 ──そうか……ハル・ミナミノ……お前は私と同じなのだな……


 確証はなかった。過去に一度、神ディータの力が著しく弱まる時があった。千載一遇の瞬間を逃してから、ペシュメルガは世界の観察を怠らなかった。再び弱まる瞬間を虎視眈々と狙っていた。


 その時を狙って、依り代であるルナ・エクステリアを暗殺すれば、ディータの干渉を多少抑えることができると思っていた。2回目の好機が訪れたと同時にハル・ミナミノという存在が突如として台頭した時は驚いた。


 ディータや天界の者達の使いだと予測していたペシュメルガだが、ダンジョンに誘い入れた際、ハルの持つスキル『K繝励Λ繝ウ』に目がいく。


 もしやと思ったペシュメルガは、KとMが指し示す可能性について考えた。


 そして、ハルのスキルKプランの発動の瞬間、垣間見えたシステムコードに自分を生み出した者の名残を感じたのだ。


 ペシュメルガは一筋の涙を流した。


─────────────────────


~ハルが異世界召喚されてから23日目~


 無数の細かい風の群れがディータに向かって放たれる。ディータはどこからともなく先端に三日月型のシンボルがついたスティックを出現させ、魔力を込める。


 ランスロットは何かを察し、ディータの動きを止めるため、空からディータに向かって雷を落とした。


 身体を震わす程の衝撃の直後、鋭利を帯びた風の群れがディータに襲い掛かる。


 しかしディータは自分の身体がすっぽり収まる球体の半透明な障壁の中にいた。その障壁からは煙が出ており、先程のランスロットとエレインの攻撃威力の程がうかがい知れる。


 ディータは障壁内にいると、背後から衝撃を受けた。勿論、障壁越しにその衝撃を感じたのだが、後ろを振り返るとフェレスが拳を振り下ろし、丁度今二連撃目を繰り出そうとしているところだった。


 ディータは持っているスティックに魔力を込めて、障壁の強度をあげようとしたが、強まるどころか、障壁は消えてなくなる。


「?」


 不思議に思ったディータは山高帽を被ったサナトスを見て、その答えを悟ったと同時に、フェレスの上段蹴りを片手で受け止めた。


 ディータの根差した両足は大地に埋もれ、そこを始点に大地に亀裂が走る。


 背後からエレインの魔力を感じるディータだが、同時にHALのスキルが作動しそうな気配を感じ取った。


 ──ここまでか……


 ディータは運命に身を任せて、目を瞑った。


─────────────────────


 柱のように部屋の中央に置かれる透明な筒。その筒はシャンデリアのように輝く機械を保護している。その付近にモニターを眺めている2人の男がいた。1人はサイズの大きなナイキの黒いパーカーを着て、下はジーンズを履いている。もう1人は対称的に灰色のスラックスに皺一つない白いシャツを着ていた。


 天井埋め込み型のスピーカーからリヒャルト・シュトラウスの『ツァラトゥストラはかく語りき』が流れ、その部屋全体を美しい音色が包む。


 冒頭部分。ピアニッシモから始まり徐々にフォルティッシモへ向かってクレッシェンドしていく。一度聞いたら耳につく特徴的な冒頭部分をぶつ切りにするナイキの男。


「ん?なんで止めるんだ?」


 隣にいたもう一人の白シャツの男は疑問を呈した。


「俺はこっちの方が好きなんだよ」


 ナイキの男はそう答えると、スピーカーからドヴォルザークの『新世界より』が流れ始めた。


「この力強さ、今の俺達に必要なのはこれだろ?」


 一方的に言葉を投げつけられたもう一人の白シャツの男は肩をすくめた。音量を一気に上げるとナイキの男はあることに気が付く。

 

「なぁ?」


「ん?」


 力強いティンパニーの音が邪魔をして上手く聞き取れない。ナイキの男は直ぐにボリュームを絞った。


「今、座標と違うところでスキル発動しなかった?」


 そう言われて、モニターをチェックするもう一人の白シャツの男。


「いや見間違いだろ?」


 暫しの沈黙。


「そうかな?本当に何にも見てない?」


「あぁ見てない」


 そんな二人のやりとりを後ろで見ていた、学校の制服に身を包む南野ハルは溜め息を漏らした。

すみません。次回から帝国ライフ編に入ります。更新は7月の下旬を予定しております。

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