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喜んだらレベルとステータス引き継いで最初から~あなたの異世界召喚物語~  作者: 中島健一
対帝国戦争編

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319/395

その317

 一面の夜空に星の光を遮る雲が聳え立つ。時々、雲の表面を稲妻が走り、暗い夜空に閃光が瞬く。少し遅れてゴロゴロと雷の音が鳴り響いた。これで何度目だろうか。しばらく続くこの光景。しかし、急に光と音が止んだ。


 暫しの静寂が逆に不安を駆り立てる。


 すると、雲の隙間から光が地上へ差したかと思えば、巨大な爆発が雲の上で起きた。


 爆発の衝撃に合わせて一面に広がっていた雲に大きな丸い空洞をあけた。


 その中心から赤い竜が力なく落下していくのが見える。


 そしてその竜の落下していく様を翼の生えた少年なのか少女なのかわからない人物が空から見下ろしていた。手にはボロボロのステッキを持ち、その先端には三日月型のシンボルがついていた。


 マキャベリーはそこで目を覚ます。


~ハルが異世界召喚されてから23日目~


 ドレスウェルの虐殺の場で炎に包まれた時に見た光景を今でも夢に見る。


 これは過去の光景だ。マキャベリーはそう確信している。赤い竜に関する記述を色々なところから探しだした。そして見つけたのだ。聖女セリニの黙示録の12章に夢で見た光景と同じ描写が記されているのを。


 マキャベリーはベッドから起きて、2日後に迫ったフルートベール王国との休戦協定について考えを巡らせた。しかし、頭が上手く回らない。


 ──あの夢を見るときは決まってこうなる……


 マキャベリーは考えるのを諦め、カップに紅茶を入れた。ゆっくりと身体の中に熱い液体が浸透するのを実感する。

 

 ふぅ、と一息つくマキャベリーだが、自室の扉を激しく叩く音が神経を尖らせる。こちらから開けるので勝手に扉を開けないようにと言い聞かせているため、マキャベリーは簡単に上着を羽織ってから落ち着かない来訪者を宥めるようにゆっくりと扉を開けた。


「どうしました?」


 マキャベリーが声をかけると衛兵が慌てながら言った。


「ミラ・アルヴァレス様がダンジョン内にて行方不明になりました!!」

────────────────────

 

 威嚇するような唸り声。その声はダンジョン内の壁に反射し、きっと遠くまで聞こえているだろう。全身の長い毛並みを逆立たせるように、前足と後ろ足を地面に付け、今にも襲いかかってくる様子だ。奇妙なのはその巨大な馬のような体躯に、犬の頭が2つ付いていることだ。


 ハルはツインヘッドウルフを前にして、シドー・ワーグナーから頂戴した長剣『覇王の剣』を握っている。


 大剣と同じくらいの大きさだが、その刀身は細く扱いが難しい。ハルは目の前にいるツインヘッドウルフ同様、威嚇をするためにその長い剣を振り回した。


 その刀身に見合った、空を斬る音がする。


 ──よくこんな剣で戦っていたな…… 


 誇り高き武人に想いを馳せるが、そんな物思いに耽る時間を正面の魔物は与えてはくれない。威嚇の為にあげていた唸り声は咆哮へと変化し、突進してきた。


 並みの冒険者ならばこの咆哮によって身体の感覚を奪われていることだろう。ハルは肌でそれを感じた。


 ツインへッドウルフが飛びかかる。


 前足に付いている鋭い爪と、2つの口から見える獰猛な牙がハルに向かってくる。


 ハルは剣が地面に当たらないように、魔物の持つ2つの頭の丁度、間を狙って斬り上げた。

  

 ツインヘッドウルフは襲い掛かる勢いそのままに、ハルに触れることなく真っ二つに別れ、地面に激突した。


 斬る瞬間、血が吹き出さず、地面に倒れてから夥しい血が流れていることにハルは驚く。


 ──恐ろしい切れ味……それにしても……


 ハルは不思議に思った。こんな魔物がこのダンジョンにはうようよいる。今でこそ難なく倒すことができるが、この魔物を倒すためにフルートベール王国の軍事力では800人以上の兵士がいないときっと倒せないだろう。

 

 ──なるほど、ダンジョン大国である帝国はこうやってレベルを上げていたのか。


 ハルは剣をアイテムボックスに仕舞う。


 ──そろそろ帰らないと、ユリが心配するな……


 ハルはダンジョンの出口へと向かおうとしたが、ダンジョン内が激しく揺れ動く。


「えっ!?地震!!?」


 直ぐにその考えを否定した。何故なら両側の壁が狭まり、ハルを圧死させようとしているからだ。


 ハルは走った。


「ヤバッ!!」


 全速力で走るも、ダンジョンの奥に進みすぎていた為、間に合わない。


 ハルは迫りくる壁を破壊するため、壁に手を置いて、魔法を唱えようとしたが、


「っ!!?」


 手が壁にめり込む。今までは只の岩盤でできていた壁が柔らかい素材に変化したようだ。壁はハルを飲みこんだ。柔らかな壁と同じ様に壁の内部も柔らかい素材で出来ている。どこかへ移動させられているのがハルにはわかった。


 ──一体どこへ? 


 密閉された空間から今度は広い空間へと吐き出される。


 揺れは感じない。辺りを見回すと、自分が探索していたダンジョンとはまた違った別のダンジョンのようだった。


 ──ダンジョンにこんな特性が?


 ハルは出口を探す為に探索を続ける。どこかわくわくしていたのはここだけの話だ。

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