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喜んだらレベルとステータス引き継いで最初から~あなたの異世界召喚物語~  作者: 中島健一
三國魔法大会編

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その248

「リフレクト!!」


 ルナは舞い落ちる白い珠が子供達とシスターグレイシスに当たらないように範囲を広げて唱えた。


 城塞都市トランの方角で爆発が起き、不意を突かれた為にこの3人しか守れなかった。


「大丈夫ですか!?」


 2人の子供に覆い被さるような姿勢をとっているシスターグレイシスに尋ねた。


 シスターグレイシスは自分の身体の下にいる子供達を見ながら言った。


「あぁ、なんとかなった」


 まだ酒に酔っている為、乱暴な口調だ。


「大丈夫だよ~」

「俺も!」


 ルナは観客の大多数が眠りに落ち、所々で戦闘が始まっているのを目の当たりにした。


「そ、そんな……」


 お祭りのような魔法大会がいつの間にか戦場と化している状況に嘆くルナ。そんなルナにシスターグレイシスは言った。


「私らは大丈夫だから、アンタは怪我人を救ってやりな!?」


「でも……」


「幸い、眠ってる観客達には手をだされていないからね。寝たふりしてればなんとかなる」


 シスターグレイシスの言葉に同意を示すグラスとマキノ。


「わかりました。行ってきます!」


 ルナは比較的近場で行われている、冒険者達が戦っている場所に向かって駆け出した。


 ルナの背中を見つめる、シスターグレイシスは呟いた。


「死ぬんじゃないよ……さぁ私らは寝たふり、いや死んだふりでもしようじゃないか?」


「どうして死んだふりなの?」


「そっちの方が面白いだろ?」


 シスターグレイシスはグラスとマキノの頭を撫でた。


 ──今度こそ私はこの子らを守ってみせる。あのようなことに……あのような想いはもうしたくない。


─────────────


 鍛え上げた肉体は、はち切れんばかりに膨れ上がり、この一撃に全てをかけていることを物語っていた。


 無精髭を生やした冒険者アンディはその肉体で振り上げた長剣を相手に向かって勢いよく振り下ろした。


 冒険者を長年やってきて、この剣を魔物以外に向けたことはあまりなかった。しかも全力で相手を叩き斬るとなると初めての経験かもしれない。


「うおぉぉぉぉぉぉ!!」


 アンディの雄叫びとは対照的に相手は冷淡な声で魔法を唱えた。


「シューティングアロー」


 指先から光の矢が放たれ、アンディの左肩に命中した。


「ぐっ……」


 アンディは攻撃を中止し、後退する。


「リーダー!!」


 同じ冒険者パーティーのメンバー、リッドが駆け寄る。


「大丈夫っすか!?」

 

「あぁ……心配ねぇ……ったく軽い気持ちで観戦しに来たってのに」


 アンディは肩を抑える。するとまたしても冷淡な声で魔法を唱える声が聞こえた。


「シューティングアロー」


 今度はアンディとリッドに向かって2本の光の矢が飛んできた。


「くそ!!リッド離れろ!!」


「離れないっすよ!!リーダーが死ぬくらいなら俺が身代わりに!!」


 リッドはアンディの前に立つが、背後から来る火の玉により光の矢が消失する。リッドに直撃する前に消失した。


「ファイアーボール?」


「ったく何男臭いことやってんの?」


 アンディとリッドは後ろを振り返ると小柄で幼い顔立ちだが、その張り出した胸がなんとも不釣り合いな魔法使いキャスカが現れた。キャスカは2人の命を助けた為に得意気な表情で2人を迎えた。


「「おせぇよ!!」」


 思っているのと違う言葉が浴びせられキャスカは狼狽えた。


「な、なによ!!助けてあげたのにその言い方!!」


「一体何時間トイレに行ってたんだよ!?」

「うんこか!?うんこだったのか!?」


「ち、違うわよ!!迷ってただけ!」


 そんなドタバタなパーティーに呆れてか、男は3人に向かって魔法を放った。


 放たれた光の矢の1本をキャスカがファイアーボールをぶつけてかき消すも、残りの2本はアンディとリッドに直進する。


「俺のも!俺のも!」

「いや俺が先だ!俺のを先にやってくれ!」

「そんなぁ~!!」


 2人の見苦しいやりとり等、キャスカは聞いていられなかった。今ファイアーボールを唱えてももう間に合わないからだ。その時──


「プロテクション!」 


 光の矢は2人に直撃する前に消え去った。


「え?」

「は?」

「へ?」


 ルナは3人の冒険者に駆け寄り、肩を負傷しているアンディに聖属性魔法ヒールを唱えながら声をかけた。


「大丈夫ですか!?」


「お、おう……」


「ちょっとリーダー!なに鼻の下伸ばしてんすか!!」


「の、伸ばしてねぇよ!!」


 キャスカはルナに感謝を述べると呟いた。


「お願いだから、この方に無礼なことしないでね……」


 刺客はルナが現れた為にこの場から消え去った。


 直近の危険は回避できたが、まだまだ闘技場では戦闘が繰り広げられている。キャスカが話しかけた。


「ルナ様はこれからどうするのですか?」


「私はこれから負傷者の治療に専念しようと思います」


 それを受けてアンディは、


「それなら俺達が警護しますぜ!」


 リッドもそれに続く。


「下心はありません!」


 キャスカは頭を抱えたがルナは警護を頼んだ。


 すると、闘技場全体に一人一人の身体を這いずり回るような殺気が放たれた。


「う!!」

「おぇ!!」

「ひぃ!!」


 ルナは目に涙を浮かべて呟く。


「なに……この感じ……」


 ボロボロになり瓦礫と化したリングの上にダーマ王国の選手、白髪をツインテールにした少女が信じられない程の殺気を放って佇んでいた。

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