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喜んだらレベルとステータス引き継いで最初から~あなたの異世界召喚物語~  作者: 中島健一
三國魔法大会編

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その243

 ルカの試合を観戦していた商国のトルネオはどうにも納得がいかない面持ちだ。警護をしている竜の騎士の構成員が訊いた。


「何をお考えですか?」


「あの少女……鎌を持った方な?あの鎌には物凄い金の臭いがしたのだが……その少女の実力はそれに見合っていない気がしてな」


「金の臭い…ですか……」


「あぁ……もしかしたらダーマ王国の有力貴族の娘なのかもしれないな……だがメトゥスなんて名は知らんし……まぁ大会はまだ始まったばかりだ。次の第五試合は見物だぞ?」


「えぇ……あのダーマ王国の2人の選手が戦うのですね」


 あぁと返事をしたトルネオは、ダーマ王国の宰相を遠くから見た。


─────────────


「す、凄いな……昨今の我が国の生徒達は……」


 ダーマ王国騎士団長バルバドスは呟く。その呟きを聞いてかダーマ王国宮廷魔道士アナスタシアがトリスタンに訊いた。


「あの者達の両親は何をしている者達なのですか?」


「孤児だ……(帝国の者達だとはまだ言えん!!)」


「孤児!?しかし、それが何故あの強さにまで育つのですか?」


 トリスタンはその質問には答えなかった。何故なら第五試合がもう少しで始まるからだ。帝国の者同士の戦い。おそらく、打ち合わせをしてどちらが勝ち残るのか決めているのだろう。


(一体合図はいつ来るのか……)


『皆様お待たせしました!!これより第五試合を行います!!』


────────────


「ぅ~もう少しで始まる」


 グラスは待ちきれないのか座りながら足をバタつかせている。隣にいるシスターグレイシスはグラスを宥めるようにして言った。


「もう少しで始まりますよ?」


「早くぅ~!!」


 グラスが駄々をこね始める。その様子を見ていた後ろの席に座っている男が話し掛ける。


「なんだ坊主、楽しみなのか?」


 グラスは振り返って答えた。シスターグレイシスは男に挨拶する。男の顔は酒を飲んでいるのか少し赤らんでいた。


「おっちゃんも楽しみだ。あのダーマ王国の2人は今まで見たどんな選手よりも強いぜ!坊主とは気が合いそうだな?これやるよ」 


 男は持っていたコップをグラスに手渡した。


「ありがとー!」


「ありがとうございます」


 保護者であるシスターグレイシスもお礼を言うと男は片手を挙げてそれにこたえた。


『皆様お待たせしました!!これより第五試合を行います!!』


 アナウンスが聞こえると場内は大いに盛り上がった。


『ダーマ王国国立魔法高等学校1年オォォォーウェン・ブレイド!対!同じく王国王立魔法高等学校1年ルベア・ルゥゥグナー!!』


 2人の選手が入場する。


うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!


 グラスは興奮しきって両手を挙げた。


「きたぁぁー!!」


「うっ」


 隣で呻き声が聞こえる。先程後ろの席で貰ったばかりのコップをシスターグレイシスの口元に押し入れてしまったようだ。グラスは咄嗟に手を引き戻し、謝罪する。


「シスターごめんなさい!!」


 シスターグレイシスは何も言わず、グラスの持っているコップを取り上げ、中に入っている液体を飲み干した。


「あっ……」


 シスターグレイシスは口元を乱暴に拭って言った。


「これ酒じゃねぇか!?」


 立ち上がり振り向くシスター。後ろの席の男の胸ぐらを掴んで言う。


「お前なぁ!ガキに酒飲まそうとしてんじゃねぇぞ!!」


 男はシスターの豹変ぶりに惑いながら謝る。


「……は、はい!!申し訳ございません!!」


 シスターグレイシスの服を引っ張って席につくよう促すグラス。


─────────────


 観客はもちろん、各国の魔法使いや戦士達、貴族や冒険者達もこの試合に期待をしていた。しかしこの試合を楽しむためではなく、不穏な空気で見守る者達もいる。シルヴィア、イズナ、レオナルドの3名だ。


 そんな彼等の視線を尻目に当人達、オーウェンとアベルはリングに上がり、お互いを見合っていた。


 黒髪と白髪が風にあおられる。


 アベルには気掛かりなことがあった。


「言っておくが、これは作戦だ。決闘ではない」


 オーウェンは舌打ちしてから答える。


「わかってるって」


「さっき言ったことちゃんと守ってくれ」


 またしても舌打ちを鳴らすオーウェン。


「わかってるって言ってんだろ!?」


 2人の会話を終わらす合図が轟いた。


『始めぇ!!』


 オーウェンは合図と同時に高速で移動する。


 観客達はオーウェンが消えたように思えたが、すぐに鋼と鋼がぶつかり合う音が聞こえた為に視線はアベルに注がれた。


 お互い力を入れて剣を押し付け合っているが、オーウェンの力に一瞬おされたアベルが呟いた。


「何もわかっていないようだな」


「あぁそうだ!俺が負ける?そんなことは例え作戦だとしてもあっちゃならねぇ!!」


 オーウェンは力でアベルの剣を跳ねのけた。


「くっ!」


 がら空きになったアベルの胸を斬り裂こうとしたが、その斬撃はアベルの着ている服を掠めただけだった。アベルは後方へ飛び退き距離をとったのだ。破れた布がリングに舞落ちるのを眺めながらオーウェンは剣を肩に担いで言った。


「どっちが強いか決めようぜ」


 その戦闘を見た、いや早すぎて殆んど見えていないのだが、観客達は声をあげる。


うおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!


 その観客達の中でただ1人、シャーロットは頭を抱えて呟いた。


「オーウェンのバカ」

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