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喜んだらレベルとステータス引き継いで最初から~あなたの異世界召喚物語~  作者: 中島健一
三國魔法大会編

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その238

 円形のリングに上がる2人の選手に声援を送る、観客達はこの大会が盛り上がることに期待しているようだ。両選手とも定位置に着くと、グスタフは着ている上着を脱ぎ捨てた。バキバキに鍛え上げた上半身とバキバキに固めた髪を見せつける。これには今大会においての彼の決意が現れている……のだそうだ。そして筋肉が最も大きく見えるポーズをとり、対戦相手を威嚇した。


「俺はこの日の為に毎日修行をしてきたんだ!お前には悪いが一瞬で終らす」


「そりゃどーも」


 そんなグスタフに対して、黒髪の三白眼の持ち主オーウェンはグスタフよりかは幾分か細いように見える。


 2人の選手を見守る観客達、上階の観覧席にいるヴァレリー法国の要人達はそれぞれ意見を交わしている。議長ブライアンは自国の選手であるグスタフを見て言った。


「ここからでもわかる程、見事な肉体ですな。なんでも彼はもうブリッジ率いる隊の内定が決まっているとか……」


「え?そうなの!?」


 身長の小さいエミリアは落下防止の手すりに顎を乗っけながら言った。そして、続ける。


「それより相手の黒髪の子さぁ……」


 エミリアが話題に上げた直後、シルヴィアは食い気味に答えた。


「強いな……」


 エミリアはドキリとした。何故ならシルヴィアは常に自分と比較してものを言うからだ。ということは、あのダーマ王国の黒髪の少年はシルヴィアと同等の強さなのではないかとエミリアは予感したのだ。


 シルヴィアは同じ高さに位置するもう一つの観覧席にいるダーマ王国の要人達に視線を送った。


『始めぇぇぇぇ!!!』


 開始の合図と大きな声援を浴びて大会は始まった。


 歓声なりやまぬ中、グスタフは聖属性魔法ブレイブを唱えて攻撃力を上げた。そして拳技精神統一でさらに身体を強化する。


『おおおっと!そのなりでまさかの聖属性魔法を唱えるかぁ!!ちなみにフルートベール王国で聖属性といえばやはりルナ・エクステリアさん!!あぁ今日もお可愛い…』


 ルナが観客席で赤面しながら俯く。


 ルナと会場で合流したグラスとマキノは得意気に手を振る。シスターグレイシスも控え目に手を振っていた。


 ジエイは置いてある台本に羽ペンで斜線を引く。ギラバに実況中、この言葉を言えとリストを渡されていたのだ。


 攻撃体勢が整ったグスタフは、


「行くぞ?」


 一瞬で移動した。


『速い!!』


 オーウェンの眼前に迫るグスタフは右拳を繰り出す。オーウェンはヒラリと躱し、呟いた。


「おっそ」


『おっとぉ~グスタフ選手!魔法使いらしからぬ攻撃ぃぃ~!!』


 グスタフはめげずに拳技連華弾を放つ。


 下段、中段、上段と連続で繰り出される攻撃をオーウェンは身体にヒットする直前に片手で全ての打撃をいなした。拳には感触が残っている為、グスタフはこの連続攻撃がすべて命中したと錯覚してしまっている。


 ──どうだ!?


 グスタフはニヤリとしながらオーウェンの顔を見やる。オーウェンの小さな瞳と視線が一致した。今度はオーウェンがニヤリと笑うと、グスタフの顎の下を持ち上げるように掌底打ちをきめた。


 グスタフは相手の笑みを見ながら意識を失い、リング上に倒れる。


 観客達は押していた筈のグスタフが急に倒れた為、何が起きたかわからないでいる。


 闘技場内が静まり返った。


『おおっと!?これは?どうした?グスタフ選手が倒れた!!……ダウンによりカウントを始めます!1、2、3、4……』


 オーウェンは倒れているグスタフの側で伸びをして身体をほぐしていた。これにはグスタフでは準備運動にもならなかったことを物語っている。


「何やってんの!?早く起きなさいよ!」


 同じヴァレリー法国の代表選手オリガが叫ぶ。隣にいる引率のヴォリシェヴィキ先生は何が起きたのかを黙考していたが、一向に答えはでなかった。


『5、6……』


 前回大会決勝でグスタフと戦ったレナードはかつての戦友の姿をもう見ていなかった。その視線は新たな強敵、ダーマ王国のオーウェンに釘付けだった。レナードの隣にいるレイが呟く。


「顎を下から上に向けて攻撃した……」


 レイの呟きをレナードが肯定する。


「そう、只の掌底だ。レイももう少し接近してたら見えていたと思うよ?」


『7!8!』


 10カウントに近づく度、倒れているグスタフに向けて声援が大きくなる。 


「い、一体何が?」


 ダーマ王国宮廷魔道士のアナスタシアは狼狽えた。


「遠くてよく見えなかったな……」


 バルバドスが呟く。そんな2人の言葉に耳をかさない宰相トリスタンの顔は青ざめていた。 


『9!10!!しょ、勝者~オーウェン・ブレイド!!』


 ヴァレリー法国議長のブライアンは自国の代表選手がこうもあっさり負けてしまった事実を受け入れられず叫んだ。


「な、何が起きた!!何故負けてしまったのだ!!?」


「掌底打ちを入れられたんだよ」


 エミリアが平淡な口調で言った。その言葉の語り口には幼さなどなく、魔法兵団の副団長らしい威厳が込められていた。シルヴィアはエミリアの解説を無言で肯定し、もう一度ダーマ王国の要人達が集まる観覧席を見た。


 自国の選手が相手を圧倒したことに驚いている宮廷魔道師と騎士団長。しかし1人だけ口元に指を近付けて小刻みに震えている者がいたのをシルヴィアは見逃さなかった。


「きな臭くなってきたな……」


 シルヴィアはそう呟くと、

 

『第二試合!!フルートベール王国魔法高等学校3年生オンヤ・ツーリスト!!対!ダーマ王国王立魔法高等学校1年生ルベア・ルーグナー!!』

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