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喜んだらレベルとステータス引き継いで最初から~あなたの異世界召喚物語~  作者: 中島健一
聖王国編

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203/395

その202

~ハルが異世界召喚されてから12日目~


 エリンとルナの救出失敗から一夜明けて、レオナルドは両手を前にして手首をくっつけるように錠で固定されている。その状態で通路をゆっくりと歩くレオナルド。聖騎士から背中を押され、早く歩くように促されるが、レオナルドはその手を跳ね返した。反動で驚く聖騎士。


 背筋を伸ばし毅然とした態度で歩いた。通路の先に光が見える。その光の先には自分の死が待っている。そうとは思えないほどその光が美しく見えた。


 通路から出ると、目の前は大きな円形の広場が拡がっている。そこに大勢の聖王国の民が集まっていた。レオナルドは壇上に上がるよう促された。レオナルドが姿を現したことにより怒号と罵声が広場を多い尽くす。壇上にはこれからレオナルドを処刑するシーモアがおり、また今にも泣き出しそうなエリンとルナ、その後ろに涙を流しながらレオナルドを見ているフルートベール王国兵達がいる。


 ──あいつら……俺を助けに……


 視線を横にずらすと座しているチェルザーレとマキャベリー、それと見覚えのない老人がいる。


 チェルザーレがレオナルドの側まで近づき、集まった民達に向けて大きな声で語りかけた。


 広場にいる大勢の者達が罵詈雑言をやめ、静まり返る。チェルザーレが何か言っているが、レオナルドにはその内容が全く頭に入ってこなかった。静まり返った民達のお陰でこの美しいサンピエルト広場の景色を子細に眺めることができた。


 円形の広場を囲うように大きな柱が幾つも聳え立ち、埋め尽くす民達の隙間に2つの噴水が見えた。


 レオナルドはもう一度エリンとルナを見やった。彼女達と目が合い何故だかわからないがレオナルドは微笑んだ。


 チェルザーレは民達に語りかけるのを止め、元いた場所へと戻る。


 ──いよいよか……


 シーモアはレオナルドをその場でひざまずかせる。


 するとその時──


 目映い光がレオナルドの隣にいるシーモアとチェルザーレ、そしてその後ろにいる老人に向かって放たれた。


────────────


 シーモアがいる。相変わらずレベル44。チェルザーレのレベルは18。帝国のマキャベリーのレベルは12。


 ──その後ろにいる老人が……レベル22。名前はマクムートか……


 老人の割には強いがハルの敵ではない。見える範囲には脅威がいない。昨日レイ達を襲った男の子はどこかに潜んでいるのだろう。


 レオナルドが姿を見せる。ハル達は今、サンピエルト広場を囲っている大きな柱の上にいる。ハルはバニッシュで姿を消していた。この魔法を見たときのレイとレナードはかなり驚いていた。光属性の第三階級魔法は最早、伝説上の魔法のようだ。ハルはゲームやマンガの知識だが光学迷彩について知っていた為にこの魔法を修得するのは容易かった。それよりも第四、第五階級の光属性魔法を唱えられると知ればレイ達はどんな反応をするのだろうかとハルは思った。


 レオナルドが姿を現した時、レイとレナードの身体に力が入るのがよくわかった。


「…攻撃していいか?」


 レナードが逸る気持ちを押さえつけながら言った。


「まだ……」


 ハルは広場で不審な動きをしている者がいないか確認している。オレンジ色の髪をしたチェルザーレがレオナルドの前に立ち声を発している。


「まだ……まだ……」

 

 ハルは一定のリズムで言う。姿を消しているため2人を制するのは声でしかなかった。


 チェルザーレは後ろへ下がりレオナルド

がひざまずいた。ハルは合図をだす。


「いまだ!!」


 2人の鬱憤がたまったシューティングアローが壇上にいるシーモア、チェルザーレ、その後ろにいるレベル22の老人マクムートに向かって放たれた。


────────────


 新聞記者のチャールズは、優秀な部下を失ったばかりだ。普段は真面目に取材などしない。部下に任せっきりだった。しかし、部下だったソフィアは残忍な殺され方で死んだ。ソフィアは事件や気になる噂話を聞けば直ぐに取材をしに行った。そのせいでたまに陰謀論めいたことも記事に書いてしまうのがたまにきずだった。


 ──彼女が生きていれば、この広場に必ず来ていただろう。


 チャールズは亡き部下がこのサンピエルト広場にいるのではないかと思い、辺りを見回した。回りには見慣れた新聞記者仲間達しかいなかった。彼らはチャールズを見てみぬふりをしている。


 チャールズは気を取り直して壇上にいるレオナルド・ブラッドベルを見た。歴戦の猛者。光の戦士。男なら一度は戦場での活躍を夢見るものだ。


「なぁ……あの処刑人はなんて名前なんだ?……」


 癖で質問してしまった。いつもなら素っ気ない声で即答するソフィアがいるからだ。


「あ……あぁやっぱなんでもない」


 取り繕うようにチャールズは独り言を言う。ソフィアはこの処刑に違和感を覚えていた。ゲーガン司祭を殺害した容疑でレオナルドは処刑されるのだが、ゲーガンのよくない噂をソフィアは綿密に調べていた。


 ソフィアの残した手記には、ゲーガン司祭の性癖についてまで話が及んでいる。


 チャールズは亡き部下の為に、この事件を引き継ぐことを誓っていた。


 チェルザーレの処刑宣告が終わり、レオナルドがひざまずいた。


 ──いよいよか……


 その時壇上に向かって無数の光が放たれる。

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