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喜んだらレベルとステータス引き継いで最初から~あなたの異世界召喚物語~  作者: 中島健一
聖王国編

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199/395

その198

◆ ◆ ◆ ◆


 重い鋼のぶつかり合う音が訓練場に鳴り響く。訓練用の長剣は重く、傷だらけだ。


 レイはレオナルドに剣技『連撃』を繰り出し。翻弄する。


「良い打ち込みだ」


 レオナルドは連撃に合わせてレイの攻撃を弾いた。


「もう終わりか?」


 レイはレオナルドに新しい技を仕掛ける。軸足をしっかり地面につけ、上段に蹴りを入れる。蹴り上げる足の甲に長剣を乗せるように添え、腕の力と脚の力を合わせるようにして振り払う。


「おっ」


 レオナルドはその攻撃を受け止めようとしたが、予想外の力により防御が弾かれた。レイは勝ちを確信し、無防備なレオナルドに長剣を突き立てたが、後ろからレオナルドの声が聞こえる。


「私の勝ちだな」


 レオナルドは長剣をレイの首に添えて言った。レオナルドの魔法イリュージョンによってレイは幻と戦っていたのだ。


「いつからかわかったか?」


 レオナルドは問う。


「父上の剣を弾いた瞬間……」


「そうだ、何か普段とは違うことをするときも隙が生じるが、最も隙が生じるのは相手が勝ちを確信した時だ。それよりもあの技は面白い」


 レイは悔しいような誉められて嬉しいような複雑な気持ちになった。


「あの技はもっと改良できる。腰の使い方を上手くすれば、もっと威力が増すだろうな」


「はい……」


◆ ◆ ◆ ◆


 血が体内から外に出ていくのが感じられる。そして腹部を刺された痛みが襲ってきた。膝をつくレイ。


「レイ!!」


 レナードが声をかけ、近寄ろうとするが、ジャックはひざまずいたレイの喉元にナイフをつきつける。


 レナードの声が遠くに聞こえる。レイは自分が何故ここにいるのか、何故戦っているのか、流れ出る血液と一緒にそれらの記憶も体外へと放出されているような感覚に陥った。


 レイは残された記憶を辿る。


 ハルの魔法とレッサーデーモン。

 マリアの優しい笑顔と心配そうな表情。

 父レオナルドの教え。


『最も隙が生じるのは相手が勝ちを確信した時だ』


 意識があるようでない状態になると、細かな情報や魔力の込めかた等思い出す暇もない。ただ潜在的に残った無意識の想いだけがレイを突き動かした。


 この仕事は本来、相手を脅すためのものであって、殺しを目的としていない。しかしジャックは失意の底にいる。歯止めが効かない。レイの喉元にナイフを突き立て、切り裂こうとしたその時、レイの身体が光出す。直ぐに異変を感じたジャックはナイフを動かし、レイの息の根を止めようとしたが、ナイフは動かない。第一階級光属性魔法のシューティングアローを身体全身に纏い防御として使っている。しかし、その魔法はもともと攻撃魔法だ。無数の光がジャックを襲った。


 ジャックは咄嗟にレイから離れた。そこを狙ってレナードが膝蹴りをジャックにくらわせる。


「ぐはっ……」


 ジャックはレナードの攻撃の衝撃で窓を突き破り、外へ飛ばされる。聖都にいる人々が宿屋の2階から音をたてながら窓をやぶり、血だらけのナイフを持っているジャックを目撃する。


「きゃーー!!」


 悲鳴と、逃げ惑う人々を尻目にレナードは追い討ちをかける。外にいるジャックに向かって手をかざし、魔法を唱えた。


「プリズム」


 空は光に覆われ、光源から大量の光の筋がジャックを襲う。



────────────


 ハルはシスティーナ宮殿を急いで出た。ハルの奢りでとった宿屋に向かう。するとその宿屋の方角から眩い光が見えた。ハルはスピードを上げて、レイ達の元へと向かう。


 ハルが到着した頃には既に光の塊は消えていたが、ボロボロになった宿屋の2階を見てハルは2人の無事を確認する。


「大丈夫!!?」


 野次馬が群がる中、ハルは外から2人に問いかけた。


「あぁ!なんとか!!」


 嵐が過ぎ去ったような部屋の中で、レイを担いだレナードが返事をする。


───────────


 3人は場所を変え、姿をくらまし、今は聖都のすみにある宿屋に場所を移した。


「そんなことが……」


 レイの傷の手当てをしながら、事の顛末を聞き、思った以上に自分達の状況が芳しくないことを悟る。


「そっちはどうだった?」


 レナードから訊かれ、ハルは自分がまだ何も2人に報告していないことに気が付いた。


「見付けたよ。君達のお父さん」


 2人は前のめりになった。


「地下牢にいた」


 ハルはチラッとレナードを見たが、得意がる様子もなく拳を固く握りしめていた。レイが口をひらく。


「今すぐ行こう……」


 立ち上がろうとするレイをハルは止めた。


「その傷じゃまだ無理だ。回復ポーションを飲んだとしても直ぐに動き出せない。それに君達のMPは底をつきかけてるじゃないか!」


「「……」」


 黙る2人にハルは更に情報を与える。


「それにレベル44の護衛がいた」


「なんだと!?」


 レイが驚くなか、レナードはその事実を受け止めきれていないようだ。


「はっ?待って?確認をしていいか?ハル君は鑑定スキルを持っているのか?」


「うん」

 

 何の気なしに答えるハルを見てからレナードはレイを見やる。


「レイも知ってたのか?」


「まぁ…」


 そっけない返事をするレイ。


「わかった…それで?レベル44の護衛がいたと?」


 レナードはやれやれといった具合で肩の力を抜いた。


「いや、それは問題ない……ただそれよりも強いヤツがいたら……」


 ハルが危惧していることを言い終わる前にレナードが遮った。


「待て待て!!レベル44が問題じゃないだと!?君がいくら強いからといってフルートベールの剣聖様と同程度のレベルの者を相手取れるとでもいうのか?」


「まぁ簡単には倒せないと思うけど、もう1人それ以上に強いヤツがいたら僕だけじゃ無理かな」


 それを聞いてレイが口をひらいた。


「じゃあどうするつもりだ?」


「僕に考えがある……結論から言うと救出するのは明日。処刑が行われる広場で奪還する」

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