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喜んだらレベルとステータス引き継いで最初から~あなたの異世界召喚物語~  作者: 中島健一
聖王国編

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その188

 扉を開けるとゲーガン司祭が顔を覗かせた。ルナはこんな時間に司祭が来訪してくるのに違和感を覚える。怪訝な表情でゲーガン司祭に質問した。


「あの……なんの御用ですか?」


「大切なお話がありまして……侍女は別の部屋かな?」


 ゲーガンはルナの後ろに広がる高級宿屋の一室に視線を送る。ゲーガンはときおり呼吸が荒くなり言葉に詰まりながら述べていた。


「同じ部屋ですが、つい先程外へ……」


「それなら都合が良い」


 半開きの扉から無理矢理身体を押し込みながら部屋に入るゲーガン。ルナは扉を閉めようとしたが間に合わなかった。


「すぐに彼女は帰ってきますよ!!」


 そう言ってもゲーガンはお構い無しだった。どこか様子がおかしい。もともとゲーガン司祭には良い印象は抱いていなかったが、今の様子は異常だ。


 ゲーガンは部屋に押し入り、ルナの両肩を掴んだ。鼻息が妙に荒い。


 ルナは直ぐ様離してほしいと懇願するも聞き入れてもらえず、かくなる上は魔法を行使しようとゲーガンの鼻先に手をかざした。


「離して頂けないのなら魔法を放ちます!!」


 威嚇する為に火を灯そうとしたが、魔法は不発に終わる。


「え?」


「グフフフ、この鎖に巻かれたものは全属性の第一階級魔法を封じる効果があるのですよ」


 ルナは鎖の魔道具が自分の腕に巻き付けられていることに気が付いた。ゲーガンはそのままルナを引きずるようにベッドまで連れていき、押し倒した。


「こうなれば聖女ではなくただの女だ」


「こんなことを……しても良いと思っているのですか!?」


 はぁはぁと息を荒げるゲーガンはルナの質問というよりは糾弾に答えた。


「貴方を見たときから……そして供に過ごした時間を重ねる度に私の貴方への想いが抑えきれなくなってしまった!!これは神の御告げなのです!!」


 そういうとルナの着ている服をゲーガンは破った。布が裂かれる音を聞いてゲーガンの興奮は最高潮に達した。


「いや!!!」


 ルナが全力でもがいてもびくともしないゲーガンの身体は、ルナのあらわになった上半身に覆い被さるように傾けられた。


「ブレイブバイス!!」


 ルナは自分に第二階級聖属性魔法をかけた。自分の全ステータス数値を上げてなんとか抵抗する。


 ゲーガンは目標物が目の前にあるのに抵抗され、苛立ちが増した。


「くそぉ!!大人しくしてろ!!」


 いつもは手を出さないゲーガンはこの時ばかりは自分の欲求を抑えることができなかった。ルナの顔に暴行を何度も加えるが、ルナはそれをギリギリで躱す。それに例え当たったとしても耐久力も上がっているため対して痛くない。


 扉を叩く音が聞こえた。ルナは助けを呼ぶ。ゲーガンには何も聞こえていないようだった。ルナの叫びにより扉がぶち破られた。


 レオナルドは目の前の光景を見て殺意が芽生える。自分の護衛対象である気高き女性が服を破られ、半裸となり、これまた半裸となっている男にまたがられ、暴行を受けているからだ。


 レオナルドは光の剣で男を斬り殺した。殺してから気が付いた。自分が手を下したのがゲーガン司祭であることに。


 エリンがあとから部屋に入ってきた。ゲーガン司祭が斬られたあとだった。服を破られ、肌が露出している部分を抑えているルナと目があった。すぐに側にあった毛布をルナにかける。


 レオナルドは怒りを沈めながら今後の動きを考えた。


「今すぐここを発たねば……王国へ戻る」


 レオナルドは立ち上がりながらエリンにそう告げたが、外の様子が騒がしいことに気が付いた。窓から外を窺うと、街の外に大量の聖王国兵がいるのが見える。チェルザーレの護衛ならば聖騎士達だろう。オレンジ色の髪に落ち着いた優しい眼を持つ青年がロストの街に入ってくるのが見えた。


「まずい……」


──────────────


 チェルザーレとマキャベリーは馬車から降り、ロストの街へと赴く。街の壁外ではフルートベール王国が野営している様子を垣間見ることができた。2人は街に入り宴が催された跡を確認する。


 酒と料理の残り香を感じながら、ルナのいる宿屋へと向かった。


 マキャベリーは言う。


「聖王国の料理は美味しいものばかりでした」


「何人か料理人を送ろうか?」


「ええ。是非ともお願いします」


「フフフ…まずは胃袋から帝国を支配してみよう」


 護衛シーモアは2人の歩く後ろで松明を持ちながら2人の行く先を照らしていた。


「それは面白い考えですね。人間の欲求を掴むことは何より重要です」


「そうであろう?民の欲求を満たすこと、或いはその欲求を上手く利用できるかどうか……」


「非常に重要なことです。相手の欲求を知ることは、突き詰めればその者の未来がわかります」


「全く恐ろしい奴だ」


 チェルザーレは半ば呆れたような物言いだった。そして目的地の宿屋に到着した。


「さて、ゲーガン司祭の未来は我々の思い通りのものとなったかな?」

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