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喜んだらレベルとステータス引き継いで最初から~あなたの異世界召喚物語~  作者: 中島健一
聖王国編

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その183

~ハルが異世界召喚されてから10日目~


 スコートはリング際に立ち、もう後がないことを認識する。


「フッ…あの時と一緒だな……」


 拷問官の攻撃を避け続けた時の記憶が甦る。スコートは持っている木刀を捨てた。その行為を見た父エドワルドは頭を抱える。


 レナードはもうこの試合を終わらせようと思い、またシューティングアローを1発唱えた。


 迫り来る高速のシューティングアローを見つめながらスコートは思った。


 ──すみません……父上…俺は…


 シューティングアローが右胸にヒットする。



「…?」


 レナードは放った魔法が狙った位置から外れたことに驚いた。もう一度シューティングアローをスコートの胸に狙いを定めて唱えるレナード。


 今度は左肩にヒットする。



 このやり取りにまず異変を感じたのは戦士長イズナと担任のスタンとレイとハルだけだった。


「スコート…君は……」

「もしや…」

「おい…スコート……お前…」

「ようやく見えてきた?」


 もう一度シューティングアローを唱えるレナード。今度も胸に狙いを定める。


 スコートの肩をシューティングアローが掠めた。スコートは武器を持たず、レナードにむかって走り出した。


 戸惑う観客。


おいおい武器はどうした?

狂っちったか?

ハハハハハハハハハハハハ


 レナードはまた大量のシューティングアローをスコート目掛けて放つ。スコートはそれらをかすめながら前進する。


「うぉぉぉ!!」


 しかし胸にまともな一撃が入り、再び後ろのリング際まで飛ばされる。観客達はようやく異変に気が付いた。



「アイツ躱してね?」

「嘘だ?だって当たってたじゃん?」


「普通にあれ躱すなんて無理でしょ?」

「でもさ…あれ食らいながら前進するってヤバくね?」


 スコートは全神経を集中させた。観客達の声、自分の心の声、早鐘を打つ心臓の音、乱れた呼吸音が次第に聞こえなくなった。


「はぁはぁはぁ……」


 遠目からもう一度レナードはスコートに狙いを定め、魔法を放つ。スコートは横っ飛びをして完全にレナードのシューティングアローを躱した。



 ──躱された!!


 レナードは自身の誇る最速の魔法を躱されたが、笑みを浮かべた。



うぉぉぉぉぉぉぉ!!



 観客は今までの試合で一番の声援を送る。


 レナードは先程と同じように大量のシューティングアローを放つ。それを全て完全に躱すスコート。



「ヤバいアイツヤバい!」

「すげぇ!避けてる」

「動き早すぎ…」


 ハルやレイに対する対応がやわらいだのをスタンは知っていた。

 

「成長したな…スコート…一事はどうなるかと……」




「スコート行け!」

「「スコートー!!」」

「スコートくん!!」


 同じAクラスの生徒が声援を送る。



「スコート!!行っけぇ!!!」


 ゼルダの声が聞こえる。スコートは躱し続けながら前進する。


 レナードの間合いに入るとレナードは魔法を止め、拳技に入った。


 スコートの顔面に右ストレートを入れようとするが寸止めをして後ろに回り込むレナード。


 スコートはその動きを捉え上段後ろ回し蹴りを背後にいるレナードに食らわせる。


 レナードは躱しきれないと思い、ガードした。動きの止まったレナードにスコートは魔法を放つ。


「ファイアーボール!」


 レナードはその魔法を諸に受け、後退した。盛り上がる観客。


「強くなったね……スコート」


 ハルが呟くと隣にいたアレックスがその訳を言った。


「レイとの訓練が活かされてるね」


「そうなの?」


「2日前、レベルアップ演習が終わって王都に着いた次の日、レイとスコートが対人訓練してたでしょ?あれから今日まで2人で特訓してたみたい」


 自分の知らないところで誰かが成長している。ハルは自分が未来を変えたせいで誰かの成長を阻んでいやしないかと考えた。もっと慎重に行動しなければならないと自分を戒めた。


 そしておそらくハルが過去を変えたせいで、聖王国のロドリーゴ枢機卿は暗殺された。マリア曰く、ロドリーゴ枢機卿とほぼ同時刻に殺された2人の枢機卿は同じ派閥に属しており、この3人が亡くなってしまったことにより、若手の急進派が力を付けることが予想されるとのことだ。


(マリアは口を濁していたが、その若手急進派筆頭のチェルザーレ枢機卿というのが今回の暗殺事件の首謀者であることが想像できる。そして、獣人国の反乱が失敗したことからこの暗殺事件が起こっている……つまりはこの暗殺に帝国が関わっている。帝国と聖王国は同盟を結んでいるのか?)


 観客のどよめきによりハルは意識をスコートの試合に戻した。


 スコートはレナードの拳技により飛ばされ、倒れた。誰もが試合終了を思ったがゆっくりと立ち上がるスコート。ハルはその光景を見て、立ち直れなかった自分の姿と重ねた。再び立ち上がることの恐ろしさ、過去の自分が今の自分を笑っている羞恥心。それをはねのけながら立ち上がるスコートに感動を覚える。


「スコート!もう君を笑う奴なんていない!ぶっ倒してくれ!!」


 アレンが珍しく叫んだ。ハルもそれに、ならった。


「いけぇぇぇ!!スコート!!!」


 レナードの光の剣がスコートに襲い掛かる。スコートは敗退した。


「凄かったね、スコートくん……」


 ユリが涙ぐみながらハルに言った。


「うん……凄かった。見習わなきゃね……そういえばルナさんは?」


 ユリは少しだけムッとしたが、自分もそれが気掛かりであった為、冷静な口調で言った。


「昨日、ハルくんと話してたときにシスターグレイシスに呼ばれて以来見てないの」


 ハルは考えた。


(この選考会が行われたときルナさんは見に来ていた。しかしそれは9日目に選考会が行われていた世界線での話……10日目である今日はなにか用事があったのか……それとも──)

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