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喜んだらレベルとステータス引き継いで最初から~あなたの異世界召喚物語~  作者: 中島健一
聖王国編

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182/395

その181

~ハルが異世界召喚されてから9日目~


『聖王国、ロドリーゴ枢機卿が暗殺され死亡』


 ハルはこの記事を読んで嫌な予感がした。


 ──イレギュラーだ……こんな事件は今まで起きていない。


 記事はこう続いていた。


『ロドリーゴ枢機卿の派閥である保守派の内の実力者であるフェランツァ枢機卿とヴェネディクト枢機卿も暗殺され死亡。3人ともほぼ同時刻に暗殺されていると思われる。現在聖王国では捜査を進めている。尚、奇妙なことにロドリーゴ枢機卿暗殺現場には犯人と思われる少年の遺体も発見される。こちらも現在捜査中であるが、少年はロドリーゴ枢機卿を殺害した後に自殺したと思われる』


 ルナはシスターグレイシスに聖王国で起きたことと、教会の礼拝堂にフルートベール王国の大臣が待っていることを聞かされた。


 ルナは急用の知らせをハル達に伝えようとしたが、シスターグレイシスがその役を代わってくれた為、そのまま大臣の元へ向かった。


「ルナ・エクステリア様、今すぐ私と王城へ来て頂けませんか?」



────────────


「枢機卿団首席枢機卿である保守派のロドリーゴ枢機卿が暗殺され、彼を支持する有力者フェランツァ枢機卿とヴェネディクト枢機卿も暗殺された為、聖王国は混乱の最中にあります。しかし、その要因はこれだけに止まらず、枢機卿団首席枢機卿は急進派のチェルザーレ枢機卿がその座につきました」


 ルナは王城の執務室で要人達と一緒に宮廷魔道師ギラバの話を聞いていた。何故自分がここに呼ばれたのかルナはまだわからない。周囲を見渡すとフリードルフ陛下だけでなく、有力貴族や戦士長イズナまでいた。


 チェルザーレ枢機卿とは一度だけ会ったことがある。オレンジ色の髪をした青年でルナと眼が合うと優しく微笑んでくれた。


「問題はここからです。チェルザーレ枢機卿はフルートベール王国と帝国の間で行われる戦争を危惧し、聖女と名高い我が国のルナ・エクステリア様の保護を名目に、ルナ様を聖王国に引き渡せと命じてきました」


 ルナは自分の名前が呼ばれたことに驚いた。そのせいで途中から内容が入ってこなかった。周囲はざわつき、ルナを見やった。ルナはようやくことの重大さを思い知った。


「そんなふざけた理由があるか!」

「あの若僧が枢機卿暗殺の首謀者に違いない!」

「聖王国とも戦争すべきだ!」


 行き交う怒号にルナはたじろぐ。


「静まれ。まだ終わっていない」


 フリードルフⅡ世は御した。


「もし聖女ルナ・エクステリアを引き渡さない場合、帝国に彼女の庇護を依頼する」


 つまり聖王国は帝国に何らかの助力をするとのことだ。


「これは脅しか?」

「やはり戦争すべきだ!」


 ルナは自分を中心に話が進んでいることを自覚したと同時に自分抜きで話が進みそうだとも感じた。自分の運命が他人に委ねられる。少なくともここにいる人達は他人の運命を今まで何度も支配してきた者達だ。彼等はその采配で誰かを幸せにしてきたのだろうか。


「いつまでに答えをだせと?」


 軍師オーガストは尋ねた。


「今日いれて3日間待つと…」


 オーガストは6日後に行われる帝国との戦争を頭の中でボードゲームのように動かし、シミュレーションした。


 期日を聞いた者達はまたも騒ぎ立てる。そして、厳かな声により黙った。フリードルフⅡ世が口を開いたからだ。


「ルナ・エクステリアよ……そなたはこれを聞いて何を思う?」


 静かで重たい響きの声はどこか暖かな想いをルナに感じさせた。ルナは周囲に注目され萎縮したが、国王の声に勇気付けられゆっくりと自分の考えを述べた。


「私は──」


───────────


<聖王国>


 ゲーガン司祭の前にはひざまずき祈りを捧げている少女がいた。ここは神聖な教会。迷える子羊たちの集まる場所だ。


「ケイティよ……顔をあげなさい」


 ゲーガンはすっかり老いた手を少女の顎に当て、自分の目を見るよう促した。少女ケイティはゲーガンの丸々と太った顔を見た。頬の肉は重みに耐えきれず垂れ下がり、少なくなった髪の毛が帽子の隙間から所々出ている。


「さぁ、罪を告白するのです」


 少女は戸惑いながらも、これで自分の罪が赦させると思いながら告白する。


「弟が行方不明なんです……私のせいで…」


「何故ですか?」


 優しい声でゲーガン司祭は少女を追及する。


「母の言い付けを守らず……弟から目を離したからです」


「ケイティ……何故弟から目を離したのですか?」


 ケイティはゲーガンを見上げながら、自分の一番言いたくなかったことを告白した。


「友達と遊びに…行ってしまいました」


「……そうですか」


 ケイティはこの告白をしたことにより、涙が頬を伝う。そして少しだけ気が楽になった。教会の雰囲気と司祭の優しげな声により自分は赦されたのだと感じた。


「ケイティ……神の名のもとに貴方を赦します」


 ケイティの心に抱えていた罪悪感が薄れる。


「それでは、服を脱いで」


「…ぇ?」


 予想もしていなかったことを言われ固まるケイティ。


「貴方の弟君は今苦しんでおります。貴方も同じ様な苦しみを味わうのです。そしてその苦しみは快楽へと変わっていく。そうなれば貴方の弟君の苦しみもやわらぎ救われるのです」


 ケイティは言われるがままに着ている服を脱いだ──


 


 ゲーガン司祭は書斎で送られてきた書簡に目を通しているが、先程行った救済を思い出していた。ケイティの恐怖から快楽へと表情が変わっていくあの表情。ゲーガン司祭は胸の疼きを感じる。


 保守派のうるさい連中は何者かに暗殺された。聖王国は混沌にある。ゲーガンの行いを見張っていた者達がいたが、いまはそれどころではない。ゲーガンは保守派枢機卿暗殺事件の恩恵を受けていた。


 目を通していた書簡にはあることが記されている。2日後にフルートベール王国から聖女ルナ・エクステリアを保護する為、ゲーガン司祭は念のため護衛を伴い、引き渡される際の証人、及び責任者に任ずる旨が書かれていた。


「聖女か……」

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