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戦闘機ですが、異世界に転生させられちゃいました  作者: ロッキード絶対許さないマン
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厄介な客

今回はちょっといつもより短いです。申し訳ない・・・m(__)m

「…領主?」


 私が盛大に怪訝な顔をして(実際にはできないので心の中でそんなイメージだけして)隣にいたランドマンに聞くと、彼は肩を落として答えた。


「言い忘れていたね。さっき浮遊島は無数にあるって言ったろう?この辺りは比較的小さい浮遊島が集まる地域なんだが、そのいくつかある浮遊島の領主として、すぐ近くの大きな浮遊島から貴族サマが派遣されてるのさ」

「…なるほど、封建制ですか」

「知っているかい?なら話が早くて助かる。さっきも言ったろう?ここはあくまで自治島。宗主国は別にあって、私たちこの島の住人はそこの貴族サマ方と比べれば、うんと位が下なんだよ」

「じゃあ納税と兵役も?」

「納税はもちろん。兵役の方は…ちょっと特殊かな」


 封建制度とは、いわゆる貴族を上位の階級として、納税と兵役の義務によって土地をもらうという、よく言えば循環型社会、悪く言って(たいていコッチでしか呼ばないが)貴族の独裁である。

 文明レベルは思ったより高かったが、やっぱり社会的なシステムはまだ近代以前のようだ。


「その領主が、ここにやって来たと」

「そう。まあ名目は定期視察だ。まあ実際はまた吸い上げられるだけ吸い上げるつもりだろうが……」


 そう苦々しく吐き出したのは老人だ。

 一般的に、領主貴族の権力に逆らうことはできない。与えられた土地で栽培した農作物はほとんどが取り上げられるし、それ以外も大抵残らない。

 少なくとも私の記憶では、かつてのヨーロッパでは結婚を目前にした娘はまず領主と一夜過ごさなければならなかったとか。

 そうするとここもそんな感じなのだろうか?でも見た所、農園と呼べそうなものはないし、住人も農奴と呼ばれるほど経済的に困窮しているようには見えなかったけれど。


「あのう、ひとつ。さっきここのことを自治島って言ってましたけど、それってどういう立ち位置なんです?」

「言葉通りだ。一応ある程度の自治は認められている。島内の政策はかなり自由だし、ガルムたちのような自警団や、ある程度自衛用の武装も認められている。だが……」

「基本的には、宗主国の支配下ですか」

「ああ。対魔獣用の装備も、狩猟用の物以外は本島からの許可がないと動かせない。そんなんじゃ、いざって時にはもう殺られてる。だが破れば反逆罪だ」

「うわぁ……」

「ひどいもんだろ?さて、アンタたちはここに隠れていてくれ。我らが領主、ヴァルギウス・バンクラフト子爵は貴族のプライドってやつだけは達者な方でな。アンタみたいのが見つかるとたぶん碌な事にならない」


 あー、なるほど。たぶんアレだ。これ見つかったら最後どっか連れて行かれてすごいことされちゃうやつだ。たぶん、さっきのランドマンのミニガントークが天使みたく感じられるくらいに。

 まあもしそうなったらその前に自力で逃げるけど。


「でも隠れるってどうやって?この建物、周りからモロに見えますけど」

「ああ、それなら心配ない。すでに視覚結界を張っておいた」


 なんだ視覚結界って。迷彩ネットみたいなものか?


「視覚結界というのはだなぁ!」


 あ、出たなおしゃべりマッドサイエンティストめ。今度は5分以内に済むことを祈ろう。


「まあ、魔術の一種だ。隠したい対象に魔素粒子の魔力場を形成させて、その展開された魔素粒子で光を偏光、対象を透明にしたり別の何かに見せる魔術だ。けっこう重宝するぞ、特にこういう時」


 よかった。30秒以内に済んだ。さすがの彼も時間は掛けられないことは分かったのだろう。てか、そんな短く説明できるならさっきまでの3時間はなんだったんだ。


「そういうことだ。まあこの前来たばっかりだし、そう目ぼしい物もないからすぐ帰るだろう。フィー」

「ふにゃ⁉」


 あ、起きた。…?ええ、寝てましたよあの娘。さっきからずっと。


「領主の電撃訪問だ。せいぜい目ぇ付けられないように、ここで隠れてろ」

「ふぇ、あ、ハイ」


 本当に分かったのかなぁ?大丈夫だろうか…


「じゃあ、俺はあれの接待をせにゃならんから。おとなしくしてな、大きな音をたてないように」

「ふぇ?なんで私に向かって言うの⁉」


 と、言われたそばから大声で言い返すフィーに、ランドマンと私のふたりがかりでシーッ!と言って静かにさせる。

 その姿を見た老人は、頼むぞホント……と言いながら憂鬱そうな足取りで部屋を後にした。




「それで、本日はどういったご用向きで?」

「分かっているだろう?貴様らが今月の狩猟で得た黒竜の鱗や牙。それを寄越せ」


 毎度思うのだが、この領主はもう少し迂遠な言回しを覚えたほうがいい。それとも領民ごときに言葉を選ぶ必要はないとでも思っているのか。

 そう思う老人……正確には第2自治島遠征狩猟旅団長の目の前で全身の装飾品を眩しく光らせる面長の小男こそ、この島を含む南方自治諸島の領主、ヴァルギウス・バンクラフト子爵だ。

 変に先端でカールがかかった金髪と、やたら高い鼻がうっとうしい。


「失礼ながら、子爵。遠征猟は先月に行ったきり、まだ実施しておりません。最近は黒竜の出没頻度も減りましたから」

「ならその先月の猟で得た物があるだろう。この前徴収した分だけではないはずだ」

「子爵、あれが全てです。帳簿に間違いはありません」

「嘘をつけ!貴様らが小規模な猟をしているのは分かっているんだ!」


 ありもしない見栄を張って怒鳴る眼前の小男に、しかし旅団長は少しも動じることはできない。なにせ今年に入ってこのイレギュラーな訪問は5回目だ。それも話す内容は台本でも用意されているのかと思うほど一字一句同じと来た。呆れるしか無い。

 傍に控える副官らしき大柄な男も、心なしかうんざりしている様に見える。


 副官に忠誠心がないのでは、この男は近い内に失脚するだろうなと想像しながら子爵の怒鳴り声を聞き流していると、喋り疲れたのか「このことは本島にしっかりと報告させてもらうぞ!」と捨て台詞を残してギルドの応接室を後にした。

 この台詞はすなわち野党が去り際に「覚えていろ」というのと同じであり、つまり今回もほとんど沈黙を貫いたこちら側の勝利である。


「まったく…これだから貴族ってのは…あんな様子じゃあ、あの異界からの客を隠しておいて正解だったな」


 盛大にため息を吐き、応接用の上質なソファーから腰を上げる。

 早くあの鉄の鳥とフィーの所に戻ってやろう。とくにあの鳥に関して会ってから今までゆっくりと話せていない。まだ混乱も不安も多いだろうから、まずはそれを和らげてやらねば。


 そうして彼は部屋のドアに手を伸ばす。

 


 ………窓の外から聞き耳をたてていた、招かれざる客の存在に気づかぬまま。





頼みがあるんだが、主を急かさないでくれ。死ぬほど疲れてる(大嘘)

続きが思い浮かびませんでしたッ!よって今回はこんなに短く・・・ 


ハイ、ということで領主登場です。お約束のクソ野郎ポジです。だいたい貴族ってこういうものだと思うのですよ。

さて、特に注釈とかはないつもりです。ご指摘ありましたらお寄せください。

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