もちろん、進路。
衝撃の(2度目の)生誕から早9年。
「あああ、、お腹痛すぎるうう、、」
本日は、国立外国語学院中等部入学試験日。
あれから、転生だと気づいた瞬間に戸惑った以外は特に問題なく年齢を重ね、気がつけば9歳になっていた。
転生したのはいわゆる剣と魔法の世界とやら。
言い換えるならば戦闘狂とドMと弱者の世界。
都市部以外の道路の整備はなっておらず、インフラも何もあったものではない世界では、勿論クレジットカードも何もなく、キャッシュレスとはなんぞ、という状態だった。
その代わり、魔力とやらが多い上に扱いに優れた者は何もない空間に収納する事ができたり、貴族は顔パスで後払い、領主ならば税額から差し引くなどが可能であったりと持つ者に優しい世界でもあった。
幸い生まれたのは有力貴族の中でも上位かつ次男、そして魔力保有量も多いというハッピーポジションだった為難なく生きてこられたが、これが庶民だったらさぞ苦しんでいた事だろう。
昇進とか無縁で、お金に恵まれなさそうだから。
難なく、難なく、そして難なく生きてきたが、生誕15分後に冷静になって瞬間は悲しさで死ぬかと思ったものだ。
突然泣き出す私と、戸惑う兄に、困った顔をする母。
母は兄に「赤ちゃんとはこういうものよ」と優しく説いていたがそこではない。
だって本当に悲しかったんだ。
前世で積み上げた財産全てとお別れしたことが。
「おぎゃあああぁぁあぁあ!!!
(頑張って働いたのに!
米株も円安で売却したから儲け出てたのに!
積み立てた投資信託!
くううううーー!!!)」
全力で資産を増やし、早期リタイアし、死んだようにのんびり過ごす老後を目指していたのに、全て台無し。
こんな事が許されていいのか。
そんな事を思った0歳時代。
徐々にこの世界を知る5歳。
そして進路を選択する事のできる9歳。
この世界を知れば知るほど強く思うようになった。
ーーそうだ、この国を変えればいい!
全ては私が稼ぐために!
意気込んだはいいが、この世界はどの国も他国との交流が希薄で、祖国である帝国ーリスインに留まっていては何も成せないと思い、前世から通算2度目の中学受験をすることになったのである。
国立外国語学院中等部とは前世では中学校にあたるが、ここは魔力の関係か発達の早い者も多く、そういった者がより早くから学べるように、と比較的低年齢層から入学可能となっている。
「さーてと。頑張るかー!」
この時、大人しく資産を食い潰す選択をしておけば、楽に生きることができたのだろう。
すべての行動が、すべての選択が、未来を為す。
変わりゆく世界で、変わらない事がどれだけ苦しいことかを知るのはそう遠くない話だ。