腕が折れたああぁぁっ
グロそうでグロくない。
『腕が折れちまった……。それでもあいつが待っているんだ!負けてられるかぁぁっ!』
そんな描写はファンタジーのみならず、格闘漫画、スポーツ漫画にだってあろう。場合によってはギャグマンガにだって。そんくらい軽く酷いって分かる事。あるあるである。
「きゃははは」
「こいつ、生意気だなぁっ」
「あうっ、あうっ」
公園で遊んでいる無邪気すら知らない子供達は、
「腕折ってやろうぜ」
「滑り台から突き落そー」
それでも生きていると、だけは認知するくらいのこと。
深くは考えず、罪悪感なんてものも抱けていない。まさにそんな時だった。
バキッ ベキッ
「いたっ!?」
「あっ!?」
「へっ…………」
間一髪のところでまだ大人と子供の中間の、高校生の1人が割って入った。助けたかに思えたが、
べチッ
「いたっ」
虐められていた子も平等に制裁。
「虐めはダメだぞ!」
「なんだよ、おっさん!」
「ぶ、打ちやがったな!ママやパパ、先生、警察に言いつけてやる!!」
「好きにしろ」
この高校生の名は、相場竜彦。たまたま、コンビニで買い物をしてから、この公園に着くと。じゃれている子供達が行き過ぎているところを見かけ、大人的に止めてやった。
「腕を折るって言ったな?ダメだぞ!」
「だって、こいつが……」
「そんなのはどーでもいいんだよ。虐めをする原因なんか聞きたくねぇ」
虐めも色々あるから。
「虐めはハブるぐらいにしとけ。お前も、ハブられてメソメソするな。嫌な奴を判断するくらいの知能も磨かないと、この先困るぞ」
「えっ……」
「もちろん、仲直りするって事に間違いはないさ。でも、そーしなくても社会もお前も、回っている。……この辺は難しいか、お前等には」
お説教なんか聞きたくねぇと、不満気な子供達であったが。
骨折については自分自身も相場にもあったことだった。
「お前等、自分の右手が使えない事を想像した事あるか?松葉杖がありゃ、足の骨折なんか大した事ないと思ってるのか?」
「!…………」
「片手が使えないだけで。ゲームの操作は上手くできないし、運動もロクにできず。勉強だって、一苦労だ。たかが腕の一本を折るってのは、約3週間。自分の時間が無くなる事なんだ。足となりゃ、お前等がこの公園まで来た自転車にすら乗れないんだ」
「他人を想像して、どうだって言うんだ!」
「人を思いやれって事を言ってんだ!たかが鈍くさいだ、無能だくらいで。虐めなんかやってたら、キリねぇーんだよ。ソッとしておいてやるのと、ハブるの区別もできないとダメだぞ!」
それが無くなればいいと思いたいが、そうはできない。
人がそれぞれあるからで。
個人として、強く思うのなら。
「俺は虐めなんかしねぇ。そうやって、1人1人思い合えば。陰湿な虐めもただの無邪気な争いになる。俺が今、割って入ったのはそーいう心構えからだ」
「おじさん……虐められっ子だったの?」
「おじさん、高校生だからな。ま、つい最近まで両方やってたぞ。お前等くらいの子供の頃は権力争いだもんな。公園では仲良く遊べよ、怪我に気をつけてな」
「……ありがとう、おじさん」
「おう。ま、そこにしばらく座ってるけどな」
そーいって、相場はベンチに腰掛ける。先ほどコンビニで買って来た飲み物を楽しみながら、子供達の遊びを見て和むとする。
「静かになったところで、昼間からビールと行くか」
「…………」
「虐めを止めての一杯。良い仕事をしたぜ!」
「警察を呼ぶね」
その後、相場竜彦は未成年飲酒でしばらく、警察に事情聴取と説教をされるのであった。
最近の子供はスマホも持ち歩いている上に、警察もすぐに呼べるとか有能過ぎるなぁーって、相場は答えていた。
虐めも良くないけれど、未成年の飲酒も良くないよ。