表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
モンスターセイバーズ  作者: 短髪
9/16

73話~85話 闇の組織ザーク編


73話/暴れる別次元のモンスター


オーロラマウンテン中央エリア。

本田:「っ・・どうなってんだ。」

覇王:「あれはモンスターなのか?」

オルフェバンデモンと名乗るモンスターを追い払い、オーロラマウンテンの奥に足を踏み入れた覇王と本田。しかし、一難去ってまた一難と言うべきなのか・・彼らの目の前には巨大なモンスターが立ちはだかっていた。

ダークモンスター:「グルルル・・。」

覇王:「熊ぐらいの大きさはあるんじゃないのか・・しかも、一匹じゃない。」

本田:「今までのダメージを負った状態でこいつ等を相手にしなきゃいけねぇのかよ。」

覇王:「引き下がるわけにはいかない、こいつ等が山を下ることだけは避けなければ。」

ダークモンスター:「グォォオオオッ!!」

本田:「だな・・この島に住んでいる人たちを危険な目に合わせるわけにはいかない。」

覇王:「一体一体相手にしていてはキリがない。体力を温存する為にも広範囲攻撃で一気に攻めるぞ。」

本田:「分かった!ギャラクシーボルテックス!!」

ビリリリィッ!!

本田の背中から流れ出した電撃は地面を通ってダークモンスターたちに直撃する!!

ダークモンスター:「ギャァァアアッ?!!」

ビリリリッ!!

本田:「っし!先手必勝!!」

覇王:「・・本田、よく見ろ!」

本田:「なっ?!・・傷を負った部分が再生してやがる・・。」

覇王:「!自己再生能力・・まさか、こいつ等全員そうなのか?」

本田:「くそっ、ギャラクシーボルテックス!!」

ビリリリィッ!!

ダークモンスター:「ギャァァアアッ?!!」

覇王:「な、なんて回復速度だ。攻撃を受けた瞬間から皮膚が再生を始めてる・・。」

本田:「だったら・・!」

タッ!

本田は地面を蹴り上げ、正面にいるダークモンスターとの間合いを詰める!

本田:「スパークリングサンダー!」

本田は両手から電気エネルギーを放ちながら猛攻に出る!

本田:「はぁぁぁっ!」

ガシッ!

本田:「?!」

ダークモンスター:「グルルル・・。」

本田:「お、俺の拳を受け止めやがった・・。」

驚きを隠せない本田の隙を突くようにダークモンスターの爪が本田を引き裂く!

ズバババッ!

本田:「ぐああっ!」

覇王:「本田!」

本田:「大丈夫っ・・こいつ等、自己再生能力だけじゃない。反射速度も優れてやがる、俺のスパークリングサンダーを初見で見切るなんて。」

覇王:「戦闘に特化した兵隊と捕えた方がいいかもしれない。こいつ等は俺たちの知っているモンスターとは違う。」

ダークモンスター:「グォォオオオッ!!」

本田:「くそっ・・体力温存とか言ってらんねぇ!」

覇王:「その構え・・まさかさっきの・・!」

本田:「究極必殺技・スパークヘルハリケーン!!」

本田が右手を突きだして手を広げると、落雷が竜巻の如く回転しながら地面をえぐりつつダークモンスターに向かっていく!

シュゥツ・・ドカカカッカッ!!

ドッカァアン!

覇王:「うおっ!」

本田:「やったか?」

バシィィッ!

本田:「うぐっ?!!」

覇王:「なんだ・・今の音・・?!」

バシィィッ!

覇王:「うぉっ?!」

(背中を何者かに叩かれた?)

覇王:「おい、本田!大丈夫か?!」

本田:「大したことねぇ。けどまずいんじゃねぇか、この状況。仮に一体仕留めたとしてもこいつ等は自己再生しやがる。どんなに強力な技を放ってもこのままじゃいずれ俺たちの方が追い込まれっちまう、どうしたら・・。」

覇王:「・・・。」

本田:「おいおい、こんな時に黙り込むなよ。」

覇王:「そうだ・・倒せないのなら倒さなければいい。」

本田:「ハァ?何を訳の分からんことを・・。」

覇王:「イジゲンホール!」

覇王が左手を伸ばしそう叫ぶと、敵のモンスターのうち一体を透明の球体が包み込んだ!

本田:「な、なんだ・・?」

覇王:「球体の内側からはいかなる攻撃も通さない、まずは一体。」

パチン・・ドカァアン!!

覇王が指を鳴らすと同時に球体が空中で爆破する!

本田:「ど・・どうなってんだ。」

覇王:「プロミネンスカタストロフィの応用技だ。プロミネンスカタストロフィは、空気中で目には見えない球体を使って酸素を閉じ込めている。原理として説明するなら、その酸素を閉じ込めた球体は閉じ込めると球体内で火を放つ。結果、温められた酸素は膨張して空爆を起こす。これがプロミネンスカタストロフィの原理だ。そしてその球体は大きくできる。狙いを定め、対象物を閉じ込めることで同じ原理を起こすことができるのがイジゲンホールの正体・・だが、調整がシビアだ。強力な技だが、複数体を集中して狙い撃ちすることはできない。」

本田:「すげぇ・・。」

覇王:「!・・本田、見てみろ。」

本田:「?!・・目をちょっと離した隙にどこに行きやがったあいつら・・。」

本田が見渡すと,覇王が消し飛ばしたモンスター以外の姿がどこにも見当たらなかった。

本田:「まさか・・撤退したのか?」

覇王:「この数分間でそんな高速移動ができるのなら俺のイジゲンホールは不発に終わってる。」

本田:「ってことは・・.]

覇王:「来るぞ、上だ!」

ダークモンスター:「グォォオオオッ!!」

本田:「覇王!」

覇王:「カイザーデルタブレイカ―!」

本田:「ギャラクシーボルテックス!」

ドカァァアン!!

覇王:「分かってるな?奴らにはこの程度の攻撃、牽制にしかならん。すぐに態勢を立て直してくるぞ!」

本田:「ごちゃごちゃと五月蠅いな。よーはお前がイジゲンホールで奴らを確保できるようにアシストすればいいんだろ?やってやる!」

タッ!

本田:「超必殺技・イナズマボルテッカー!!」

シュッ!ビリリリッ!!

覇王:「体中で電気を暴発させている?!」

本田:「驚いたか?俺の速度強化技だ。高速移動とスピードに乗ったスパークリングサンダーなら見切るのは至難の業だろ?くらえ!!」

ビリリリッ・・ドカァァアン!!

ダークモンスター:「アガガ・・ッ・・。」

本田:「口元にお見舞いしてやったぜ、これでこいつはしばらく感電して動けない。覇王、今だ!」

覇王:「!・・。」

覇王の中で体内から電気を放出する本田とこれまでのダークモンスターの動きが重なる・・。

覇王:「・・そういうことか。」

本田:「おい覇王!」

覇王:「・・分かってる、イジゲンホール!」

覇王が左手を伸ばしそう叫ぶと、敵のモンスター 一体を透明の球体が包み込んだ!

覇王:「フン!」

パチン・・ドカァアン!!

覇王が指を鳴らすと同時に球体が空中で爆破する!

本田:「よ~し、この調子で・・。」

覇王:「その必要はない。本田、奴らの弱点が分かった。」

本田:「え?」

覇王:「見てろ、超必殺技・プロミネンスカタストロフィ!!」

ドカァン!ドカァン!ドカァン!!

ありとあらゆる箇所で空爆していく中、ダークモンスターたちは身を伏せる!!

覇王:「今だ!」

タッタッタッ!!

覇王は一気にダークモンスターのそばに駆け寄る!

覇王:「奥義・・。」

ダークモンスター:「・・?!」

ダークモンスターが上は見上げると同時に無理矢理口をこじ開けられ、ロイヤルセイバーを中に突っ込まれる。

覇王:「お前たちの弱点・・それはここだ。ロイヤルセイバーッ!!」

ズバァッ!!

ダークモンスター:「ア・・ガァ・・ッ・・。」

ドサッ!!

覇王は口の中から突き刺したロイヤルセイバーを一気に引っこ抜く。

覇王:「お前たちに備わっている能力は自己再生じゃない、超活性だ。」

本田:「!」

覇王の言葉にダークモンスターたちは固まる・・。

覇王:「恐らく圧倒的な活性速度で自然治癒力を極限まで高めていたんだろう。だが、活性の力が発動するのは体の外部に支障が出たときだけ。そうだろう?つまり外部からの攻撃以外では活性の力は発動しない、お前たちの弱点は内側、分かりやすく言うなら体内ってことだ。本田の体内から発する電気エネルギーがヒントになった、礼を言うぞ、本田。」

本田:「そうだったのか・・あ!だからさっきの奴は俺の拳を受け止めたのか、俺の拳から発する電撃が体内に流れ込むのを防ぐために・・。」

ダークモンスター:「グルル・・。」

バァン!バァン!バァン!

本田:「なっ・・!」

残りのダークモンスターたちがドミノ倒しのように次々と爆破していく・・。

覇王:「自滅・・だと・・。」

本田:「なんなんだこいつら・・こんな力も備えていたのか。」

覇王:「外部に情報を漏らさないために備わっている自己爆破・・か。なんてモンスターだ。」

本田:「剣崎たちに伝えた方がよくないか?」

覇王:「ああ。これはまずい・・。」

本田:「こういうことを想定して造られたモンスター・・だよな?どう考えても。」

覇王:「このまま調査を続けよう。俺たちは次元の狭間を何としても見つけ出す、向こうは竜牙たちに任せるしかない。大丈夫だ、仮にさっきのモンスターたちが向こうに現れたとしても弱点を知った上で戦えばさほど討伐は難しくない。」

(竜牙、俺たちの知らないところで何かが動いている・・気をつけろよ。)


74話/引き継いだ覚悟!


黒炎:「ちくしょう、あのヤロウォ・・思い出しただけでも腹が立つぜ。」

獣牙:「ハデス、余計なことは考えるな。今は命令をこなすことだけを考えろ、失敗は許されない。」

黒炎:「分かってるよ。生贄となる人間は多いにこしたことはねぇ。」

男:「うわぁぁぁ!助けてくれぇぇっ!!」

黒炎:「るせぇ!デスハデス!!」

子:「ママ~っ!!」

女:「私、まだ死にたくないよぉぉっ!!」

獣牙:「死ぬのではない、転生するのだ。私たちの生贄としてな。」

スペード:「おい!てめぇら何してんだ!!」

獣牙:「おや、君は・・。」

スペード:「!誰かと思えばあん時の・・!!」

獣牙:「銀河スペード、よくここが分かったね。」

スペード:「こんだけ騒ぎになってりゃ様子ぐらい見にくるだろうが、セイバーズならな。」

花音:「ちょっ、銀河!何してんの、早く逃げるわよ!!」

スペード:「花音、お前は先に行ってろ。ここにいたら危険だ!」

花音:「はぁ?だからあんたも危ないでしょ!」

スペード:「いいから!全力でここから離れるんだ!!」

花音:「っ・・早く来なさいよ・・。」

タッタッタッ!!

獣牙:「彼女から目を離して大丈夫かい?ここら一帯には我らの(しもべ)が沢山潜んでいるのに。」

スペード:「っせぇよ!言っておくが、日本の警察舐めてると痛い目を見るぜ?それにあいつはヤワな女じゃない、必ず逃げ切れる。それよりもこんな大参事を招いてくれたお前たちを野放しにはできねぇ!」

黒炎:「ハァ?こいつ、俺らのことを舐めてんのか?」

獣牙:「待てハデス。」

黒炎:「あ?」

獣牙:「彼は私が殺る。」

黒炎:「!・・くっくっく・・あっはっは!!珍しいじゃねぇか、お前が()る気になるなんてよォ。」

獣牙:「かかってくるがいい、銀河スペード。」

スペード:「言われなくてもそのつもりだ!」

黒炎:「デストロイが燃えるなんて何年ぶりだ?こりゃあ俺もうかうかしてらんねぇな。」

速水:「そうはさせない!」

黒炎:「あ”?」

速水:「お前たちの好きにはさせない。」

黒炎:「誰だ、お前?」

速水:「速水智也。モンスターセイバーズだ!」

黒炎:「速水ィ~?クククッ・・こんなチビがか?面白れェ、いいぜかかって来いよ。相手をしてやる。」

速水:「すごい殺気だ・・瓜生の時は違う、純粋な殺意!これが部長の言っていた男!!」

(いや、ひるんでいる場合じゃない。ここで僕と銀河先輩が食い止めないと大変なことになる!)

数日前・・。

速水:「どうしたんですか部長?」

竜牙:「悪りぃな速水、急に呼び出して。」

速水:「それは構いませんけど、何か大事な話でも?」

竜牙:「今度の三連休なんだけど、長崎にいくことになったんだ。」

速水:「長崎?行って来たらいいじゃないですか、どうしてわざわざ僕にそんなことを?」

竜牙:「さっき覇王から連絡があった。オーロラマウンテンで複数のモンスターと出くわしたってよ。そして、そのモンスターたちは以前、オーロラ島で俺と夏海、スペードが戦ったモンスターと同じ能力を備えていたらしい。俺にはこの二つの出来事が偶然とは思えない。あくまで憶測でしかないけど、これから先・・今までとは違う強大な力を持った奴らがきっと俺たちの前に現れるはず。」

速水:「強大な力?」

竜牙はうなずく。

竜牙:「そいつらに対抗するために俺も手段を選んでる場合じゃないと思ってよ、ちょっと稽古をつけに行くつもりだ。」

速水:「待ってくださいよ、わざわざ長崎にまで行く必要があるんですか?」

竜牙:「そこにはじいちゃんがいる。俺の祖父も剣道をやっていてさ、よーはそこで修行をつけてもらおうってことだよ。けどな?ただの修行じゃない、じいちゃんの技を身につける為の修行だ。」

速水:「でもその技、モンスター相手に通用するんですか?」

竜牙:「通用する。幼い頃に一度だけあの技を見る機会があったんだけど、あれは本当にすごい技なんだ。とは言っても去年まで会得するなんてできない、人知を超えた技だと思ってた・・でも今の俺は違う。」

竜牙はまぶたを閉じ、そっと剣舞眼を開く。

速水:「剣舞眼・・。」

竜牙:「そうだ。今の俺にはこの剣舞眼がある。この目であの技を見切ることができればきっと習得も夢じゃないはずだ。」

速水:「・・・わかりました。留守の間、モンスターの討伐は僕が引き受けます。」

竜牙:「あれ?まだ何も言ってないけど・・。」

速水:「わざわざ僕に話す理由がそれ以外に思いつきませんよ。」

竜牙:「ありがとう、助かる。」

速水:「それよりその修行、本当に三日間で終わらせることができるんですか?」

竜牙:「分からない・・でもやるしかないんだ、あいつとの戦いにも備えないといけない。」

速水:「・・・あいつ?」

竜牙:「たとえ終わりが見えなくても行かせてくれ。」

速水:「部長・・。」

竜牙:「分かってるよ、俺が長崎にいる間ここにいるセイバーズは速水とスペード、白鳥だけだ。戦力が不足していることは重々承知している。でもだからこそ俺は行かなければいけない、このままじゃ飲み込まれてしまう気がするんだ、これから来るであろう強大な力に。」

速水:「どこまでやれるか分かりませんが、セイバーズである以上全力を尽くします。だから部長は一刻も早くその技を身につけて福岡に戻って来て下さい。敵が部長の言うように強敵なら尚更です。」

竜牙:「ありがとう。」

速水はうなづく。

速水:「約束してください必ず戻って来るって。」

竜牙:「ああ、約束する!」

速水:「そうだ、絶対にここで食い止めるんだ。でなきゃ部長に合わせる顔がない!」

黒炎:「手加減しねぇぞ、ガキ。」

速水:「来い!」

黒炎:「デスハデス!」

黒い炎が速水に向かって放射される!

速水:「うおっ!!間に合うか・・いや、間に合わせる!!」

速水はハイゼルセイバーを持ち、構える!

速水:「氷河転結絶対零度!!」

ハイゼルセイバーから溢れ出る冷気が黒い炎を一気に凍らせていく!

黒炎:「ちっ、物体を凍らせる技か。」

速水:「ハヤブサランニング!」

シュッ!シュッ!!

黒炎:「?!」

(は・・っ?!)

速水:「ハイゼルセイバーァァッ!!」

カキン!

速水:「う・・受け止めた?!」

黒炎:「っぶねぇ~おまけに足も素早いと来たか・・お前との接近戦は骨が折れそうだ。」

黒炎は腰につけている二本のライフルを持ち構える。

黒炎:「デスペラードブラスター!!」

ドカカカカカカッ!!

速水:「ぐあっ!!」

黒炎:「おいおい、この程度の攻撃でくたばるのは勘弁してくれないか?」

速水:「痛っ・・僕はまだくたばってない!ハイゼル・・「奥義・エンドレスブーメラン!!」」

シュルルルルッ!!

速水:「?!」

黒炎:「そうこなくちゃ面白くないぜ!」

速水:「超必殺技・ハイパーブリザード!!」

カチカチカチ・・ッ。

黒炎:「う、嘘だろ・・あれだけでけぇブーメランを一瞬で凍らせやがった。どうなってやがる・・。」

凍結したブーメランは地面に落下する。

カタン・・カタン、カタン・・。

速水:「ハイパーブリザードは空気中の水分を凍らせることができる技だ。」

黒炎:「ハァ~なるほどな。空気を巻きつけて回転しているブーメランは、何もせずとも冷やされた空気によって表面が凍結していくわけだ。にしてもわずかな時間でここまで俺のエンドレスブーメランを凍結させるとはなァ。やるじゃねぇかガキ・・。」

速水:「ハイゼルセイバーはイメージを力に変える剣・・ハイゼルセイバーの刃を僕の両手、両足の爪にイメージ・・イメージ・・よし!」

黒炎:「イービルブレイカ―!」

黒炎は速水の影に向かって拳を叩きつける!

バシィィツ!!

速水:「っ・・動けない・・。」

黒炎:「俺に拳を叩きつけられた影は一定時間影そのものが消える。その際、影をつくっていたてめぇの体は身動きができなくなるぜ。これでてめぇの足は封じた、袋の鼠ってやつだ。」

速水:「それは・・どうかな?」

黒炎:「あ?」

速水:「そんなもの、野に放たれた狼が引き裂いてやる!X技・ブレイクウルフスマッシュ!!」

速水は狼のように足の爪を尖らせ、影を作っていた地面をかち割っていく!

ゴゴゴゴゴッ!!

黒炎:「・・・・どうなってやがる、奴の足の爪が大きくなっていく・・。」

速水:「はぁぁぁっ!!」

ガシッ!スタッ!!

タッタッタッ!!

黒炎:「っやべぇ・・デスハデス!」

速水:「遅い!」

ズババババッ!!

狼の爪のごとく変化した速水の両手、両足の爪が一気に黒炎との間合いを詰め、胴を引き裂いた!!

黒炎:「ぐあああっ!!」

速水:「これが僕の新しい力だ。」

黒炎:「痛ってぇ・・やってくれるじゃねぇか、速水智也ァ。」

速水:「!こいつ、体中血まみれだっていうのに・・まだ。」

黒炎:「へっ、力をセーブして戦うのは止めだ。だっておめぇ強ぇもん。」

速水:「力を・・セーブ?は・・・見栄を張ってるつもりか?」

黒炎:「んなわけあるか。さぁ、ウォーミングアップはここまでだ、てめぇが俺の本気(マジ)にどこまで食らいついていけるか楽しみだぜ。」

(小池との戦いん時はブラッディ様の目が怖くて使えなかったが、今ならあの技(・・・)も心置きなく使える。さぁ、暴れてやるぜぇ!)

ゾクッ!

速水:「くそっ、なんなんだコイツ!いやな予感がする・・部長、早く戻って来てください!!」


75話/最強の究極必殺技と完全解禁の力


速水とハデスが交戦している頃、長崎に到着した竜牙は・・。

竜牙:「おい、いい加減姿を見せろよ。」

ハンター:「あらら・・バレちゃってたか。」

竜牙:「なんで俺の後を付けてきてんだよ。」

ハンター:「そう怒らないで・・ね?ほら、気になるじゃないか。おじいさんが扱える秘伝の必殺技。」

竜牙:「興味って・・お前なぁ~。ってか、なんでお前までいるんだよ白鳥。」

白鳥:「す・・すみません。」

ハンターの後ろから恐る恐る顔を出す白鳥。

竜牙:「言ったよな俺、今の俺たちには戦力が欠けているって。スペードと速水だけにあっちを任せるわけにはいかないだろ?」

白鳥:「ごめんなさい。でも私も私なりに考えて行動を起こしてます。思ったんです。今よりももっと強くならなければこれから先、きっとみんなの足を引っ張っちゃうって・・そんな時に先輩が長崎に修行をつけにいくって話を聞いちゃったから・・私も一緒についていけば、あわよくば先輩のおじいさんに修行をつけてもらえるかもしれない。そう思って後をつけていました。ごめんなさい!!で、でも強くなるためにはなりふり構っていられないと考えた上での行動なんです。お願いします、私も一緒に行かせてください!」

竜牙:「ったく・・どうなっても知らないからな。」

白鳥:「あ、ありがとうございます!」

竜牙:「そうこうしているうちに着いたぜ。」

白鳥:「お、大きい・・。」

竜牙:「ここが親父の実家だ、じいちゃんはここにいる。」

ハンター:「日本古来の家って感じだね。」

竜牙:「築四十年のボロ屋敷さ、先祖代々引き継いでいるらしい。」

白鳥:「そうなんですね・・歴史のある家なんだ。」

誠一:「竜牙?」

竜牙:「あ、じいちゃん!」

誠一:「はるばるよう来たのォ~どうしたんじゃこんな昼間っから?」

竜牙:「大事な用があって来たんだ。」

誠一:「ほう・・。」

白鳥:「あ、あの・・。」

誠一:「お!なんじゃ竜牙、ガールフレンドか?」

竜牙:「ちが「はい!先輩のガールフレンドの白鳥百合花っていいます!!」」

誠一:「ほっほぉ~!べっぴんさんじゃのぉ~。」

竜牙:「おい、白鳥!」

白鳥:「あれ?違うんですか?」

竜牙:「お、お前なぁ~。」

白鳥:「ガールフレンドですよ。が・あ・るフレンド!ほら、女の子の友達、ね?一体何が違うんですか~せ~んぱい?」

竜牙:「はぁー。」

誠一:「そちらのお兄さんは?」

ハンター:「ハンターと申します。どうぞ、お構いなく。」

誠一:「今日は賑やかじゃのぉう、立ち話もあれじゃし上がっていきなさい。」

白鳥・ハンター:「「おっ邪魔しま~す!!」」

竜牙:「ほんと調子のいい奴らだな・・ったく。」

4人は畳に腰を掛ける。

誠一:「それで、話というのは?」

竜牙:「うん。率直に言うと俺にあの技を教えてほしいんだ。」

誠一:「あの技?」

竜牙:「そうあの秘伝の技だよ。」

誠一:「。」

竜牙:「じいちゃん?」

誠一:「事態は深刻のようじゃな。」

誠一はぽつりと小言を呟く。

ハンター:「え・・?」

誠一:「いつになく真面(マジ)(ツラ)を見せよって・・冗談を言っとる訳じゃないみたいじゃな。」

竜牙:「一朝一夕で会得できる技じゃないのは昔じいちゃんに散々教えてもらってたから、分かってるよ。それでも、友達を救うためにはあの力が必要なんだ。俺にあの技を教えて下さい。」

誠一:「友人を救う為・・下手すれば人の命をも奪いかねんあの技を友人を救う為に会得したいだんてな。どっかのバカ息子を思い出すわい、ついてきなさい。」

竜牙:「え、いいのか?」

誠一:「何があったのか深くは聞きまい。どちらにせよ、老いぼれのわしにできることは孫の背中を後押しすることぐらいじゃ。白鳥ちゃん、君も同じような(ツラ)をしとる。一緒に付いてくるといい。」

白鳥:「!おじいさん・・はい!!」

ハンター:「あのおじいさん、なぜあそこまで落ち着いているんだ?いきなり押しかけてかつ無茶苦茶なお願いをした剣崎くんに対して微動だにせず、あっさり用件を聞いちゃうんて。それに事態は深刻というあの言葉・・。まるでこちらの行動を呼んでいたといわんばかりの言動だ。何もお願いしていないはずの白鳥さんにも分かっていたかのように手を差し伸べてあげているし・・あのご老人は本当に何者なんだ?」

光ヶ丘学院屋上。

小池:「いいのか、あいつら作戦をそっちのけで交戦を始めたぞ。」

ブラッディ:「情に尊い男ね。目の前であなたの住んでいた町が壊滅状態に追い込まれているのよ?それに、ハデスたちと交戦している彼ら・・かつでの仲間だったんでしょ、少々薄情なんじゃないかしら?」

小池:「今の俺にはやらなければならないことがある。そんなことに構っている余裕はない、それにだ。あえて忠告をするならば、あいつらをあまり舐めない方がいい。」

ブラッディ:「何それ?私の手下がやられるとでも言いたいの、共士郎?」

小池:「どう解釈しようとあんたの勝手だ。好きにしろ、俺は魔王の力さえいただければそれでいい。」

ブラッディ:「自分勝手な男よね。」

小池:「フン。お前に一つ聞きたいことがある。ハデスやデストロイ・・あいつらは普段力をセーブしている。そうだろ?俺には分かる。なぜ力を出し惜しみする?ハデスとの戦闘がいい例だ。奴は俺と交戦している時、力を抑えて戦っていた。」

ブラッディ:「気づいていたのね。そうね、簡単に説明するならば、ハデスたちの身体がハデスたち自身の力についていけないのよ。力を全開放してしまえば身を滅ぼすことになる、だから彼らは普段リミッターをかけているのよ。」

小池:「そういうことか。」

ブラッディ:「今までは・・ね?」

小池:「?」

ブラッディ:「魔王復活は目前・・ここまで来て失敗は許されない、だから彼らに命じたわ。自分の身の危険を感じる相手と交戦せざる負えない場合は、全力でかかっていい・・ってね。」

小池:「部下を命の危機に陥れてまで・・。なぜそこまでして魔王の力をこの世に甦らせようとしている?」

ブラッディ:「力無きものが涙を流すこんな世界・・そんなものに存在価値はない。つぶれてしまえばいい。」

小池:「・・・!」

ブラッディ:「あと少しなのよ・・あと少しで・・。」

小池:「何があったんだ、何がお前をそこまで突き動かす?」

ブラッディ:「あら?私に興味を示すなんてどういう風の吹き回し?」

小池:「答えろよ。」

ブラッディ:「瞳仁・・知ってるでしょ?」

小池:「たしか・・かつて内閣総理大臣だった人の名前だよな。」

ブラッディ:「私の父よ。」

小池:「?!何を言って・・お前、モンスターじゃないのか?」

ブラッディ:「瞳舞・・これが私の本名。6年前、自らの責任から逃れるため自殺した憎き父の・・娘・・。」

小池:「お前、まさかその逆恨みで・・。」

瞳:「違うわ。私が恨んでいるのはこの世界そのもの・・あぁ~憎い。」

小池:「この世界・・そのもの?」

瞳:「モンスターワールドが確認されたのは9年前、セントラル王国という異国の地で突如として出現した次元の狭間がきっかけとされているわ。そこから出てきた超生物・・モンスター。王国はこの未知なる生物に対抗するべく、特殊な訓練を受けたハイソルジャーたちを王国に派遣した。これが後の初代モンスターセイバーズたち・・名をキングダムセイバーズ。」

小池:「ハンターたちのことか。」

瞳:「それから三年の月日が流れたある日、日に日に数が増えていくモンスターたちを前にハイソルジャーたちも苦戦を強いられ始めていた頃。王国は未知なる生物を止めるべく次なる手に出た。それは同盟を結んでいた日本に協力を要請し、戦力を補強すること。その数日後、セントラル王国の国王に会うべく視察にきた父はとんでもない化け物と遭遇してしまった。」

小池:「化け物?」

瞳:「化け物の名は最強最悪のモンスター、デストロイヤ。」

小池:「デストロイヤ・・?」

瞳:「殺せない最強のモンスターと言った方がわかりやすいかしら?」

小池:「なっ・・!」

瞳:「デストロイヤからの逃げる時間を確保するために父は自分の娘をそっと王国に残し迎えのジェット機で日本に飛び立った。」

小池:「は・・・なんだよそれ・・。」

瞳:「目の前に超巨大な生物がいたら必死に逃げるわよね?それを逆手にとったのよ・・おまけに当時に私はまだ小さい、全長が東京タワーほどの高さを誇るデストロイヤには打ってつけだったんでしょうね。私が逃げ回ればデストロイヤの注意が私にいく。」

小池:「自分の娘を・・身代わりに・・。」

瞳:「モンスターのことは公にこそならなかったものの、自分の娘を犯罪者に明け渡して死から逃れた最低な男として世間から父は散々な扱いを受けたそうよ。もちろん事実とは異なる虚偽の情報、でも世間はそれを真実として取り扱い、父を追い込んでいったらしいわ。まぁ私も人づてに聞いた話だし、本当かどうか定かではないんだけど。でもね・・真意は違えど、奴がしたことは親として何より人として最低で卑劣なことよ。己の保身のために私を売ったのよ・・あいつは!」

小池:「・・・そうかお前も・・。」

瞳:「無様なモノよね!けど私が何よりも醜いと思ったのはこの世そのもの。強い立場の者、力がある者が弱い立場にいる者、力無き者を支配する。幼い頃の私に焼付いた教訓は今でも決して消える事のない刻印のようなものになってる!そしてその憎しみは、大人になっていくにつれて深くなる。一度傷ついた心の傷は綺麗に元通りにはならない。傷跡は消えないのよ・・っ。人をあざ笑い、誰かを蹴落とし、己の欲を満たす。そんな世の中、もううんざりなのよ!!欲望の塊っ・・人間というものがいなくなれば争いは生まれない、私がすべてをリセットする。」

小池は他人事のように聞こえず、そっと拳を握りしめる。

小池:「悪りぃ・・思い出したくもないことを沢山喋られてしまった。そうか、お前がザークに入ったのにはそういう理由が・・。」

瞳:「入った?何を言ってるの?私が作ったのよ、ザークという組織を。」

小池:「なに?」

瞳:「デストロイヤは私を口の中に含み、モンスターワールドに戻っていったわ。けど、そこで待ち構えていたのはあのキングダムセイバーズたち。彼らがデストロイヤと命がけで交戦している隙をついて私は奴の口内から抜け出した。そして、未知の世界に足を踏み入れた私の目の前に現れたのは古い文字で書かれた碑文だった。」

小池:「?」

瞳:「言い忘れてたけど、モンスターワールドっていうのはエリアで区切られているのよ。そしてデストロイヤが潜んでいるデストロイヤエリアは人間界で言うオーロラマウンテンと同じ位置に存在する。」

小池:「なっ・・!」

瞳:「あなたにも説明したでしょう、ここに来たばかりの時に。」

小池:「モンスターたちは次元の狭間を通してこっちの世界にやってきている。って話か?」

瞳:「そうよ、つまり次元の狭間の正体っていうのはデストロイヤの強すぎる力によって生まれた時空間の亀裂。そして、その仕組みに気づいた私は次元の狭間を通して色々なところに飛べることを知った。デストロイヤの口内にいたせいなのか次元の狭間を私は自由に出入りできるみたいでね。そんな中、オーロラマウンテンへと繋がる次元の狭間を偶然潜り抜けて、私はここに飛んできた。」

小池:「・・そうか。光が丘学院には1年前ぐらいからモンスターが出現している。それもデストロイヤの影響か?」

瞳:「違うわ。正確に言えば、戦国時代 この地に埋められた魔王の力が人間界側から影響を及ぼし、新たな出入り口となる次元の狭間をつくってしまったと言うべきかしら。」

小池:「どういうことだ?」

瞳:「デストロイヤも魔王の力もいきさつは違えど封印された強力な力ということよ。6年前、デストロイヤを倒せないと考えたキングダムセイバーズは、命がけでデストロイヤを封印した。でもね、封印の力は年月の経過と共に弱まってしまっている。その日から6年が経過した今、弱まった封印から漏れたデストロイヤの強力なエネルギーが時空間の亀裂をつくってしまった。さらにそこから出入りをするモンスターが少しずつ増えていき、歪みはより大きなものに成長しつつある。あなたが知っているロイヤルストレートフラッシュもその原因の1つよ。」

小池:「遅かれ早かれ成るべくしてモンスターたちは人間界に解き放たれたというわけか。そして、キングダムセイバーズもそうなることを分かっていた。だから自分たちの力を受け継ぐ後継人を探し、その力を託そうとした・・か。なるほど、すべての辻褄が合うわけだ。」

小池はナックルグローブを見つめながらそうつぶやく。

瞳:「魔王の力の正体、それは戦国時代の猛者、小池半蔵の力。」

小池:「!」

瞳:「そう・・あなたの先祖こそがこの力の持ち主。戦国時代を生きていたあなたのご先祖様は生まれながらにこの驚異的な力を持っていた。けど、そんな彼に匹敵する最強の侍がいたわ。」

小池:「最強の侍?」

瞳:「剣崎竜牙のご先祖様、剣崎勝之助よ。」

小池:「なっ・・!」

瞳:「彼らはお互いの実力を認め合う、唯一無二のライバルのような関係だった。けど、その決着がつくことはなく、年月だけが過ぎて行った。」

小池:「・・・。」

瞳:「そしてその戦場がここにあたる。」

小池:「光ヶ丘学院が・・。」

瞳:「詳しい経緯についてはまだ調べがついていないの、でも死を迎える直前に半蔵はこの地に己の力を封印した。そう魔王の力を。」

小池:「魔王の力が・・俺の先祖の力・・。」

瞳:「その事実を私はオーロラマウンテンの奥にある遺跡で知り、小池一族の血を引く者を探し出すことにした。だって、復讐を成すにはうってつけの力だったんですもの。そんな事を考えていた私は、その遺跡で不意に石版に触れてしまったわ。けどね、そこから溢れ出る特殊な力が私の中に入ってきたの。これが、私たちザークの力の源。そして、その力の一部を施設に預けられていたハデスやデストロイに託した。それだけじゃないわ。この力をつかって、オルフェバンデモンやダークモンスターたちを創造することにも成功した。すべては私の計画を滞りなく進める為に私はこの力を利用することにした。そして、計画が順調に進んでいく中、ついに見つけ出した・・小池一族の血を受け継ぐ正当後継者・・そう、小池共士郎をね!」

小池:「俺を北海道で拉致したのは、それが理由か。放っから俺に魔王の力を渡すために・・。」

瞳:「そういうことよ。けど、強大な力を取り入れる為には器を大きくしないといけない、だからあなたをより強くするために私は動いた。オーロラマウンテンにある次元の狭間をオルフェに守らせていたのもその為よ。そこから出現するモンスターを外に離さず、あなたの修行を試す相手として一匹でも多く連れてくる為に。結果、あなたは究極必殺技の会得に成功。すべて事は上手く運んでいるってわけ。まぁ、セイバーズの邪魔が入ったことだけは想定外だったけど。」

小池:「すべてはお前の思惑通りか・・長々と話をさせて悪かったな、礼を言う。」

瞳:「あら、行くの?」

小池:「トイレだ、ついてくるな。」

(だったら俺もお前を利用するまでだ。)

獣牙:「君の力はそんなものかい、銀河スペード。」

スペード:「くっ、超必殺技・アメイジングトルネード!!」

シュルルルッ!!

獣牙:「エレメンタルブレイカ―!」

デストロイが片手を広げると、光り輝く黄色い牙のようなものが四方からアメイジングトルネードを挟みこみ、相殺する!!

バァァアン!!

スペード:「くそっ・・なんつぅ力で抑え込みやがる・・。」

獣牙:「フォースアームドライブ!!」

デストロイはカマイタチのようなものをスペードに向けて投げつける!

スペード:「なんだこれっ・・くっ!!」

シュッ!

ギリギリのところでスペードはフォースアームドライブを交わ・・!

スペード:「うわっ・・なんだ・・吸い込まれ・・!!」

ガシッ!!

スペードはグラビティブレードを地面に突き立てて、フォースアームドライブに吸い込まれないように態勢を整える!

スペード:「くそっ、なんだこいつは・・まるでブラックホールじゃねぇか!」

獣牙:「フォースアームドライブは小さなブラックホールのようなもの。人をまるごと飲み込む力はないが、当たったものを消し飛ばす力はある。一定時間で消えるが殺傷力は侮れないぞ?」

スペード:「冗談じゃねぇ・・消されてたまるか。」

獣牙:「クククッ・・そろそろ終わりにしようか。」

スペード:「ちくしょう・・。」

(考えろ、考えるんだ俺・・。奴に接近すればエレメンタルブレイカ―で押し返される。かと言って距離をとって攻撃をとれば、飛来してくるフォースアームドライブが攻めてくる・・。駄目だ、迂闊に手が出せねぇ!)

黒炎:「うぉぉぉぉっ!!」

獣牙:「!うるさいぞハデス・・はっ!!」

黒炎:「こりゃあこの力を使うしかないようだな。」

獣牙:「ま、待てハデス!その力をむやみに使うな!!」

黒炎:「解禁!」

シュン!

速水:「消えた・・?!」

ガシィッ!

速水:「ぐあっ?!!」

ハデスは速水の襟元を掴み、叫ぶ!

黒炎:「さてと、命がけの戦いだ。心してかかって来い速水智也。」

スペード:「一瞬で速水が捕まった?!なんだ今の動き・・。」

獣牙:「なぜだ・・お前、その力を使うことが何を意味するのか分かっているのか!!」

黒炎:「ハッ!言っただろうが、命がけの戦いだってよ!!」

獣牙:「馬鹿野郎っ・・死ぬ気なのか・・。」

黒炎:「馬鹿野郎はどっちだって話だな、本気(マジ)になった男の覚悟に横から口を挟んでんじゃねぇよ。」

獣牙:「なっ!お前・・いい加減に!!」

黒炎:「速水ィッ!俺の全力を食らいやがれ、超必殺技・・。」

速水:「っ・・来る!」

黒炎:「ブラックメテオストーム!!」

シュゥッ・・ズババババババン!!

速水;「なんだ・・これっ・・!!」

獣牙:「デスハデスの力を一点に集中させた巨大なエネルギー砲だ。終わったな、あの小僧。」

黒炎:「さようならだ、速水智也。」

速水:「ここまで負けるわけにはいかない、絶対に!」

黒炎:「いいねぇ~だったら止めてみろ!!」

速水:「奥義ッ!!」

タッ!

速水はハイゼルセイバーを持ち上げて飛び上がる!

速水:「プリズムエンペラークロー!!」

シュゥツ・・ズバババッ!!

速水がハイゼルセイバーを振り下ろすと同時に両サイドからハイゼルセイバーの刀身の幻影が現れる!

黒炎:「!」

双方向から向き出た幻影はブラックメテオストームを抑え込み、ハイゼルセイバーを後押していく!!

スペード:「ハイゼルセイバーの刀身が三つに分かれた?!」

黒炎:「ちっ!まだこんな技を隠しもっていやがったか。」

速水:「僕だって負けるわけにはいかない、部長との約束を破るわけにはいかないんだぁぁっ!!」

黒炎:「へっ!俺のブラックメテオストームを押し返すたぁ・・度肝を抜かれたぜ。」

獣牙:「ハデス、私も加勢する。」

黒炎:「邪魔すんな、デストロイ!!」

獣牙:「貴様、勝手がすぎるぞ!」

黒炎:「てめぇはおとなしくロイヤルストレートフラッシュのガキを相手しときゃいいんだよ。この戦いにはな俺のプライドだってかかってんだ。誰にも邪魔はさせねぇ!!」

獣牙:「くっ・・何を言っても無駄か。仕方がない・・戦いを中断させて悪かったな、銀河スペード。」

スペード:「ったく・・速水に気を取られている場合じゃねぇな、こりゃ。」

獣牙:「超必殺技・エアーネクスウイング!」

獣牙は空中に浮かび上がる・・。

スペード:「なっ・・浮いた?!」

獣牙:「はぁぁぁっ!!」

スペード:「くっ!」

(そうか、あいつの超必殺技は己にかかっていく重力を無重力(ゼログラビティ)化する技・・!)

カキン!!

猛スピードで距離を詰めてくる獣牙をスペードはライトニングエッジで跳ね返す!!

獣牙:「うぐっ!!」

スペード:「隙ができた!超グラビティブレード!!」

獣牙:「X技・ノヴァザークソード!」

カキン!

スペード:「?!」

獣牙は黒く細い刀身の剣を2本作り出し、スペードのグラビティブレードを受け止める!

スペード:「お前も剣を持ってるのかよ・・くそっ!」

(刀身が細すぎて力がうまく加えられない・・!)

獣牙:「はぁぁぁっ!!」

カキン!カキン!カキン!

スペードとデストロイの剣がぶつかり合う・・が2本の剣で攻め込むデストロイは、スペードが半身になったところをもう一本の剣で突いていける。そのため、デストロイの反応速度にややスペードが押され気味のようだ。

スペード:「んだこいつ・・動きに無駄がねぇ!」

シュッ!シュッ!シュッ!

獣牙:「言っておくが私をあまり舐めない方がいい、死にたくなければな。」

スペードがデストロイの剣を受け止めた瞬間、彼の背後から見覚えのあるカマイタチが飛んでくる!

シュルルルッ!

スペード:「うわっ!!あ、危ねぇ・・てめぇ、卑怯だぞ!!」

獣牙:「私の剣にばかり気をとられていたらフォースアームドライブがお前をじわじわと追い込んでいく。さぁどこまであがけるか見ものだな!」

スペード:「好き勝手言いやがって~お前こそ、俺をあまり舐めない方が身の為だぜ?」

カキン!

2人は剣で互いの剣を押し合い、間合いを取る。

獣牙:「負け惜しみを・・奥義・ゴー・オルデ・ヘル!」

デストロイが両手を地面につけると、ゆっくりと地盤が激しく揺れ始める!

ゴゴゴゴッ!!

スペード:「な、なんだ・・地震・・?!」

獣牙:「触れた物質を変化させる技だ、さぁコンクリートを変化させた人口隕石の連続射出。お前は逃れられるか?」

スペード:「や、やべぇ・・。」

獣牙:「終わりだ、銀河スペード!」

ドカァン!ドカァアン!ドカァアン!!!

息をつく間もなく、コンクリートを変化させた人口隕石がスペードを叩きつぶしていく!!

速水:「せ、せんぱいっ!!!」

ドカァン!ドカァアン!ドカァアン!!!

黒炎:「ハッ!あいつはもう終わったな。」

速水:「そ、そんな・・。」


76話/衝撃!黒炎拓也と獣牙渡の過去


黒炎:「人の心配をしている余裕なんててめぇにあんのか?」

速水:「っ・・。」

女性:「きゃあああっ!!」

速水:「な、なんだ?!」

黒炎:「あ?あ~うちの家畜(ダークモンスター)どもが暴れてんだろ。」

速水:「・・・・嘘だろ・・。」

速水が辺りを見渡すと、そこらじゅうにダークモンスターが溢れ返っていた。

速水:「戦いにいっぱいいっぱいで・・気が付かなかった。」

黒炎:「んなことどうでもいいだろ~さァ、おっぱじめようぜ。」

速水:(何が・・部長の右腕になるだ・・。僕も銀河先輩もそっちにまで手が回せない・・状況は最悪。このままじゃ・・沢山の人が殺されてしまう!)

黒炎:「デスハデス!」

黒い炎が速水に向かって放射される!

ドッカァアン!!

速水:「ぐ・・はっ・・!」

黒炎:「てめぇ・・戦闘中に余所見んてんじゃねぇぞ。」

速水:「ハヤブサ・・ランニング!!」

シュッ!

タッタッタッ!!

黒炎:「イービルブレイカ―!」

黒炎は速水の影に向かって拳を叩きつける!

バシィィツ!!

速水:「っ・・また・・っ!」

黒炎:「おらぁぁっ、デスハデス!!」

ドッカァアン!!

黒炎:「動けなくなったてめぇの顔面に直接ぶち込んだんだ・・ただじゃ済まねぇだろ、流石によォ?」

速水:「ハイゼルセイバー・・。」

グサッ!!

黒炎:「っ?!・・・がはっ!」

ゆっくりと自分の腹に目を向けるハデス・・。

黒炎:「なぜ・・・俺の腹に・・刺さって・・。」

速水:「肉を切らせて骨を立つってやつだ。」

黒炎:「お前・・顔面の半分を凍らせて・・!!」

(さっきの氷河転結・絶対零度とかいう技か・・くそっ、やられた!)

速水:「今度は僕がお前の動きを封じる番だ。」

黒炎:「くそっ・・こんなモノ・・!」

速水:「抜く前に・・押し込むっ!!」

ズズズッ・・!

黒炎:「があああああっ!!」

速水:「僕の初白星だ。くらえ、奥義・プリズムエンペラークロー!!」

シュゥツ・・ズバババッ!!

黒炎の胴3本のハイゼルセイバーが貫いた!!」

ズバァッ!!

黒炎:「うがぁっ!!」

速水がハイゼルセイバーを引っこ抜くと同時に大量の血を吹き飛ばし、黒炎はその場に倒れこむ。

黒炎:「この・・俺は・・まだ!」

速水:「なっ!!」

獣牙:「!まずい・・ハデス!!」

速水:「くそっ、氷河転結・絶対零度!!」

速水はハデスを氷漬けにして食い止めようとするが・・。

黒炎:「究極必殺技・グランドガイアゾーン。」

シュルルルッ・・!

速水:「!・・吸い込まれた?!」

黒炎:「たたひたすらにモノを吸い取る俺の究極必殺技・・止められるモノなら止めてみろ。」

速水:「っ・・吸引力の変わらないただ一つの・・ってか?くそっ・・このままじゃ吸い込まれる!」

黒炎:「アッハァッ・・俺の勝ちだ!」

速水:「それは・・どうかな!」

黒炎:「!」

速水は右足を前にだしそのままハデスの風に乗って吸い込まれていく!!

黒炎:「何の真似だ!!」

速水:「やってみたかったんだよね、ライダーキック!みたいなの。くらえっ!!」

速水の右足の爪が大きく変化していく!!

黒炎:「まさか・・あの技を!」

速水:「おりゃぁぁっ!!」

(X技・ブレイクウルフスマッシュ!・・片足だけ!!)

ズバァァッ!!

黒炎:「がぁぁあああぁぁっ!!」

獣牙:「ハデスッ!!」

スペード:「ヘビィドラゴン!!」

ドッカァアン!!」

獣牙:「ぐああっ!!」

スペード:「てめぇ相手は・・俺だろうが!!」

獣牙:「!・・馬鹿なっ・・なんでまだ・・。」

スペード:「んな簡単にくたばるわけにはいかねぇんだよ、フィールドワープ!」

シュッ!

獣牙:「・・・・!!」

(どうなっている・・ここはどこだ?!)

スペード:「戻って来い、グラビティブレード!」

シュゥゥ!

パシッ!

再び出現したグラビティブレードをスペードはキャッチする!

獣牙:「っ・・そうか、この瞬間移動をする技で私の攻撃を回避したのかっ・・!」

スペード:「ご明察だな、けどこれで終わりだ。究極必殺技・ハイパープラネットノヴァ!!」

シュッ・・。



ドカァァァアアン!!!



スペードがグラビティブレードを振り下ろすと、もの凄い勢いで地面がひび割れていく!!


獣牙:「?!う、うわぁぁっ!!」

スペード:「逃がすかよっ!!」

重力の乗ったグラビティブレードをスペードはデストロイ目掛けて投げつけた!!

獣牙:「なっ・・一振りで地面をカチ割った剣だぞ?!あんなに軽々しく投げつけるなんて!」

(あんなモノ、食うわけにはいかない!身体が砕けてしまう!!)

獣牙:「フォースアームドライブ!!」

デストロイは飛んでくるグラビティブレードを消し飛ばそうと試みるが・・。

スペード:「させるか、フィールドワープ!」

シュッゥゥッ・・。

獣牙:「は?!剣が消えた・・。」

スペード:「戻してやるよ、おらっ!!」

グラビティブレードはデストロイの目の前に再び出現する!

ズバァァッ!!

黒炎:「ぐあああああああああああああああああああああっ!!」

スペード:「ハァ、ハァ・・言ったろ、俺をあんまり舐めない方がいいってよ。」

スペードが攻撃を決めたことでフォースアームドライブは回転をやめ、徐々に消えていく・・。

速水:「銀河先輩っ!」

スペード:「お~やったな、速水。」

獣牙:「うらぁっ!!」

スペード・速水:「「?!」」

獣牙:「こんなところで死ぬわけにはいかない・・解禁っ!!」

スペード:「っ・・!」

速水:「銀河先輩、あれを見てください!」

スペード:「!・・そうか・・あのハデスとかいう奴があいつをかばって・・!」

獣牙:「貴様ら、生かして返さんぞ!奥義・ベルフェ・デス・キャノン!!」

デストロイの周囲の時空間が歪み、そこから紫の光線が四方八方に放たれていく!!

速水:「うわぁぁっ!」

スペード:「ぐああっ!」

獣牙:「朽ち果てろ、ジャリどもっ!!」

スペード:「くそっ・・プライドをズタボロにされたことで俺たちへの殺意がましてやがる・・。」

獣牙:「お前たちには分かるまい、私たちの絆がどれほど強いものなのか・・。」

スペード:「絆?てめぇらにそんなモンがあんのかよ・・。」

獣牙:「少し身の上話をしてやる、私は幼い頃に両親が金銭トラブルで私を育てていけなくなり児童保育所に預けられた。そこで出会ったのが黒炎拓也・・そうハデスだ。」

スペード:「それがあいつの本名・・?お前たちはモンスターじゃないのか?」

獣牙:「私もハデスも人間だ。戦う力をブラッディ様から授かっただけ。」

速水:「ブラッディ?」

獣牙:「私たちの身元を引き取ってくれた心優しき恩人だ。ハデスやブラッディ様がいなければ私は孤独に耐えきれなくなり、自殺を図っていたかもしれない。帰る場所がある・・それはすごく心の支えになるものだ。そして、そんな居場所をつくってくれたあいつやブラッディ様には心の底から感謝している。」

黒炎:「デストロイ・・お前。」

獣牙:「ハデス・・!息があるのか?」

黒炎:「・・あんまし・・いい状態じゃねぇ・・けど。」

スペード:「もう止めようぜ。」

獣牙:「・・・なに?」

スペード:「この戦いの先に何があるってんだ!こんな無意味な争いを起こさなければ、黒炎はこんな風にならなかった・・違うか?」

獣牙:「これが・・あの人の望みなんだ、やむを得ん。」

スペード:「そのブラッディって奴の事を俺は知らねぇけど、お前の話を聞いて分かったことがある。」

獣牙:「分かったこと?」

スペード:「お前は罪人になるべき人間じゃねぇってことだ。誰かの為に行動を起こせる、他人の為に涙を流せる。そんな優しい人間が人の道踏み外そうとすんじゃねぇ!」

獣牙:「貴様に何が分かる!知ったような口を叩くな、もう後戻りはできない。」

スペード:「俺はそう思わない、自分の過ちに気づいた人間はやり直すことができるんだよ。俺もその一人だ、人生をやり直すことに遅すぎるってことはない。デストロイ、人の生きる道ってのは誰かに敷いてもらったレールを進むことを指すんじゃない。自分で決断し、少しずつレールを敷きながら自分の足で歩いていく・・先の見えないゴールを目指して死ぬまでな。お前の道はお前が決めるしかないんだ!」

獣牙:「・・・っ。」

黒炎:「デストロイ、どの道俺は助からない。お前がどんな選択をしようとお前を止められる奴はもうここにはいねぇよ、好きにしろ。」

獣牙:「ハデス・・何を言って!」

黒炎:「これから世界を滅ぼそうとしている人間が・・人の為に涙流してんじゃねぇよ・・ったく。銀河スペードに便乗するわけじゃねぇが、お前はまだやり直せるんじゃねぇのか?」

獣牙:「バカを言うな・・お前を置いてそんなこと出来るわけが・・。」

黒炎:「なぁおい、コイツはよぉ・・・まだやり直せるか?」

スペード:「ああ、人生なんてな成功より失敗の方が多いものなんだ。だからさ、大切なのは失敗してそこからどう立ち上がるかだと俺は思う。人は過去の自分を超えた分だけ成長できる。」

黒炎:「過去の自分を超えるか・・へっ。」

スペード:「お前の本当の名前は何て言うんだ?」

獣牙:「獣牙・・渡だ。」

スペード:「獣牙、お前はどうする?」

獣牙:「・・・ハデス・・。」

黒炎:「んだよ、あんまし喋らせんな。眠れないだろ・・。」

獣牙:「私はやり直そうと思う。・・今度は自分の足で、自分の道を進んでみたい・・。」

黒炎:「ケッ・・好きにしやがれ。」

バタン。

黒炎はゆっくりと息を引き取った。

獣牙:「・・・。」

スペード:「獣牙・・。」

獣牙:「・・決着をつけにいく、私の生きる道を切り開く為に。」

獣牙はそう言い残し、その場を立ち去っていった。

速水:「銀河先輩、あのまま行かせていいんですか?」

スペード:「今のあいつが人に害を加えるようなことを起こすとは思えない。それに俺たちにはまだやるべきことがある。」

速水:「そうだ・・あのモンスターたちを討伐しないと!」

スペード:「まさかこんなところで全国大会での経験が活かせるなんてな・・速水、人命の救助が最優先だ。どの道俺たち2人だけじゃやれることは限られる。出来ることを全力でやるぞ!」

速水:「分かりました、やりましょう先輩!」


77話/動き出す闇と残されたタイムリミット


誠一:「ではこれより修行を始める。」

竜牙・白鳥:「「お願いします!」」

誠一:「その前にお前たちが今回の修行で身につける必殺技の名を教えおこう。竜牙、お前にはわしの究極奥義・ブラストクロスパラディンを習得してもらう。」

竜牙:「!ブラストクロスパラディン・・それがあの究極奥義の技名・・。」

誠一:「うむ。そして白鳥ちゃんには奥義・スカイカリバーを会得してもらうぞ。」

白鳥:「スカイカリバー?」

誠一:「そうじゃ。さっき見せてもらった限りだとお主は風を使った攻撃を得意としておるのじゃろ?スカイカリバーもまた風の力を使う大技じゃ。ただし、会得の難易度はなかなかのもんじゃぞ。」

白鳥:「どういった技なんですか?」

誠一:「天候の力を操る技と言った方かいいかもしれんのぅ。晴れの日は太陽の力を操るソルスカイカリバー。曇りの日は湿気をたっぷり吸ったクラウディスカイカリバー。雨の日は水分豊富なレインスカイカリバー。雷を伴う天気の時はイナズマスカイカリバー。嵐や台風の日はハリケーンスカイカリバーと様々な変化を遂げる特殊な奥義じゃ。」

白鳥:「す、凄い・・そんな技を私が扱えるの・・?」

誠一:「それはお主次第じゃな。」

竜牙:「じいちゃん、早く修行に・・。」

誠一:「まぁそうせかすな。竜牙、今からお前に向けて数十本の木の枝を上空から落とす。それらを一つも見逃さずにすべて粉々に引き裂いてみせろ。」

竜牙:「な・・!何言ってんだ、そんな事できるわけないだろ。大体、数十本の木の枝なんてどうやって・・。」

白鳥:「せ、先輩!上、上っ!!」

竜牙:「え?」

竜牙が上を見上げると、巨大なクレーンから木の枝が大量に投下された!

竜牙:「なんだとぉぉぉっ!!」

誠一:「さぁ、下らんことを考えている場合じゃないぞ。」

竜牙:「くっ、ハヤブサランニングストーム!!」

シュッ、シュッ!!

誠一:「速い・・やりおる。」

竜牙:「剣舞眼!」

(なるほどな・・数十本の木の枝を止めるには一本一本を狙い撃ちしてたんじゃ間に合わない、空中で素振りして上空に巻き上げつつ、切り落としていくしかない!)

誠一:「何、剣舞眼を使えるじゃと?!」

竜牙:「X技・ギャラクシーブレードTHEFAINAL!!」

ズバァッ!ズバァッ!!

竜牙:「くっ、駄目だ、このままじゃ追いつかない・・!」

竜牙は即座にギャラクシーブレードを持ち直す!

誠一:「構えを変えた?何をする気じゃ?」

竜牙:「奥義・レジェンドラゴン!!」

竜牙がギャラクシーブレードを振り下ろすと、巨大な竜が姿を現す!

ゴガァァァッ!!

誠一:「ほう、その巨大な竜で木の枝を一掃するつもりのようじゃな。」

白鳥:「これならいける!」

カランカラン・・。

白鳥:「!」

竜牙:「え”?!」

誠一:「そこまでじゃ、先に10本ほど枝が地に落ちた。」

竜牙:「はぁ?んだよこれ、無理ゲーすぎんだろ・・。」

誠一:「それが今のお前の限界じゃ。目の前に落っこちてきた木の枝を処理することで頭がいっぱいいっぱいじゃったろ?」

竜牙:「あ、当たり前だろ!全部の枝に注意を払えるか!!」

誠一:「だからこそもっと広い視野で物事を見ることが大事なんじゃ。第一、この修行を乗り越えんことにはわしの究極奥義を会得するなんて夢のまた夢じゃよ。」

竜牙:「うっ・・分かったよ。」

誠一:(とはいえ、その歳で剣舞眼を開眼するとはのぅ。)

白鳥:「あ、あの先輩・・。」

竜牙:「なんだ?」

白鳥:「このタイミングで聞くのもどうかと思ったのですが、いつまで長崎に滞在する予定なんですか?」

竜牙:「連休中の3日間で俺は考えている。休みが終わるまでには技を完成させたい。」

プロロロ・・。

白鳥:「あ、ちょっとすみません。・・もしもし?」

竜牙:「電話?」

白鳥:「そ、そんな!そんな事急に頼まれても・・あ、ちょっと!」

ブチッ。

竜牙:「どうした、白鳥?」

白鳥:「せ、先輩・・落ち着いて聞いて下さいね。」

竜牙:「なんだよ、改まって。」

白鳥:「光ヶ丘学院とその周辺の地域の人々が・・。」

竜牙:「?」

白鳥:「一瞬にして消えたって。」

竜牙:「え・・・え?き、消えた?」

白鳥:「はい・・。」

竜牙:「どういうことだよ、在り得ないだろそんな事!」

白鳥:「さっきの電話、銀河先輩からだったんです。あっ、伝言を預かりました、剣崎先輩に伝えてほしいって!」

竜牙:「スペードが?」

白鳥:「後は任せた。お前のおかげで楽しい高校生活が送れたって・・。」

竜牙:「んだよそれ・・それじゃあ伝言じゃなくて遺言じゃねぇか・・。」

白鳥:「銀河先輩からの情報によると、オーロラ島で遭遇した男たちが光ヶ丘学院にやってきたらしいんです。・・速水くんと一緒に迎え討ったらしいんですけど・・。」

数時間前。

瞳:「へぇ~解禁したハデスとデストロイから勝利するなんて共士郎の言っていた通りね。油断ならない相手・・。」

スペード:「!新手か・・。」

速水:「あなたは誰なんですか?」

スペードと速水が見つめる先には、黒髪の女性がゆっくりと前進していく様子が映る。そして・・。

スペード:「・・・なっ!」

彼女の左手には心臓を突き刺されたまま担がれた男の死体・・恐らくは獣牙渡だ・・。

速水:「あれって・・さっきのデストロイとかいう・・。」

瞳:「大体の予想はついたかしら?」

スペード:「お前が獣牙の言っていたブラッディっていう女か。」

瞳:「そう。瞳舞、コードネームはブラッディ。」

速水:「自分の仲間を・・許せない!」

瞳:「仲間?吐き違えないでもらえるかしら、彼は私の手下でしかない。あなたね、デストロイをそそのかしたのは。」

スペード:「あいつは人生をやり直そうとしてた、なのに・・!惨いことをしやがるぜ、この・・っ!」

瞳:「私の計画の妨げになるものは誰であろうと排除する!そこに情をかけるつもりはい!!」

バァァン!

ブラッディはデストロイの死体を地面に投げつけた。

瞳:「大体、死んだ人間の心配をしている余裕なんてあるのかしら?あなたたちは今から私の手によって殺されるのよ、無論相手が弱っていようと情けをかけるつもりはない。当然よね、このまま野放しにはできないでしょ、モンスターに対抗できる力を備え持つあなたたちモンスターセイバーズを!」

速水:「!この威圧感・・間違いなくさっきの2人より強い敵っ・・。」

スペード:「まずい、俺も速水もボロボロだ・・戦う気力なんて残ってねぇぞ。」

瞳:「大丈夫よ、痛い思いはしたくないだろうからすぐに楽にしてあげるわ。」

スッ・・。

速水・スペード:「「?!」」

(消えた・・?!)

バシィッバシィッ!!

速水:「ぐあっ!」

スペード:「うぐっ!」

2人はうずくまる・・。

速水:(目にも止まらない速さで・・っ!)

スペード:(急所を・・っ!)

瞳:「き〇タマは男の最も弱い部分・・あなたたちが如何に強者でもその弱点だけは克服できないわ。」

速水:「ひ、卑怯・・だぞっ・・!」

スペード:「やめと・・け、弱ェ女のやりそうな手口だ・・。」

瞳:「プッ・・フフフッ!」

スペード:「・・何がおかしい?」

瞳:「ごめんなさいね、一日に撃てる回数が限られているこの奥義を確実に当てるために保険をかけておきたかったの。今の攻撃であなたたちの自由はいくらか封じられたはず。」

瞳はそっと片手を前に突出す。

瞳:「奥義・ビックバンドラゲリオン。」

・・・パン。




ドカァァァアアアン!!



スペード:「何が・・起こっ・・!」

速水:「・・・。」

速水は大量の血を流し、その場に倒れ込む。

スペード:「速水?・・おい・・おいっ速水っ!!」

速水を必死に揺さぶるが応答がない。・・スペードはゆっくりと顔を上げる・・だが、その目に飛び込んできた光景は目を疑うものだった。

スペード:「!・・周辺の建物、人々がすべて消えた?」

瞳:「次はあなたの番。」

スペード:「っ・・まずい・・!」

(せめて・・。)

スペードはスマートフォンの電源をつけて電話帳を開く。

スペード:「頼む・・出てくれ・・。」

ピッ。

スペード:「白鳥か?時間がない、剣崎に知らせてほしい。オーロラ島で俺たちの前に姿を現した連中の1人が光ヶ丘学院とその周辺の地域の人々を消し飛ばした。恐らく俺もこのままそいつにやられると思う、なんせもう戦う力か残っていない。だから・・後はお前に託す、お前のおかげで楽しい高校生活が送れたって・・そう伝えてくれないか?」

ピッ・・。

瞳:「捨て台詞は済んだかしら?奥義・ビックバンドラゲリオン。」

バァアン・・ドカァァァアアアン!!

小池:「戦う力が残ってない者に容赦のない奴だ。」

瞳:「敵の駒を確実に潰し、相手側の戦力を削る。私は理に適ったことしかしてないわ。」

小池:「力がある者が弱い立場の者を制する・・か。」

瞳:「時間を無駄にしたわ、先を急ぐわよ共士郎。」

小池:「・・決戦の日は近いぞ剣崎。」

誠一:「要するにお前さんたちに残された時間はあまりないということじゃな。」

ハンター:「剣崎くん、白鳥さん。僕は先に福岡に戻るよ、嫌な予感がする。」

竜牙:「ああ、頼む。」

誠一:「ほう、いいのか?一緒に行かなくて・・。」

竜牙:「俺は・・。」

白鳥:「駄目ですよ、先輩!」

竜牙:「!」

白鳥:「銀河先輩はきっと剣崎先輩の修行を邪魔しないように私に伝言を残したんです。それはつまり、ちゃんと技を身につけて帰って来いっていう銀河先輩の意思表示じゃないんですか?」

竜牙:「!・・・白鳥、お前。」

白鳥:「相手が銀河先輩と速水くんを追い込むほどの力を持っているのなら尚更、会得すべきです。そうですよね、先輩!」

竜牙:「うん・・白鳥の言う通りだ、ここで帰るわけにはいかない。」

誠一:「・・・一日じゃ。」

竜牙:「?」

誠一:「今からわしの言う特訓メニューを確実にこなすことができれば1日で技を会得できるかもしれん。」

竜牙:「ほ、本当か!じいちゃん!!」

誠一:「その変わり、このメニューはとてつもなくきつい。2人とも、寝る間も惜しんでわしの修行について来れるか?」

白鳥:「覚悟は・・もうできてます。」

竜牙:「ああ、やってやる!」


78話/完成させろ!最強の必殺技!!


竜牙:「うぉぉぉっ!」

ズバババッ!!

誠一:「わずか12時間足らずですべての木の枝を見切れるようになったか。」

(さすがはわしの孫と言ったところかのぉ。)

白鳥:「はぁぁぁっ!!」

シュルルルッ・・ドカァァアン!!

誠一:「!」

(ほう・・この子も大したものじゃ。心を無にして精神を統一し風を集めろとは言ったが、この子は気づいておるのだろうか、この子が引き寄せた風がさらに風を巻きつけて巨大な竜巻を起こしていることに。)

白鳥:「はぁ・・はぁ・・もう一回っ!」

(光ヶ丘学院には真子だっている、集中するんだ私!・・この技を身につけて、少しでも早く福岡に戻らないと!!)

誠一:「2人ともそこまでじゃ。」

竜牙・白鳥:「「えっ?!」」

誠一:「修行はこれにて終了じゃ。」

竜牙:「なっ・・じいちゃん、まだ技は完成してねぇぞ!」

誠一:「何を言っておる、完成したじゃろうが。分かったらさっさと福岡に戻る準備をせい。」

白鳥:「待ってくださいよ、おじいさん!」

誠一:「・・大丈夫じゃ。」

竜牙:「・・・!」

笑みを浮かべた誠一の様子を見た竜牙が何かに気づく。

白鳥:「いや、だから・・。」

竜牙:「白鳥、荷物をまとめよう。」

白鳥:「そ、そんな先輩まで。」

誠一:「達者での、気をつけて帰るんじゃぞ?」

(勘づいたか竜牙。)

ガタンガタン・・。

始発電車に乗り込んだ白鳥は、あくびをしながら乗車する竜牙を見て口を開く。

白鳥:「いい加減、理由(わけ)を話してください。はっきり言って私たちの技は必殺技と呼べる形になっているかさえ分からない状態ですよ?それなのに・・。」

竜牙:「そりゃあそうだ。どの道、あのまま修行を続けたところでどこまで行っても未完成のままだよ。」

白鳥:「どういう意味ですか?」

竜牙:「なぁ白鳥、戦いの中で必殺技を発動する時ってどんな場合だ?」

白鳥:「そりゃあ倒すべき相手を前にした時・・あ!」

竜牙:「気づいたな?じいちゃんが完成したと言っていた本当の意味。それは技を発動する上での基本の動きが完成したってことだったんだ。じゃあ必殺技を完成まで持っていくにはどうするかって話になるけど、その答えはきっと対人戦。つまり戦いの中で見つけることだと俺は思う。」

白鳥:「!そういう事だったんですか。」

竜牙:「思い返してみりゃ、今までだってそうだったよ。新しい必殺技が完成する時はいつも強敵を前にした時だった。」

白鳥:「後は私たち次第・・ということですね。」

竜牙:「そういうこと。ハンターのことも心配だし、このまま光ヶ丘学院に直行するぞ。」

その頃、福岡では・・。

ハンター:「なぜ君がここに・・。」

小池:「久しぶりだな、ハンター。」

ハンター:「小池くん。」

小池:「一足遅かったな。」

ハンター:「・・・!」

小池の足元には速水とスペードの死体が転がっている。

ハンター:「・・君がやったのか?」

小池:「いや、俺の連れが殺ったようだ。それにしても大事な仲間が殺されたというのに剣崎の奴はどこをほっつき歩いている?」

ハンター:「何を今更!剣崎くんに何の用があるんだ?」

小池:「お前には関係のないことだ。」

ハンター:「いや、例の連中と関わっているというのなら君を無視はできない。」

小池:「フン、俺の邪魔をするというのなら誰であろうと容赦はしない。」

ハンター:「雰囲気が前と違う・・彼は危険だ、ここで僕が!」

瞳:「ヘリオスバーナー!」

ボォォォウウッ!!

ハンター:「!」

(オールデリートバリア!)

ドカァァン!!

ハンター:「危なっ・・ギリギリだったな。」

小池:「防いだか。」

瞳:「共士郎、誰と話しているの?」

小池:「横から首を突っ込むな、お前には関係ない。」

瞳:「そういうわけにもいかないのよ。」

(この男、昔デストロイヤと戦っていたキングダムセイバーズの一人よね。なんでここに・・。)

ハンター:「君、凄い形相で睨んでくるね。この威圧感、なるほど。君が2人を・・。」

小池:「俺はこのまま魔王力を解き放つ準備を進める。あいつの相手は任せたぞ。」

小池はそのまま姿を消す。

瞳:「邪魔はさせないわよ、モンスターセイバーズ。」

ハンター:「- 魔王力・・?」

竜牙:「もうちょっとだ、頑張れ白鳥!」

白鳥:「ハァ、ハァ・・もう走れない・・。」

オルフェ:「ベルヘルデスカル!」

白鳥:「!」

ドカァアン!!

竜牙:「ゲホッ、ゲホッ・・。」

白鳥:「大丈夫ですか、先輩?」

竜牙が目を開くとエアーシールドで竜牙を守る白鳥の姿が映った。

オルフェ:「ほう、防いだか。」

白鳥:「誰?いきなり危ないじゃない!」

オルフェ:「俺の名はオルフェバンデモン。コードネーム・・オルフェ・・。」

竜牙:「モンスター!」

白鳥:「先輩は先に行って下さい!」

竜牙:「!」

白鳥:「ここは、私が食い止めます。」

竜牙:「・・分かった。」

白鳥:「!ちょっ、何で横に並ぶんですか!!」

竜牙:「一対一(サシ)でやり合うのは危険だ、だいたいお前を置いて先に行けるわけがないだろ。」

白鳥:「・・先輩はそういう人でしたね。」

オルフェ:「ディバインオーガ!」

白鳥:「!」

竜牙:「鎧を身に纏いやがった!」

オルフェ:「人間が2人・・丁度いい、貴様らの首を土産がてら持ち帰るとしよう。」

タッ!

オルフェが一気に竜牙との間合いを詰める!

竜牙:「うおっ!」

カキン!

白鳥:「ドラゴンソードで攻撃を防いだ?!」

オルフェ:「!」

竜牙はドラゴンソードでオルフェの攻撃を受け止めた状態から叫ぶ!

竜牙:「イナズマドラゴン!!」

ビリリリリッ!!

オルフェ:「ぐああああっ!」

プシュー・・。

オルフェの鎧から焦げた臭いが広がっていく。

オルフェ:「してやられた・・だが。ベルヘルデスカル!」

シュゥゥゥン・・ドカァァアン!!

青あざの男が両腕を勢いよく開くと、周囲にある建物や竜牙、白鳥が一気に吹き飛ぶ!!

白鳥:「キャァッ!!」

竜牙:「うわぁぁっ!」

オルフェ:「最初に言っておくが俺は二度同じ手は食らわない。」

白鳥:「エアーカッター!」

シュルルルルッ!

オルフェ:「ダークネスゲート。」

オルフェの目の前に現れた黒い球体が白鳥のエアーカッターを吸いこむ!

白鳥:「なにあれ・・技を吸収した?!」

オルフェ:「どうした?もう終わりなのか?」

(こいつ等モンスターセイバーズか・・だったら尚更ここで潰しておくべきだな。)

白鳥:「くっ、X技・ムゲン・ザ・カッター!!」

オルフェ:「ダークネスゲート。」

再びオルフェの目の前に現れた黒い球体が白鳥のムゲン・ザ・カッターをも吸いこむ!

白鳥:「数を増やしても駄目・・どうしたら・・。」

竜牙:「・・・。」

オルフェ:「奥義・ヘルブレード。」

黒く細い刀身をもつ刀をつくりだし、オルフェはそれを掴む。

ガシッ。

オルフェ:「女の方は後回しだ、まずは貴様を叩くとしよう。」

オルフェの矛先は・・竜牙だ。

竜牙:「― スカイカリバーだ。」

白鳥:「びっくりした〜。スカイカリバー?」

竜牙:「ああ、あの技を今やるんだ。」

白鳥:「で、でもあれはまだ・・。」

竜牙:「仮にスカイカリバーが成功しなくても、修行の時に見せたあの爆風ならあのモンスターの態勢を崩せるはずだ。俺ならそこを突ける。」

白鳥:「!分かりました。先輩を信じてやってみます。」

オルフェ:「はぁぁぁっ!!」

タッタッタッ!

再びオルフェが竜牙を目掛けて突っ込んでくる!

白鳥:「ふぅ~・・・はぁぁぁぁっ!!」

白鳥は修行の時見たく心を無にし、一点に周辺の風をかき集めて自身の周囲に大きな竜巻を作っていく!

シュルルルッ!!

誠一:「白鳥ちゃん、イメージトレーニングをしたことはあるかのぅ?」

白鳥:「あ、はい!」

誠一:「うむ。実はイメトレは凄く効果的な学習法なんじゃよ。特に体を動かそうとする時のイメトレは非常に効果的じゃ。ゆえにスポーツだけでなく、芸術やリハビリといった様々な分野でこの学習法は活用されとる。つまり人は何かしらの運動をイメージすることで、人の頭の中・・つまり脳の中で運動を行っている時と同じ領域が活動しておるわけじゃ。」

白鳥:「!じゃあ修行の時もイメージすることが大事ってことなんですか?」

誠一:「察しがいいのう。じゃがイメトレにも大きく分けて2種類のパターンが存在する。まずはそこから説明するとしようかのぅ。」

白鳥:「お願いします!」

誠一:「主観的ないマージと第三者的視点から見る三人称的なイメージ・・と言っても難しいかのぅ。一般的なイメトレは恐らく前者であげた主観的なイメージじゃ。自分の視点から自分の動作をイメージするもの。そして、三人称的なイメージというのは・・そうじゃあな、サッカーやバスケをイメージすると分かりやすくなるかのぅ。自分がフィールドのどこに居て、周囲の人がどこに位置しているかという関係性を第三者の視点からイメージし、把握するものになる。」

白鳥:「??」

誠一:「ちと難しかったかのぅ。まぁ白鳥ちゃんにしてもらうのは、主観的なイメージと三人称的なイメージの中間のイメージと思ってもらうといいかのぅ。」

白鳥:「中間・・ですか?」

誠一:「スカイカリバーが実際にどういう技なのか・・お主はまだ知らんじゃろ?だからこそイメージすることが今回の修行をする上で重要な鍵となる。」

白鳥:「!」

誠一:「まずは主観的なイメージでスカイカリバーがどういう技になるかをイメージするんじゃ。そこからイメージを付加させていきなさい。音、風力の力加減から今、自分の集めた風がどういう状態にあるのか、自分の立ち位置はどのあたりにいるのか・・これらを第三者視点になったつもりでイメージせねばならん。だからこそ、中間のイメージが大事なんじゃ。まずは、心を無にして風を集めるところから始めようかのぅ。」

白鳥:「私のスカイカリバーのイメージ・・そして、先輩やモンスターに見えている私の技の状態・・すべてをイメージ・・!!」

オルフェ:「な、なんだ・・この巨大な竜巻は!」

竜牙:「す、すげぇ!修行の時よりか何十倍もデカいぞ・・これならいける!!」

白鳥:「うん・・今だ!」

竜牙:「行け、白鳥っ!!」

白鳥:「奥義・スカイカリバーァァッ!!」

白鳥は巨大な竜巻を螺旋状に変化させ、先を尖らせた状態に形を変えてオルフェにそのまま投げつけた!!

オルフェ:「くっ・・X技・ザ・オーバーテクノロス!!」

シュゥッ・・バァアン!

スカリカリバーを両サイドからものすごい風圧でオルフェが挟みこむ!!

オルフェ:「ぐぐっ・・私は・・負けんっ!!」

白鳥:「はぁぁぁっ!!」

バァァアン!

オルフェ:「ぐあっ!」

シュルルルッ・・・ズバァァッ!!

白鳥のスカイカリバーがザ・オーバーテクノロスを弾き、オルフェの体を貫く!!

オルフェ:「うっ・・がっ・・!」

白鳥:「や・・やった・・。」

竜牙:「凄いぜ白鳥!」

オルフェ:「女ァ・・くっこんなところでまだ・・死ねん!」

(解禁っ・・・!)

オルフェ:「究極必殺技・エンシェントデーモン!!」

オルフェの背中から抜き出てきた無数の黒い手が白鳥に向けて襲い掛かる!!

白鳥:「ヒィッ!」

竜牙:「X技・ギャラクシーブレード・ザ・ルナ!」

ズババッ!

光り輝く剣がエンシェントデーモンを引き裂く!!

竜牙:「大丈夫か白鳥!」

白鳥:「せ、先輩!」

竜牙:「黒い手の数が多すぎて捌ききれない、エアーシールドで援護を頼めるか?」

白鳥:「わ、分かりました!エアーシールド!!」

ズバッ!ズバッ!

オルフェ:「悪あがきを・・どう足掻こうと貴様たち人間ごときに本気になった私が負けるはずがない!!」

(くっ、とはいえ・・女のエアーシールドがピンポイントで発動できるように男はわざと光り輝く剣を使って攻撃をしているのだろう。あの剣を使うことで女の視界を照らしつつ、俺の攻撃を的確に捌けている。)

オルフェ:「ならば一度、態勢を立て直すまでだ。ベルヘルデスカル!」

シュゥゥゥン・・ドカァァアン!!

白鳥:「キャァッ!!」

竜牙:「うわぁぁっ!」

ベルヘルデスカルの強烈な爆風で竜牙の手元から離れたギャラクシーブレードは地面に突き刺さる。

オルフェ:「奴らの態勢が崩れた・・今度こそ仕留める!」

シュッ!タッタッタッ!!

白鳥:「こ、こっちに来る!」

竜牙:「奥義・レジェンドラゴン!!」

ゴゴゴゴッ!!

竜牙がそう叫ぶと、突き刺さったギャラクシーブレードからレジェンドラゴンが出現し、地割れを起こしながらオルフェに向かって地べたを突き進む!

オルフェ:「何っ!!」

竜牙:「くらえっ!!」

ゴガァァァッ!!

ドカカァァアン!!

オルフェ:「ぐああっ!!」

竜牙はゆっくりと立ち上がり、地面に突き刺さったギャラクシーブレードを引っこ抜く。

オルフェ:「おのれぇ~こんなこと・・っ!」

竜牙:「お前、本調子じゃ無さそうだな。」

オルフェ:「なに・・?」

竜牙:「常に片足を引きつって動いているのを俺は見逃さなかったぜ。だから俺との接近戦を避ける為、間合いを取っていたんだろ?」

オルフェ:「くっ・・。」

(オーロラマウンテンでのダメージに気づかれていたか・・何たる不覚・・!)

竜牙:「白鳥、スカイカリバーを俺のギャラクシーブレードを目掛けて放ってくれないか?」

白鳥:「え?何を言ってるんですか!そんなこと、下手したら先輩が・・。

竜牙:「ああ。だから・・こうする!」

竜牙は上空にギャラクシーブレードを投げる!

オルフェ・白鳥:「「?!」」

竜牙:「白鳥!」

白鳥:「!そういうことなら・・奥義・スカイカリバー!!」

シュルルルッ・・!!

白鳥のスカイカリバーがギャラクシーブレードを飲み込む!

竜牙:「っし!ギャラクシーブレード、太陽と月の力を解き放て、THEFAINAL!!」

スカイカリバーの中で舞うギャラクシーブレードは光輝き、炎を放出する!

オルフェ:「っ・・!」

(これは・・スカイカリバーが炎を纏って巨大な火炎弾に・・!!)

竜牙・白鳥:「「合体必殺技・スカイカリバーTHEFAINAL(ザ・ファイナル)!!」

オルフェ:「冗談じゃない!俺は・・負けん!!究極必殺技・エンシェントデーモン!!」

シュルルルッ!!

シュゥツ・・ドカカカッカッ!!

竜牙・白鳥:「「はぁぁぁぁっ!!」」

オルフェ:「うぉぉぉぉっ!!」

2つの技が一歩も譲り合うことなく激しくぶつかり合う!!

ドカカカカカッ!!

オルフェ:「うぐっ!・・ぐぐっ・・一度ならず・・二度までも・・俺のエンシェントデーモンが押し負けるなんて・・こんなこと・・っ!!」

ズキン・・。

オルフェ:「くっ・・足に力が・・入らないっ・・!」

(こんな人間共に・・俺がっ・・!!)

ビシュゥン・・ドカァァアン!!!

光輝く巨大な火炎弾がオルフェを直撃した!

オルフェ:「もう・・しわけ・・ありません・・ブラッディ・・さま・・。」

巨大な爆発と共にオルフェの姿が跡形もなく消えていった。

白鳥:「やりましたね、先輩!」

竜牙:「・・・。」

白鳥:「先輩?」

竜牙:「あいつは俺たちと戦う前から足にダメージを受けていた。そのハンデがなかったら俺たちはもっと苦戦を強いられていたはずだ。こんな相手が光ヶ丘学院にはまだ・・。」

白鳥:「先を急ぎましょう、先輩。」

竜牙:「ああ。」

光ヶ丘学院。

ハンター:「ハァハァ・・君の力、相当なものだね。」

瞳:「流石はキングダムセイバーズの一人、一筋縄じゃいかないわね。」

竜牙:「!ハンター・・。」

ハンター:「!剣崎くん・・白鳥さんも!!」

瞳:「剣崎?・・あら、あらあら・・もしかしてあなたが剣崎竜牙?」

竜牙:「あ?だったら何だよ。」

瞳:「なかなかの二枚目じゃない、共士郎?あなたの待ち望んでいた相手がようやくお出ましよ。」

白鳥の眉間にシワがよる。

白鳥:「あなたは何者なんですか!」

瞳:「瞳舞、この一連の騒動を起こした首謀者と言った方がいいかしら?」

白鳥:「うわぁ・・いかにも性格の悪そうな女ですね、先輩。」

竜牙:「はぁ~始まったよ。」

白鳥:「この変に自信のある態度がどこぞの元会長と重なって無性にイライラします。」

竜牙:「おいおい・・。」

瞳:「小娘が・・黙っていれば随分と煽ってくれるじゃない。」

小池:「騒がしいぞ・・・ん・・?」

竜牙:「・・・!」

小池:「来たか・・剣崎。」

竜牙:「・・小池っ!」

小池:「役者は揃ったようだな、おい。」

瞳:「なによ。」

小池:「儀式を始めろ、余興は終わりだ。」

瞳:「言われなくても分かってるわよ。本当にせっかちなんだから!!」

剣崎:「儀式?何を始める気だ、小池。」

小池:「魔王力復活の儀式さ。お前らがコイツの手下共と戦っている間に生贄となる人間は揃った。」

剣崎:「お前っ・・関係のない人たちを・・殺したのか?」

小池:「だったら何だ?」

剣崎:「てめぇ・・どこまで落ちれば気が済むんだっ。」

小池:「さぁ、決着の時だ剣崎。」


79話/アルティメットフォーム魔王形態


小池:「大いなる災いをもたらす天魔の王よ、欲界の第六天の王よ、我らザークにその力を授け、長き眠りから解き放たれよ。」

ブラッティが呪文を唱えると小池の上空に巨大な円盤が出現する。

竜牙:「な、なんだ・・あれ。」

そしてその円盤は回転し、小池が用意した生贄となる人々が吸い込まれていく。

瞳:「さぁ受け取りなさい共士郎、これがあなたの望んだ力。」

すべての生贄を吸収した円盤は真下にいる小池をも吸い込み始めた!

小池:「うっぐっ・・・うわぁぁぁぁっ!!」

竜牙:「こ、小池?!」

円盤は小池を取り込み、逆回転し始める。

シュッ・・ドサッ!

勢いに余って吸い込まれたはずの小池が地面に落下する、同時に円盤も姿を消した。

瞳:「さぁ宴の始まりよ。」

小池:「クックック・・。」

竜牙:「な、なんだ・・。」

小池:「始めようか、剣崎。お前を倒して俺の歩んできた人生が間違ってなかったことを証明してみせる。」

竜牙:「なんなんだよ・・お前、その姿は。」

小池の姿は悲惨だった。アルティメットフォームをベースに髪がライオンのように毛量が増え、両肩には角のようなものが生えている。外見から見える特徴の変化はそれだけじゃない。背中に悪魔の羽のようなものが生え、耳に至ってはドラキュラの耳のように変形していた。そして・・背後には一回り小さくなった円盤が小池の後ろで常に右回転している、だが先程までと異なる点はそれだけじゃないようだ。よく見ると1から18までの数字が刻まれている。

小池:「これが魔王力を吸収した俺の姿・・力が溢れてくる・・。」

竜牙:「その姿がお前の行き着いた答えなんだな。」

小池:「だったら?」

竜牙:「前にお前は俺に言った。お前はモンスターから人々を守る為にセイバーズになったんだってな。男子高校生の分際で随分といきがってるんじゃねェか?ってよ。」

小池:「・・・。」

一呼吸を置き、竜牙は奥歯を噛み締めて叫ぶ!

竜牙:「この台詞、そっくりそのまま返してやる。男子高校生の分際でいきがってんじゃねぇよ、お前は小池共士郎だ、魔王なんかじゃねェ!!」

小池:「クククッ、アハハ八ッ!!来い、剣崎!!」

竜牙:「ハヤブサランニングストーム!」

タッタッタッ!!

小池:「黒炎弾!!」

竜牙:「!」

小池の左手から放たれる黒炎弾は、ベルゴンザが使っていたものよりも倍速で竜牙に撃ちこまれていく!

バンバンバン!!

竜牙:「ぐっ・・。」

小池:「どうした?ひるんでいる暇なんてないぞ。」

ビクッ!

竜牙:「しまった・・背後を取られた・・!」

小池:「ストームモード!」

シュルルル・・ドカァッ!!

風を纏った拳が竜牙の背中を貫く!

竜牙:「ぐっ・・はっ・・!」

白鳥:「け、剣崎先輩!」

ハンター:「っ・・すべての技の威力が桁違いだ・・これが魔王の力なのか・・。」

小池:「大した洞察力だ、流石は元ハイソルジャーといったところか。そうさ、魔王の力は俺の潜在能力を極限まで高めてくれる。」

竜牙:「ぺっ・・痛かねぇんだよ、こんな拳!」

小池:「フン、超必殺技・ソウルブレイク!」

竜牙:「その技は前に一度見てんだよ・・。」

竜牙は小池の動きに合わせてハヤブサランニングストームで回避に出ようと試みるが・・。

竜牙:「・・・!」

小池:「コイツはフェイクだ。」

小池は上半身を戻し、逆方向の手からソウルブレイクを発動する!

バシィッ!!

竜牙:「がはっ・・。」

ハンター:「あれは・・ボクシングの動き・・!」

竜牙:「お前・・両利きかよ・・。」

小池:「読みが甘かったな。」

(バーニングモード!)

ボォォォォッ・・ドカァッ!!

炎の拳が竜牙に追い撃ちをかける・・が?

竜牙:「っ・・。」

小池:「!」

(両腕だけにあの竜装(ドラグアーマー)を装備して・・俺の攻撃を防いだ?!」

ハンター:「上手い!両腕だけなら竜装の強度は一点に集中するため強固なものになる!!」

小池:「やるな・・だが攻撃に転じなければお前に勝機はない。」

竜牙:「ぐ・・うるせぇ・・。」

小池:「暗黒衝撃波!」

バァァアン!!

竜牙:「っ・・!」

(これは!・・オルフェってやつの攻撃みてぇな広範囲を狙える衝撃波を使った技?!)

竜牙:「超必殺技・ドラグアーマー!」

ドスン!!

小池:「!全身に竜装をつけて重量を増やし、衝撃波で吹き飛ばされない状態にしたのか。」

竜牙は鎧を解き、再び小池に向かっていく!

竜牙:「うぉぉぉっ!」

(ハヤブサランニングストーム!)

タッタッタッ!!

小池:「考えたな、だが!超必殺技・鬼ソウルブレイク!!」

竜牙は剣舞眼をそっと開く。

竜牙:「あの技は軌道が読めない・・左右に動けないのなら・・!」

シュッ!

小池:「なっ?!」

(かがんだ?!)

竜牙:「イナズマドラゴン!!」

竜牙は態勢を低くし、小池の不意を突いてイナズマドラゴンを低姿勢から放つ!

小池:「っ!!」

(反応が遅れた・・っ!)

ビリリリッ!!

小池:「ぐあああっ!!」

白鳥:「ボクサーの集中力を今度は逆に利用した?!」

ハンター:「!うん、剣崎くんは小池くんの意識が前に向いていることを利用し、自らの態勢を崩して小池くんの視界から外れたんだ。結果、不意を突かれた小池くんは。足下から流れてくるイナズマドラゴンに気づかなかった。」

竜牙:「土壇場で魔王の力を流し込んでソウルブレイクを進化させたのには驚いたけど、当たらなければ意味がないだろ。」

小池:「姑息な手を・・X技・レボリューションサーガ改!!」

竜牙はドラゴンソードを鞘に入れ、一気に引き抜く!

竜牙:「X技・ギャラクシーブレード・ザ・シャイン!!」

シュッ!ボォォォォォォウウッ!!

抜き出た剣から溢れ出る膨大な炎が小池の光線を弾き返す!

小池:「なんなんだあの炎は・・!」

竜牙:「強くなっているのはお前だけじゃねぇってことだ。」

小池:「ならば・・奥義・レジェンドライブ!!」

小池は高速回転しながら竜牙との距離を一気に詰め寄る!

竜牙:「だったら・・奥義・レジェンドラゴン!!」

竜牙が剣を振って発動させたレジェンドラゴンはもの凄いスピードで小池に向かっていく!!

バシィッ!バシィッ!バシィッ!!

互いの奥義が火花を散らす!

白鳥:「先輩のレジェンドラゴンと互角に渡り合うなんて・・!」

ハンター:「元々・・剣崎くんの奥義・レジェンドラゴンは小池くんの奥義・レジェンドライブに対抗する為に造られた奥義なんだ。小池一族に伝わる2つの奥義がまさかこんな形でお互いを打ち消し合うことになるなんて。」

(いや・・レイクはこうなる未来を先読みして剣崎くんにレジェンドラゴンを託したのかもしれない。早すぎると思ったんだ、あの時の剣崎くんにこの奥義を託すだなんて・・すべてはこの時の為に・・。)

小池:「チッ・・ラチが明かないな。」

(奥義・レジェンドライブGX!)

シュルルルッ!

竜牙:「回転速度と威力が上がった?!」

(まさか・・また魔王の力を流し込んで技を進化させたのか?!)

白鳥:「!レジェンドラゴンが押されはじめましたよ?!」

ハンター:「まずい!」

竜牙:「くっ・・このままじゃ打ち消される!」

小池:「このまま押し切る!」

竜牙:「どうしたら・・あ・・!」

竜牙:「秋矢の指にさえ意識を集中させれば、自然と狙いを定めたものに合わせて力が調整される。これならレジェンドラゴンの力が膨張してスタジアムの周囲にいるみんなを巻き込むことはない!」

(秋矢の水のショットガンが重いのは力を一点に集中させているからだ。お前のX技が俺のレジェンドラゴンを進化させたんだ!)

竜牙:「そうだ、レジェンドラゴンをコントロールできるようになったあの戦いを思い出せ。応用を効かせるんだ!超必殺技・ドラグアーマー・バーストモード!!」

ボォォォウウッ!!

竜牙は片手を広げて、ドラグアーマーの炎を一点に手中させる。

竜牙:「くらえっ!」

ボォォォゥ!!

ハンター:「すごい!バーストモードの炎をバーナーの炎みたく噴射した!!」

レジェンドラゴンにバーストモードの炎が合わさり、再び小池のレジェンドライブを押し返していく!

小池:「ぐっ・・あああっ!!」

バシィッ!

ドカァァアン!!

ハンター:「おおっ、小池くんのパワーを上回った!」

白鳥:「すごい、先輩!!」

竜牙:「ハァハァ・・どうだ・・。」

小池:「やるじゃねぇか・・剣崎。」

竜牙:「ったりめぇだ・・俺が先に倒れるわけにはいかねェんだよ。」

小池:「フッ・・。」

小池が左手を広げると、周囲の物が引き寄せられ集められていく・・!

竜牙:「なっ・・!」

小池:「知恵と工夫で戦うお前の戦闘スタイル、嫌いじゃない。だがこいつを前にしても同じように切り抜けられるか?」

ハンター:「まだこんな技を・・!」

白鳥:「あれって隕石ですよね・・あんなことも出来るの・・?!」

竜牙:「くっ・・。」

小池:「くらえ、邪神・キングアンゴルモア!」

小池は巨大な隕石を竜牙に向けて投げつける!

ボォォウウウ!

竜牙:(んだよあれ・・あんだけデカいと俺のレジェンドラゴンでも粉砕しきれない!だからと言って避けることもままならねぇか。後ろにいる白鳥とハンターに当たってしまう・・クソッ!)

小池:「クククッ、万策尽きたか!」

竜牙:「!いや・・あの技なら・・一か八か、やるしかない。」

竜牙は目を瞑り、隕石の軌道を読むため音を聞き取る。

小池:「ん?」

ハンター:「何をやっているんだ剣崎くん!」

白鳥:「!いや・・あの構えはもしかして・・。」

竜牙は目を開き、再び剣舞眼を開眼する!

竜牙:「今だ!」

シュッ!

竜牙はギャラクシーブレードを引き抜く!

竜牙:「究極必殺技・ブラストクロスパラディン!」


80話/仲間たちの想いと思い出のアルバム


ズバ!ズバ!ズバ!ズバ!ズバ!ズバッ!!

竜牙は目にも止まらない速さでギャラクシーブレードを振り下ろしてく!その様はまるで百烈拳のようだ。何よりも驚くべきなのは大胆な動きに相反するその正確性・・切った隕石の残骸すべての軌道を剣舞眼で瞬時に見切り、彼の背後にいるハンターと白鳥に欠片が飛び散ることがないよう攻撃を繰り出している。

小池:「な、なんだ・・この技は・・!」

竜牙:「ふぅ~よし!」

(究極必殺技・・完成だ!)

ズバァッ!!

最後の欠片を竜牙の剣が仕留める!

小池:「き・・キングアンゴルモアをあの数秒間で木端微塵に・・。」

竜牙:「どこ見てんだ!X技・ギャラクシーブレードTHEFAINAL!!」

ズババッ!!

呆気にとられている小池の胴を竜牙の一太刀が引き裂く!

小池:「ぐああっ!!」

ハンター:「なんて技だ・・一手で形成を逆転させた。」

白鳥:「失敗の許されないこの場面で完成させるなんて・・やっぱり先輩は凄いっ!」

瞳:「共士郎!」

小池:「くっ・・奥の手を隠していたか・・。しかし、何て技だ・・っ!」

竜牙:(このタイミングでこの技をモノに出来たのは大きい。じいちゃん・・感謝してるぜ。)

小池:「ここからは出し惜しみなしだ、俺の本気を見せてやる。」

バァン!

小池は拳を地面に思いっきり叩きつける!

竜牙:「何かが・・来る!」

小池:「究極必殺技・激震滅!」

ゴゴゴゴゴッ!!

ハンター:「うわぁっ!」

白鳥:「キャァッ!」

竜牙:「じ、地震?!」

(隕石の次は地震かよ・・くそっ、こんなの予測できるかっ・・!)

瞳:「ハデスを苦しめた激震滅・・いやあの時の以上の震度ね・・これは・・。」

小池:「この震度じゃ流石に身動きは取れないだろ、もらった!」

竜牙:「や、やべぇ・・!」

小池:「後手に回ったのが仇となったな、さっさと仕留めれば死なずに済んだモノを・・。」

竜牙:「おい小池!お前、分かってんのか?今のお前は、今に至るまでずーっと憎んできた相手と同じ事やってんだぞ!!」

小池:「・・・。」

竜牙:「なんでそいつを反面教師に出来なかったんだ!どうして弱い立場にいる人間をあざ笑うような奴の言葉に耳を傾けちまったんだ!!」

小池:「っ・・てめぇは何も分かってねェな・・。」

竜牙:「・・・!」



小池:「じゃあお前の言う心の強さがあれば親友を・・鋼をっ!あいつの命をっ!!救うことができたのか?!なぁ答えろよ、剣崎っ!!!」



罵倒する小池の目から涙がこぼれ落ちる。

竜牙:「・・・っ。」

小池:「死んだ人間は・・!二度と・・二度と戻ってこねぇんだよっ!!どんなに・・どんなにどんなに後悔したって過ぎた時間は戻って来やしねぇ!やり直すことなんざ出来ないんだっ!!」

竜牙:「小池・・。」

小池:「強くなければ大事なモノを守れない、失ってからじゃ遅いんだ。人はいつ死ぬか分からない、その人が側にいるのが当たり前じゃない・・大半の奴がそんなこと分かってると受け流すだろう。でも、大事なモノを・・大切な人を失った奴はそう受け取らない。涙を流して拳を握りしめるはずだ、俺もその一人だ。俺にはかつて自分をイジメっ子から守ってくれた親友がいた。けど、あいつはを死んじまった。イジメられていた俺のために拳を振るったせいでよ。」

小池:「俺をいじめていたあいつらはなァ・・数年経った今でも平然と生きてんだよ。いじめていた奴だけじゃねぇ!傍観してクスクスと笑っていた奴らも中にはいた!俺は知っている!そんな奴らも!!何事もなかったかのように平然と生きてやがんだよっ・・時が経てば解決?大人になれば笑い話?思い出になる?・・・・・なるわけねぇだろうが。」

竜牙:「っ・・・。」

瞳:「・・・。」

(共士郎・・。)

小池:「そんなのそいつらの自己満足でしかねぇんだよ・・人が死んでんだよ。鋼の人生は15年という短い生涯で終わっちまったんだよ!あんなにいい奴だったのに・・ふざけんなって話だよ。俺があの後、どれだけ苦しい思いをしたかお前には理解できないだろうが!!鋼の両親はよォ・・俺があいつの墓参りに行くたびにいつもいつも自分を責めないでねって言ってくれるんだ。いつも笑って俺を迎え入れてくれる。俺を恨むどころか、慰めてくれるんだよ。俺は鋼を助けてやれなかった、それなのに・・。おばちゃんは優しい口調で・・いつも感謝しているよ、鋼の分まで強く生きてねって言ってくれんだよっ・・!ちっくしょう・・一番辛いはずの人間が涙こらえて笑わないといけない。そんなの間違ってる!!」

竜牙:「っ・・・小池・・。」

竜牙の目から涙がこぼれ落ちる・・。

瞳:「・・・共士郎・・あなたも・・。」

ブラッディもまた小池の話の一部始終を聞いてどこかで自分と重ねていた・・が、竜牙と小池の間に割って入ろうとはしなかった。

竜牙:「確かに・・俺にはお前が受けた心の傷を理解することはできない。でもこれだけは言える、人は一人では生きていけない。」

小池:「っ・・まだ言うか!」

竜牙:「前に言ってたよな、もう二度と大事なモノを失いたくないって。だからお前は力を求めた。自分が強くなることで大切なモノを守れるように・・そうだろ?」

小池:「・・・。」

竜牙:「逆を返せばそれは他人を信用できない、だから一人で生きていかなければならない。そう解釈することもできる。そう考えれば、自分が強くならなければ大事なモノを守れない・・っていうのにも合点がいく。」

小池:「ああ、その通りだ。分かったら・・。」

竜牙:「それじゃあダメなんだよ!」

小池:「!」

竜牙:「他人の言葉に耳を傾けず”個”に執着したら絶対に失敗する。誰にだって欠点はあるんだ。でも人は支え合うことで弱点(それ)を補うことができる。少なくとも俺が出会ってきた人たちはみんなそうだった!」

小池:「綺麗事を!もう沢山だ、お前にはここで死んでもらう!!」

竜牙:「っ・・!」

小池:「じゃあな剣崎、お前のおかげで俺はまた一つ強くなれた。X技・レボリューションサーガ改!!」

小池が手の平を広げると紫の光線が勢いよく竜牙に向かって襲い掛かる!

シュゥゥゥゥン・・ドカァァアン!!

白鳥:「い・・嫌・・せんぱぁぁぁいっ!!」

ハンター:「剣崎くんっ!!」

・・・。

スペード:「だ、大丈夫か・・剣崎?」

速水:「部長・・間に合って・・良かった。」

竜牙:「な・・んで・・。」

竜牙の目の前には攻撃の盾になってくれたスペードと速水の姿が映った。

スペード:「最後の最・・後まで歩け・・る力残しといて・・正・・解・・だっ・・。」

ドサッ・・。

速水:「後は・・お願いします・・ぶち・・ょ・・。」

ドサッ・・。

竜牙の手からギャラクシーブレードが落ちる。

白鳥:「う・・嘘・・。」

ハンター:「くっ・・!」

小池:「とんだ邪魔が入ったな。」

竜牙:「はや・・み・・すぺ・・ど?」

ポロッ・・ポロッ・・。

竜牙:「うっううっ・・!」

速水:「剣崎さん、僕とお手合わせしていただけませんか?」


速水:「これからは部長と呼ばせていただきますね!」


速水:「部長、単刀直入に聞きますけど赤と黒どちらの色がお好みですか?」


速水:「ハヤブサランニングはひたすら突っ切るという気持ちが大切なんです。」


速水:「何言ってるんですか、部長のハヤブサランニングは強い風力を使って速度を上げている完全な上位互換です。あえて名づけるならハヤブサランニングストームと言ったところでしょうか。」


速水:「僕、部長が強敵と戦う為に一生懸命修行していたのをずっと間近で見てきました。そんな部長を見てきて、僕に何かできることはないか?ってずっと考えていたんです。だから!部長に足りない機動力を補う為にハヤブサランニングの特訓メニューを考えたんです。モンスターに襲われていた部員たちを迅速に避難させるのだって、考えるよりも先に行動を起こしました。すべては、僕らの為に戦っている部長の力になる為、僕は僕なりにできることを一生懸命やってきました。そんな僕にジーさんは戦う力を与えると言って下さっているんです、断る理由なんてないですよ。僕は部長の足りないところを補う為にセイバーズになります!」


速水:「鈍感って言葉で片付けないでくださいね。相手の”気持ちに気づかない”っていうのは、”気持ちに答えられない”ことよりも残酷ですよ。だってその人はまだ、相手方の認識の中でスタートラインにすら立たせてもらえてないって事でしょ?」


速水:「どこまでやれるか分かりませんが、セイバーズである以上全力を尽くします。だから部長は一刻も早くその技を身につけて福岡に戻って来て下さい。敵が部長の言うように強敵なら尚更です。」

竜牙:「ばか・・やろっ・・。」

スペード:「ありがとう。あ!俺、スペードって言うんだ!」


スペード:「そういうこった。まぁ俺の名前はあいつらと違ってコードネームじゃなく、本名だがな。」


スペード:「久しぶりだな、剣崎。」


スペード:「おまえ・・レジェンドラゴンの威力をもう少し落とせないのか、フォルテみたいな奴が相手ならともかくモンスターを相手にやりすぎだ。威力が強ければいいってもんでもないだろ。」


スペード:「人である以上、人生には無数の選択肢が待ち受けていてそれを自分の意志で選択していかなければいけない。自分の選択したものが正しいかどうかなんて分かるわけがねぇし、時には間違えることだってあるだろうよ。けど、方向を変えてそこから前に進むことはできる。」


スペード:「まぁまぁ。ありゃ、お前が他の女に優しくしてるから嫉妬してんだよ。」


スペード:「予想以上に苦戦したが、負けるわけにはいかなかったからな、アイツにだけは。」


スペード:「すまない?準決勝まで勝ち上がったんなら、観客席でおとなしく待機してろ。覇王が勝とうと剣崎が勝とうと、お前が戦うかもしれない相手なんだぞ?」


スペード:「俺の最後の力だ、あの舐めプ野郎を派手にぶっとばせっ!!」


スペード:「おい剣崎、本腰入れて勉強しねぇとマジで落ちるぞ?」


スペード:「花音たちに危害が加わるのだけは避けたい、奴らとまた出くわす可能性も高いがくれぐれも慎重に動こう。」


スペード:「白鳥か?時間がない、剣崎に知らせてほしい。オーロラ島で俺たちの前に姿を現した連中の1人が光ヶ丘学院とその周辺の地域の人々を消し飛ばした。恐らく俺もこのままそいつにやられると思う、なんせもう戦う力か残っていない。だから・・後はお前に託す、お前のおかげで楽しい高校生活が送れたって・・そう伝えてくれないか?」

竜牙:「・・・。」

小池:「別れは済んだか?剣崎、少しは俺の気持ちが身に染みただろ。」

竜牙:「ふざけるな。」

小池:「あ?」

竜牙:「はぁぁぁっ!」

シュッ!

小池:「!」

(いつの間に!)

竜牙:「真ドラゴンソード!」

ズババッ!

小池:「ぐあっ!」

(さっきまでと移動速度も技の威力も違う・・なんでっ!)

竜牙:「分かりたかねぇんだよ!人殺しの気持ちなんて!!」

小池:「っ・・!」

竜牙はドラゴンソードを鞘に納め、構える・・。

竜牙:「あの時、病院から抜け出そうとしてたお前を俺は引き止めることができなかった。でも!人として間違ったことをしているお前を今度こそ、俺は体を張ってでも止めて見せる!」

小池:「やってみろよ、今の俺は誰にも止められないっ!」

竜牙:「小池ぇぇっ!!」

小池は構える。

小池:「黒炎「X技・ギャラクシーブレード・ザ・ルナ!!」」

(俺の攻撃よりも早く・・っ?!)

シュッ!・・ズバババッ!!

小池:「ぐああああっ!!」

白鳥:「あんなに殺気立った先輩・・見たことがない・・。」

ハンター:「きっと銀河くんと速水くんを失った悲しみを力に変えて戦っているんだ。・・剣崎くん。」

シュッ!ズバババッ!

小池:「同じ手を何度も食らうかっ!邪神・キングアンゴルモア!!」

竜牙:「隕石を盾にしやがった!」

小池:「これでお前の斬撃は届かない。」

竜牙:「はぁぁぁっ!」

小池:「!なっ・・いつの間に。」

見上げた小池の視界には竜牙が上空から拳を握りしめて跳んでくる様子が映る!

小池:「なぜだ!お前は向こうで剣を振っていたはず!」

(!・・鞘の中に剣がない・・まさかっ・・。)

竜牙:「前にお前は俺に言ったな、剣がなけりゃあ、お前は力を使えねぇ・・。ってよ。」

小池:「っ・・!」

竜牙:「お前の言葉が俺の戦闘スタイルを飛躍的に変えたんだ!今の俺は剣がなくても戦える!!」

小池:「ま、まずい・・技の発動が間に合わないっ!」

(攻撃の主軸である剣を捨てることで俺の隙をつくったというわけか・・くそっタレがっ!!)

バシィッ!

ドラグアーマーを纏った竜牙の拳が小池の顔面を殴り飛ばした!

小池:「がはっ!」

竜牙:「これは速水の分だ!そして・・!!」

バシィッ!

小池:「ぐあっ!」

竜牙:「こいつはスペードの分だ!」

シュッ・・・ドカァン・・!

2人が勢いよく落下する!

小池:「ハァハァ・・ようやく殺る気になってくれたようだな・・剣崎。攻撃から殺意を感じるぞ。」

竜牙:「小池、いい加減目ェ覚ませよ!これ以上、罪のない人間を傷つけるなっ!!」

竜牙は地面に落ちているギャラクシーブレードを再び拾う。

小池:「フッ・・クククッ!!」

竜牙:「何笑ってんだ・・笑うところじゃねぇぞ。」

小池:「いや・・おかしくってよ。なんせ俺はまだ・・俺自身の力とアルティメットフォームの力しか使ってないんだからな。なのにお前は・・俺と互角に渡り合えていると勘違いしているようだ。」

竜牙:「なっ・・まだ全力じゃないっていうのか・・?!」

小池の背中で浮遊している円盤が再び回転を始める。

シュルルル・・ッ。

竜牙:「!あれは・・さっきの・・。」

小池:「見せてやる、魔王力を取り込んだ俺の力を!」

シュルルル・・ピタッ。

小池の背中で浮遊している円盤の回転が止まった。


81話/最強の助っ人 神谷朱里


円盤に刻まれている1と2の数字が光った。

竜牙:「な、何をする気だ!」

小池:「こうするのさ!」

小池が左腕を上げると、倒れていたスペードと速水の死体が円盤に吸い込まれていく・・!

竜牙:「な・・なにっ・・!」

速水は1の数字が書かれているところに、スペードは2の数字が書かれているところに吸い込まれた。

竜牙:「2人を返せ!」

小池:「見せてやるよ剣崎・・来い!グラビティブレード!!」

円盤の2の数字が光ると、そこからグラビティブレードが出現する。

ガシッ!

小池はグラビティブレードを掴み、振り下ろす!

小池:「クククッ・・超必殺技・アメイジングトルネード!!」

竜牙:「なっ・・!」

ハンター:「なんで銀河くんの技が!」

竜牙:「ハヤブサランニングストーム!」

シュッ、シュッ!

小池:「避けたか・・まずはその厄介な技から封じるとしよう。」

円盤の1の数字が光ると、そこからハイゼルセイバーが出現する。同時に円盤の2の数字が点灯しなくなり、グラビティブレードが姿を消した。

ガシッ!

小池はハイゼルセイバーを掴み、振り下ろす!

小池:「氷河転結・絶対零度!!」

竜牙:「今度は速水の技?!・・くそっ、X技・ギャラクシーブレード・ザ・シャイン!」

シュッ!ボォォォォォォウウッ!!

抜き出た剣から溢れ出る膨大な炎が小池の絶対零度を溶かしていく!

竜牙:「っ・・あの円盤が吸い込んだ者の力を小池は扱うことができるのか・・!」

小池:「さぁここからが本当の戦いだ。」

竜牙:「厄介な・・。」

小池:「ビースト細胞!」

小池の細胞が活性化し、人としての原型がなくなっていく・・。

竜牙:「力に溺れて体を売りやがったな・・。」

小池:「来い・・剣崎!」

竜牙:「X技・ギャラクシーブレード!!」

小池の腕が光だすと、だんだんと堅くなり、突っ込んできた竜牙を押し出す!

カキン!

竜牙:「ぐあっ?!」

小池:「奥義・ライトニングエッジ。」

竜牙:「っ・・同時に発動もできるのかよ・・、」

小池:「剣を使う戦い方も悪くないな。」

竜牙:「その力は・・速水とスペードのもんだ!!」

タッタッタッ!!

竜牙:「X技・ギャラクシーブレードTHEFAINAL!!」

小池:「ハイゼルセイバー!」

カキン!

ギリリリッ・・!

小池:「流石に押し返せないか。」

竜牙:「うぉぉぉっ!」

小池:「奥義・プリズムエンペラークロー!!」

シュゥツ・・ズバババッ!!

竜牙の胴を3本のハイゼルセイバーが貫いた!!」

竜牙:「がはっ?!」

(なんだ・・この技は・・?!)

ハンター:「あれは・・僕と修行をして身につけた速水くんの新しい技・・っ!」

白鳥:「せ、先輩!」

ハンター:「まずいねこれは・・。戦いがだいぶ長引いてきてる、体力を消耗して動きが鈍くなってきた剣崎くんに対して小池くんはビースト細胞を使っているため、さっきよりも動きにキレが出始めている。何より魔王形態の彼は、通常時、アルティメットフォーム時の技を両方兼ね備えているだけじゃなく、吸収した速水くんや銀河くんの力も使うことができる。実質4対1で戦っているようなものだ。」

白鳥:「そ、そんな・・。」

瞳:「これが・・魔王の力!」

白鳥:「もう見ていられない・・私、加勢してきます。」

ハンター:「やめておいた方がいい。」

白鳥:「これ以上、先輩が苦しむ姿を見ていられません!」

ハンター:「だとしてもだ。今君が動けば、間違いなく小池くんのターゲットは君に移る。白鳥さんまで吸い込まれたりしたら、僕らだけじゃ手がつけられなくなってしまう。そうなってしまったら本当に終わりだ。」

白鳥:「くっ・・黙って見ているだけしかできないなんて・・。」

(こんな時、木嶋先輩なら・・。)

小池:「X技・ブレイクウルフスマッシュ!!」

小池は狼のように足の爪を尖らせ、竜牙を引き裂いていく!

ズバババッ!!

竜牙:「ぐあああああっ!!」

小池:「超グラビティブレード!」

カキン!

竜牙:「はぁはぁ・・。」

小池:「防いだか。」

(だが・・。)

竜牙:「うぐっ・・!」

(しまった・・・グラビティブレードを受け止めるんじゃなかった・・!)

小池:「仲間の技の特性すら把握してないとはな。」

竜牙:「超必殺技・ドラグ「超必殺技・鬼ソウルブレイク!」」

バッシッィイン!!

竜牙は技を発動する前に殴り飛ばされた!

小池:「どうした、そろそろ体力の限界か?」

竜牙:「・・・がはっ・・。」

ハンター:「これ以上は駄目だ!白鳥さんを守る為になるべく力は温存しておきたかったけど・・。」

タッ!

ハンターは全速力で駆け出すが・・。

小池:「超必殺技・ハイパーブリザード!」

小池のハイパーブリザードが弱った竜牙に追い打ちをかける!

竜牙:「ぐああああああっ!!」

小池:「これで・・終わりだ。」

白鳥:「い、いや・・やめてっ!」

小池:「究極必殺技・ハイパープラネットノヴァ!!」

竜牙:「っ・・体が・・動かねぇ・・!」

小池:「消えろぉぉぉぉぉっ!!」

白鳥:「いやぁぁぁぁっ!!」

ハンター:「くそっ・・間に合えっ、間に合ってくれぇぇぇっ!!」

竜牙:「くっ・・すまねぇ・・夏海・・俺は・・ここまでみたいだ・・っ!」

(くっそぉぉぉっ!!)

神谷:「超必殺技・ヘブンズゲート!」

シュルルルル・・バァン!!

小池:「何っ・・?!」

竜牙:「!・・俺・・生きてる・・のか?」

神谷:「間一髪ってところね・・間に合ってよかった。」

竜牙:「な・・なんで・・。」

白鳥:「か、神谷先輩?!」

突如として現れた神谷を前に、ハンターはオーロラマウンテンでモンスターの大群に襲われた時の頃を思い出した。

神谷:「こ、こっちに来たわよ!」

ハンター:「ガイアソード!」

ハンターが右手を広げると、実体のない光り輝く剣が右手に生えていく・・!

ハンター:「はぁぁぁっ!」

ズバババッ!

市原:「なっ・・。」

ハンター:「安心して、君たち2人には僕が手出しはさせない。」

市原:「ほ、本当に人間かよ・・。」

ハンター:「人間さ。ただちょっと戦う力を備えているだけだよ?」

神谷:「・・・・。」

ハンター:(ん?彼女は・・。)

ハンター:「っ・・やっぱり君はセイバーズだったのか!」

(オーロラマウンテンで始めて見た時からどこかで見たことあるなと思っていたんだ・・。)

竜牙:「朱里が・・セイバーズ?」

神谷:「目に見えるものだけが真実とは限らない。前に言ったでしょ、普段あなたたちに見せている姿だけが神谷朱里じゃないってことよ。」

小池:「何者だ・・。」

神谷:「神谷朱里。光の証の所有者、又の名を女王守護者(セイバーズクイーン)。」

白鳥:「セイバーズ・・クイーン?!」

竜牙:「う・・嘘だろ・・。」

神谷:「積もる話は後!竜くん、あなたは休んでて。」

竜牙:「で、でも・・あいつは!」

神谷:「大丈夫だから。」

小池:「ハッ!お前も俺の円盤に取り込んでやる。」

神谷:「そう簡単にいくかしら?」

小池:「俺は相手が女でも容赦はしない、究極必殺技・ハイパープラネットノヴァ!!」

神谷:「クロスアルカディアス!」

パン!

神谷が両手を合わせると小池のハイパープラネットノヴァが消し飛ぶ!

小池:「なっ!・・俺の技が消し飛んだだと・・っ?!」

神谷:「あら?この程度??」

小池:「くっ・・X技・レボリューションサーガ改っ!!」

神谷:「クロスアルカディアス!」

パン!

小池:「ま・・また消えた・・?!」

竜牙:「す・・すげぇ・・!」

神谷:「大層な台詞を吐いていた割に大したことないのね。」

小池:「だったら・・身動きがとれないようにしてやる!」

神谷:「へぇ~それは楽しみ。」

小池:「余裕こきやがって・・究極必殺技・激震滅!!」

神谷はそっと地面に手を置く。

神谷:「クロスアルカディアス。」

パン!

小池:「!・・激震滅でもダメなのか・・。」

神谷:「私は普通のセイバーズと違うわ、同じ感覚でいたらケガするわよ。いい、これは警告よ?」

小池:「っ・・セイバーズはセイバーズだろうが・・何が違うってんだぁぁぁっ!!」

神谷:「口で言っても分からないのなら・・X技・ホーリーブースト!!」

シュゥッ・・ズババァァァッ!!

神谷は両手から光の光線を放った!!

小池:「なんだよあれ・・くっ、暗黒衝撃波っ!!」

小池は暗黒衝撃波を発動したが、ホーリーブーストは衝撃波を貫通し容赦なく小池を貫く!

ビシュゥゥン!

小池:「っ・・がはっ!!」

神谷:「ホーリーブーストの光線を止めたいのなら、その程度の闇の力じゃまず無理よ。そして、この光線は対象物に当たると拡散する。」

小池:「!」

ドカァアン!ドカァアン!ドカァン!!

小池:「ぐあぁぁぁっ!!」

飛散してくる光線が小池の円盤を打ち砕く!!

パリン・・。

小池:「まずい・・円盤が!!」

壊れた円盤に刻まれていた1と2の数字から速水とスペードの死体が飛び出す!

竜牙:「!よ・・良かった・・本当に・・っ!!」

神谷:「竜くん。」

竜牙:「あ・・ありがとう、朱里。」

神谷:「ううん。私は当然のことをしただけ、後はあなたに任せるわ。」

竜牙:「え・・。」

神谷:「彼は今、闇の中にいる・・暗黒衝撃波を通じて彼の痛みがひしひしと伝わってきたの。でも、私には彼を救ってあげられない、本当の意味で彼を救ってあげられるのは・・あなたしかいない。」

竜牙:「・・・お前。」

神谷:「相手を思いやる気持ちを忘れたら駄目だということを私はあなたから教わったわ。忘れてはいけないとっても大切な事を。そんなあなたならきっと・・彼を救うことだって出来る!」

竜牙:「っ・・・。」

竜牙の瞳から涙が落ちる。


神谷:「立ち上がれ、剣崎竜牙!」


竜牙:「うぉぉぉぉっ!!」

竜牙は力を振り絞り、再び立ち上がる!

竜牙:;「ありがとう・・朱里っ!」

小池:「っ・・ここで・・・ここで終わるわけにはいかないっ!!」

竜牙:「小池・・残ってる力すべてを・・俺にぶつけて来い!」

小池:「!」

竜牙:「お前の想い・・すべて俺にぶつけて来い!!」

小池:「上等だ・・どちらにせよ・・これが最後の攻撃になる。」

竜牙は右手を鞘に刺したドラゴンソードにもっていく・・。

そして小池もボロボロになったナックルグローブをはめ直し、構える。

竜牙:「行くぞ!これが俺の持てる力のすべてを出しだ究極必殺技・ブラストクロスパラディン!」

小池:「くたばれ剣崎!究極必殺技・ソニックゼロブレイク!」

ハンター:「あれは・・レイクの究極必殺技!」

2人の高速連打攻撃が激しくぶつかり・・空気が振動していく!!


82話/友情の合体必殺技!!


竜牙:「うぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」

小池:「うぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」

バシバシバシバシバシバシバシバシバシバシ・・・!!

竜牙:「っ・・・ここに来グラビティブレードを受け止めた時の痛みが・・っ!」

小池:「もらった!」

竜牙:「剣舞眼!」

小池:「うぉぉぉぉっ!」

バシィッ!

小池:「俺の最後の一撃を・・受け止めた・・だと・・?!」

竜牙:「痛っ・・素手で掴むと痛ってぇな・・これ・・。」

小池:「くっ・・!」

竜牙:「大事な一発を忘れてたぜ・・これは・・。」

竜牙は半身になって小池の拳を受け止めている方と逆の手で拳を握る!

同時にギャラクシーブレードは竜牙の手を離れてそのまま落下する。

竜牙:「亡くなったお前の親友の分だ・・おらぁっ!」

バシィッ!

小池:「がは・・っ・・!」

ドサッ!

小池はその場に倒れた。

竜牙:「ハァ・・ハァ・・まだ・・やんのか?」

小池:「っ・・くっ・・くそっ・・!!」

竜牙:「どんだけ負けたくないんだよ!いい加減、負けを認めろよバカ!!」

小池:「んな簡単に認められるかバカ・・。ここでお前を認めちまったら・・俺は自分で自分がこれまで生きてきた人生を否定することになっちまう。」

竜牙:「俺は別にお前が生きてきた道を否定はしてねぇよ。前話した時もお前の努力を否定はしてなかったろ?」

小池:「・・・。」

竜牙:「ってだんまりかよ!そういやお前、前に聞いたよな、心の強さってのは何なんだ?って。」

小池:「・・ああ。」

竜牙:「丁度いい機会だし、教えてやる。心の強さ、それは誰かを認める強さのことだ。俺も完璧じゃない、お前だってそうだろ?でも、人より優れている部分だってあるはずだ。他人のそーいう強い部分を心から認めることができる強さの事を俺は心の強さだと思っている。自分から心を開いて、他人を心から受け入れようとしなきゃ自分を受け入れてくれるわけがないだろ?人は自分という存在を他人に認めてもらう為に、己の地位を確立しとようとする傾向がある。だからイジメみたいなことが起きてしまうんだ。」

小池:「誰かを認める強さ・・。」

竜牙:「そうだ。話を聞いた限りだと、お前の親友はその強さを持っていたんじゃないか?お前はどうなんだ?」

小池:「俺は・・ずっと避けていた。両親が交通事故で亡くなっててよ・・周囲の人間が哀れみの目で俺を見ていると感じて・・クラスの連中とずっと距離を置いてきた。」

竜牙:「だとしたら逆にお前のことを見ている人たちは、お前を受け入れられなかっただろうな。自分のことを避ける人と進んで友達になろうとは思わないだろ?それが数珠繋ぎのようにずっと連鎖していって、いじめに発展していったのかもしれない。」

小池:「じゃあ・・やっぱり・・鋼が死んだのは・・俺の・・。」

竜牙:「なんでそーなるんだ。今ならよく分かるぜ。お前の親友の気持ちが。」

小池:「!また知ったような口を・・っ!!」

竜牙:「お前を見てて苦しかったんだよ、お前の親友は。だから拳を振ったんだ!俺も同じだ・・お前を助けたかったから、戦ったんだ。お前が苦しそうにしてたの・・見てきたからよ。」

小池:「っ・・・!」

鋼:「いじめる方は面白半分で人を苦しめる!でもいじめられる方はいつだって本気(マジ)で立ち向かってんだよ!」

小池:「うっ・・ううっ・・!」

ポロッ・・ポロッ・・。

小池:「俺は・・バカヤローだっ・・。」

竜牙:「ああ・・そうだな。」

小池は涙を拭う・・。

小池:「俺の・・負けだ。」

竜牙:「小池・・。」

小池:「剣崎、俺にとどめを刺してくれ。」

竜牙:「!何言ってんだ・・。」

小池:「俺は沢山の人を殺めた組織に加担した、責任はとらなければならない。」

竜牙:「だから死ぬって言うんならお断りだ。」

小池:「!」

竜牙:「お前は俺の(ダチ)だ!殺さないし絶対に死なせない・・死ぬぐらいなら生きて殺しちまった人以上の人達をモンスターから救ってやれ。」

小池:「・・っ!」

小池の目が再び潤む・・。

竜牙:「聞こえなかったか?死ぬぐらいなら・・生きて俺に協力しろバカヤロー。」

小池:「うっ・・うううっ・・ったよ・・。」

竜牙:「んな小せぇ声じゃ聞こえねぇよ・・もっと大きい声で!」

小池:「分かったよ!」

竜牙:「へっ・・やっと目が晴れたな。」

ハンター:「・・良かった・・。」

白鳥:「うっ・・ううっ!」

神谷:「うん・・流石ね。私の目に狂いはなかった。」

瞳:「よくもまぁ無様な負け方をしてくれたわね・・共士郎!」

小池:「っ・・。」

瞳:「あなたに魔王の力を授けた私が馬鹿だったわ。」

スペード:「剣崎!」

速水:「部長!」

竜牙:「!・・・・スペード・・速水?!」

(な、なんで・・!)

白鳥:「神谷先輩が・・生き返らせてくれたんですぅ~っ!」

竜牙:「朱里が?」

神谷:「そう、私の治癒する力でね。正直、奇跡だわ。後一歩遅れてたら間に合わなかった。」

竜牙:「朱里・・大きな借りができちゃったな。」

神谷:「ゲストは揃ったわ。最終決戦と行こうじゃない!」

瞳:「随分と舐めてくれるじゃない。」

神谷:「2人とも、受け取って!」

竜牙:「え?」

小池:「?」

神谷:「アルフォースゾーン!」

小池:「これは・・!」

竜牙と小池を小さな球体が包み込む!

竜牙:「傷が治っていく・・!」

ハンター:「この技は、神谷さんが銀河くんと速水くんを助けた技だよ。」

竜牙:「これが・・すげェ!」

小池:「剣崎。」

竜牙:「?」

小池:「また・・一勝に戦ってくれるか?」

竜牙:「ああ!待ってたぜ、その言葉っ!!」

瞳:「一撃で終わらせてあげるわ・・奥義・ビックバンドラゲリオン!!」

シュッ!

瞳:「!消えたっ・・。」

小池は走りながらアルティメットフォームに姿を変えていく!

小池:「ビースト細胞!」

竜牙:「ハヤブサランニングストーム!」

2人は目にも止まらない速度で駆ける!

瞳:「ちょこまかと・・。」

ブラッディは両腕をクロスさせ、両手から黒い剣を作り出す。

竜牙:「真ドラゴンソード!」

瞳:「シャドウソード!」

カキン!!

カキン!カキン!カキン!

互いの剣がぶつかり合い、火花を散らす!

瞳:「この程度?」

竜牙:「へっ!」

シュルルルッ!!

小池:「奥義・レジェンドライブ!!」

瞳:「っ!」

(しまった・・いつの間に!)

シュゥッ!

ブラッディはギリギリでレジェンドライブの回転を交わす!

竜牙:「どこ見てんだ?」

ブラッディ:「っ!」

竜牙:「超必殺技・ドラグアーマー・バーストモード!!」

シュッ・・バッシィィン!!

竜牙の竜装を纏った炎の拳が瞳の顔面を殴り飛ばす!!

ハンター:「速い・・!」

瞳:「っ・・よくもぉっ!!」

小池:「剣崎!同時攻撃だ!!」

竜牙:「オウ!」

小池・竜牙:「「「究極必殺技・・。」」

瞳:「究極必殺技・ゼロフェニックス!」

キシャァァァッ!!

竜牙:「!これって俺のレジェンドラゴンみたいな・・。」

(攻撃が生物のような形に変化している!!)

小池:「不死鳥のエネルギー砲か・・しかし、何て威力だ!」

竜牙:「飲み込まれてたまるか・・ブラストクロスパラディン!」

小池:「ソニックゼロブレイク!」

ドカドカドカドカドカドカッ!!

瞳:「そんなっ・・私のゼロフェニックスが押し負けてる・・?!」

(共士郎の連打攻撃の僅かな間・・そのインターバルの間に剣崎の連打攻撃が入ることで相乗効果が起きているってこと?!技の威力が飛躍的に跳ね上がっている・・っ・・押し返せない・・っ!!)

竜牙:「これが俺たちの合体必殺技・・。」

小池:「ファイナルパラディンブレイクだ!!」

竜牙・小池:「「うぉぉぉぉぉっ!!」」

瞳:「ぐああっ!!」

ブラッディはゼロフェニックスごと弾き飛ばされた!

ドカァァン!!

小池:「お前の・・負けだ。」

瞳:「こんな負け方・・認めない!私の・・。」

タッ・・・タッタッタッ!!

ブラッディはシャドウソードを握り、竜牙に向けて突っ込む!

竜牙:「!」

(くっ・・油断していた・・・反応が間に合わねぇ!!)

瞳:「私の復讐はここで終われないっ!」

グサッ・・!

小池:「がはっ・・!」

竜牙:「なっ・・!」

小池は竜牙をかばって腹部から血を流す・・。

ポタッ・・ポタッ・・。

小池:「痛っ・・!」

瞳:「どうして・・どうして邪魔をするのよっ共士郎!!」

竜牙:「小池!おい、小池!!」

小池:「剣崎・・俺、お前と出会えて良かったよ。おかげで・・最後の最後で救われた・・大切な事にやっと気づけたんだ。」

竜牙:「別れの言葉みたいな台詞やめろ・・何考えてんだ!!」

小池:「最後に自分の過ちに気づけてよかった・・天国で・・胸を張って鋼と会えそうだ。」

小池はそのまま力尽きる・・。

竜牙:「おい・・おい小池っ!!」

神谷:「竜くん!私に任せて!!」

竜牙:「た、頼む朱里!」

神谷:「アルフォースゾーン!」

瞳:「私のせいで・・共士郎が・・。」

場は静まり返っていた。神谷が小池を治療している音だけが静かに響き渡る・・。

白鳥:「は、ハンター・・。」

ハンター:「小池くん・・!」

速水:「小池先輩・・。」

スペード:「っ・・。」

竜牙:「お前何やってんだよ・・俺と一緒に戦えって言ったじゃないか!戻って来い、小池ぇぇぇっ!!」


83話/人は辛く苦しい壁を乗り越える事で強くなる


神谷が治療を初めて一時間が経過したが小池の心臓は止まったまま動いてくれない。

神谷の力も限界に近づいてきた。

神谷:「・・竜くん、残念だけどこれ以上は・・。」

竜牙:「な・・なんでだよ・・なんで!」

瞳:「・・代わっていただけるかしら?」

神谷:「あなた!誰のせいで彼がこうなったと思っているの?」

竜牙:「ざけんなっ!」

竜牙はブラッディの襟を引っ張った!

瞳:「自分でもおかしな事を言っているのは分かっている。でも共士郎を殺す気はなかったの・・だから・・お願い。」

竜牙:「・・助けられるんだな?」

瞳:「ええ。」

神谷:「いいの?竜くん。」

スペード:「剣崎、正気か?」

速水:「そうですよ、コイツは今回の騒動の首謀者なんですよ!!」

竜牙:「分かってる。でも、あいつをこんなところで死なせたくない!もう・・あいつを助けるにはコイツに賭けるしかないんだ!」

神谷が小池の側を離れると、ブラッディがゆっくりと腰をかける。

血まみれの小池を見て、ブラッディは涙を流した。

瞳:「共士郎・・ごめんね、私のせいで・・こんな姿に・・。」

(今、助けてあげるから!)

瞳:「チェンジザリカバリー!」

シュルルル・・。

小池:「うっ!・・げほっ、げほっ!!」

竜牙:「こ、小池!」

瞳:「息を吹き返したのね・・よし、もう一息!」

小池:「!・・ブラッディ、お前まさか・・!!」

瞳はゆっくりとほほ笑む。

小池:「ふ、ふざけるな!おい剣崎、ブラッディを止めろ!!」

竜牙:「な、何言って・・。」

小池:「コイツが使っているチェンジザリカバリーは、使用者と技をかけた対象者の生存状況を反転させる技だ。つまり、一度死んでいた俺が生き返ったということは・・。」

竜牙:「!」

瞳:「いいのよ・・元々は私のせいなんだから。あなたの為ならこの命・・神に返しても構わない。」

小池:「何言ってんだ!」

瞳:「動かないで・・後ちょっとなの!」

小池:「罪滅ぼしのつもりか?」

瞳:「ううん、違うの。あなたに死んでほしくない・・そう思っただけ。」

小池:「だからって・・お前、復讐はどうするんだ?あんなに恨んでいたじゃないか・・。」

瞳:「それはあなたも同じでしょ。でも、あなたと剣崎を見て考え方が大きく変わったの。」

小池:「変わった?」

瞳:「強い者が弱い者を支配する。幼い頃から私はそういう人間の在り方しか見てこなかった。でも、それは独裁者の傲慢な支配欲でしかない。たとえそれが自然界の掟であったとしても人は違う。そう考えを改め始めたのよ。剣崎が言ってたじゃない?誰にだって欠点はあるんだ。でも人は支え合うことで弱点(それ)を補うことができる。人は一人では生きていけないって。」

小池:「・・・。」

瞳:「確かに私の心の傷が一生消えることはない。でもみんながみんながそういう人間ばかりじゃない、あなたの友人みたいに、友達が間違った方向に進もうとしているのを止める為、必死に体を張る人間もいるって事を今回の件で学んだわ。あなたはいい友人に恵まれてるわ、本当に。」

小池:「だったら・・なんで最後にあんな攻撃を・・。」

瞳:「あなたと一緒よ、ギリギリまで認めたくなかった。自分で自分がこれまで生きてきた人生を否定したくなかったのよ・・。でも、あなたを失うかもしれないって状況に陥って・・そんな事、どうでも良くなった。」

小池:「っ・・・ブラッディ・・。」

瞳:「後少しよ・・頑張って!」

小池:「ここで死んだら終わりなんだぞ?!まだやり直せる、ここまで俺は回復したんだ・・もう技を止めてもいいじゃないか!!」

瞳:「私はいいの。」

小池:「良くない!一緒にやり直せるだろうが!!」

瞳:「私、あなたの事薄情な人とばかり思ってたけど、全然違ったわ。情に厚いカッコイイ男じゃない。今のあなたは・・ちょっとタイプかも。」

小池:「こんな時に何言ってんだ!とにかく手を止めろ、早く!!」

瞳:「共士郎、耳を貸して・・。」

小池:「・・・本当か?」

瞳:「やってみて。今のあなたなら・・私と違う人生を・・歩んで・・いけ・・る。」

ドサッ。

ブラッディはその場に倒れた・・。

小池:「おい・・しっかりしろブラッディ!!」

急いで神谷が脈拍を測りに行く・・だが。

神谷:「小池くん、残念だけど彼女は・・もう・・。」

小池:「ううっ・・・うわぁぁぁぁああぁぁぁっ!!」

竜牙:「っ・・くっ・・。」

ハンター:「復讐を追い求めてきた者の末路・・か。」

竜牙:「ハンター・・お前、その言い方は・・。」

ハンター:「復讐は憎しみと悲しみしか生まない・・戦争がいい例だ。僕はよく知っている・・職業柄ね。」

竜牙:「・・・憎しみと悲しみしか生まない・・か。」

ハンター:「今はそっとしておこう。」

竜牙:「分かった・・朱里!」

神谷:「・・。」

竜牙:「ちょっといいか?」

神谷:「・・場所を変えよ。」

竜牙:「分かった。」

スペード:「剣崎、小池のことは俺たちが見とくよ。」

竜牙:「ああ・・悪りぃな。」

竜牙と神谷は近くの湖まで移動し、腰をかけた。

竜牙:「色々と聞きたいことはあるんだけど、とりあえず・・。」

神谷:「とりあえず?」

竜牙:「ごめん!」

神谷:「!な、なんで謝るのよ・・。」

竜牙:「オーロラ島でのデートの時、お前に色々と言い過ぎた事・・ずっと謝りたかったんだ。」

神谷:「謝る必要なんてない!」

竜牙:「えっ・・。」

神谷:「謝らなければならないのは私のほうだよ!あの後ね・・大事な幼馴染みを2人も傷つけてしまったことに対する罪悪感で胸が苦しかった。でもこれは自業自得・・分かってはいたんだけどね。あの時は、泣きすぎて目が真っ赤に腫れ上がっちゃって・・。だから、パパに迎に来てもらってこっそりオーロラ島を抜け出したの。その節は心配かけて本当にごめんなさい!大和や雄介にも事情は伝えてる。ちゃんとお詫びもしたよ。でも・・竜くんと夏海っちには・・やっぱりその・・何て謝ったらいいのか、どんな顔して会いに行けばいいのか分からなくて・・ずっと行けず仕舞いだったの・・本当にごめんなさい!」

竜牙:「朱里・・・。」

神谷:「あなたのおかげで目が覚めたの、本当にありがとう!」

竜牙:「ありがとうはこっちの台詞だよ。お前がいなかったら本当にやばかった・・まさか俺に謝るために福岡(こっち)に来てたのか?」

神谷:「うん・・色恋沙汰で大切な人との関係を断ち切りたくなかったから。」

竜牙:「そっか・・。」

神谷:「でも、光ヶ丘学院がこんな事になっているなんて思ってもなかったけどね。こっちに来て正解だった。」

竜牙:「そういや、お前帰りはどうするんだ?」

神谷:「えっと・・まさかこんなに長く福岡に滞在することになると踏んでなくて・・その・・。」

竜牙:「帰りの便がないなら(うち)来るか?」

神谷:「え?!で、でも迷惑が・・。」

竜牙:「いいって!それにお前にはまだ聞きたいことがあるんだ。」

神谷:「セイバーズのことよね・・分かった。じゃあお言葉に甘えちゃおうかな。」

竜牙:「一応言っておくけど、夏海はもう向こうに行ちゃったから変に緊張する必要はないぞ。」

神谷:「変に気を遣わなくていいよ。ま、その話はひとまず置いといて小池くんたちのところに戻りましょう。」


84話/最後の決着!終止符を放て!!


小池:「来たか剣崎。」

竜牙:「小池、もう大丈夫なのか?」

小池:「俺はお前ほどやわじゃない。」

竜牙:「おまっ!人が心配してやってんのに・・。」

小池は微笑む。

小池:「今から今回の一件で殺されてしまった人々を復活させる、もちろんボロボロになってしまった光ヶ丘学院も再生させるつもりだ。」

竜牙:「!そんなことができるのか・・。」

小池:「魔王力が封印されていた前の状態に巻き戻すと言った方がいいかもしれない。成功するかは分からんがやってみる価値はある。ブラッディが死ぬ間際に俺にやり方を教えてくれた。」

竜牙:「待てよ、もし成功したらブラッディたちだって生き返るんじゃないのか?」

小池:「いや、ブラッディたちは魔王力を体に流し込んでいた。魔王力を再びこの地に戻す以上、あいつらが復活することはないだろうな。」

速水:「いいんですか?せっかく手に入れた力なのに・・。」

小池:「いいさ、もう俺には必要のない力だ。すべてを犠牲にして手に入れたこの力は、俺が扱うには過ぎた力だったんだ。」

竜牙:「小池・・。」

小池:「それに・・今の俺には仲間がいる。」

(そうだろ、鋼。)

ハンター:「変わったね、小池くん。」

小池は自身の体に魔王力を流し込み、もう一度魔王形態に変化する。

小池:「行くぞ・・。」

小池はそのまま地面に手の平を押し付けて叫ぶ!

小池:「うぉぉぉぉぉっ!!」

ドッカァァァァァン!!

巨大な爆発が起こる・:そして!

小池:「剣崎、目を開けてみろ。」

竜牙:「・・・ん~んん?!」

竜牙の目の前には崩壊する前の光ヶ丘学院が映る。

小池:「成功したみたいだ。」

速水:「学院を歩いている人たち・・みんな何事もなかったかのように過ごしていますね。」

スペード:「!速水、見てみろ。」

速水はスマートフォンを開く。

速水:「時間が巻き戻ってる?!」

小池:「ザークが襲撃する前の状態に何もかも戻っているんだ。恐らくお前たちのケガもなくなっているはずだ。」

スペード:「!ほんとだ、制服も元の状態に戻っている・・こんなことが・・。」

小池:「あの騒動事態がなかったことになった事で、生贄として死んだはずの人間もすべて元通りになっている。あの時間の記憶が残っている人間はここにいるメンバーだけだ。ブラッディの教えてくれた方法が本当に成功したのなら、そーいう状態になってると思う。」

竜牙:「す、すげぇよ小池!」

ハンター:「・・・。」

竜牙:「なんだよハンター、急に黙り込んで。」

ハンター:「大成功というわけではなさそうだね。」

竜牙:「え?」

小池:「ちっ・・余計なもんまで甦らせっちまった。」

ダークモンスター:「グォォオオオッ!!」

竜牙:「!こいつらは・・。」

小池:「生贄となった人間を取り押さえたまま一緒に魔王力復活の生贄となったダークモンスターたちが蘇生したんだ!」

速水:「ひぃ・・ふぅ・・みぃ・・6体・・幸いあいつらは門の外にいます。今なら人目に付かず討伐が出来ますよ!」

スペード:「おまけに俺たちの人数も6人だ。」

竜牙:「やろう小池!」

小池:「ああ・・ここで仕留める!」

竜牙:「覇王からの情報だとあいつらの弱点は口の中だ。外部への攻撃を数撃ってもすぐに再生しちまう。」

神谷:「なら・・X技・ホーリーブースト!」

シュッ・・ドッカァァン!!

ダークモンスター:「ギャァァアアッ?!!」

ダークモンスターたちは神谷の広範囲攻撃に翻弄され身動きが封じられる!

速水:「今なら・・氷河転結・絶対零度!!」

カチカチカチ・・。

地面から流れてくる速水の氷結攻撃が身動きの封じられたダークモンスターたちの足を止めていく・・。

スペード:「いいぞ速水!次は俺の番だ!!」

(フィールドワープ!)

神谷:「ここって・・ごみ焼却場?!」

スペード:「ここなら派手に爆破させようと問題はねぇ・・剣崎、小池!」

竜牙:「奥義・レジェンドラゴン!!」

小池:「奥義・レジェンドライブ!!」

白鳥:「私がお二人をサポートしますよ、X技・ムゲン・ザ・カッター!!」

白鳥のエアーカッターが6体のダークモンスターの口に突き刺さり、広がる!

竜牙・小池:「くらえっ!!」

ドッカァアン!



小池:「みんな・・すまなかった。これでよーやく終いだ。」

竜牙:「・・・。」

スッ・・。

小池:「!」

竜牙は手を差し出す。

竜牙:「お帰り、小池!」

小池:「っ・・!」

速水:「小池先輩、泣きすぎて目元が腫れてますよ~?」

小池:「なっ!んなことねぇよ!」

小池は竜牙の手を取り、握手する。

スペード:「ったく泣きたいのはこっちだぜ・・こちとら一度殺されたんだからよ。」

神谷:「まぁいいじゃない、終わりよければすべてよしで。彼、ずっと抱えていたものがなくなったからなのか、凄くいい顔してるもの。」

ハンター:「小池くんはきっと弱かったあの頃の自分を超えたかったんだ。でも欠けていたのは表面的な強さの方じゃなかった。人の輪に溶け込もうとする勇気、これから大人になっていく上で必要不可欠な強さが彼には欠けていたんだ。けど、そーいった部分って第三者の目線から指摘されないと自分で気づくのは難しい。きっと、今回の件は彼にとって人生の大きな転機になっただろうね。」

竜牙:「あ~しっかし腹減ったなー。」

・・・。

小池:「な、なんだよ・・その目は。」

竜牙:「あんだけの事しでかしたんだ、小池パイセンのマネーで何か奢ってくれてもいいんだぜ?」

小池は手を振りほどく!

小池:「んだよ、そんな事か。言葉で言え言葉で。好きなものを言えよ、ちゃんと全員に奢ってやる。」

竜牙:「フュ~さすが小池!」

ハンター:「あ、じゃあ僕は寿司がいいかなぁ~。」

竜牙:「何言ってんだ、学生といえばマ〇クが王道だろ?」

ハンター:「何言ってんの!タダ飯だよ?!鮮魚食べようよ、奢りだし!」

竜牙:「うわっ、ないわお前。」

白鳥:「年下の・・しかも高校生からいくら奢ってもらう気でいるんですか?」

スペード:「いるよな、こういうやつ。」

速水:「ええ。奢ってもらうからと言ってここぞとばかりに高価なものを頼む人。」

ハンター:「ちょっ・・!なんだい君たち、その目は!!」

小池:「フッ・・。」

神谷:「やれやれ。」


85話/衝撃!ハンターの秘密


神谷:「ほ、本当にお邪魔して大丈夫なの?」

竜牙:「お前なぁ~そのやりとり、これで何回目だよ。」

神谷:「だ、だって・・。」

竜牙:「逆に聞くけどこんな時間から泊めさせてもらう場所探す気か?」

神谷:「うっ・・。」

竜牙:「ほら、着いたぞ。」

楓:「おかえりなさい竜牙・・あら?」

神谷:「お、お久しぶりです・・楓おばさん。」

楓:「まぁ朱里ちゃん!どうしたの?」

竜牙:「あ~朱里、友達と遊んでて帰りの便に間に合わなかったんだ。今晩だけうちで泊めさせてほしいんだけど大丈夫?」

楓:「そういうことだったのね!気にしなくていいわよ、客室が空いてるからそこを使って。」

神谷:「え・・そんなあっさり・・。」

竜牙:「わりとゆるいんだ、母さんはその辺。」

神谷:「じ、じゃあお言葉に甘えて・・。」

ガチャッ。

竜牙:「客室はここだな。」

神谷:「うわぁ・・和室だ!!」

竜牙:「すっげェ目をキラキラさせてんな・・。ボンボンのお前からしたら窮屈だろこの部屋は。」

神谷:「そんな事ないよ!私、日本家屋の和室ってずっと憧れてたの!ん~畳のいいにおい~。」

楓:「竜牙~?もう夜遅いからあまりはしゃがないでね〜。」

竜牙:「わーってるよ!とりあえず、母さんが座布団敷いてくれてるから腰かけてよ。」

神谷:「ごめんね、ありがとう。」

竜牙はお茶を置いて、神谷の正面に腰をかける。

竜牙:「んで、お前はいつぐらいからセイバーズやってるんだ?」

神谷:「去年、オーロラマウンテンに登ったでしょ?実はね、あの時すでに私はセイバーズだったの。竜くんや夏海っちたちにはバレないようにずっと隠し続けていたんだ。」

竜牙:「!そんな前から・・。」

神谷:「でもまさかあなたたちまでモンスターセイバーズになっているとは思わなかった。」

竜牙:「俺と夏海は去年の4月半ばあたりからセイバーズとして戦う力をハンターから授かったんだ。」

神谷:「光ヶ丘学院でモンスターが出始めた頃と重なる・・なるほど、竜くんや夏海っちは光ヶ丘学院の生徒・・2人をセイバーズにすればより迅速にモンスターを討伐できる。考えたわね、ハンター。」

竜牙:「まぁ夏海に至っては自分からセイバーズになった例外だけどな。」

神谷:「へぇ~夏海が・・。」

竜牙:「ってか、オーロラマウンテンでモンスターの襲撃に合った時、なんで戦わなかったんだ?」

神谷:「あの時、私の目から見てすでに戦闘中の3人のセイバーズ、そしてハンターがいたわ。なら、無理に力を使う必要はないと判断した、それだけの事よ。」

竜牙:「いや別に戦ったっていいだろ、出し惜しみする必要はねぇんじゃ・・。」

神谷:「そういうわけにはいかない、私は女王守護者(セイバーズクイーン)だから。」

竜牙:「あ!それ・・気になってたんだ。なんなんだ・・そのセイバーズクイーンって?」

神谷:「あなたたちモンスターセイバーズを守る力を得た守護者のことを指す呼び方よ。」

竜牙:「セイバーズを守る・・?」

神谷:「セイバーズと言っても人である以上、戦死するリスクを避けることはできない。今回のザークがいい例よ、あのまま小池くんの攻撃を食らってたら・・竜くん、どうなっていたと思う?」

竜牙:「確実に死んでいたな・・。」

神谷:「でしょ?そういったリスクを少しでもなくす為にキングとクイーンを麒麟はつくりあげた。力を生み出す力を持つ王守護者(セイバーズキング)、力を消す力を持つ女王守護者(セイバーズクイーン)・・セイバーズを守るための力を授けた2人のセイバーズをね。」

竜牙:「きりん・・きりん・・??」

神谷:「首の長い方じゃないわよ、麒麟・・神様と言った方がいいかしら。私たちモンスターセイバーズの創始者。」

竜牙:「!」

神谷:「セイバーズとして戦い続けていれば、いずれ顔を合わせると時が訪れるかもしれないわね。」

竜牙:「朱里は会った事があるのか?」

神谷:「直接お会いしたことはないけど、声だけならテレパシーを通じて聞いたことがあるかな。」

竜牙:「セイバーズの・・創始者か・・。」

神谷:「話が脱線してしまったわね、私たちの力は神にも匹敵する人知を超えた力。分かり易く例えるなら”切り札”ってことよ。だからこそ必要以上に手の内を明かす必要はない、敵にも味方にも。現状、どこに敵が潜んでいるか正直分からないわ、敵を欺くにはまず味方からってこと。今まで黙っててごめんね。」

竜牙:「そういうことだったのか。」

神谷:「分かってもらえたようで何よりだわ、ねぇネネ?」

ネネ:「私の存在に気づいてたなんてさすがは神谷ちゃんね。」

竜牙:「!うわっ・・ど、どこから現れたんだ?!」

神谷:「ネネの能力・・自然同化。その名の如く、姿や気配を消すことができる特殊な力よ。」

竜牙:「聞いたことがある・・!」

スペード:「ぶっちゃげ、予選の時点からヤバかったからな。文字通り最初からクライマックスだった。」

竜牙:「そうなのか?」

スペード:「ミラ=シスカって言うシスターが予選に参加してたの、覚えてるか?」

竜牙:「だ、誰?」

スペード:「ん~まぁいいや。そいつが自然同化っていう姿や気配を消す力を持っててよ、かなり苦しめられたんだわ。」

竜牙:「スゲェ力だなそれ!そんな奴が予選で敗退したのかよ。」

スペード:「まだ成り立てのやつだったみたいでさ、使える技が自然同化しかねぇから本選じゃまともに戦えないって言ってたよ。」

竜牙:「そうだ・・全国大会に参加していたミラ=シスカの能力!」

ネネ:「あら~ミラちゃんを知ってるの?!あの子、私の娘なの!!」

竜牙:「ええっ?!」

ネネ:「ネネ=シスカよ、よろしくね。」

神谷:「ネネはハンターと同じくキングダムセイバーズのメンバー、その一人なの。」

竜牙:「キングダムセイバーズ?」

神谷:「あれ・・竜くん、知らなかったの?」

竜牙:「朱里、その話詳しく聞かせてくれないか?」

竜牙:「なぁ、フォルテが原因なのか?モンスターが再び動き出した事と、全国各地でモンスターセイバーズになった人間たちの戦闘力の向上ってのが唐突過ぎる・・偶然とは思えない。」

ハンター:「いずれ話すべき時が来る。すまないね・・今の段階では不明確な部分が多い、まだ僕の口からは何も話せない。」

竜牙:「確証のない情報をむやみやたらと広めれば混乱を招くってか?ま、いいんだけどさ・・。」

ハンター:「話が早くて助かるよ、それじゃ僕はこれで。」

竜牙:「ずっと気になっていたんだ・・あいつが何者なのか。」

ハンター:「その必要はないよ。」

竜牙:「ハンター!」

ハンター:「君が裏でこそこそと情報収集をしていた事、僕は知ってるよ。覇王や銀河くんから話を聞いて自分なりに探りを入れていた感じかな?」

竜牙:「し、知ってたのかよ。」

ハンター:「当然。さて、前に僕は君と約束したからね。・・今がその話すべき時だ、君も知りたいんだろ?僕が何者なのかを。」

竜牙:「ああ。」

ハンター:「モンスターワールド、パラレルワールド、次元の狭間・・これらについては概ね理解しているはずだ。そういった部分は省いて説明していこうか。モンスターワールドが確認されたのは9年前、セントラル王国という異国の地で突如として出現した次元の狭間がきっかけなんだ。そこから出てきた超生物・・モンスター。王国はこの未知なる生物に対抗するべく、特殊な訓練を受けたハイソルジャーたちを王国に派遣した。これが後の初代モンスターセイバーズたち・・名をキングダムセイバーズ。そう・・僕らの事だ。」

竜牙:「!」

ハンター:「僕の本名は三島和人(ハンター)。ハンターという呼び名は僕の愛称と言ったところかな。そして、キングダムセイバーズとして呼ばれたかつての仲間たち、黎久(レイク)、ロイ・ターマー、ソフィア、ジー・ニコラス、キム・リリス、ネネ=シスカ、矢部隆弘(アース)、ギアスローバックフリード、ライ、エメラル翁、ソウルマリク・・かつて世界各国から厳選された12人のハイソルジャーたちは、王国を守る為に命がけで未知なる生物、モンスターと死闘を繰り広げていた。」

竜牙:「そんな前からモンスターが・・。」

ハンター:「戦争真っ只中のあくる日、僕らの夢の中に語りかけてきた者がいる。やつの名は麒麟。」

竜牙:「!麒麟・・さっき朱里が言っていた神様か・・。」

ハンター:「麒麟は僕らにこう言った。何者かが異世界を行き来きしている、そのせいで時空間の歪みが発生し、溝ができてしまったと。・・モンスターたちはそこから出入りしている、今ならまだ間に合う、取り返しのつかないことになる前に溝を埋めてほしいと。僕らにそう言い残して麒麟は、特殊な力を僕らに与えてくれたんだ。力を得た僕たちキングダムセイバーズは、その溝を見つけるために日々、モンスターを討伐しながらセントラル王国で溝の位置を探る為の捜索を始めた。捜索範囲は日に日に潰れていき、残ったエリアの捜索に足を踏み入れようとしたんだけど・・その日、とんでもない化け物と遭遇してしまったんだ。」

竜牙:「・・化け物?」

ハンター:「デストロイヤモンスター・・翼を生やした巨大な・・そう、竜のような容姿をしているモンスターだ。」

竜牙・神谷:「!」

ハンター:「コイツがまた強くてね・・戦いは長引き、僕らの体力も次第に限界まで追い込まれた。このままじゃ死人が出てしまう・・窮地に追い込まれた時、僕らの中で最年長だったエメラル翁が言った。奴の力は封印して抑え込むしかあるまい。残された力を振り絞って今のわしらに出来る事は限られている、やるしかないだろうと。そして・・。」

ロイ:「くそっ、封印するのが精一杯だった。」

レイク:「どうする、ハンター。恐らく時間の経過と共に奴の封印は弱まっていくぞ。」

ハンターは地面に突き刺さった愛用の剣を抜いて、目の前にいる巨大な龍と向き合う。

青龍:「いや、お前たちはよくやった。後は俺たち四聖獣に任せてほしい。」

ハンター:「僕のドラゴンソードの中に入ってくれないか青龍。こいつの中に入って見届けてほしいんだ、これから僕らキングダムセイバーズが選ぶ奴を倒す力、心を備えた最強のセイバーズたちの行く末を。そしてそのリーダーとなるモンスターセイバーズの生き様を。」

青龍:「何を言い出すかと思えば・・お前たちはこの国の王が雇った世界各国のハイソルジャーたち。さらに我らがボス、麒麟から特別な力を受け継いでいた。だが奴の力の前では封印するのが精一杯だったじゃないか。それにだ、お前たちの後継人が奴を倒せる保障はないだろう?」

ハンター:「僕たちの世代で倒せなくても、次の世代なら倒せるかもしれない。次の世代が倒せなかったとしても、また次の世代が倒せるかもしれないじゃないか!この戦いはここで終わりじゃないんだよ。青龍、人の強さって次の世代に託せる事なんだよ。そうやって人は進化していくんだ。」

青龍:「・・ほぅ、それは興味深いな。」

ハンター:「お前がこの剣の中に入ったら、僕はこのドラゴンソードを次のセイバーズたちを導くリーダーとなるべき存在に託す。その眼でそのセイバーズを見つめ、お前がその子を認めたら君の力を授けてほしい、奴を倒すために!」

竜牙:「!・・だからお前はコイツの後継人を探していたのか・・。」

竜牙はドラゴンソードを手に取り、見つめる。

ハンター:「うん。でも、僕だけじゃないんだ!こうやって動いているのは・・。」

竜牙:「どういう事?」

ハンター:「確かにデストロイヤを封印したことで溝がなくなりセントラル王国に平和が戻った。けどこれは束の間の平和でしかない。デストロイヤが再び地上に解き放たれる前に僕らは日本各地に散り、それぞれが自分の力を受け継ぐに値する後継人を探す旅に出た。より強いセイバーズを育てて来るべき決戦に備えるために。」

竜牙:「つまり、次元の狭間の正体は・・。」

ハンター:「君が推測している通りだよ。・・デストロイヤの封印が弱まり、力が漏れたことによる時空間の亀裂、間違いなくこれが次元の狭間の正体だ。ただ全部の歪みがそうとは限らない。ここ最近、頻繁に出現が確認されている次元の狭間に関しては、逃亡中の帝王フォルテが行き来きしたことで生まれた歪みだと僕と覇王は過程してる。そして、この過程が事実だとしたらセントラル王国で初めて出現した溝・・なぜそんなものが発生したのか・・自ずと一つの仮説ができてしまう。」

竜牙:「・・・あ!」

フォルテ:「戦う前に教えてやろう、私が何者で、なぜこんな実験を始めたのかを。」

竜牙:「!」

フォルテ:「私はパラレルワールドという別世界から来た生物、お前たちとは異なる生き物だ。」

竜牙:「パラレルワールド?!一体何の話をして・・。」

フォルテ:「私の住むパラレルワールドに存在する民は私のみ。だが、パラレルワールドから行ける世界の情報が流れ込んでくる不思議な世界だった。そういった情報が私の脳内に流れてくるんだよ。」

竜牙:「なんだこいつ、一体何の話を・・。」

ハンター:「ま、まさかパラレルワールドの生物がこの世界に来るなんて・・。」

竜牙:「ハンター、何か知ってるのか?」

ハンター:「い、いや・・なんでもない。」

フォルテ:「強さに飢えていた私は、二つの世界の存在を知ってしまったわけだ。」

ハンター:「!」

フォルテ:「モンスターと呼ばれる怪物が住みつくモンスターワールド。そして人という生き物が住みつく人間界、全く異なる生物たちの世界だ。とっさにイノベーションが起こったわけさ、この2つ生物を組み合わせたらどうなるかな?ってね。」

竜牙:「フォルテは人間界に足を踏み入れる為に異世界を行き来きしていた。それが原因で生じた歪みなんじゃないのか、その歪みの正体って!」

ハンター:「僕もあの時、今君が辿りついた答えと同じ答えに辿りついた。フォルテは人間界に足を踏み入れた時、すでにモンスターが彷徨っていたと言っていた・・これがフォルテが異世界を行き来きしたことで歪みが生じ、そのからモンスターが出入りしていたと仮説を立てれば辻褄が合ってしまう。」

竜牙:「なら・・スペードの言っていたように、フォルテの奴を国際警察より先にとっ捕まえるべきだな。じゃねえと国際警察があいつを追えば追うほどフォルテは逃げ続けるはずだ。それに連なって、次元の狭間の数も日に日に増えていくだろうし。」

ハンター:「うん、君は察しが良くて本当に助かるよ。」

神谷:「けど、そのフォルテ・・だっけ?どうやって見つけるのよ、手掛かりもないのに・・。」

ハンター:「その件に関しては、オーロラマウンテンの調査に行っている覇王と本田くんから有力な情報が届いてるよ。今日君の家に足を運んだのは、他でもない。これを見せたかったんだ。」

ハンターはスマートフォンを開き、画像を見せる。

竜牙:「・・これ!」

ハンター:「もうじき、彼もこっちに到着するはずだ。」

小池:「ハァハァ・・・こんな時間に人を呼び出すんじゃねぇよ。」

竜牙:「小池?!」

ハンター:「覇王が言っていた、ここはオルフェバンデモンが死守していた人通りの少ない隠し通路。この写真はその奥で撮影されたモノだ。ザークと関わり合いのあった君なら何が知っているんじゃないかい?」

ハンターはスマートフォンの画像を小池に見せる。

小池:「!・・・俺が呼ばれた理由(わけ)が分かったよ。よーは俺がブラッディから聞いたことを全て話せばいいんだな?」

ハンター:「うん、知ってることを全て教えてほしい。それに前々から気になっていたんだ、なぜ日本から離れたオーロラマウンテンであれだけのモンスターが生息していたのか・・僕なりに色々と考えてみたけど納得のいく答えに辿りつけない。」

小池:「ブラッディは言っていた、オーロラマウンテンはモンスターワールドでいうデストロイヤエリアと同じ位置にあると。」

神谷:「!」

ハンター:「デストロイヤエリア?!」

竜牙:「なんでそんな事、ブラッディに分かるんだよ。」

小池:「あいつは次元の狭間を行き来きできるらしい。幼い頃、デストロイヤに食われたことがあると言っていた。それ以来、次元の狭間を行き来きできるようになったって・・。」

ハンター:「そんなことが・・でもモンスターワールドと人間界は異なる別世界なはず。同じ位置にあるからっていう説明は・・流石に無理があるんじゃ・・。」

小池:「どうかな、二つの世界は表裏一体なのかもしれない。じゃなきゃ、こんな碑文がオーロラマウンテンに残っているはずがない。ジョーカーが封印されていたのも人間界だ。モンスターが俺たちの世界に足を踏み入れた以上、別世界と分けて考えない方がいいと俺は思うけどな。」

竜牙:「・・・。」

ハンター:「次元の狭間で繋がっている以上、2つの世界を離して考えない方がいい・・か。言われてみればそうかもしれない。・・小池くん、君に聞きたいことがもう一つある。この碑文が何なのか知ってるかい?」

小池:「その碑文にはザークの力の源、魔王力の片鱗が封印されていたんだ。ブラッディはそこから力を得てザークという組織を作り上げたらしい。」

神谷:「!そうだったの・・。」

小池:「オーロラマウンテンで発生した次元の狭間は、デストロイヤの封印が弱まり、力が漏れたことによる時空間の亀裂、よーはすべての根源だ。ゆえに光ヶ丘学院で発生したモノとは大きさが異なる。モンスターが大量に生息していたり、ロイヤルストレートフラッシュのような強力なモンスターが人間界にやってこれたのも、この次元の狭間が他のモノとは違い大きな裂け目となっているからだと俺は考えている。」

ハンター:「待ってくれ、君は今現在確認されている2つの次元の狭間はが異なるモノだと考えているのかい?」

小池:「その通りだ。光ヶ丘学院で発生した時空間の歪みは、戦国時代 この地に埋められた魔王の力が人間界側から影響を及ぼし、発生したモノだ。・・俺の先祖が魔王の力を埋めたせいでな。」

竜牙:「なんだって?!」

ハンター:「あの力は、君のご先祖様の力だったのか!」

小池:「ああ。けど光ヶ丘学院の方で発生した次元の狭間に関しては、俺が魔王の力を戻したことで消えたはずだ。魔王力が封印し直された事によって、魔王力が影響を与えたものすべてがリセットされたんだ。。」

竜牙:「じゃあ光ヶ丘学院がモンスターに襲撃されることはもうないんだな?」

ハンター:「それに関しては断言はできないと僕は思うよ。逃亡しているフォルテのせいで時空間の歪みはさらに増え続けているからね。」

小池:「もういいだろ、俺は知っている情報はこれで全部だ。」

ハンター:「ありがとう、小池くんのおかげでフォルテの移動範囲をかなり絞ることができた。」

ハンターは竜牙と目を合わせる。

竜牙:「ああ!オーロラマウンテンの次元の狭間、それが根源ならあの辺りを捜索していけばフォルテが現れるかもしれない!」

ハンター:「うん、僕は覇王に連絡するよ。」

竜牙:「なぁ小池、さっきからずっと気になっていたんだけど。」

小池:「ん?」

竜牙:「お前それ・・受験票か?」

小池:「レイクがよ・・もう一度光ヶ丘学院に転校してちゃんと高校卒業してこいってこれを・・。」

竜牙:「おおー!また、一緒に登校できるじゃねぇか!!」

小池:「でも俺は・・。」

竜牙:「んだよ?」

小池:「今更・・光ヶ丘に戻・・「そうと決まれば対策だな、編入試験対策!」」

小池:「お、おい・・!」

神谷:「楽しそうね、私も混ぜて!」

小池:「分かった!分かったから・・引っ張んなって!!」

引っ張られる小池のカバンから何か落ちたようだ。・・これは・・写真?

ハンター:「フフッ、いいなぁー青春だねぇ~。」

マ〇クで撮影した集合写真、竜牙たちと肩を組む小池は無邪気な笑顔を見せていた。


~to be continued



番外編09/生まれながらに背負った運命


これは数年ほど前の出来事である・・。

セントラル王国。

少年:「ハァハァ・・くそっ!」

男A:「くそっ、どこに行きやがった。」

男B:「子供の足でまだそう遠くまではいけないはず、探すんだ。」

男A:「ここまで運んでおいて取引きを前に逃がすなんて洒落にならないぞ!」

男B:「分かってる、絶対に見つけ出すぞ。」

少年:「ったく・・高校生相手に見境なしかよ。」

少女:「・・・。」

少年:「うわっ?!」

少女:「追われてるの?」

少年:「っせぇ!関係ないだろ。」

少女:「む・・可愛くない。ガキの分際で。」

少年:「お前だってガキだからな?!」

男A:「おい、あっちから子供の声がしたぞ?」

少年:「やっべぇ・・。」

少女:「・・こっち。」

少年:「お、おい!!」

タッタッタッ!!

少年が謎の少女に連れてこられた場所は狭い路地裏だった。

少年:「お前、この辺りの地形に詳しいのか?」

少女:「・・部外者は黙秘。」

少年:「くっ・・俺がさっき言ったこと根にもってんな・・この!」

少女:「あの人たちは何なの?」

少年:「見りゃ分かるだろ、俺を追いかけて来てんだよ。」

少女:「・・なんで?」

少年:「俺の問いには答えないくせにグイグイ質問するな。」

少女:「・・ひねくれ者。」

少年:「お前に言われたくねぇ!」

少女:「私には知る権利がある。」

少年:「あ?」

少女:「ここは私の祖父が所有している土地、不法侵入なら見過ごせない。」

少年:「んだよ、そういうことなら早く言えよ。今すぐ出て行くから。」

少女:「・・当てはあるの?」

少年:「んなもんねぇよ、俺は一人だから・・。」

少女:「・・ぼっち。」

少年:「うるせぇ、言われなくても自覚してんだよ。」

少女:「君、名前は?」

少年:「足速師・・覇王。」

少女:「キラキラネーム・・名前負け。」

覇王:「くそ・・このヤロウ、黙って聞いてれば好き放題言いやがって・・。」

少女:「なんで追われてるの?」

覇王:「・・現実に振り出しに戻るってあるんだな、さっきから言ってるだろ?お前には関係ねぇって。」

少女:「それは答えになってない、言葉のキャッチボールができないの?」

覇王:「くっ・・この・・っ!!」

少女:「どんな理由があるにせよ、ストーカーに不法侵入・・警察に突き出す理由としては充分。」

覇王:「頼むから、警察は呼ばないでくれ。」

少女:「犯罪者の片棒を担ぐの?・・予備軍・・。」

覇王:「って言いながらどこに電話をかけているんだ?!頼むからやめてくれ!!」

少女:「なんで追われてるの?」

覇王:「分かったよ!話す、話すから!!」

少女:「起承転結で手短に。」

覇王:「うぐぐ・・我慢、我慢・・。」

少女:「どうぞ。」

覇王:「1千万。」

少女:「?」

覇王:「借用書に書かれていた金額だ。」

少女:「借用書・・あなた、借金をしてるの?」

覇王:「違う!俺の親の借金だ。」

少女:「?!」

覇王:「もう分かるだろ、俺とあまり関わらない方がいい。俺は借金取り(やつら)につけまわされている。」

少女:「親が・・子を売った?」

覇王:「いるんだよ、そういう親も。自分の子を所有物としてしか考えてないクソみたいな親がよ。」

少女:「・・ひどい・・。」

覇王:「覇王という名は偽名。本名まで話すつもりはないが、やつらから逃げ切るには世間の目をかいくぐるしかなかった。なんせ、ただの借金取りじゃないからな・・あいつらはマフィアとの繋がりもあるマジでヤバい奴らだ。」

少女:「なんで警察に相談しないの?」

覇王:「偽名を使って色々とやり過ごしているんだよ、パスポートの取得とかな。警察に勘づかれた日には本当に終わっちまう。」

少女:「可哀そう・・哀れ。」

覇王:「るせぇ!とにかく、そういう事だから俺に関わるな。」

少女:「でも話を聞いてしまった以上、放っておくわけにもいかない。」

覇王:「は?お前、死にたいのか?」

少女:「いいから、黙ってついてきなよ。」

覇王:「?」

覇王は少女に連れられてとある宿谷にやってきた。

ソウル:「ん?帰って来たか。」

少女:「ただいま、パパ。」

ソウル:「ん?その男は・・なんだ?」

少女:「借金取りに追われているDK(男子高校生)よ。」

ソウル:「とんだド〇キーコングがいたものだな。」

少女:「そのDKじゃないわ、彼は高校生よ。ま、フツーの高校生じゃ・・ないわね。」

ソウル:「ほう、親の目をかいくぐって淫行か。いい度胸じゃないか。」

覇王:「このおっさん、頭大丈夫か?」

少女:「借金を押し付けられ、借金取りから逃げ続ける哀れなDK・・逸材だと思わない?」

ソウル:「文美、まさか放っからそのつもりで・・。」

覇王:「お前、あやみって言うのか?」

出野:「出野文美(いでのあやみ)よ、そう言えば私の名前は教えてなかったわ。」

ソウル:「文美はやらんぞ!」

覇王:「急になんだ!」

ソウル:「お前みたいなド〇キーコングに俺の可愛い愛娘はやらん!断じて!!」

覇王:「くそっ、勝手に話を進めるな!んなこと一言も言ってねぇよ!!」

出野:「彼は両親にその身を売りとばされたらしいの、一千万円の借金を返済するためにね。」

ソウル:「ほう・・お前のような見るからにさえない男でも一千万の価値はあるのか。良かったじゃないか。」

覇王:「くっ・・子が子なら親も親だな。もういい帰る!!」

出野:「待ちなよ、話も聞かずに出て行くのはどうかと思う。」

覇王:「バカにされるために来たんじゃねぇよ。」

出野:「バカにする為に呼んだわけじゃない。」

覇王:「は?」

出野:「その借金、私のパパが肩代わりしてあげようか?」

覇王:「?!」

出野:「もちろん、私の条件を飲んだ上での話だけど。」

覇王:「何をふざけたことを・・見ず知らずの男の借金を肩代わりだと?そんな話にわかには信じられねぇ。」

ソウル:「ただで肩代わりするとは言っとらん、話は最後まで聞け。」

覇王:「っ・・。」

出野:「怪物を討伐するモンスターセイバーズになってくれない?」

覇王:「モンスター・・セイバーズ?」

ソウル:「お前が足を踏み入れているこの国には異世界から迷い込んだ怪物(モンスター)というものが生息している。だが・・今現在、増え続けたモンスターに対してこちらの数が足りず苦戦を強いられているのが現状だ。ゆえにお前には我々の戦力になってもらいたい。」

覇王:「おいおい・・さっきから何を言ってんのかさっぱりだ。漫画の世界じゃあるまいし、そんなことあるわけがない。」

ソウル:「なら、外に出てみろ。」

覇王:「・・・。」

覇王は恐る恐るドアを開けて外に出る。

覇王:「!なんだこれ・・。」

出野:「ここに来るまで前しか見てなかったから気づかなかったでしょ?」

覇王:「変な怪物がそこら中にいやがる・・!」

ソウル:「こいつらがモンスターだ。」

覇王:「マジかよ・・。」

ソウル:「御覧の通りだ。出来れば一般人は巻き込みたくなかったがそうも言ってられない。こいつらを放っておくわけにはいかないからな。」

覇王:(この怪物たちを討伐すれば一千万の借金を肩代わりしてもらえる・・けど・・。)

「断る。」

出野:「?!」

覇王:「命を落とすかもしれない危険な戦いに自ら首を突っ込むつもりはない。」

出野:「あなた、何か勘違いしてない?」

覇王:「?」

出野:「私はあなたに救いの手を差し出したわけじゃないから、赤の他人にそこまでしてあげる義理はない。はっきり言って私はあなたの体を有効活用したいだけ。いい?確認しておくけどあなたはすでに売却された身。詰まるところ、あなたに残された選択肢はこのまま借金取りと追いかけっこをして臓器を売買されるか、セイバーズになって命ある限りモンスターを討伐し続けるか。・・この二択しかない。」

覇王:「このヤロウ・・!」

出野:「まさか前者をとるわけじゃないよね?言っておくけど、あなたが月に20万稼いだとしても一千万全額返済にはおよそ50年かかる。ただしこれは無理のない返済計画で返済プランを組んだ場合の話。それだけの大金をセイバーズとして私たちの手足となるだけで無利子、無担保で借金を返済できるんだよ?そうね・・もっと言うなら、あなたの頑張り次第では出世払いという建前で一千万を返済の義務なしで肩代わりしてあげても構わない。こんなおいしい話・・他にないよ。」

覇王:「なんでそこまで・・。」

出野:「言ったでしょ、手段を選んでいられないと。セントラル王国には何千万という民がいる。あんな怪物を野放しにしていたらこの国は壊滅してしまうわ。どうせ死ぬならその命、人々を救う為に捧げてほしい。」

覇王:「言っておくが俺は死ぬつもりなんてない、俺は生きるために逃げ続けていたんだからな。そして・・。」

覇王はそう言うと宿屋に飾ってあった剣を手に取る。

覇王:「それは今も変わらない。いいぜ、戦ってやる!俺にとっても悪い話じゃない、これで借金取り(あいつら)とおさらばできるなら願ったり叶ったりだ。」

出野:「・・交渉成立。」

ソウル:「そうと決まればお前には俺の元で修行を積んでもらうぞ。来るべき戦いの時にこの場を任せられるようにな。」

覇王:「わーったよ。その代わり、約束は守ってくれ。借金取り(あいつら)につけまわさていたんじゃおちおち寝られやしない。」

ソウル:「抜かりはない。俺の仲間がすでに追っ手の男たちを取り押さえて交渉しているはずだ。まぁ正当な誓約書を使ってない違法な金銭のやり取りを行っている連中を相手にしているからな、少々時間がかかるかもしれんが安心してくれ。事は順調に運んでいる。」

覇王:「こ、怖・・。頼むから俺に危害が及ぶような交渉はやめてくれよ、お願いだから。」


足速師覇王過去編 ~to be continued

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ