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モンスターセイバーズ  作者: 短髪
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95話~107話 パラレルワールド編


95話/心の証が目覚める時!


ハンター:「待ってたよ。」

竜牙:「話してもらうぞ、ハンター。なんで俺たちをここに集めたのか。」

ハンター:「君たちをパラレルワールドに送る為だよ、前に少しだけ話したじゃないか。」

スペード:「なんでここなんだ?」

ハンター:「ここなら人目が入りにくく君たちを送り込んだ後も見張りをつけやすい。何かと都合がいいんだよ、そしてここには・・。」

覇王:「久しぶりだな、竜牙。」

竜牙:「覇王!あれ・・本田?」

本田:「俺にも呼び出しがかかってさ、お前たちに力を貸してほしいってよ。」

速水:「ハンター、このままパラレルワールドに向かうんですか?」

ハンター:「いや、次元の狭間を潜り抜けていく以上、必要不可欠な物がある。」

竜牙:「証ってやつの事か?」

ハンター:「お・・?」

小池:「知っているのか?」

竜牙:「選ばれたセイバーズのみに与えられる心の強さを表した小さなビー玉のようなものだっけ?前に覇王が教えてくれたんだ。」

ハンター:「その通りだよ、君たちにはこれから心の証を受け取ってもらわなければならない。」

白鳥:「あれ、この地下空洞・・奥に壁画がある・・。」

竜牙:「ああ、その壁画にはX技の仕組みについて書かれているんだ。」

ハンター:「そうだよ。その壁画はかつてジョーカーを封印した剣崎鳥牙とその仲間たちが作り上げたものだ。」

全員:「「?!」」

竜牙:「!あの壁画・・兄貴が作ったのか・・。」

ハンター:「そう。そして壁画に書かれている筆跡は、オーロラ島の碑文に掘られていた文字と同じ筆跡だ。」

小池:「なっ・・!」

ハンター:「あの碑文を造ったのも鳥牙の可能性がある。そう踏んだ僕は影で調べを進めていたんだけど、どうやら勘が当たったみたいでね。」

スペード:「何か繋がりがあるのか?!」

ハンター:「最初は半信半疑だった。でも、僕の仲間がそれを証明してくれたよ。」

エメラル翁:「・・・・。」

竜牙:「なんだ・・このじいさん・・。」

ハンター:「紹介するよ、キングダムセイバーズ最年長のエメラル(おう)だ。」

エメラル翁:「ほう、この小童たちが次世代のモンスターセイバーズか。」

小池:「なんだ・・このおっさん。」

スペード:「すげぇ貫禄だ。」

ハンター:「この地下空洞の奥には隠されていたものがある。」

竜牙:「隠されていたもの?」

ハンター:「それがこの先にある。」

小池:「っ・・まじかよ・・。」

速水:「次元の狭間?!」

白鳥:「どういう事?!」

ハンター:「それもただの次元の狭間じゃない、あの次元の狭間はオーロラ島で発生している巨大な次元の狭間とリンクしている。」

スペード:「なっ・・こんなもの、今までなかったぞ?!」

ハンター:「気づかないのも無理はないさ。この歪みはここ最近で出来たものだ、おまけに厳重な術式がこの歪みにはかけられていた。人やモンスターの肉眼では決して捉えることのできない幻術がね。そして、こんな神かかった事ができるのは一人しかいない。」

竜牙:「まさか・・兄貴が?」

エメラル翁:「違う。」

竜牙:「!」

エメラル翁:「セイバーズの創始者、麒麟だ。」

竜牙:「麒麟・・!」

ハンター:「事の経緯を順を追って説明しよう。小池くん、君のご先祖様の力は光ヶ丘学院がある土地に封印されていると言ってたね、でも力の一部はオーロラ島の碑文があったところに封印されていた。それはなぜだと思う?」

小池:「・・まさか、前にも一度会ったのか?魔王力が溢れて次元の狭間が発生したことが・・!」

ハンター:「そう、君が暴れた時ほどの規模じゃないけどあーいう風にそうなりかけた時があったんだ。鳥牙はそれを食い止める為、あの地に封印されていた石版を持ち出し、モンスターワールドで言うデストロイヤエリアと同じ位置に存在するオーロラ島の遺跡と共に封印した。一方で、力の欠片を失った魔王力は弱まり一度は封印式に抑え込まれたんだ。でも、瞳舞があの石版に封印されていた魔王力を持ち出したことで離れていた力が呼応し、光ヶ丘学院に次元の狭間が再発してしまったんだ。」

小池:「ブラッディはモンスターワールドでも碑文を見たと言っていた。モンスターワールドのデストロイヤエリアと人間界のオーロラマウンテンが同じ位置にあるという情報は本当なのかもな。」

竜牙:「なぁ、なんで兄貴は石版をオーロラ島に持ち出したんだ?」

ハンター:「鳥牙はあくまで指示されただけ。その一連の動きに関してはデストロイヤの封印が弱まっていることに気づいた麒麟の策だよ、魔王力の力を使ってデストロイヤを封印していた力に外側から圧力をかけて封印している力の強度を上げていたんだ。こうすることで、弱まっていたデストロイヤの封印と強すぎて溢れ出ようとする魔王力の封印・・双方のバランスを共に立て直そうとしたんだ。」

竜牙:「!だから兄貴は魔王力が封じてある石版に触れさせないために、オーロラ島の遺跡に碑文を残したのか!この石版に封じられた力がいかに危険なものなのかを証明するために。」

小池:「けど、ブラッディがそのパワーバランスを崩してしまったんだな。」

ハンター:「そういう事。だからこそ鳥牙は次なる手に出た、それこそが一度封印したジョーカーを復活させて、ジョーカーの力を吸収することだったんだ。なんせ、ジョーカーの細胞はどんな攻撃をも吸収する力がある。」

竜牙:「!」

ハンター:「その力を得た剣で鳥牙はオーロラ島にある巨大な次元の狭間を吸収してしまおうとしたんだ。そうすれば、人間界とモンスターワールドの繋がりがなくなる。歪みさえなくなれば、人々がモンスターに襲われることはないからね、けど失敗に終わった。次元の狭間の力を吸収しきれなかった鳥牙は、溢れ出ようとする力を必死に抑え込み、この地下空洞に戻ってきたんだ。そして、抑えきれなくなった次元の狭間の力がここで新たな次元の狭間をつくってしまった。」

スペード:「なるほどな、だからオーロラ島の次元の狭間とリンクしているわけか。」

竜牙:「兄貴は兄貴で人々をモンスターから守る為に動いていたんだな・・。」

白鳥:「この壁画を造ったことにも理由があるの?」

ハンター:「あるよ。少し話を戻すけど、前に魔王力が暴走しかけた時があったって話したよね?恐らくジョーカーはその時に発生した歪みを通じてこっちの世界に足を踏み入れてしまったんだ。けど、ジョーカーにはありとあらゆる攻撃を吸収する力がある。討伐できないと踏んだ鳥牙は、ジョーカーを封印することに切り替えたんだ。当時ジョーカーとどういうやりとりがあったかは分からないけど、気づいたんだろうね。ジョーカーを封印した際にロイヤルストレートフラッシュの連中が彼を復活させるためにこちらの世界にやってくるかもしれない・・と。だから、ジョーカーを封じたこの地下空洞に壁画を残したんだ。奴らに対抗するための力を書き記すことで、もしもの時に備えたんだろう。」

スペード:「なるほど、ロイヤルストレートフラッシュの連中がこちらの世界に来る時となれば、次元の狭間が再び発生した時だ。新米のセイバーズでもある程度は戦えるようにX技のヒントを書き記したんだな。」

小池:「すべてが繋がったな。」

速水:「ということは、オーロラ島の次元の狭間と繋がっているこの歪みの中に入って、パラレルワールドに向かうんですよね?」

ハンター:「まぁそうせかさないでくれ。さっきも言っただろ?心の証がないと君たちが人間界に戻って来れなくなる。」

速水:「一方通行の入り口になっちゃうってこと?」

ハンター:「そういう事、だから君たち一人一人に心の証を所持してもらいたいんだ。」

エメラル翁:「受け取るといい、次世代のセイバーズたち。」

エメラル翁が両手を広げると、手の平で握り締めていた心の証が光り輝き、それぞれのセイバーズの元へ飛んでいく!

ハンター:「本田雷攻!君には誠実の証を!!」

ピカァァン!

本田:「うわっ、なんだ・・?!」

ハンター:「白鳥百合花!彼女には希望の証を!!」

ピカァァン!

白鳥:「うわっ!!」

ハンター:「銀河スペード!君には友情の証を!!」

ピカァァン!

スペード:「これが・・心の証!」

ハンター:「速水智也!君には覚悟の証を!!」

ピカァァン!

速水:「これが・・僕の心の証・・っ!」

ハンター:「小池共士郎!彼には闇の証を!!」

ピカァァン!

小池:「闇の証・・まさか・・この証って・・!」

ハンター:「そして、剣崎竜牙!受け取ってくれ、勇気の証だ!!」

ピカァァン!

竜牙:「!そうか・・心の証は心の強さを証明している。そしてこの小さな玉には俺たちの心の象徴が刻まれているんだ。」

ハンター:「その通りだよ、君たちの心の証にはそれぞれを象徴するものが刻まれている。」

覇王:「ちなみに俺も持っているぞ、これが俺の心の証・・究極の証だ。」

覇王は自身の内ポケットからグレーの証を取り出して竜牙に見せる。

竜牙:「ん?ちょっと待てよ・・。心の証って選ばれた者にしか与えられない代物じゃなかったっけ?」

ハンター:「だから君たちは選ばれたのさ、麒麟に!新たな救世主となるモンスターセイバーズとして!!」

全員:「「「?!!」」」

ハンターもまた自身の奇跡の証を竜牙に見せる。

ハンター:「この証があれば、君たちが向こうで死なない限りこちらの世界に戻ってくることが可能だ。絶対に無くしちゃ駄目だよ?おめでとう、これで君たちは半人前から晴れて一人前のセイバーズになったわけだ。」

エメラル翁:「和人、わしはオーロラ島に戻る。準備ができたら連絡を回せ。」

ハンター:「了解!」

竜牙:「うおっ?!あのおっさん、次元の狭間に入っていったぞ?!」

ハンター:「うん。パラレルワールドに繋げるためにはオーロラ島にあるオリジナルの次元の狭間の力も必要だからね。それに・・。」

レイク:「うん、曇りのないいい目だ。」

小池:「!レイク・・なんでここに・・。」

ソウル:「・・・。」

覇王:「ソウル?!」

竜牙:「知ってるのか?」

覇王:「ああ、俺にセイバーズの力を与えてくれたのが・・ソウル・マリク、俺の師に当たる人だ。」

ソウル:「・・よろしく。」

リリス:「また会えたわね、百合花!」

白鳥:「リリス?!うそっ!なんで~?」

リリス:「ハンターから召集がかかってね、また会えて嬉しいわ!」

ジー:「久しいな、速水!」

速水:「ジーさん!!」

ジー:「ちっとはぁいい面構えになったじゃねぇか、元気そうで何よりだ。」

スペード:「この人達・・まさか・・!」

ハンター:「僕のかつての戦友たちだよ。」

竜牙:「じゃあこの人達が・・キングダムセイバーズ!」

小池:「世界各国のハイソルジャーたちか。」

ネネ:「私もいるよ~。」

竜牙:「ネネさん!すげぇ・・これで全員なのか?」

ハンター:「いや、オーロラ島の方に内2人を待機させている。けどまぁほぼほぼ全員ってところかな?」

アース:「なんだ、新しく麒麟に選ばれたセイバーズは全員俺たちのうちの誰かと知り合いなのか。」

ギアス:「セケンハセマイ・・。」

竜牙:「すげぇ片言・・。」

ハンター:「アハハ・・ギアスはアメリカ出身でその・・日本語が苦手でね。」

ロイ:「おっ、メガネの方は確か俺のユニバースソードの継承者だったな。」

スペード:「!じゃあ、あんたがロイ・ターマーか。」

ロイ:「おうよ、会うのは初めてだったな。よろしく頼むぜ後輩!」

スペード:「いえ、こちらこそ・・!」

ライ:「どうでもいいけどよぉ~やるなら早くしようぜ?俺ァ眠たいんだ。」

小池:「なんだあいつは・・。」

レイク:「気にするな、あいつは気まぐれなんだよ。」

ハンター:「さ、ライの気が変わらないうちに始めちゃおうか。」

キングダムセイバーズの10人は円となり、次元の狭間を囲んでいく・・。

竜牙:「何を始めるんだ?」

ハンター:「僕たちの心の証を使って、オーロラ島で発生している次元の狭間と君たちの目の前で発生している小さな次元の狭間の中身を一瞬だけ繋げる。この次元の狭間だけだとパラレルワールドまでは辿りつけないからね。君たちをオーロラ島にある次元の狭間の中に転送するためには、この小さな歪みの中身とパラレルワールドを一時的に繋げる必要がある。すぐにまた収縮しちゃうけど、でもその一瞬があれば君たちをパラレルワールドに送り込めることができるはずだ。」

レイク:「共士郎たちはいつでも飛び込めるよう準備しといて。」

フォルテ:「そこまでだ。」

全員:「「?!!」」

竜牙:「この声・・まさか!」

フォルテ:「久しいな、剣崎竜牙。」

竜牙:「フォルテ!!」

覇王:「まさかお前の方から出向いてくれるとはな。」

小池:「お前が・・帝王フォルテ。」

フォルテ:「コイツは驚いたな、キングダムセイバーズのメンバーまでお揃いとは。」

レイク:「なぜお前がここに!」

フォルテ:「そこで渦巻いている小さな次元の狭間とオーロラ島で発生している次元の狭間を何度も繋げていたんだろ?パラレルワールドの内部がここ数日の間、大きな振動を起こしていた。オリジナルの次元の狭間にもし影響があったのならば私が元の世界に帰れなくなってしまう。ゆえに私は原因を突き止めるために力を感じる方向に向かって足を走らせていたというわけだ。」

ハンター:「それは好都合、パラレルワールドの中に入ってまで君を探す手間が省けたわけだ。」

フォルテ:「私を・・探していただと?」

竜牙:「お前が次元の狭間を利用して、何度も逃亡を重ねていたせいで各地で小さな歪みが発生してんだよ!」

フォルテ:「なるほど・・モンスターをこれ以上人間界に送り込まないために私の逃亡を阻止すべく動いていたというわけか。」

覇王:「そういうことだ。けど残念だったなフォルテ、お前はもう袋の鼠だ。」

フォルテ:「それは数の優位から物を申しているのか?」

覇王:「何?」

フォルテ:「Ⅹ技・ヘルズローリング!」

フォルテは両手から紫色のリングをつくりだし、地面に向けて投げつけた!

竜牙:「なっ!!」

シュルルルッ!!

白鳥:「キャァッ!!」

速水:「うわぁぁっ!!」

竜牙:「白鳥!速水!!」

スペード:「うおっ!!」

小池:「くっ!!」

本田:「くそっ、間に合わ・・!!」

竜牙:「っ・・ドラグアーマーで・・。」

シュルルルッ!!

竜牙:(駄目だ!発動が間に合わな・・!!)

ドカァアン!!

覇王:「みんな!!」

ハンター:「なんてことだ・・剣崎くんたちが次元の狭間の中に押し込まれてしまった!」

覇王:「くっ!ハンター俺は竜牙たちの後を追う!!」

シュッ!!

覇王は次元の狭間の中に入っていった。

フォルテ:「ほら、何をしているんだ?早く向こうの次元の狭間と繋げてやらねぇとあいつらが未知の空間で永遠に彷徨うことになるぞ。一度次元の狭間の中に入った以上は、パラレルワールドに足を踏み入れて正規の出口から抜け出さないといけない。だから証の力を使ってオリジナルの次元の狭間の中にあいつらを転送できるように何度もここで実験をしていたんだろ?」

ハンター:「くっ!」

フォルテ:「オーロラ島で発生しているオリジナルの次元の狭間を使えば、わざわざ手の込んだことをする必要はなかったのにな。あいつら学生の身分だから気を遣ってあげたんだろう?がそれが仇となったんだよ!!」

レイク:「こいつ・・!」

ハンター:「待て!」

レイク:「!」

ハンター:「大至急、向こうの次元の狭間と繋げるぞ。」

レイク:「くっ・・。」

フォルテ:「残念だったな、私を捕まえることができなくて。」

シュッ!!

フォルテは一瞬にして姿を消した。


オーロラ島 次元の狭間発生地。

エメラル翁:「何?フォルテが・・分かった。」

カイ:「どうしたの?」

エメラル翁:「ソフィア、大至急次元の狭間を繋げるぞ!」

カイ:「?!」

エメラル翁:「小童たちが次元の狭間に無理矢理押し込まれたそうだ。」

カイ:「!そんな・・まだ次元の狭間が繋がってないのに!!」

エメラル翁:「フォルテの仕業だ。」

カイ:「!・・とにかく、証をかざさなきゃ。」

エメラル翁:「うむ、そうじゃな。」

カイ:「何か嫌な予感がするわ・・。」


96話/忍の世界


竜牙:「痛ってぇ・・。」

小池:「なんだ・・ここ・・。」

速水:「うわっ!!」

白鳥:「まるでドラ〇もんがタイムマシンを使った時の時空間みたい・・。」

スペード:「まさか俺たち、ブチ込まれたんじゃないだろうな・・次元の狭間の中に。」

覇王:「残念ながらその通りだ。」

本田:「覇王・・。」

覇王:「フォルテの奴にしてやられたな。」

速水:「このままここにいて大丈夫なんでしょうか。まだハンターたちがオリジナルの次元の狭間と中身を繋げてなかったはず。」

スペード:「なぁ・・あのエメラル翁ってじいさんは、普通に次元の狭間を通ってオーロラ島に向かったよな?」

覇王:「恐らく向こうでカイ・・キングダムセイバーズの一人が証をかざしていたんだろう。数名を転送する程度なら大がかりに証の力を使う必要はないはずだ。」

スペード:「そういうこと?なら、俺たちを一人ずつ転送する方法を取っても良かったんじゃないか?」

覇王:「ハンターが言ってただろ?証の力を使って繋げられるのは一瞬だけ、一度使うと証は数時間光を失う。それはつまり、証の力が一定時間の間使えなくなるということだ。」

スペード:「なるほど、だから俺たちを一回で送り込もうとしていたわけか。」

速水:「ち、ちょっと待って下さい!だとしたら、このままじゃまずいじゃないですか!オリジナルの次元の狭間と繋がってない状態で僕らは次元の狭間の中に押し込まれたんですよ?!」

竜牙:「落ち着けよ速水、ここでわーわー言ってもしょうがないだろ。」

小池:「進むのか?」

竜牙:「見てみろよ。」

竜牙たちの周囲には無数の扉が横並びで出現していた。

竜牙:「今立ち並んでいる扉はすべてさっき出てきたんだ。この中の扉のどれかが出口と繋がっているかもしれない。」

覇王:「それはない。」

竜牙:「?」

覇王:「出口はパラレルワールドの内部まで行かないと見つけられないからだ。」

スペード:「つまり、パラレルワールドへと繋がっている扉を見つけないといけないってことだよな?」

覇王:「扉がさっき出てきたとするなら・・俺たちが次元の狭間に押し込まれた後に証の力を使って大急ぎで繋げてくれたのかもしれない。けど・・。」

小池:「俺たちが入った後にオリジナルと繋げたことで誤作動が生じているのかもしれない。この歪みにな。」

竜牙:「行こうぜ。」

小池:「お前正気か?出口へと繋がっている扉があるかどうかすら分からないんだぞ。」

竜牙:「けど、行って見ない事には分からない。ここでじっとしていたって何も始まらない。」

本田:「ま、一理あるな。」

スペード:「幸い、俺たちの手元に心の証があるんだ。出口へと繋がっていれば何か反応があるかもしれない。」

竜牙:「ああ!とにかく、当たって砕けろだ。」

白鳥:「先輩?砕けたらダメですよ~。」

速水:「・・分かりました。僕、部長に付いて行きますよ。」

竜牙:「よし!とりあえず、目の前にある扉から行くか。」

小池:「お、おい!」

覇王:「待て竜牙!」

ガチャッ。

竜牙たちは白い光に包まれていく・・。

竜牙:「なんだここ・・。」

スペード:「古いお屋敷みたいなものが立ち並んでるな。」

シュルル・・。

小池:「ん・・?」

(何かが近づいてくる!)

シュルル・・ッ!!

小池:「伏せろ!!」

白鳥:「キャッ!!」

速水:「うわぁぁっ!!」

竜牙:「なんだ?!!」

スペード:「あれは・・手裏剣?!」

シュルル・・ッ!!

スペード:「また飛んできたぞ!」

竜牙:「打ち返してやる!真ドラゴンソード!!」

カキン!!

速水:「ナイス部長!」

竜牙:「何者だ、出てきやがれ!!」

?:「拙者の手裏剣を打ち返すとはな。」

スタッ!

速水:「うおっ?!び、びっくりした・・。」

スペード:「その姿・・まるで・・。」

小池:「忍者・・いや、まさか。」

?:「お主ら、何者だ。随分と奇抜な恰好しておるが、里の者ではなかろう?」

竜牙:「えっと・・俺たちは・・。」

覇王:「旅人です。」

竜牙:「え”?」

覇王:「話を合わせろ。」

竜牙:「お、おう。」

?:「旅人だと?」

覇王:「ええ、俺たちは遠く離れた里からやってきました。何か危害を加える為にやってきたわけじゃありません。」

?:「・・・。」

(確かに・・暗殺や襲撃を行う為に来たとすればこやつ等の恰好は奇抜すぎる。大名の回し者と考えるには少々無理があるか・・。)

?:「アッハハハ・・!お主らは旅人でござったか、これは失礼した。」

竜牙:「あんた、忍者なのか?」

?:「にんじゃ?そのような者ではないが、拙者は忍、名をゲンと申す。」

竜牙:「ゲン?」

覇王:「忍の方でしたか、大変失礼致しました。つかぬ事をお聞きしますが、ゲンさんはなぜこのような場所に?」

ゲン:「最近、妙な輩が村人を襲ってる。恐らく大名の回し者が影で好き勝手しておるのだろう。」

覇王:「その回し者を捕える為にここで見張りをしていらしたのですか?」

ゲン:「左様。お主ら、そのような恰好のままこの辺りをうろついていたら奴らからすれば絶好のカモだ。用心した方がいい、他里の者であろうと奴らは情けをかけぬぞ?」

覇王:「大変貴重な助言、ありがたく頂戴致します。」

ゲン:「うむ、では拙者はこれにて失礼。参!!」

シュッ!!

ゲンと名乗る忍はそう言い残し、立ち去って行った。

速水:「忍者がいるって・・ここ何時代なんですか?!」

小池:「映画村ってわけでもなさそうだしな。」

スペード:「忍者・・。実際のところがどうか分かんねェけど、歴史上では室町時代から江戸時代に大名や領主に仕えていた備兵のような存在・・だったはず。」

白鳥:「タイムスリップしてきたってこと?!」

小池:「白鳥、あれを見てみろ。」

小池が指を差す方向には大木があった。

白鳥:「!あれ・・さっきの手裏剣が刺さって・・。」

小池:「作り物ならあそこまでめり込まないはずだ。」

白鳥:「え”?・・じゃああれ・・本物なんですか・・?」

(刺さってたらひとたまりもないじゃない!)

速水:「部長!こんな物騒なところ、早く出ましょうよ!!」

竜牙:「そ、そうだな・・。」

覇王:「どうやって帰る気だ?」

竜牙:「そりゃあ、扉を開けて・・。」

覇王:「この世界に入ってくる際に使用したドアはどこにも見当たらないが?」

竜牙:「え?う、嘘だろ?!」

覇王:「とにかくここから離れた方がいい。村人を襲っている者に俺たちが狙われるかもしれん。」

?:「何者だ?」

全員:「「?!!」」

覇王:「遅かったか・・来るぞ!」

?:「忍法・四方八方手裏剣の術!!」

謎の男が投げた手裏剣が四方八方に飛び散る!!

スペード:「超必殺技・アメイジングトルネード!!」

ボォォォォウウ!

スペードが剣を地面に思いっきり突き刺すと、地面からあふれ出たものすごい衝撃波が飛び散った手裏剣をはじき飛ばした!

?:「なっ?!・・奇怪な技を使いよる・・何者だ!」

スペード:「名乗るほどのモンじゃねぇよ、ま、しいて言うなら通りすがりの旅人ってやつだ。」

白鳥:「うわぁ・・。」

竜牙:「・・名乗ってんじゃねぇか。」

小池:「ノリノリだな。」

?:「に、人間だと?!う、嘘をつくな!!」

スペード:「いや嘘じゃねぇよ!言っておくけど、あんたの手裏剣も大概だからな?」

?:「ぐぬぬぬっ・・化け物が!ここで成敗してくれようぞ!!」

白鳥:「な、何かの印を結んでる・・!」

?:「忍法・影分身の術!!」

シュッ・・シュッ!シュッ!シュッ!シュッ!

竜牙:「!す・・すっげェ!ナ〇トみたいだ!!」

速水:「感激している場合じゃないですよ!」

本田:「迎え撃つぞ、スパークリングサンダー!!」

白鳥:「エアーカッター!」

スペード:「超グラビティブレード!」

速水:「斬ハイゼルセイバー!」

小池:「超必殺技・ソウルブレイク!」

竜牙:「真ドラゴンソード!!」

ズバッ!ズバッ!バシィッ!バシッ!ドカァン!!

?:「っ・・拙者の分身を・・こうも簡単に・・。」

覇王:「相手はモンスターじゃない、必要以上に手の内を明かす必要はないからな?」

竜牙:「わーってるよ、そんな事。」

?:「煙玉!」

ボン!!


草原広場・地下空洞最深部。

ハンター:「な、なんとか繋げられたけど・・。」

レイク:「ハンター、私たちにできることはもうない。あとは共士郎たちが無事に帰ってくることを信じて待つしかないよ。」

ハンター:「・・・。」

神谷:「待たせたわね、ハンター。」

ハンター:「・・!」

神谷:「久しぶり。」

ハンター:「神谷さん?!な、なんで・・。」

神谷:「そりゃあ竜くんから連絡をもらったからね、私にも来てほしいって。・・あれ、間に合わなかった?」

ハンター:「いやまてまて!君は女王守護者(セイバーズクイーン)だろ?剣崎くんたちだけをひいきにするわけにはいかない!」

彪呀:「じゃあお前が止めてくれよ、クイーンを。」

ハンター:「!彪呀・・どうして。」

神谷:「私一人じゃ説得力に欠けるだろうから、連れて来たの。」

彪呀:「剣崎竜牙たちは?パラレルワールドに向かったのか??」

ハンター:「そうなんだけど・・ちょっとしたアクシデントがあってね、彼らが無事にパラレルワールドに辿りついていればいいけど。」

彪呀:「ならいっそのこと、彼らにはこのままモンスターワールドに行ってもらうことにしないか?」

ハンター:「なっ・・!」

彪呀:「このままフォルテを追いかけていてもラチが明かないだろ?ならいっそ、デストロイヤの討伐に踏み切ってはどうだ?」

ハンター:「デストロイヤの討伐だって?!・・何を言ってるんだ!!僕らでも成し遂げることができなかったんだぞ、忘れたわけじゃないだろ?それに彼らの実力じゃまだ・・。」

彪呀:「そうか?俺はそう思わない。彼らはわずかな戦いの中で飛躍的な成長を見せている。むしろ俺は可能性を感じているけどな。」

ハンター:「・・正気かい、彪呀?」

彪呀:「だからクイーンを・・朱里を向こうに送るんだ。もしもの時の為に。」

神谷:「どうハンター?これなら私が向こうに行っても文句はないでしょ。」

ハンター:「なんて強引な・・危険すぎるよ、いくらなんでも。」

レイク:「なら、お前も行って来たらどうだ?」

ハンター:「レイク?!」

レイク:「託してみないか?私たちの後継者たちに・・私たちの未来を!」

ハンター:「!」

アース:「なぁ和人。確かに俺たちはデストロイヤを討伐できなかった。けど、俺たちが戦ってきた時間は無駄にはならないはずだ。事実、あいつはダメージを受けた状態で封印されている。」

ハンター:「!」

アース:「今こそ、俺たち”全員”の力であいつを倒す時なんじゃないか?」

ハンター:「・・はぁ~分かったよ。」

彪呀:「安心しろ、人間界はキングダムセイバーズが・・そしてモンスターセイバーズとなった者はすべて王守護者(セイバーズキング)の俺が守り抜いてみせる。」

神谷:「頼りにしてるわよ、光一。」

彪呀:「他人言みたいに・・そっちは任せたぞ、朱里。」

神谷:「とーぜん!私を誰だと思ってるのよ。」

アース:「そうと決まれば、ソフィアをこっちに呼び戻すか。数名を送る程度ならオーロラ島の方はじいさん一人で充分だろ。」

レイク:「アハハ、言えてる。エメラル翁なら一人でもどうにかしてくれるかも。」

神谷:「さ、行きましょ。この戦いを終わらせるために。」

ハンター:「うん・・それじゃあ行こうか、神谷さん。」

神谷:「あ・・待って!」

ハンター:「?」

神谷:「もう一人、心強い助っ人を連れてきたわよ~?」

ハンター:「え?・・・!き、君は・・どうしてここに・・?!」


97話/仕組まれた罠と託された思い


?:「煙玉!」

ボン!!

本田:「ゴホッ・・ゴホッ!」

スペード:「!前が見えねぇ・・。」

覇王:「気をつけろ、相手は暗殺のプロだ!!」

?:「フン・・。」

スッ・・タッタッタッ!!

黒装束の忍はクナイを片手にスペードに接近していく!

竜牙:「!この足音・・スペード!!」

スペード:「ああ、こっち来てんな・・っ!」

カキン!

?:「ほう・・受け止めたか。」

カキン!カキン!カキン!

スペードはグラビティブレードで忍のクナイを弾いていく!

?:「お主らを返すわけにはいかん、ここで全員始末する。」

スタッ!スタッ!

速水:「ちょっ・・!」

竜牙:「奴ら・・増えやがった!」

覇王:「増援か・・面倒な事になった。」

スペード:「竜牙、このままやつを放置すると厄介なことになるぞ。」

竜牙:「・・よし、小池、本田!」

小池:「!」

本田:「なんだ?」

竜牙:「俺たち3人で仕留めるぞ。」

小池:「よし・・。」

小池はアルティメットフォームに姿を変える。

本田:「一撃で仕留めればいいんだな?」

本田が右手をあげると、上空から落雷が落ちて来る!

ゴゴゴゴゴッ!

覇王:「あの技は・・!」

本田:「究極必殺技・スパークヘルハリケーン!!」

ガガガガガガッ!!

本田が右手を突きだして手を広げると、落雷が竜巻の如く回転しながら地面をえぐりつつ忍に向かっていく!

忍A:「む・・風遁!!」

忍Aは口から暴風を吐きだして迎え撃つ!

シュルルルッ!!

バシィィッ!

忍A:「なっ!・・う・・うわぁぁぁぁっ!!」

ドカァアン!!

小池:「ビースト細胞!」

竜牙:「ハヤブサランニングストーム!」

忍B:「火遁!」

忍C:「水遁!」

忍Bと忍Cが放つ炎と水のW噴射を竜牙と小池は交わして間を詰める!!

小池:「究極必殺技・ソニックゼロブレイク!」

バシバシバシバシバシバシバシバシ・・・!!

忍C:「ぐああああっ!!」

竜牙:「究極必殺技・ブラストクロスパラディン!」

ズバ!ズバ!ズバ!ズバ!ズバ!ズバッ!!

忍B:「が・・は・・っ!」

ドサッ・・。

目にも止まらない斬撃と高速連打の打撃が忍たちにトドメを刺した。

小池:「・・・。」

小池はアルティメットフォームを解いた。

竜牙:「こいつらの方がやべェな・・ホントに人間かよ。」

小池:「口から風や水、炎を吐きだしていたなんて今でも信じられない、どういう修行をしたらあんな技を身につけられるんだ?」

スペード:「改造人間の類じゃないのか?じゃなきゃあんなこと、フツーできねェよ。」

ゲン:「騒がしいと思って来てみたら・・お主ら、まだこんなところに・・。」

覇王:「ゲンさん・・すみません、襲撃を受けてしまいまして。」

ゲン:「!・・こやつ等は・・。」

竜牙:「知ってるのか?」

ゲン:「腕に刻まれた刻印、恐らくはカゲツの手下であろう。」

覇王:「カゲツ?」

ゲン:「大名に雇われている凄腕の忍だ。」

カゲツ:「ほう・・なかなかの手練れのようだな。」

ゲン:「!」

竜牙:「なんだあいつ・・いつからそこに・・!」

ゲン:「カゲツは気配を消す天才・・お前たちの様子を遠くから見ておったのだろう。」

カゲツ:「そいつらはお前の駒か、ゲン?」

竜牙:「何?」

ゲン:「こやつ等は駒などではない、他里の者だ。」

カゲツ:「他里の?・・どこの里の者だ?俺の駒を圧倒するほどの力を秘めている者が只人(ただびと)であるわけがなかろう?」

ゲン:「お主には関係なかろうぞ?」

カゲツ:「関係ある!」

ゲン:「!」

カゲツ:「こやつ等が俺たちの危険因子になり得るのならばここで排除せぬばならん。」

竜牙:「こいつ、やる気か?」

ゲン:「待て!」

竜牙:「!」

ゲン:「あやつは拙者が仕留める。これは拙者らの問題、余所の者を巻き込むわけにはいかぬ。」

カゲツ:「相変わらずの正義感だなァ、ゲン。だが・・。」

白鳥:「うぐっ・・。」

カゲツ:「この女がどうなってもいいのか?」

竜牙:「なっ!・・白鳥?!」

スペード:「いつの間に!」

カゲツ:「俺の言う通りに動いてもらおうか、妙な動きをしてみろ・・この女の首をはねる。」

白鳥:「っ・・!」

ゲン:「お主、相変わらず卑怯な手を・・っ!」

カゲツ:「我が大名様がこの地を支配するまで余所の者に好き勝手動かれると面倒なんでな。」

その後、カゲツの背後に控えていた無数の忍たちが竜牙たちに駆け寄り、催眠ガスを噴射したようだ・・。

竜牙たちは意識を失ってしまった・・。


監獄塔タルタロス内部。

竜牙:「痛っ・・ここは・・。」

ゲン:「気がついたか?」

竜牙:「ゲン・・?」

ゲン:「どうやら拙者たちは監獄塔に連れてこられたみたいだ。」

竜牙:「なっ・・!あ、あれ?みんなは?!」

ゲン:「他の者たちは別の部屋で監禁されている可能性が高い。」

竜牙:「ま、マジかよ・・。」

ゲン:「すまぬ。拙者たちの問題にお主らを巻き込んでしまって。」

竜牙:「あのカゲツってやつとはどういう関係なんだ?」

ゲン:「拙者とカゲツは幼い頃からの腐れ縁というやつだ。幼少時は忍になるべく同じ師の元で修行を積んでいた。だが、ある事件を境に拙者とカゲツの関係は敵対するようになってしまったんだ。」

竜牙:「ある事件?」

ゲン:「カゲツが大名に雇われて間もない頃、やつは超えてはならない一線を越えてしまったのだ。」

竜牙:「?」

ゲン:「友人である拙者の父と母を己の私利私欲の為に暗殺した。」

竜牙:「!」

ゲン:「拙者の父と母は代々、大名の家宝を守っておってな。だが、その家宝をカゲツは強奪し金に換えた。無論、下手したら打ち首になるほどの重罪だ。ゆえにカゲツは他に事の経緯を悟られぬよう、大名の目を盗んで拙者の両親を暗殺することにしたのだろう。拙者の両親を殺ることで家宝が他里の者に奪われたよというに見せて己の罪から逃れたんだ。・・結果、この事件が発端となって他里の者が犯してもない罪をなすりつけられ激怒し、大名の命を狙うようになってしまい、今に至る。」

竜牙:「んだよそれ・・自分の身を守る為なら何をしてもいいって言うのか?全員、カゲツに振り回されているだけじゃないか!」

ゲン:「それがカゲツという男なんだ。あやつは己の目的の為なら他者の命を簡単に切り捨てる冷酷非情な忍だ。だからこそ拙者は人として誤った道に進んでしまったカゲツを止める為に、フリーの忍として影で動いておる。あやつを止めるために!」

竜牙:「とんだ外道野郎だな・・事情はだいたい分かったよ。」

ゲン:「主、名は何と言う?」

竜牙:「剣崎竜牙だ。」

ゲン:「剣崎、これを。」

竜牙:「これは?」

ゲン:「拙者が独自で作り上げた小型地雷だ。武器を取られているのだろう?護身用にいくつか持っておくといい。」

竜牙:「!助かるぜ。」

ゲン:「拙者は監獄塔内にいるカゲツのところに向かう。お主はまず地下へと足を進めよ。よいか?お主は捕まった仲間たちを救出した上で、この塔の最上階に上って来るんだ。」

ゲンは小型地雷を牢の鉄格子にセットする。

竜牙:「分かった、白鳥の事は任せたぞ。」

ゲン:「人質にとられた女子(おなご)のことか?」

竜牙:「ああ。」

ゲン:「有無、心得た。」

ドカァン!

小さな爆発音が鳴り響く中、2人は駆け出していく!

白鳥:「先輩たちをどうするつもり?」

カゲツ:「ゲンたちが下手な動きをしなければ日没までにあの里を占領できる、そうなればあの者だちを解放してあげよう。」

白鳥:「里を・・占領?!」

カゲツ:「左様・・お主らのおかげで厄介なゲンの動きを封じることができた。成り行きとは言え礼を言うぞ。」

白鳥:「くっ・・。」

(その気になれば、私の風を操る力でこんな鎖・・けど、先輩たちだってそれは織り込み済みのはず。今はまだ、”私たちは身動きがとれない”と思わせておいた方がいい。)

ゲン:「カゲツ!」

カゲツ:「・・!」

ゲン:「その子を離してもらおうか。」

カゲツ:「ゲン・・おとなしくしておればよいものを。」

ゲン:「忍とは忍び耐える者のことを指す。お主には忍として大事なモノが欠けておる!」

カゲツ:「抜かせ、忍とは己の生き様を貫く者のことを指すんだよォ!」

ギリッ・・!

ゲンは奥歯を噛み締める!

ゲン:「もし・・お主の言うような者が忍と言うのならば・・忍などこの世に居てはならぬ!生まれてきた者には皆それぞれに生きる権利がある!」

カゲツ:「クククッ・・アッハッハッハ!!片腹痛いわ!・・綺麗事を並べよって・・よっぽど両親の後を追いたいらしいなァ!!」

カキン!

両者のクナイが激しくぶつかり合う!

カキン!カキン!

カゲツ:「お前の言っている事はただの綺麗事だァ!何かを得るためには何かを犠牲にしないといけない!!そして!!!」

ズバッ!

ゲン:「うぐっ!」

白鳥:「ゲンさん!」

カゲツはゲンの血がついたクナイを舌で拭き取る。

ジュルッ・・。

カゲツ:「信じられるのは自分だけだァ・・。結局ぅ~このご時世で生き残るためにはよォ~どれだけ他者を騙し!欺き!足場にしてのし上がれるか・・これが大事なんだよ。人はいつでも他者を裏切れる・・そ~いうもんなんだよォ!!」

パシッ!

白鳥の平手打ちがカゲツを地面に押し倒した!

カゲツ:「・・・なんで・・お前が!」

白鳥:「黙って聞いていれば・・あんた何なの?」

カゲツ:「・・質問に答えろ、なぜ鎖が外れている?」

白鳥:「うっさい!!」

ビクッ!

カゲツ:「!」

ゲン:「!」

白鳥:「あんたはただの卑怯者よ!自分が優位な立ち位置にいるときだけ威勢を張って、人を罵倒し、高笑いする!最低最悪の卑怯者だよ!!」

カゲツ:「なァにィ?」

白鳥:「人の真価が問われる時ってね、逆境に立たされた時なのよ!そりゃあ長い人生、どん底に落っこちる時だってあるでしょうよ!ってか絶対にある!!でもね、生きてさえいれば何度でも立ち上がってやり直せる可能性があるんだよ!!自分自身を守ることに必死なあんたには分かんないでしょうけど!!」

カゲツ:「この・・っ!」

白鳥:「神秘の守り!」

バシッ!

カゲツ:「ぐあっ!」

カゲツはクナイを突き刺そうとしたが白鳥の神秘の守りによって攻撃を弾かれ、その場にまた倒れこんでしまう!

白鳥:「人が内に秘めた可能性舐めてんじゃないわよ!あんたみたいな卑怯者に足場にされるほど、私たちは弱くない!!」

ゲン:「白鳥・・お主・・。」

カゲツ:「うっぐっ・・俺が・・こんなくそガキにィィィ!」

白鳥:「悔しかったら這い上がりなさいよ!生きる力を失ったら人の心は死ぬんだから。」

カゲツ:「!・・・。」

ゲン:「カゲツ、女子(おなご)にここまで言われてもまだ拙者と殺り合うか?」

カゲツ:「くっ・・俺は・・おれは・・・っ!!」

竜牙:「白鳥!」

白鳥:「!」

速水:「大丈夫ですか・・ってあれ?」

白鳥:「先輩たち、遅いですよも~。」

覇王:「・・・フッ。」

小池:「終わったみたいだな。」

竜牙:「ま・・マジ?」

ゲン:「剣崎、いい仲間を持ってるな。」

竜牙:「え?あ・・うん。」

スペード:「ん?・・竜牙、体が透けてきているぞ!」

竜牙:「あれ・・本当だ・・。」

本田:「もしかして戻れるんじゃないか、俺たち?」

覇王:「かもしれないな。」

ゲンは白鳥の元に歩み寄る。

白鳥:「すみません、私のような若輩者が口を挟んでしまって。」

ゲン:「いや・・お主のような若人(わこうど)に会えてよかった。後の事は拙者に任せてほしい、ありがとう。礼を言うぞ。」

白鳥:「えへへ・・お力になれたようで良かったです。」

白鳥の言葉を最後に竜牙たちの姿は消えていった・・。

ゲン:「カゲツ、拙者たちもまだまだよのぉ?」

カゲツ:「・・・俺が・・間違っていたというのか?」

ゲン:「やっと目を覚ましたか、たわけが。」

カゲツ:「人が内に秘めた可能性・・か。」


98話/恐竜の世界


竜牙:「あれ・・どこだここ?」

プテラノドン:「キャアアアッ!!」

竜牙:「うっ!・・なんだ今の声!!」

小池:「・・・う、上を見ろ!」

速水:「え・・。」

・・・・。

速水:「えええええっ?!!」

スペード:「プテラノドン?!」

竜牙:「ちょっ!どーなってんだ・・俺たち最初に来た場所に戻れたんじゃないのかよ!!」

覇王:「俺に聞くな!・・ただ・・あくまで推測でしかないが、俺たちが次元の狭間の内部に入った後に、ハンターたちがオリジナルの次元の狭間と無理矢理繋げたことが原因でパラレルワールドの何かが異常をきたしているのかもしれん。」

竜牙:「そんな・・曖昧な・・。」

覇王:「俺だってこんな経験したことがない、分からない事だらけなんだよ。」

本田:「!・・なぁ、あそこにいるのってブラキオサウルスじゃないか?」

スペード:「もしかして俺たち・・今度は白亜紀に飛ばされたのか?!」

白鳥:「う、嘘でしょ・・そんな事があり得るんですか?!」

速水:「まるで歴史の時間旅行をしているみたいです、夢を見ているみたいだ。」

小池:「夢じゃない、これは現実だ。」

竜牙:「小池?」

小池:「忍がいた時代では言葉が通じる相手がいただろ?だから俺たちはある程度適応することが出来たんだ。けど、今回は違う。もし本当に白亜紀に飛ばされているとしたら、今まで以上に俺たちは気を張り続けなきゃいけない。タイムスリップする原理については正直何も掴めていないのが現状だ。けどさっきみたいに突発的に姿が消える保証がないことだけははっきりしている。もう分かるだろ?よーするに俺たちはこの先が見えない中で、この時代を・・下手したらこれから色々な時代を生き抜いていかなければならない状態に陥ってるんだ。」

場が一気に静まり返った。

速水:「!・・こ、こんなの・・無人島ゼロ円生活の方がまだマシですよ。」

スペード:「ああ・・草食竜ならともかく肉食竜と遭遇してしまったら・・。」

白鳥:「も・・もう嫌ぁぁっ!」

覇王:「泣き言を言っている場合じゃない、俺たちには戦う力があるんだ。やるしかないだろう、俺はこのままこの時代で生涯を終える気はない。」

ガサ・・ガサッ・・。

本田:「!」

竜牙:「どうした本田?」

本田:「静かに。」

全員:「「?!」

本田:「ゆっくりとこの場を立ち去るぞ。」

竜牙:「な、なんだよ急に・・。」

本田:「見てみろ。」

竜牙:「!っ・・ティラノサウルス・・?!」

速水:「お・・お食事中みたいですけど・・。」

スペード:「いきなりとんでもないやつと出会っちまったな。」

?:「キィィン・・。」

白鳥:「!何かの鳴き声が聞こえましたよ。」

覇王:「ティラノサウルスが反応した?」

本田:「!あ・・あれ!!」

速水:「あの恐竜・・トリケラトプスでしょうか?」

白鳥:「え、ちょっと!あれ・・子供なんじゃないの?!」

竜牙:「まずいな・・ティラノサウルスのやつ・・完全にロックオンしているぞ。」

速水:「止めないと!」

ガシッ!

速水:「ちょっ・・!」

覇王:「力の弱い者が強い者に食われる。それが自然界の掟なんだ、ここは目をつぶれ速水。」

速水:「そんな・・。」

覇王:「今、お前が動けば俺たち全員が危険に晒されてしまう。こんなところで無駄に体力を削ぐ必要はない。」

小池:「っ・・。」

同級生男A:「力がある者が弱い立場の者を制する。これに関しては大人も子供も関係ない、社会というものをいち早く経験できて良かったじゃないか、社会勉強だよ。それにな?コイツの心の弱さが俺たちの遊び心に火をつけるんだよ、なぁ・・お前が弱いからこーなんだよ、小池。」

小池:「冗談じゃない!」

覇王:「小池?」

小池:「あいつ・・震えて縮こまってる。恐怖で足がすくんでいるんだよ・・見たら分かるだろ?確かにあいつは人間じゃない、下手したら生き物の食物連鎖ってやつだ・・助ける義理なんてないのかもしれない。でも俺は・・俺は!!」

竜牙:「・・・。」

小池:「放っておけない!!」

スッ・・。

小池は駆け出した!

タッタッタッ!!

覇王:「なっ・・!お、おい!!」

竜牙もまた無言のまま小池の後を追いかける!

速水:「え・・部長?!」

覇王:「な、何を考えてるんだ!!」

竜牙:「よぉ珍しく冷静さをかいでるじゃないか、小池。」

小池:「剣崎?!なんでお前まで・・。」

竜牙:「水臭せぇんだよ。」

小池:「?」

竜牙:「付き合うぜ、俺はそういうの嫌いじゃない!」

小池:「っ・・!助かる!!」

竜牙:「機動力じゃ体格差で俺たちが圧倒的に不利だ。やつの意識がトリケラトプスの子供にいってる今のうちにやつの背後に飛び移る!」

小池:「分かった・・力を貸してくれ剣崎!」

小池はアルティメットフォームに姿を変える!

竜牙:「一発勝負だ、いくぞ!!」

竜牙と小池は同じタイミングでティラノサウルスの背後をとる!!

ティラノサウルス:「?!」

竜牙・小池:「「合体必殺技・ファイナルパラディンブレイク!!」」

ドカドカドカドカドカドカッ!!

竜牙・小池:「「うぉぉぉぉぉっ!!」」

目にも止まらない斬撃と高速連打の打撃がティラノサウルスの背中を貫いていく!!

ティラノサウルス:「キィシャァァァァァッ?!!!」

竜牙:「これで・・。」

小池:「終わりだ!」

バッシッィン!!

ティラノサウルス:「アアア・・ァ・・。」

ドサッ!!

ティラノサウルスはその場に倒れた・・どうやら上手くいったようだ。

竜牙:「ハァ・・ハァ・・やったか・・。」

小池:「息を吹き返す可能性もある、今の内にあの子供を連れてここを離れよう。」

トリケラトプスの子供:「キィィン!」

竜牙:「あは・・可愛いな、お前。目がクリクリしてるぜ、ほら!」

小池:「フッ・・無事でよかった。」

小池は小さなトリケラトプスの頭をなでる。

トリケラトプスの子供:「キィィン!」

竜牙:「良かったな、」

小池:「ああ・・ん?」


99話/この時代のルール


トリケラトプス:「コルルルッ・・。」

竜牙:「トリケラトプス?!」

小池:「もしかして・・この子の親か?」

ドッドッドッ・・!

竜牙:「こっちに向かって来てるぞ!」

小池:「俺たちがこの子を襲ったと勘違いしているのかもしれない・・!」

ドッドッドッ・・!

竜牙:「くそっ!あいつが地面を揺らしているせいでうまく歩けねェ!」

小池:「やむを得ん。」

小池が左手を広げると、周囲の物が引き寄せられ集められていく・・!

竜牙:「!」

小池:「邪神・キングアンゴルモア!」

小池は巨大な隕石をトリケラトプスの前方に向けて投げつける!

ドッカァアン!!

小池:「道は塞いだがあまり長くは持たないだろう。今のうちに!」

竜牙:「あいつ、この子を取り返しにきたんじゃないか?」

小池:「分からない。だとしてもタイミングが良すぎる。」

竜牙:「・・まさかとは思うけど、あいつ自分の子供を囮にしたんじゃ・・?」

小池:「!」

竜牙:「自分の身を守る為に子供を囮にし、身を潜めていたのかも・・・いや、さすがに考えすぎか。」

小池:「・・・・。」

竜牙:「小池、後ろ!」

バッシィィィン!!

小池:「ぐあっ!!」

小池は目を覚ましたティラノサウルスのしっぽによって地面に叩きつけられた!

竜牙:「小池!」

小池:「ゲホッ!ゲホッ!・・大丈夫だ・・。」

ティラノサウルス:「グルルルッ・・!!」

ティラノサウルスは深手を負いながらもゆっくりと立ち上がっていく・・。

竜牙:「コイツ・・まだ!」

小池:「まずいぞ、やつが立ち上がる前に仕留めないと!」

白鳥:「え・・あのティラノサウルス、死んでないじゃないですか!」

速水:「銀河先輩、ティラノサウルスに何か弱点とかないんですか?」

スペード:「ティラノサウルスの移動速度は時速30キロ、足を仕留められればと言いたいところだがそう簡単には行かない。と言うのもあいつが最強の恐竜と言われている所以はあの強靭なアゴだ。あいつの牙1本にかかる力はおよそ8トン。分かり易く例えるならワニのアゴの10倍の力を備えている。」

速水:「ワニの・・10倍?!って・・分かり易いような、分かりにくいような・・。」

覇王:「獲物に噛みついた瞬間、肉だけでなく骨まで粉々にできる。と言えば分かるか?」

本田:「!つまり、噛まれたら跡形もなく粉砕されるってことか。やべェな・・。」

スペード:「何より厄介なのは、今の攻撃で小池が血を流してしまったことだ。」

本田:「?」

スペード:「鮫と同様にティラノサウルスは少量の血の臭いを嗅ぎ分けることができる。」

速水:「そ、そんな・・。」

スペード:「ここで仕留めなければあいつらは延々とティラノサウルスから逃げ続けなければならなくなってしまう。速水、さっき弱点がないかって俺に聞いてたよな?」

速水:「だって、ティラノサウルスは人間じゃありません。変則的な動きを剣舞眼で見切ったとしても部長も小池先輩も人である以上、時速30キロの怪物を相手に立ち回るには限界があります。」

スペード:「一応あるにはあるんだが・・。」

速水:「あ、あるなら早く教えて下さい!」

スペード:「水だ。」

速水:「水?」

スペード:「ティラノサウルスは陸上でしか順応できないと言われている、骨格の仕組みからな。」

速水:「水上ならティラノサウルスは追ってこれないってことですか?」

スペード:「実際のところがどうかは分からないけど・・。」

速水:「この近くに水があるところ・・水があるところ・・。」

スペード:「ないだろ?」

速水:「見渡す限り森林ですね・・。」

スペード:「そういうこと。強行突破しかないんだよ、多少無理をしてでも。そもそもトリケラトプスの子供を助けたいなら水の中には潜れない。」

速水:「そ、そっか・・。」

覇王:「あいつらが招いた種だ、尻拭いは自分たちでしてもらわないとな。」

小池:「究極必殺技・激震滅!!」

バシィッ!!

小池が力いっぱい地面を殴りつけると激しい地震が起こり、ティラノサウルスたちはバランスを崩してその場に倒れこむ!!

ティラノサウルス:「キィシャァァァァァッ?!!!」

ゴゴゴゴゴゴッ!!

竜牙:「うぉっ?!な、なるほどな・・この振動ならいくらティラノサウルスでも自由に身動きを取れねェ!」

小池:「俺たちにも振動はくるけどな、今のうちに出来るだけ遠くに逃げるぞ。」

トリケラトプスの子供:「キィィン!」

竜牙:「!そーいやこの子の親・・どこに行った?!」

小池:「ティラノサウルスが起き上がるときに逃げて行ったよ。」

竜牙:「なっ!・・なんてやつだ、それでも親かよ・・。」

小池:「危険予知ってやつだろ。考えてみれば、俺たちの常識でこの時代で生きている生物の良し悪しを決めつけちゃいけないのかもしれない。」

竜牙:「小池・・。」

小池:「何もこの子だけがこういう目に合っているわけじゃない。この時代で生きている生物は皆、毎日を懸命に生きている。俺たちの知っている常識がどの時代でも当たり前というわけじゃない、このトリケラトプスの親子のように。それがこの時代で生きていく上での暗黙のルールなんじゃないか?」

竜牙:「けど・・お前、助けたじゃねぇか。」

小池:「鋼と重なってしまったんだ・・反射的に体が動いちまった。」

竜牙:「理屈は分かっててもってやつか?」

小池:「ああ、そうだよ・・。自分でもどうしたらいいか分からなくなっちまってる。」

竜牙:「ったく何を言い出すかと思えば・・助けたんだろ、その子の事。」

小池:「・・・。」

竜牙:「だったらせめて安全なところまでこの子を連れていくぞ。中途半端な助けは自己満足でしかない、やる以上は最後までやり遂げるぞ、小池。」

小池:「剣崎・・ああ!」

スペード:「来たか。」

竜牙:「悪りぃ、急に飛び出したりして・・。」

速水:「心配したんですよ、部長!」

白鳥:「・・無事で良かったです。」

覇王:「小池、その子はどうする気だ?」

小池:「とにかく、安全な場所まで連れて行きたい。」

スペード:「だったら天敵に狙われにくく、身を隠せる場所を探さないとな。」

本田:「心当たりがあるぜ。」

小池:「!本当か?」

本田:「さっきブラキオサウルスがいた場所があっただろ?あそこなら、草食竜が生活する環境としてはうってつけの場所なんじゃないか?なんと言ってもブラキオサウルスも草食竜だし。」

スペード:「なるほど、すでに草食竜が住み着いている場所なら確かに安全地帯と言えるかもしれない。」

竜牙:「よし、じゃあそこに行こう。」

竜牙:「つ、疲れたぁぁ。」

速水:「まさかこんなに離れているなんて・・。」

小池:「ほら、お前の新しい住処だ。」

トリケラトプスの子供:「キィィン!」

スペード:「この子の親はどこに行ったんだ?」

小池:「だぶん・・見捨てられたんだ。ティラノサウルスが起き上がろうとしていた時点で見切りをつけたんじゃないか?もうこの子は助からない・・って。」

白鳥:「そんな!・・ひどい。」

スペード:「ん?・・この感じ・・またか!」

速水:「体が透けてきましたね。」

白鳥:「よ、良かった・・このままこの時代に残ることになったらどうしようって考えてました。」

小池:「お別れのようだ。」

トリケラトプスの子供:「キィィン?」

竜牙:「小池。」

小池:「?」

竜牙:「俺との約束、覚えてるか?」

小池:「剣崎、俺にとどめを刺してくれ。」

竜牙:「!何言ってんだ・・。」

小池:「俺は沢山の人を殺めた組織に加担した、責任はとらなければならない。」

竜牙:「だから死ぬって言うんならお断りだ。」

小池:「!」

竜牙:「お前は俺の(ダチ)だ!殺さないし絶対に死なせない・・死ぬぐらいなら生きて殺しちまった人以上の人達をモンスターから救ってやれ。」

竜牙:「どんな時代だって関係ねぇよ、俺たちはモンスターセイバーズだ。困っているやつを助ける、それが俺たちのやるべき事だ。人であろうと恐竜であろうとお前がやったことは間違ってない、俺はそう思うぜ?ほら、目の前を見てみろよ。」

小池:「・・・。」

竜牙:「お前が助けたことで救われた命が確かにここにある。今なら分かるんじゃないか、あの時お前を助けてくれた親友の気持ちってやつがよ。」

小池:「あ・・!」

(あの時の鋼は、イジメられていた俺の為に助けるために拳を振るったんじゃない。俺を助けるために勝手に体が動いたんだ!!)



鋼:「やっと気づいてくれたか。」

小池:「!鋼・・ここは?!」

鋼:「お前の中に俺の思念体が少し入ってたみたいだ。俺が死んじまったせいでお前が悔やんでいたのをずっと見てきたからか分かんねぇけど・・何かが引っ掻かってて今に至るまでずっと成仏できなかったのかもしれないな、アハハ・・。」

小池:「ずっと謝りたかった。俺は・・とんだ勘違い野郎だったよ。」

鋼:「だな。でもいい友人を持ったじゃないか、共士郎。クラスメイトと距離を置いていたあの頃のお前じゃ巡り合わなかっただろうな、彼のような存在に。」

小池:「あいつが気づかせてくれたんだ・・イジメのきっかけをつくっていたのは・・俺だった。」

鋼:「自分をそう追い込むなよ。もう過ぎたことだし、あいつらも度が過ぎていたよ。正直言ってよく耐えていたと俺は思う、凄いよ。」

小池:「っ・・!」

鋼:「おいおい、泣くなよ。」

小池:「な、泣いてねぇし!」

鋼:「へっ・・。俺、後悔してねぇよあの時お前を助けるために動いた事。」

小池:「!」

鋼:「当時のお前はいつだって本気でイジメっ子たちと戦っていた。だからこそ俺の体が勝手に動いたんだ。そんなお前だったから俺はあの時、奮い立たされたんだよ。今のお前なら分かるだろ?誰かを助けるときに後先の事とか考えたりしねぇよ。つまり!あの時の一件はあーなるべくしてなったんだ、お前が自分を責める必要はこれっぽっちもなかったんだ。」

小池:「鋼・・っ!」

鋼:「もう過去に縛られるな、お前はお前の人生を歩め。まぁでも、あのトリケラトプスの子供を助けた時点でお前も俺と同族っぽいけどな。あははっ!」

小池:「フッ・・。」

鋼:「最後に一つだけ言わせてくれ、今度墓参りに行くときはカフェオレを頼むわ!カフェイン不足で死んでしまう。」

小池:「死人が何言ってんだよ。」

鋼:「いいだろ、別に!甘~いやつな、生クリームの!!」

小池:「んだよそれ・・っ・・。」

鋼:「じゃあな、またこうしてお前と会えて良かったぜ!今まで・・ありがとな。」



小池:「うっ・・ううっ・・。」

小池は涙を拭う。

トリケラトプスの子供:「キィィン?」

小池:「この時代で生きていく為には強くならなきゃいけないだろう、挫けそうになる時だってきっとあるはずだ。そんな時は、迷わず誰かに頼ったらいい。いいか、仲間を忘れるなよ?」

竜牙:「迷いは吹っ切れたみてェだな。」

小池:「なんだ?」

竜牙:「なんでもねェよ。」

小池:「?」

小池はトリケラトプスの子供の頭を優しくなでていく。

トリケラトプスの子供:「キィィン!」

白鳥:「あは、嬉しそう!」

小池:「フッ・・元気でな!」


100話/侍の世界


速水:「痛っ!」

覇王:「っ・・またこのパターンか。」

白鳥:「あれ?!」

覇王:「どうした、白鳥?」

白鳥:「剣崎先輩たちがいませんよ!」

覇王:「!」

速水:「ほ、本当だ・・。」

覇王:「ここに来て分散させられるとはな・・。」

速水:「どこに飛ばされたんでしょうか、部長たちは。」

覇王:「分からない。ともかく俺たち3人で出口を探すしかないな。」

速水:「ですね・・それにしてもやけに人気がないというか・・。」

白鳥:「もうっ!今度は何時代に飛ばされたの・・私、もう疲れたぁ。」

覇王:「鎌倉時代かもしれん。」

速水・白鳥:「「?!」」

白鳥:「どうしてそう言い切れるんですか?」

覇王:「あれを見ろ。」

速水:「!・・侍?!」

覇王:「俺たちが今いる時間は鎌倉幕府の始まりあたりなのかもしれない。」

速水:「だとしたら宮殿を目指した方がよさそうですね。」

覇王:「ああ、侍巨に会いに行く。」

白鳥:「あ、あの~。」

速水:「?」

白鳥:「侍巨って何なの?」

速水:「あー説明しますね。侍って3つの種類に分けられるんです。」

白鳥:「侍に種類とかあるの?!」

速水:「はい。天皇に仕える侍従(おおびと)、個人の主人に仕える侍巨(おおとまちきみ)、宮殿に仕える侍巨(おおとのつかえ)という風に侍と言ってもその人の立場によってまた違うんです。」

白鳥:「へぇ~速水くん、物知り~!」

覇王:「今から会いにいこうと考えているのは侍巨(おおとのつかえ)だ。」

白鳥:「何か特別な理由があるんですか?」

覇王:「この侍巨(おおとのつかえ)こそ俺たちが知っている一般的な侍なんだ。」

速水:「難しい言い方をしちゃったけど、よーは侍に会いに行こうって話ですよ。」

白鳥:「え、でもどこにあるんですか?・・その宮殿って。」

覇王:「どこかに手掛かりがあるはずだ・・ん?」

覇王は通り過ぎていった侍が落とした小さな紙切れを拾う。

速水:「それ・・!」

覇王:「字がにじんでいて分かりづらい部分もあるが、宮殿までの地図と見て間違いないだろう。」

白鳥:「な、何という強運・・。」

覇王:「地図を見る限りだと、直進していけば宮殿に辿りつくみたいだ。」

速水:「となれば、後は行動あるのみですね!」

覇王:「ああ、行くぞ。」

白鳥:「ち、ちょっと!私を置いて行かないで!!」

3人が歩み出す中、その様子を影から見つめている者がいた。

?:「地図を発見した、これから取得者の跡を追跡する。そちらの準備が整い次第、増援を要請したい。」

?:「あいつら、何者なんだ?」

?:「旅人・・にしてはやけに奇抜な恰好をしている。だが、あの地図を所持している以上、やつらを見失うわけにはいかない。いいか、これは絶好のチャンスだ。」

白鳥:「ま、まだ?」

速水:「だいぶ・・歩きましたね。」

覇王:「地図の味方は間違ってないはずだが・・。」

速水:「それ、本当に宮殿までの道のりが書かれた地図なんでしょうか?」

白鳥:「ここまで来て?!・・それはないよぉ~。」

?:「その通りだ。」

覇王:「!」

速水:「誰だ?!」

銀二:「俺の名は銀二。あんたらには悪いがそいつは神殿までの道のりが書かれた地図なんかじゃあねぇぜ?」

覇王:「ほう・・だとしたらコイツは何を指し示した地図なんだ?」

銀二:「お前が知る必要は・・ない!」

タッ・・タッタッタッ!!

覇王:「やる気か!」

銀二の刀を使った攻撃を覇王は上手いこと交わしていく・・!

シュッ、シュツ、シュッ!!

銀二:「この男・・戦い馴れしている?!」

覇王:「この無駄のない動き・・まさかお前、侍か?」

速水:「覇王さん!」

覇王:「お前たちは下がってろ!」

銀二:「はぁぁぁっ!」

ズバッ!

覇王:「うぐっ?!」

覇王は利き腕を切られてその場にうずくまる・・。

銀二:「さぁ、その地図をこちらに渡してもらおうか。」

速水:「斬ハイゼルセイバー!」

カキン!

銀二:「っ・・小僧!」

速水:「白鳥さん、覇王の応急手当を出来そうな物って持ってきてます?」

白鳥:「あるよ!こっちは任せて!!」

速水:「お願いします!」

銀二:「邪魔をするなぁぁっ!!」

カキン!カキン!カキン!

速水:「くっ!・・なんて無駄のない動き・・。」

(僕が一方的に剣で押し負けるなんて!)

銀二:「どうした?さっきまでの威勢はどうしたぁ?」

速水:「ご自分の足元を見て物を申して下さいよ。」

銀二:「?!」

(これは・・足下が凍りついているだと?!)

白鳥:「上手い!男の気を引き付けながら、気づかれないように足下に氷河転結絶対零度を流し込んでいたのね!!」

銀二:「奇怪な技をっ・・!」

速水:「動きを鈍らせて戦うのは僕の専売特許みたいなものですからね、さぁここからですよ!」

ズババッ!

銀二:「ぐああっ!!」

速水:「さぁ、これ以上苦しみたくなかったらこの地図が一体何を指し示した物なのか吐いて下さい!」

銀二:「くっそぉぉっ!おい炎斬!!力を貸せ!!」

速水:「えっ?!」

覇王:「炎斬だと?!」

スタッ!

炎斬:「それはパラレルワールドからモンスターワールドに行くまでの道のりを示した地図だ、速水。」

速水:「炎斬先輩?!ど、どうしてここに・・。」

銀二:「な・・知り合いだと?!」

炎斬:「銀二、この依頼は取り消しだ。状況が変わった。」

銀二:「なんだとっ!てめぇ・・俺を裏切る気か?!」

炎斬:「裏切るも何も俺はコイツを手に入れる為にお前に近づいたんだ。お前と共に行動し、地図を手に入れる機会を伺いながらな。」

銀二:「ふざけるな!」

炎斬:「ふざけてるのはどっちだって話だな。ならず者の盗賊風情が・・無闇に刀を振り回しやがって。」

速水:「盗賊?!・・侍じゃなかったんですか?」

炎斬:「元侍・・といったところか。」

銀二:「ちぃぃ、てめぇ・・手のひら返したぁいい度胸じゃねぇか。」

炎斬:「あーもう、うるさい!」

バシッ!

銀二:「うぐっ・・!」

炎斬は腹パンで銀二を気絶させた。

速水:「だ、大丈夫なんですか・・彼?」

炎斬:「大丈夫だろ、それよりなんでお前たちがここに?」

速水:「それが・・かくかくしかじかで・・。」

炎斬:「!なるほどな、そういう事だったのか。」

覇王:「質問を返すようで悪いが、お前がなぜこの時代にいるのか説明してもらえないか?」

炎斬:「次元の狭間を通って来たんだろ?俺はお前たちより早くあの次元の狭間を通った、それだけだ。」

速水:「いやいや、事の経緯を説明してください!」

炎斬:「・・半月前、ハンターに呼ばれたんだよ。オリジナルの次元の狭間と地下空洞の奥で発生した小さな歪みを繋げる実験を行う為に協力してほしいって。」

覇王:「!」

炎斬:「あの全国大会が行われてから日本全国各地でモンスターセイバーズとなった者が増え始めている。俺は出身の高松でモンスターの討伐を行ってたんだけど、あっちでも新しくセイバーズとなった者が3人いてな。四国地方周辺で出現したモンスターたちはあいつらだけで正直間に合ってる。まぁ言うほど頻繁にモンスターが出現しているわけでもないからよ、手持ち沙汰になっているそんな時にハンターから呼び出しがかかったんだ。」

速水:「その為にわざわざ福岡に?!」

炎斬:「モンスターの討伐絡みなら麒麟ってやつが交通費と飲食代を支給してくれる。無論、この件に関しても前払いで交通費が支給されるって言われたんだ。ただ単にモンスターを数体討伐すればいいのかなと思って来てみたら・・全然違ったよ。もっとこう戦いの核に触れるような重大なことに巻き込まれっちまったみたいだ、アハハ・・。」

白鳥:「アハハって・・あなたねぇ。」

覇王:「けどお前、俺が実験を手伝っている時はいなかったよな?」

炎斬:「あー俺はオーロラ島の方から次元の狭間を行き来きしてたからな。そっち側にいた人間と会わなかったんだ。多分だけど、地下空洞の方から人が入って異常がないかを確認する為に覇王が、オーロラ島の方から人が入って異常がないかを確認する為に俺が呼ばれたんじゃないか?」

覇王:「なるほど、そういうことか。」

炎斬:「まぁでも、お前たちが無事に飛ばされてるところを見る限りだと実験は成功したみたいだな。」

速水:「それが・・僕達、正規のやり方でパラレルワールドに飛ばされたわけじゃないんですよ。」

炎斬:「え、どういうこと?」

覇王:「実験に協力していたならフォルテが逃亡していることも知ってるだろ?」

炎斬:「ああ。」

覇王:「行方不明だったそのフォルテが突如として俺たちの前に現れたんだ。」

炎斬:「?!まさか・・フォルテに何かされたのか?」

覇王:「ああ。まだ歪みの中が繋がってない状態の時に、やつの手によって俺たちは無理矢理次元の狭間の中に押し込まれてしまったんだ。」

炎斬:「まじかよ・・ん?でも、この世界にいるってことは成功したんじゃねぇのか?」

速水:「あの・・炎斬先輩?申し上げにくいんですけど、ここはパラレルワールドじゃないんですよ。」

炎斬:「?!そ、そうなのか・・?」

覇王:「この世界はパラレルワールドの中に広がっている様々な世界のうちの1つだと俺は考えている。実際、この世界に来るまでに俺たちは忍の世界、恐竜の世界に飛ばされていたんだ。」

炎斬:「え・・なんだよそれ!どうやったらそんな風に世界を行き来きできるんだよ?!」

覇王:「原理は分からん。俺たちの意志とは関係なく、体が消えかかると違う世界にワープしてしまうみたいだ。」

炎斬:「なんだよそれ・・俺なんてここに飛ばされてから違う世界とか行ったことないのに・・。」

覇王:「炎斬にはそういう現象が起こってない?どういうことだ?」

炎斬:「知らねぇよ・・俺が説明してほしいぐらいだ。」

白鳥:「ねぇ、もしかしてこれを持ってないからじゃない?」

白鳥はポケットに入れていた希望の証を炎斬に見せる。

炎斬:「!・・なんだよそれ。」

白鳥:「やっぱり!・・これ、心の証っていうの。」


101話/炎斬再来!!


炎斬:「心の・・証?」

速水:「ハンターから受け取ってないんですか?」

炎斬:「あ・・。」

白鳥:「え・・。」

速水:「なんで急に固まったんですか?」

炎斬:「いや、もらった!もらった、もらった・・ってあれ・・あれ、あれっ?!!」

炎はありとあらゆるポケットに手を突っ込むが・・。

白鳥:「う、嘘でしょ・・。」

速水:「まさか・・落としたんですか?」

炎斬:「か・・かもしれない・・。」

覇王:「何をやってるんだ!」

炎斬:「うっ・・す、すまん・・。」

速水:「証にはそれぞれに固有の名前がつけられていました。炎斬先輩の証は何を象徴していたか覚えてますか?」

炎斬:「確か爆炎の証って名前だった、白鳥の見せてくれた証とは違って真っ赤な色をしていたよ。」

銀二:「その心の証ってのはコイツのことか?」

炎斬:「!・・それ・・。」

銀二:「てめぇが寝ていた間にパクっておいて正解だったぜ。」

速水:「返して下さい!」

銀二:「やなこった!コイツは間違いなく高く売れるぜ、へへっ・・。」

炎斬:「意識が失ったフリをしていれば良かったものを・・。」

銀二:「てめぇから逃げ切れる自信があるから動いたんだよ、バーカ!」

炎斬:「む・・面白れぇ・・だったら勝負と行こうじゃねぇか。」

覇王:「炎斬、無闇に力を振るなよ!相手は人間だ、モンスターとは違う!!」

炎斬:「安心しろ、殺しはしねぇよ・・。」

スッ・・・タッタッタッ!!

銀二:「ハッ!」

カキン!

刀と剣が火花を散らす!

銀二:「おらぁっ!」

カキン!カキン!カキン!

炎斬:「うぐっ・・!」

速水:「刀を振り下ろすスピードが速すぎて目で追えない?!」

白鳥:「手数で炎斬先輩を圧倒している・・!」

覇王:「経験値の差だな・・剣技の腕はやはり侍の方が上手か。」

炎斬:「ヤロォ・・爆フレイムソード!!」

ズババッ!

覇王:「!ほう・・フレイムソードを進化させたか。」

銀二:「っ・・なんだあの剣・・炎を放出するなんて!!」

炎斬:「姉ちゃんの剣はそんじょそこらの剣とは一味違うぜ!」

シュッ!シュッ!!

銀二:「ちっ!迂闊に近づけやしねぇ・・ここは一旦退くか。」

炎斬が剣を振りかざして半身になった瞬間の隙をついて銀二は逃走する!

銀二:「あばよ!」

炎斬:「なっ!お、おい待て!!」

速水:「ハヤブサランニング!」

タッタッタッ!

銀二:「な、なにぃっ?!」

(コイツ、何っう足をしてるんだ!!)

速水:「心の証は返して貰いますよ!」

銀二:「いい加減、しつけぇんだよ!」

銀二は速水に向かって刀を振り下ろす!

速水:「!」

白鳥:「超必殺技・ギガスパイラル!!」

シュルルルッ!!

銀二:「ぐあっ?!!」

(今度は竜巻?!何がどうなってやがる・・!!)

速水:「ナイス白鳥さん!」

白鳥:「速水くん、今の内にあいつを取り押さえて!!」

速水:「はい!」

銀二:「おっと!」

速水:「!」

銀二は爆炎の証に刀を突きつける。

速水:「・・何のつもりですか?」

銀二:「動くんじゃねぇぞ?誰か一人でも動いたらこの証を粉々にする!」

炎斬:「てめぇ・・卑怯だぞ!!」

銀二:「うっせぇ!!3対1で俺を追い詰めているてめぇらにだけは言われたくねぇよ!!」

速水:「くっ・・!」

覇王:「3人とも、ここはあいつの指示に従え。」

速水:「なっ!」

白鳥:「何を言って・・!」

覇王:「今のあいつは俺たちを過度に危険視している、命の危険を感じた人間は何をするか分からない。何より心の証を粉砕されたら炎斬は一生パラレルワールドから出られなくなってしまう。」

炎斬:「くっ・・!」

銀二:「いいぜ、随分と利口じゃねぇか。そのまま動くんじゃねぇぞ!!」

銀二はそう言い残し、覇王たちの目の前を過ぎ去ってしまった。

炎斬:「ちくしょう・・俺が気を抜いていたせいで!!」

速水:「お、落ち着いて下さい!」

覇王:「奴は心の証を売却するつもりなんだろう?なら、行き先を絞り込むことはできる。」

炎斬:「!」

速水:「そうか!質屋を当たって行けば・・。」

白鳥:「で、でも・・私たちの中に質屋がどこにあるのか・・知っている人がいる?」

速水:「あ・・。」

覇王:「俺たちには口と耳がある。知ってるか?昔の人にとって情報を得る為に最も有効な手段は会話だったんだ。新聞もといラジオすらなかった時代では、人から人に伝わってきた情報こそ人が得る事のできる唯一の情報だったんだ。」

速水:「!そうか・・あいつの動きを見た人だっているかもしれない。」

白鳥:「聞き込みをしていきながら情報を繋げてあいつの行き先を見つけ出すのね!」

覇王:「そういうことだ。聞こえたか炎斬?うずくまっている暇はないぞ。」

炎斬:「ああ・・みんな、悪いけど力を貸してくれ。」

速水:「乗りかかった船ですもんね!」

白鳥:「うん、みんなでこの世界を出よう。」

覇王:「そうと決まれば聞き込み開始だ。」

そして・・。

覇王:「集めた情報から察するにあの銀二って男は衛守(まもり)に変装し、神殿の方向に向けて

歩いていった可能性が高い。」

白鳥:「あの・・衛守(まもり)って?」

速水:「さっき話していた侍巨(おおとのつかえ)のうちの一人を指す呼び方ですよ。」

炎斬:「おおー詳しいな速水。」

速水:「侍でもないのにわざわざ衛守(まもり)に変装したということは、よっぽど神殿に潜り込みたかったんでしょうね。」

白鳥:「なんで質屋じゃなくて神殿なんだろう?心の証を売却するだけならわざわざ神殿に向かう必要はないんじゃない?」

覇王:「・・もしかしたら奴は何者かに雇われているのかもしれない。」

炎斬:「!」

覇王:「どうした炎斬?」

炎斬:「そうだ・・あいつは神殿の内部にいる依頼人にあるモノの在り処を示した地図を見つけ出してほしいと言われていた。詳しい詳細事項までは聞かされていないけど、あれが関係しているのかも。」

速水:「え?地図って・・炎斬先輩があいつから奪い取ってましたよね?」

炎斬:「ああ、ここにある。」

覇王:「地図・・か、盲点だった。となると、心の証を売ると発言していたのはフェイクなのか?」

炎斬:「俺たちに自分が質屋に向かったと思い込ませる為の・・虚言かもしれない。」

覇王:「炎斬、お前はさっき言ってたな?それはパラレルワールドからモンスターワールドに行くまでの道のりを示した地図だって。」

炎斬:「ああ、違いねぇよ。俺がここに来て間もない頃にこの村の人たちが言ってたんだ。この村の先に異界と繋がっている扉があると。あの地図は噂の有無を確かめるために異界を調査した侍の連中が残したメモみていなモノだ。」

覇王:「なら、どうしてその異界がモンスターワールドだと言い切れる?証拠でもあるのか?」

炎斬:「ここ数日、怪物の目撃した者が数名いる。物的証拠は出せないが、モンスターと見て間違いないはずだ。」

速水:「!じゃあこの世界にもモンスターが・・。」

白鳥:「だとしたらあの銀二って男はその依頼人に扉までの行き先を伝える為に神殿に向かったのかな?」

速水:「可能性は高いと思います。ですが、仮にそうだとしてもその神殿がどこにあるのかって話ですよ。」

白鳥:「そうね。仮に神殿まで辿り着いたとしても、中に入らせてもらえるとは思えない。」

覇王:「・・中まで足を踏み入れる必要はないんじゃないか?」

速水:「え?」

覇王:「恐らくその依頼人は銀二が伝えた扉までの行き先が正しいのかそうでないのかを判断する為に神殿を出て確かめようと動くはずだ。俺がその立場なら間違いなくそう動く。」

白鳥:「!言われてみればそうかも・・。」

覇王:「俺たちの中に神殿までの行き先を知っている者はいない。だが・・。」

覇王は炎斬が掴んでいる地図に視線を落とす。

炎斬:「そうか!」

速水:「僕たちが先に扉がある場所まで辿りつければいいわけですね。」

覇王:「その通りだ。そして、あいつが来たところで心の証を取り返す。」

白鳥:「そうと決まれば急がないと!」

炎斬:「えっと・・こっからだと・・。」

銀二:「ったく・・天皇も人使いが荒いぜ。地図がなければお前の証言は信用できないだと?ふざけやがって・・。」

炎斬:「よう、銀二。」

銀二:「!てめぇ・・丁度いいぜ、俺もてめぇに用があったんだよ。」

炎斬:「何?」

銀二:「依頼人が俺の証言じゃ信用できないんだとよ、つーわけでよその地図返してくれねぇか?」

炎斬:「嫌だね。コイツを渡して報奨金をがっつりといただきたいんだろうがタダで渡すつもりはない。取引きをしないか?それは大事なモノなんだ、返してほしい。」

銀二:「バカ言え、コイツは俺が拾ったんだよ!」

速水:「知らないんですか?」

銀二:「てめぇらはさっきの!」

速水:「原始取得は3ヶ月の保管期間内に落とし主がわからなかった場合のみ認められるんです。よってあなたがしていることは強盗となんら変わらないんですよ。言ってしまえば犯罪行為です!」

銀二:「あ?んなことを俺が律儀に守るわけねぇだろうが!!」

炎斬:「だから取引きだって言ってるだろ!俺の所持している地図と引き換えだ。これなら文句ねぇだろ?」

銀二:「しゃらくせぇ・・力ずくで奪い取るしかなさそうだな!」

炎斬:「チッ!強欲な野郎だ・・。」

速水:「僕らも加勢します!」

炎斬:「いや、元々証を盗まれたた俺の不注意が原因なんだ。ここは俺に行かせてくれ。」

速水:「で、でも・・。」

炎斬:「いいから。」

銀二:「おらぁぁぁっ!」

炎斬:「一撃で終わらせる・・。」

炎斬はフレイムソードを引き抜く!

カキン!

銀二:「またその妖刀か。」

炎斬:「姉ちゃんの剣は妖刀なんかじゃねぇ!!」

カキン!カキン!

銀二:「どうした?この程度か!」

ズバッ!

炎斬:「うぐっ!」

速水:「利き腕をやられた!」

銀二:「おいおい、全然楽しめねぇぞ!」

ズバッ!ズバッ!

炎斬:「ぐああああっ!!」

(くっ・・動きが速すぎて見切れない!)

銀二:「元侍を舐めんじゃねぇぞ、ガキが。」

炎斬:「舐めてねぇよ・・。」

バキバキッ・・。

銀二:「なっ・・!」

(俺の刀が・・割れていく・・?!)

炎斬:「刀の手入れ・・怠っていただろ、お前。」

銀二:「くっ・・。」

炎斬:「俺はこの剣に色んな思いを乗せて戦っているんだ、今まで積み上げてきたモノをすべてな。あんたはどうなんだよ。」

銀二:「っ・・。」

炎斬:「俺には刀が泣いてるように見える・・自分の命を預ける刀を粗末にするようなやつが侍を名乗ってんじゃねぇ!」

銀二:「だぁまぁれぇぇぇ!!」

速水:「砕けた刀で先輩を突き刺す気ですよ!」

白鳥:「先輩、逃げてっ!!」

炎斬:「馬鹿言え、下手に避けたら後ろにいるお前たちを危険に晒してしまうだろ!!」

希未:「大きく出たねぇ~。ま、あんたの人生だし、好きにしなよ。自分が正しいと思ったことを最後まで貫くのがあんたでしょ。」

炎斬:「なんでこんな時に思い出すかな・・ったく。」

炎斬が拳を握りしめると剣から力が拳に流れ出す!

銀二:「!」

炎斬:「ファイアガントレット!!」

バシィィン!!

銀二:「ぐあっ・・!!」

ドサッ・・。

炎斬:「ふぅ~危機一発だった。」

銀二のカバンから爆炎の証が転がり落ちる。

炎斬:「おっと・・へへ、返してもらうぜ。帰れなくなるのは御免だ。」

速水:「やりましたね、先輩!」

炎斬:「心配かけて悪かったな。」

白鳥:「本当ですよ、まったく。」

覇王:「!体が透けてきたようだ・・。」

炎斬:「おお!この状態がそうなのか・・。」

覇王:「炎斬、例の地図は持っているか?」

炎斬:「もちろん、ちゃんとカバンにしまってるよ。」

覇王:「次の移動先次第で俺たちの動きは大きく変わる。」

速水:「ええ、最初に飛んできた場所に戻ることができればその地図を頼りに足を進めることができます。」

白鳥:「あーそっか!モンスターワールドに行ってしまえば、そこから次元の狭間を通じて人間界に帰れるかもしれない!」

覇王:「そういうことだ、とにかく先に進もう。銀二の情報通りならこの先に扉がある、俺たちの体がワープする前に飛び込むぞ!」


102話/最強の戦士(ハイソルジャー)の世界


その頃、とある世界の町はずれに飛ばされた小池はある場所に迷い込んでしまったようだ。

小池:「ここは・・どこだ?」

小池は辺りを見渡していくと、周囲には数千人ほどの観客たちが小池の周囲を囲んでいた。

小池:「!ここ・・闘技場(コロッセオ)か?!」

?:「貴様、何者だ?」

小池:「!」

?:「見たところ、この世界の人間じゃなさそうだな。」

小池:「この世界?色々と詳しそうだな、知っていることをすべて吐いてもらおうか。」

?:「ハッ、それが人に物を頼む態度かよ。いいか?お前の立っているスタジアムでは毎日決まった時間に戦士たちの殺し合いが行われている。」

小池:「殺し合い?」

?:「ようこそ、最強の戦士(ハイソルジャー)の世界へ。」

小池:「!・・ハイソルジャーだと?!」

レイク:「モンスターワールドが確認されたのは9年前、セントラル王国という異国の地で突如として出現した次元の狭間がきっかけなんだ。そこから出てきた超生物・・モンスター。王国はこの未知なる生物に対抗するべく、特殊な訓練を受けたハイソルジャーたちを王国に派遣した。これが後の初代モンスターセイバーズたち・・名をキングダムセイバーズ。そう・・私たちの事だよ。」

小池:「常人離れした身体能力を持つ戦士・・か。」

小池:「まさか・・その殺戮の参加者全員がハイソルジャーとでも言いたいのか?」

?:「殺戮とはひどい言い方だ。この闘技場(コロッセオ)では戦士たちが己を鍛え上げるべく、互いに切磋琢磨している、言葉は選べ。おっと、自己紹介がまだだったな。俺の名は桐生拓斗、この闘技場(コロッセオ)優勝者(チャンピオン)ってやつだ。」

小池:「チャンピオンだと・・!」

桐生:「軽~く自己紹介も済んだことだし、さっさと始めようぜ。」

小池:「何をだ?」

桐生:「スタジアムに足を踏み入れた以上、てめぇも立派な参加者だ。一つ忠告しておくぜ、この世界では出会った瞬間に戦いが始まる。暗黙のルールってやつだ。」

小池:「ハッ!・・とんでもない世界に迷い込んでしまったみたいだな。」

桐生:「言っておくが新入りだろうと手は抜かねぇ、ゲームスタートだ。」

小池:「・・やるしかないか。」

小池はナックルグローブをつけて構える。

桐生:「フローズンナックル!」

小池:「超必殺技・ソウルブレイク!」

ドカァァン!!

観客たち:「ワーワー!!」

桐生:「おいおい、素人かと思ったらなかなか楽しませてくれそうじゃねぇか。」

小池:「コイツ・・本当に人間か?!」

(なんつぅ威力の拳を突きやがる・・!)

桐生:「アイスレッグ!」

ズバァァン!!

息をつく間もなく桐生の攻撃が小池をスタジアムの壁際まで蹴り飛ばした!!

小池:「ぐあっ!!」

桐生:「へへへ・・まだまだ!」

小池:「X技・レボリューションサーガ!!」

小池が手の平を広げると紫の光線が勢いよく桐生に襲い掛かる!

桐生:「うおっ?!」

シュゥゥゥゥン・・ドカァァアン!!

桐生:「痛っ・・へぇ、てめぇもただの人間じゃないようだな。」

小池:「俺のレボリューションサーガを生身で受けてピンピンしてるだと?!」

桐生:「言ったはずだ、俺はハイソルジャー。普通の人間とは訳が違うわけよ。」

小池:「っ・・だったら・・。」

小池はアルティメットフォームになろうとしたが・・。

桐生:「はぁぁぁっ!!」

バシィッ!!

小池:「くぅっ?!!」

ズザザザ・・ッ!!

桐生:「フローズンナックル!!」

小池:「特定の部位を凍らせて攻撃力の底上げ、凍らせた部分を相手に撃ち続けることで不要な部分が削られ、凍らせた拳がより鋭利になる。よくできた技だ、何より受ける側は相手の凍らせた拳を受け止めようにも滑って上手く捌けない!」

桐生:「アイスレッグ!」

小池:「!」

ズバァァン!!

小池:「がは・・っ・・!」

桐生:「いい血反吐を吐くじゃねぇか・・。」

小池:「なんて反射速度だ、分かっていても交わしきれない!」

桐生:「おら、反撃して来いよ。一方的な試合ほどつまらねぇものはねぇよ。」

小池:「っ・・言われなくても!奥義・レジェンドライブ!!」

小池は高速回転しながら桐生との距離を一気に詰めにかかる!

桐生:「?!」

(なんだ、この技っ!!)

小池:「うぉぉぉぉっ!!」

シュルルルルッ!!

ドカァァン!!

桐生:「ぐああっ!!」

小池:「ハァハァ・・どうだ。」

桐生:「っ・・痺れたぜ、いい攻撃だァ・・。」

小池:「コイツ、まだ動けるのか・・!」

桐生:「全開でいくぜ・・うっ・・!」

ドサッ!

桐生:「ごほっ!・・体が動かねぇ・・。」

小池:「さすがにレジェンドライブは耐久できなかったようだな。」

本田:「そのぐらいにしておけよ、小池。」

小池:「本田!・・お前、いつからそこに。」

本田:「今来たばっかだよ・・ってか連れて来られた。」

小池:「?」

神谷:「はーい、小池くん?」

小池:「神谷?!な、なんでお前がここに・・!」

桐生:「ちっ!・・とんだ邪魔者が入ったな・・ズラかるとするか。」

小池:「!おい・・くそっ、逃げられた。」

本田:「あいつらホントタチ悪いよな。自分が不利になった瞬間に戦線を離脱するんだからよ、俺もさっき似たような状態に陥ったんだ。」

神谷:「そこで私が合流したの!何と言っても、苦戦していた本田くんの間に颯爽と駆けつけたんだから!」

本田:「く、苦戦なんてしてねぇよ!」

神谷:「ふふっ。」

本田:「なんだその笑みは!」

小池:「お前たち知り合いだったのか。」

神谷:「まさか~さっき知り合ったばかりよ。」

本田:「俺から言わせてもらえば、お前たちが知り合いだったことに驚きを隠せないよ。」

神谷:「竜くん・・剣崎竜牙の繋がりって言えば分かるかしら?」

本田:「ああ、なるほど!」

小池:「話を戻すぞ。なぜ神谷がこの世界にいるんだ?」

神谷:「竜くんから応援要請が来てたからね~ちなみに私の他にも何人かパラレルワールドに入ったわよ。この世界にいるのかは分からないけど。」

小池:「それは・・ハンターたちのことか?」

神谷:「会えば分かるわ、見た限りだと私だけ違う世界に飛ばされたみたいなのよね。同じ扉を開けて入ってきたのに・・。」

小池:「それも誤作動の一つなのかもしれないな。」

神谷:「まぁでも知り合いと合流できて良かった~一人じゃ心細いからね。」

本田:「確かに、女性一人でこの世界を歩き回るのは心細いわな。」

神谷:「そうなの~だって私、弱い乙女だから。」

小池:「・・・。」

本田:「なんだよ小池、だんまりか?」

小池は神谷をじーっと見つめる。

神谷:「いやん、照れる~。」

小池:「・・・ハァ~何も言うまい。」

(よく言うぜ、その気になればどんな技でも無効化できる力を持っているクセによ。)

神谷:「とにかく闘技場(コロッセオ)から離れるわよ。」

そんな3人の様子を影から見つめる桐生は何やら企んでいるようだ。

桐生:「やっと行ってくれたか。それにしてもあいつらは一体何者なんだ?ま、何であると危険因子であることに変わりはなねぇ、俺と対等に渡り合えるんだからよ。一泡吹かせてやりたいぜ・・・そうだなぁ、ロイヤルソルジャーの連中に一矢報いてもらうとするか。」

本田:「結構歩いたな。」

神谷:「ええ。でも同じところをぐるぐると回っている気がする。」

小池:「気のせいだろといいたいところだけど、あながち間違ってないかもな。まるで誰かに誘導されているみたいだ。」

?:「お前たちだな、異世界の住人というやつらは。」

小池:「?!」

本田:「おい!いつの間にか囲まれてるぞ、俺たち!」

?:「お前たちは何者だ?」

小池:「答える義理はない。」

?:「なら・・力づくで吐かせるまでだ。」

本田:「やる気か?!」

桐生:「よォ。」

小池:「桐生?!」

桐生:「俺を散々コケにしてタダで帰れると思うなよ。」

小池:「ってことはこいつ等はお前の差し金か。」

桐生:「ああ、こいつ等は俺と提携を結んでいる利害関係者ってやつだ。」


103話/パラレルワールドの分岐点とキーワード


桐生:「俺たちの世界はモンスターワールドとは近い位置関係にある。パラレルワールドの中で存在している生物が異なる世界に入り込むと色々と面倒なんだ。これ以上、世界と世界を繋いではならない。俺たちの世界は特に注意をしておかないといつ何がきっかけで繋がってもおかしくはない。だからこそ、モンスターワールドに誰一人としてこの世界から人が送られることがないよう俺が監視している。んで、もしこの世界の住人じゃない来訪者が潜り込んで来たと俺が判断した場合、連絡を一本よこすだけで、モンスターワールドを守護しているロイヤルソルジャーたちがこの世界に駆けつけてくれる来訪者がモンスターワールドに行かないように阻止してくれるんだ。」

小池:「やけに詳しいな、本当にこの世界の住人なのか?」

桐生:「そりゃあ彼ら(ロイヤルソルジャー)の協力者だからなァ、必要な情報は互いに共有させてもらってる。」

神谷:「ロイヤルソルジャー・・四聖獣を守護する最強の騎士団!」

小池:「知ってるのか、神谷?」

神谷:「神話の話になるわ。神様には階級というものがあるの、私たちセイバーズの創始者 麒麟もそのうちの一体。かつて世界には十二人の神様がいた、ある日を境にその神々は任期を終え、己の力を十二個の神装に封じて人間界に人として転生することになった。けど転生する上である問題点が浮上したの。」

小池:「問題点?」

神谷:「神話によると、すべての世界を統治する神がいなければ数多の世界のバランスを保つことができなくなるらしいわ。」

小池:「!」

神谷:「そこで十二人の神々は転生する前にそれぞれが神装の力を出し合って一体の神を造り出した、その神様こそ私たちセイバーズの創始者 麒麟。しかし誕生した麒麟は生まれ持った力を制御できずに一部を分散させてしまった、その力の断片によって生まれた怪物、それがモンスターの正体。」

小池:「!」

本田:「!」

神谷:「数体なら問題はなかったわ。けど、モンスターには生殖機能があった。よって次第にモンスターたちは増殖していき麒麟の管理だけでは追いつかなくなってしまったの。そこで麒麟が生み出したのが四聖獣。4体の聖獣はモンスターワールドを統括すべく新たな神として誕生したと言い伝えられているわ。その聖獣たちを守護する為に、数あるモンスターの中でも別格の強さを誇るモンスターのみで構成されたチームがある。それがロイヤルソルジャー、まさに最強の騎士団よ。」

小池:「っ・・!」

本田:「おいおい、その話が本当なら目の前にいるこいつ等は相当やべぇやつらんじゃ・・。」

グランドべリアルナイト:「さてと、久々に暴れるぜェ。」

クリスタルウォーナイト:「ではもう一人の男をこのクリスタルウォーナイトが相手しよう。」

ギガメテオナイト:「女は私が・・。」

ダイヤモンドナイト:「・・・。」

小池:「来るぞ!」

本田:「ああ!」

神谷:「ええ!」

グランドべリアルナイト:「おらぁ!ロードオブソード!!」

本田:「スパークリングサンダー!!」

ドッカァァン!!

グランドべリアルナイト:「ほう・・俺の剣を受け止めるたァ大したものだ。」

本田:「くそっ・・電撃越しでも手が剣の重さに手が耐えきれねぇ・・。」

グランドべリアルナイト:「フン!」

ズババッ!!

本田:「ぐあっ!」

グランドべリアルナイト:「人の限界を教えてやる。」

本田:「チャージアップ・・。」

ビリリリッ・・。

グランドべリアルナイト:「!・・電撃を。」

本田:「ギャラクシーボルテックス!!」

本田の背中からほとばしる電撃が地面を伝っていく!

グランドべリアルナイト:「いかに力を蓄えようと無駄な足掻きよ、アックスブレード!!」

本田:「なっ・・剣が斧に変形した?!」

グランドべリアルナイト:「はぁぁぁっ!」

シュッッ・・ズババババババッ!!

本田:「う、嘘だろ・・電撃を弾いている?!!」

(まさか遠心力で高速回転しながら俺の電撃を風で弾き飛ばしているのか?あんなに重たい剣を振り回しているってのに何て奴だ!!)

グランドべリアルナイト:「ぼさっとしてんじゃねぇぞ!!」

ズババッ!!

本田:「がは・・っ?!」

小池:「本田!!」

本田:「大丈・・・痛っ!」

本田は額から流れ出る血を抑えながら、膝をついてしまう。

本田:「うぐっ・・こいつはやべぇな。」

(体がぐらつく・・まともに動けねぇぞ・・。)

グランドべリアルナイト:「ヘビィメタルブレイカ―!!」

本田:「奥義・オーバーオブファイア!!」

ボォォォッ!!

本田がそう叫ぶと電撃が流れた地面が燃えていく!!

グランドべリアルナイト:「何っ?!」

本田:「コイツを放ったんだよ。」

本田は両腕に装着した機械をグランドべリアルナイトに見せつける。

グランドべリアルナイト:「・・電熱器か。」

本田:「ああ。電流が流れることで発熱するこの特製の電熱器。コイツに電気エネルギーをたっぷり流し込んだんだ。そうする事でこの電熱器は先端からオーバーヒートした炎を噴射できる・・俺の隠し玉ってやつだ。」

グランドべリアルナイト:「チッ!面倒なモンを出しやがって・・。」

本田:「とはいえ・・この状態じゃ立ち回れない、どうすれば・・。」

小池:「本田のやつ・・だいぶ追い込まれてるみてぇだけど大丈夫なのかよ?!」

クリスタルウォーナイト:「仲間の心配をしている場合か?」

小池:「うおっ!」

クリスタルウォーナイト:「ネバーエンディングブースト!!」

シュッ・・・・・・ズバッ!!

小池:「はや・・・すぎて・・見えな・・。」

クリスタルウォーナイト:「一点の光となって貫く我が輝き・・人間の肉眼では捉えることはできまい。」

小池:「・・・へっ。」

小池はアルティメットフォームに姿を変える。

クリスタルウォーナイト:「姿が変わった?」

小池:「X技・レボリューションサーガ改!!」

シュゥゥゥゥン!!

小池が手の平を広げると紫の光線が勢いよくクリスタルウォーナイトを貫いた!

クリスタルウォーナイト:「・・ぐ・・あっ!」

小池:「ゼロ距離だ・・安易に近づくんじゃなかったな。」

クリスタルウォーナイト:「バカなっ!・・私の攻撃を食らって痛みを感じてないのか?!」

小池:「心臓を狙い撃ちされてなければ・・ビースト細胞を活性化させるだけで少しずつだが傷を治癒すことができるんだよ、この力を纏っている今の俺ならな。」

(ベルゴンザの力があって助かったぜ・・おかげでまだ戦える!)

クリスタルウォーナイト:「禍々しい力を感じる・・貴様は危険だ、ここで排除する。」

スッ・・。

小池:「!!」

(くそっ!また消えやがった!!・・どこに行きやがったんだ?!)

クリスタルウォーナイト:「ここだ。」

シュッ・・ズバババババババババッ!!!

クリスタルウォーナイトの容赦のない乱れ突きが小池の身体を貫いていく!!

小池:「ぐああああああっ!!」

ドサッ。

クリスタルウォーナイト:「サウザントブレイク・・・フン、所詮は人の子か。」

小池:「うぐっ・・。」

(駄目だ・・ビースト細胞の活性化が追いつかねぇ・・!)

クリスタルウォーナイト:「後はギガメテオナイトだけか。」

ギガメテオナイト:「ファイアードライブ!!」

神谷:「クロスアルカディアス!!」

パン!!

ギガメテオナイト:「っ・・なんなんだこいつ!俺の攻撃がすべて消し飛ばされるっ!!」

神谷:「あら・・もう終わりなの?残念ね。」

ギガメテオナイト:「くっ・・なぜ攻撃が当たらんのだ!!ファイアードライブ!!!」

神谷:「奥義・セラフィエンジェル。」

神谷の全身が光り輝き、そこから放たれる無数の光がギガメテオナイトを総攻撃していく!!

バァン!バァン!バァン!バァン!

ギガメテオナイト:「うわっ!くそっ・・なんだ・・・ぐあああっ!!」

神谷:「塵となって消えなさい、相手が悪かったわね。」

クリスタルウォーナイト:「ギガメテオナイトが・・やられた?!」

グランドべリアルナイト:「とんだ伏兵がいたものだ、我らと互角以上に渡り合うとは。」

ダイヤモンドナイト:「待て!」

神谷:「?」

ダイヤモンドナイト:「女・・まさかあなた様は・・。」

神谷:「あら、私の事をご存じなの?」

ダイヤモンドナイト:「セイバーズ・・クイーン・・?」

神谷:「ええ、そうよ。」

ダイヤモンドナイト:「・・・。」

クリスタルウォーナイト:「何をしている?!あの女を仕留めるぞ!」

ダイヤモンドナイト:「無粋な真似は止めておけ、この方にはどんな攻撃も通用しない。」

クリスタルウォーナイト:「何?」

ダイヤモンドナイト:「これ以上あなたと渡り合っても我々の敗北が目に見えている。ここは撤退させてもらうとしよう。」

神谷:「あら、これだけ暴れておきながら何事もなかったかのように立ち去ろうとするなんてちょっと自分勝手じゃない?」

ダイヤモンドナイト:「と、申しますと?」

神谷:「あなたたちの持っている情報を包み隠さず渡しなさい、それで今回の件は見逃してあげるわ。」

ダイヤモンドナイト:「一つ申し上げるとするなら今現在モンスターワールドは危機的状況に追い込まれています。失礼を承知の上で申し上げますが、あなた方セイバーズにどうこうできる問題ではない。今ならまだ遅くない、尊い犠牲を出さないためにも今すぐここから立ち去ることを提案致します。」

神谷:「私の力を持ってしても・・?」

ダイヤモンドナイト:「ええ、お連れの二人の実力が最低限の基準(ライン)すら満たしてないようなので。」

本田:「だと・・コラ!」

小池:「言ってくれるじゃねぇか・・!」

ダイヤモンドナイト:「クイーンの顔に免じて今回は目を瞑りましょう。先に進むのは皆様の自由ですが、私は事実を述べたまでです。今のあなた方の実力ではデストロイヤに遠く及ばない、そのことを踏まえた上でこの先どう行動すべきかを今一度ご検討下さい。ではこれにて失礼。」

ロイヤルソルジャーたちは消えていった。

神谷:「さてと、二人ともじっとしてて。今から治療に入るから。」

小池:「なぁ神谷。」

神谷:「?」

小池:「お前から見ても今の俺たちの実力は不足していると思うか?」

神谷:「そうね。」

本田:「っ・・。」

小池:「・・・。」

神谷:「じゃあ諦める?」

小池:「!・・何を言って・・。」

神谷:「でしょ?もうね、ここまで来た以上やるしかないのよ。確かに私たち一人一人の実力じゃデストロイヤには遠く及ばないかもしれない。でも、私たちは1人じゃない。」

本田:「!」

小池:「!」

神谷:「それにあなたたちだってセイバーズになった頃と今では考え方も戦い方も変わってきたはずよ。この短期間で私たちは多くの事を学んだわ。大事な事、忘れちゃいけない事・・色んな事をすべて吸収して私たちは成長できた。違う?」

本田:「・・・俺もそうだ。」

小池:「ああ・・俺も以前までとは違う、少しずつだけどちゃんと成長している。」

神谷:「ええ、短い期間で自分自身の成長を実感できるぐらい成長できた私たちならまだまだ強くなれるわ。だから私はこれからの私たち一人一人の成長に賭けてみたい!」

小池:「神谷・・。」

神谷:「丁度いいわ、あなたたちがパラレルワールドに行っている間に決まった事があるの。」

小池:「決まった事?」

神谷:「あなたたちにはこのままデストロイヤの討伐に向かってもらいます。」

本田:「なに・・!」

小池:「・・・。」

神谷:「本当はね、ハンターにもあのロイヤルソルジャーと同じことを言われて一度は引き止められたわ。でも、こうしている間にも次元の狭間は増え続けている。けど、大元の次元の狭間さえ消してしまえばパラレルワールドの異変はなかったことになる可能性が高い・・まだ憶測の上での話だけど、そうなれば各地で発生した次元の狭間も少しずつ閉じていくと思う。」

小池:「なるほど・・確かにそうなればフォルテのやつも移動手段の次元の狭間が無くなる。やむを得なく逃亡を断念するってことか。理に適っているというわけだ。」

本田:「俺はやるぜ、ここまで来たんだ。」

小池:「ああ、俺も元よりそうするつもりだった。神谷、数日前に剣崎も同じ事を言っていたよ。あいつもそのつもりで動いてるはずだ。」

神谷:「竜くんが?なら話は早いわね。」

ガタッ・・!

神谷が視線を向けると腰がひけた桐生の姿があった。

桐生:「ヒィッ!どうなってんだよ!なんでロイヤルソルジャーのやつらが尻尾を巻いて逃げだしだんだ!!」

神谷:「ハァ~桐生くん、命が惜しかったらこれ以上私たちと関わらない方がいいわよ?」

桐生:「う・・うわぁぁぁぁっ!!」

(バケモノめ、二度と関わるか!!)

小池:「フン、ただの腰抜けか。」

神谷:「アルフォースゾーン。」

小池:「この技は・・あの時の!」

神谷:「2人の治療が終わったらここを出ましょう。」

小池:「出るって言ったって・・どこに行けば・・。」

本田:「あ!ロイヤルソルジャーがここに来たってことは、近くに向こうの世界とつなぐ扉みたいなのがあるんじゃないのか?」

小池:「!」

神谷:「ええ、彼らがこちらの世界に来れたということはそういう類のものがあってもおかしくないわ。」

小池:「よし、そうと決まれば行動あるのみだ。」

白鳥:「ここって・・。」

速水:「ドラ〇もんがタイムマシンを使った時の時空間と類似している場所・・ってことは!」

覇王:「入ってきた場所に戻ってきたわけだ。つまりここはパラレルワールドの内部・・。」

小池:「っと・・。」

本田:「あれ・・ここって・・。」

覇王:「小池に本田?」

小池:「!」

神谷:「あれ・・モンスターワールドじゃなくてここに通じていたのね。」

速水:「か、神谷先輩?!」

白鳥:「どうしてここに?!」

神谷:「久しぶりね、速水くんに百合花ちゃん。」

覇王:「まさか神谷までここに来ていたなんて・・。」

炎斬:「なんだなんだ?初めてみる顔がいるぞ。」

本田:「!お前・・どうしてここに?」

炎斬:「あ~これはかくかくしかじかで・・。」

本田:「そうだったのか・・全然知らなかった。」

覇王:「こうして会うのは初めてだな、女王守護者(セイバーズクイーン)。」

神谷:「神谷でいいわ、その呼び方あまり好きじゃないの。厨二臭いし。」

覇王:「そーさせてもらう。竜牙たちは一緒じゃ・・ないみたいだな。」

速水:「銀河先輩の姿も見えないですね・・。」

覇王:「・・・。」

小池:「どうした?」

覇王:「俺たちは俺たちで足を進めるか。」

炎斬:「例の地図だな?」

覇王:「そうだ、アレを出してくれ。」

炎斬は地図を広げる。

小池:「これは・・?」

神谷:「!」

覇王:「気づいたか、神谷。」

神谷:「差し詰め、モンスターワールドまでの行き先を書いた地図ってところかしら?」

覇王:「話が早くて助かる。」

本田:「マジかよ・・いつの間に!」

覇王:「俺たちみたく竜牙たちがパラレルワールドに辿りつく保証はない。だからこそ、俺たちは足を進めるべきだと判断した。幸い、パラレルワールドにこの地図を持って戻って来れたんだ。」

速水:「でも、部長たちと銀河先輩だけを置いていくなんて・・。」

神谷:「その心配は必要ないわ。」

速水:「え?」

神谷:「辺りを見渡してみて。」

速水:「!よく見たらさっきと同じ場所じゃないですよ、ここ!!」

白鳥:「色んな扉が僕たちを囲むように並んでます。」

神谷:「きっとここはパラレルワールドの分岐点なのよ。」

白鳥:「分岐・・点??」

神谷:「パラレルワールドの中心に当たる部分ってこと。だから違う世界に飛んでいたはずの速水くんたちと合流できたんだわ。」

覇王:「そういうことか。」

神谷:「だから竜くんたちもきっとここに飛んでくるはずだわ。すべての世界の扉がこの分岐点へと通じているのなら。」

覇王:「まぁ途中でワープさせられる可能性もなくはないし断言はできない。・・が、あいつらが扉を開けて入ってくれば高確率でこの分岐点に飛ばされるのは間違いないだろう。」

神谷はうなずく。

神谷:「私たちは竜くんたちがこの場所に辿りついた時に、行き先が分かるよう目印を残しておくだけでいい。」

神谷はポケットからポケットティッシュを一枚取り、ボールペンで矢印を書いた。

神谷:「これでよし。」

そしてそのティッシュペーパーをそっと地べたに置く。

炎斬:「そんなんで大丈夫なのか?風で飛ばされたり・・はしねぇか。」

(風なんて微塵も吹いてないからなぁ。)

小池:「それじゃあ目印にならないんじゃないか?第一、気づかないまま進む可能性だってある。」

神谷:「大丈夫よ。仮に竜くんが気づかなくても銀河くんが気づいてくれるはず。何て言っても彼は賢いからね。それにしても意外だったわ、あなたたちがモンスターワールドに進むつもりで動いていたなんて。」

覇王:「いや、この地図を手にした時にそういう流れになったんだ。モンスターワールドに行ってしまえば、そこから次元の狭間を通じて人間界に帰れるかもしれないと思ってな。」

神谷:「そう・・まぁでも結果オーライね。」

覇王:「?」

小池:「このままデストロイヤの討伐に向けて動くらしいぞ。」

覇王:「なっ・・!」

速水:「は?!」

白鳥:「ほ、本気ですか?!」

炎斬:「デストロイヤって・・何だ?」

覇王:「お前はちょっと黙っててくれ!小池にでも説明してもらって来い。・・とにかく話を詳しく聞かせてくれないか神谷?」

小池:「おおい?!俺に回すなよ!・・ったく・・。」


104話/ネガの世界


竜牙:「「ここ・・どこだ?」

フォルテ:「やはり飛んできたか、ようこそネガの世界へ。」

竜牙:「!・・なんでお前が・・ってかお前っ・・さっきはよくも!!」

フォルテ:「パラレルワールドは堪能できたか?」

竜牙:「ふざけるな!」

フォルテ:「ここは・・俺の世界だ。そしてこの世界では俺以外の生物は存在しない。」

竜牙:「!そんな馬鹿なこと・・あるわけが・・。」

フォルテ:「ん?この感じ・・お前の他にも人間が迷い込んできたようだ・・それも2人。」

竜牙:「俺の他に・・?!」

フォルテ:「仲間を連れて私の元に来い、剣崎竜牙。出口を教えてやる。」

竜牙:「てめぇ・・誰のせいでこうなったと・・!!」

(消えた?!)

・・・・。

竜牙:「くそっ、どこにもいない!あのヤロウ、俺がこの世界に来ることを分かっていたかのような口ぶりだった。つまりあいつは俺がこの世界に来るタイミングを見計らってこの世界に戻ってきたんだ。」

竜牙は顔を上げて前に進もうとした・・・・

                  次の瞬間。

夏海:「あ・・・。」

竜牙:「・・・・・え。」



竜牙:「なんで・・・。」

夏海:「っ・・・!」

タッタッタッ・・・!

長い髪をたなびかせながら夏海は竜牙に飛びついて来た!!

竜牙:「お、おいっ・・?!」


夏海:「ただいまっ・・!!」


竜牙:「マジで夏海なのか?!ど、どうして・・!」

夏海:「そんなの・・会いたかったからに決まってるじゃない。」

竜牙:「だってお前・・もうセイバーズは辞めたって・・。」

夏海:「・・朱里がNY(ニューヨーク)に来たんだ。」

神谷:「本当にごめんなさい!」

神谷は深々と頭を下げる。

夏海:「もういいって!竜を助けてくれてありがとう、話は竜から聞いてるわ。」

神谷:「けど私はあなたたちを傷つけた。感情を向き出しにして、キレて、叫んで・・今考えると本当に情けないわ。自分の感情を些細なことでコントロールできなくなるなんて私もまだまだお子様ね。」

夏海:「そんなの私だって・・だからお互い様。」

神谷:「・・。」

夏海:「いつまでそうしてるつもり?そんな事よりあなたが後ろで隠し持っているそれ(・・)の方が気になるんだけど。」

神谷:「あ”・・・。」

神谷は申し訳なさそうに眉をひそめながらあの(ブツ)を夏海に渡した。

夏海:「この拳銃は・・ハンターの・・。」

(さてはプライベートジェットを使って違法に銃を持ちこんで来たわね、その内捕まるわよ全く・・。)

神谷:「違う、それは夏海っちの武器・・でしょ?ハンターから預かってきたんだから。」

夏海:「何ソレ・・どういうつもり?」

神谷:「見ての通りよ。」

夏海:「・・私にもう一度セイバーズになれってこと?」

神谷:「竜くんたちが最後の戦いに向けて動き始めてる。でも、戦力が不足しているの、力を貸してほしい。」

夏海:「他を当たって。」

神谷:「夏海!」

夏海:「私はしばらく日本に戻れないわ。それに会えばきっと・・竜と離れられなくなっちゃう。」

神谷:「一つ言っておくとパラレルワールドもしくはモンスターワールドに入っている間はこちらの世界で時間は経過しないわ。」

夏海:「え?!」

神谷:「正確には超スローで進んでいると言った方がいいかしら。私たちが向こうで半年ぐらい住み着いていればこちらの世界でようやく1秒が刻まれるといった方がいいかもしれない。私はハンターからそう聞いてる。」

夏海:「だとしても・・無理だよ。」

神谷:「夏海の気持ちは理解できるけど、このまま引き下がるわけにはいかないの。次元の狭間をこれ以上放置することはできないわ、早急に閉じる必要がある。一刻も早くデストロイヤを倒さないと。」

夏海:「デストロイヤ・・話には聞いてるわ、このモンスターの封印が弱まっていることがきっかけで歪みが生じてしまったって。」

神谷:「知ってるの?」

夏海:「アハハ、竜から全部聞いてたから。・・私が気になっていることはアイツがすべて教えてくれたわ。」

神谷:「なら・・このまま次元の狭間を放置することがどれだけ危険なことに繋がるか・・言わなくてもあなたなら察しがつくでしょ?」

夏海:「それはそっちの都合でしょ、勘弁してよ。」

夏海の態度にイラっとした神谷は険しい表情で口を開く。

神谷:「夏海っちは竜くんを守る為にセイバーズになったって聞いたんだけど?まさか途中で放り投げる気?」

夏海:「む・・何よ、その言い方。申し訳ないとは思ってる・・でも、もう過ぎたことだわ。」

神谷:「いつまでそーやって逃げるつもり?」

夏海:「な・・!」

神谷は夏海を指差す。

神谷:「私の知っている木嶋夏海なら中途半端なことはしない、やると決めたからには最後まで責任を持ってやり遂げるはず。とは言ってもあなたを強制的に連れて行く権利なんて私にはない。でもね、今回の戦いは今まで以上に危険と隣り合わせな日々が続いていく・・。だからこそ、あなたの存在が必要不可欠だと判断したの。だって、恋人(パートナー)を影で支えてあげられるのは恋人であるあなたにしかできない役目だわ。」

夏海:「あ、朱里・・。」

神谷:「悔しいけど、私には竜くんを振り向かせることが出来なかった。完敗よ、潔く負けを認めるわ。」

神谷は夏海の手のひらにエメラル翁から預かった心の証を乗せる。

夏海:「綺麗・・何コレ?」

神谷:「心の証って言うのよ、それはあなたの心の強さを表した証。」

夏海:「私の・・心を?」

神谷:「証には所有者の心を象徴する名が刻まれているわ、その証の名前は愛情の証。」

夏海:「あい・・じょう・・。」

神谷:「あなたの心を表すにはぴったりの名前ね。」

夏海:「むっ・・どういう意味よ。」

神谷:「竜くんの事がスキでスキでたまらない!ってところがよ。」

どこか切なそうな表情を見せる神谷とは相反して、夏海の顔面が瞬間湯沸かし器の如く真っ赤に染めあがっていく・・!

夏海:「わ、悪かったわね!しょうがないじゃない・・ずっと会えてないんだから・・。」

神谷:「!」

夏海:「あ・・・。」

神谷:「竜くんもきっと同じ気持ちなんじゃない?」

夏海:「・・・。」

神谷:「・・・・。」

夏海:「・・分かったわ。」

神谷:「え?」

夏海:「向こうに行っている間、人間界(こっち)の時間が進まないのなら別に支障はないし」

神谷:「・・ホント?!」

夏海:「嘘ついてどうするのよ。それに・・。」

神谷:「それに?」

夏海は小さく呟く。

夏海:「・・・たい。」

神谷:「え?」

夏海:「竜に・・会いたいから。」

神谷:「かーわーいーい~っ!!ね、ね、もう一回やってよ!!」

夏海:「い、嫌よ!恥ずかしいからもうやめよ?ね?」

ニヤリ。

神谷は満面の笑みを見せる・・ただしこの顔はおそらくよからぬ事を考えている顔だ。

神谷:「しばらく見ない間に随分と自分の気持ちに正直になったじゃないの~この、このっ!!」

夏海:「も~っ!!」

神谷はスマホを起動させる。

夏海:「ってちょっと!」

神谷:「今の録画して竜くんに見せた方がいい!!うん、間違いない!!」

夏海:「それだけはぜ~ったいに嫌!!」

竜牙:「なら朱里に感謝しないといけないな。」

夏海:「え?」

竜牙:「・・会いたかった、ずっと。」

夏海:「あ・・え、えと・・あの・・。」

竜牙は夏海をそっと抱き寄せた。

竜牙:「おかえり。」

夏海:「!」

ギュッ・・!

夏海:「うんっ!!」

竜牙:「さてと、んじゃ行くか。」

夏海:「え・・ちょ・・ちょっと!!」

竜牙:「?」

夏海:「・・終わり?」

竜牙:「へ?」

夏海:「だからっ!その・・終わり?」

夏海は上目使いで竜を見つめる・・が、竜牙の方は何を聞かれているのか全く分からないといった表情だ。

・・・。

竜牙:「えっと・・ごめん、何がなんだか・・。」

夏海:「・・・ほんっと変わらないわね。」

スッ・・。

今度は夏海が竜牙を引き寄せられる・・。

竜牙:「ちょっ・・!」


夏海は竜牙の頬を両手で支えながらそっと口づけを交わした。


竜牙:「?!!」

夏海:「あ、あんたはもう少し乙女心を学ぶべきだわ・・。」

竜牙:「っ・・精進します。」

夏海:「も~っ!顔を真っ赤にしないでよ、私の方が恥ずかしいんだから!!」

竜牙:「む、無茶言うなよ・・これはちょっと・・その・・やられた。」

夏海:「プッ!何よそれ・・ふふっ!!」

竜牙:「な、何がおかしいんだよ、」

夏海:「何でもないわ、ほらいこ!」

スペード:「おい。」

ビクッ!!

竜牙:「・・え・・?」

夏海:「何か今後ろから声が聞こえたような・・。」

スペード:「随分と見せつけてくれるじゃねぇか、お前ら2人きりだとそんな感じなんだな。」

竜牙:「おま・・いつから・・!」

スペード:「いや、随分と盛り上がっていたから邪魔するのも悪いかなと思って。」

夏海:「盗み聞き?最低。」

スペード:「いや、まてまて。さっきまでのお前ら、2人だけの世界に入り込んでいたからな?あそこで声をかけるのは相当勇気いるからな?」

竜牙:「まぁその・・悪りぃ、俺たちしかいないと思ってたから・・その感極まったというか。」

夏海は竜牙を見つめる。

竜牙:「な、なんだよ。」

夏海:「お互い様だね。」

竜牙:「だな。」

スペード:「か~お熱いねぇ。おっと、そんな木嶋に見せなきゃいけないものが・・。」

スペードはスマホを開いて、江口と竜牙が楽しそうに話していた時の一部始終を捕えた写真を見せる。

夏海:「ん?」

竜牙:「お、おい?!なんだコレ・・ってかこの角度、悪意あるだろ!!」

スペード:「俺はありのままを撮っただけだ。」

竜牙:「どこがだ!ってかてめぇ、いつ撮りやがった!!」

ゴゴゴゴゴッ・・。

竜牙:「ひっ!!」

夏海:「浮気?」

竜牙:「誤解だって!ほら、前に電話で話しただろ?この子が誘拐された江口「あーそういえば、桜にも名前で呼んでいいよとか言って急接近してたよなぁ~?」」

竜牙:「うぉい!!」

(火に油を注いでんじゃねぇぇぇっ!!)

夏海:「・・へぇ。」

竜牙:「か、勘弁してくれよ・・同い年なのにいつまでも先輩呼びはおかしいだろ?」

夏海:「だからといって一度振った女の子と距離を縮める必要はないでしょ、私、何か間違ったこと言ってる?」

竜牙:「うぐっ・・わ、悪かったって!俺の行動が軽率だった・・本当にごめん!!」

夏海は俯き小声で呟く。

夏海:「嫌なの。」

竜牙:「え?」

夏海を見つめる。

夏海:「だから・・嫌って言ったの!!」

竜牙:「!」

夏海:「あなたは私の彼氏なんだからよそ見しないで私の事だけ見てればいいのよ。」

竜牙:「!」

竜牙の顔が火照っていく・・。

スペード:「うわぁお・・。」

夏海:「今から一つわがままを言わせてもらうわ。いい?私の知らないところで私が知らない一面を他の女の子に見せないで。竜はその辺鈍感だから特に!!」

竜牙:「わ、分かった!!うん、以後気をつけるから!!」

夏海:「正直なところ、竜がどこで誰と何をしていようと私の知ったことじゃないし、友人関係のアレコレにまで口を挟むつもりはないわ。けど、これだけは言わせて。」

竜牙:「な、何だよ・・。」

夏海:「私は相手が誰であろうとあなたを譲るつもりはない、そこだけは一切妥協しないから。肝に銘じておいて。」

竜牙:「いや・・だから誤解なんだって。信じてくれよ・・。」

夏海:「もう~相変わらず鈍いわね!そういう意味合いで言ったんじゃない、いい加減、察しなさいよ・・。」

竜牙:「?」

夏海:「私はあなたを独り占めしたいのよ。」

竜牙:「あ・・。」

夏海は無言のまま恥ずかしそうに竜牙を見つめている。

スペード:「っ・・見てるこっちが恥ずかしい。」

竜牙:「ど、どうした?・・お前ってこんなストレートに感情をぶつけてくるタイプだったっけ?」

夏海:「言わなきゃ伝わらないんでしょ?全く、覚悟しておきなさい?私以外の女の子なんて眼中にはいらないぐらい私に夢中にさせてあげるから。」

彼女の目にもう迷いはない、自信に満ち溢れた強い眼差しだ。

竜牙:「・・!」

スペード:「まさかの宣戦布告かよ、とんでもない女に好かれっちまったな。」

終始、夏海の好意に気圧されていた竜牙が口を開く。

竜牙:「スペード、ちょっと語弊があるぞ。」

スペード:「?」

竜牙:「その言い方だと夏海が一方的に好意を押し付けているような感じになるだろ?」

スペード:「違うのか?」

竜牙:「違うな。俺も夏海に負けず劣らずベタ惚れだ。」

スペード:「末永く爆発しろ、このヤロー。」

夏海:「ふ~ん、ベタ惚れねぇ~ふ~ん。」

スペード:「どっちもどっちじゃねぇか!・・おい木嶋、自分からこの流れに持ってきといて今更顔を隠すな。ニヤケ面を拝ませろ。このヤロー。」

夏海:「断固拒否するわ、こんな顔見せられない。」

竜牙:「残念だったな、スペード。しっしっし・・。」

スペード:「あーもう!先に進むぞ、こんなところで道草くっている場合じゃないんだ。」


105話/最強クラスの合体必殺技と究極奥義


夏海:「って言ってもこの戦いが終わったら離れ離れになっちゃうんだけどね、アハハ・・。」

竜牙:「俺・・進路調査書が配布された時ぐらいから決めていることがあるんだ。」

夏海:「?」

竜牙:「卒業したら俺もNY(ニューヨーク)に行こうと思ってる。」

スペード:「な・・?!」

夏海:「どういう事?!」

竜牙:「向こうで剣道を教えている専門学校があるんだ、俺はそこに推薦入学しようと考えている。」

スペード:「待てよ!だからって、わざわざNY(ニューヨーク)に行く必要はないだろ?」

竜牙:「もう離れたくないんだ・・一緒にいたい、夏海と。」

夏海:「・・・。」

夏海は数秒固まっていた・・そしてスペードが何かを察したようだ。

スペード:「もういい!もういいから!!どうせまだ抱き着・・あー抱き着いた。」

夏海:「待ってるから!!」

竜牙:「おう!学力の低い俺でもNY(ニューヨーク)に行けるかもしれないんだ。このチャンスを潰すわけにはいかない。」

スペード:「しかし、お前がそんな事考えていたなんてな。」

竜牙:「三年生の夏も終わったんだ、進路のことを考えてないわけがないだろ?さてと、この話は終わり!フォルテの元に急ごう。」

スペード:「は?」

竜牙:「言ってなかったっけ?ここはフォルテがいる世界だ、ネガの世界って言うらしい。意図は分からないが、俺はアイツに仲間を連れて来いって言われてんだ。」

スペード:「お前、正気か?なんでフォルテの言うことなんか信じているんだ、あいつは俺たちをパラレルワールドに無理矢理送り込んだ張本人なんだぞ?!」

竜牙:「分かってるよ、どちらにせよ今の俺たちには手掛かりがないんだ。この世界から抜け出せるって言うならあいつの指示に従っておいた方が利口だと思わないか?またワープするかどうかも分かんねぇし。あくまで様子見だよ、俺だってあいつの言葉をすべて鵜呑みにしているわけじゃないさ。」

スペード:「ったく・・。」

夏海:「ネガの世界・・言われてみればこの世界にある物って、人間界にある物とは立ち位置が真逆になってるわ。」

スペード:「ん?どういう意味だ?」

夏海:「ほら、あの時計を見てみて。」

スペード:「!・・数字が真逆になって・・。」

竜牙:「そう考えると相当不気味な世界だな、ここ・・。」

ケルベロス:「グルルル・・。」

スペード:「おい!後ろを見ろ!!」

夏海:「3頭身の犬?!」

竜牙:「あいつはケルベロス!」

ケルベロス:「グォォォッ!」

竜牙:「なんで生きてんだ!あいつは前に俺が倒したはず・・!!」

スペード:「知ってるのか?」

竜牙:「前にフォルテが作り上げたナンバーズの内の一体だ。」

スペード:「ナンバーズの内の一体だと?!」

ケルベロス:「グォォォッ!」

竜牙:「くそっ、向かってきてるな・・。」

夏海:「トリニティストーム!!」

ボォォォウウ!シュルルウッ!!

ドッカァアアアアアン!!

竜牙:「お前、いきなり何やってんだ!」

スペード:「けど、あの水蒸気爆発が直撃したんだ!これなら・・。」

竜牙:「ケルベロスのボティは頑丈だ、たぶんあの程度の殺傷力じゃ足りない。」

スペード:「!・・そのようだな、生きてやがる。」

ケルベロス:「グォォォッ!」

夏海:「違うわ・・あいつの肉体は攻撃を受けた後、一度分解したように見えた。」

竜牙・スペード:「「?!」」

夏海:「見てて・・奥義・第五の弾・地球弾(アースガン)!!」

ビシュゥゥン・・・!!

光の弾丸がケルベロスに向けて解き放たれた!

ドッカァアン!!

竜牙:「・・・嘘だろ・・。」

スペード:「ああ、今度は見逃さなかったぜ。あの野郎、攻撃を受けた直後に分解してまた再生しやがった!」

竜牙:「あんな能力、前に戦った時には備わってなかったはず・・だとしたらあいつはあの時のケルベロスとは異なる別の個体なのか?」

スペード:「相当厄介だぞ、あんな風に液状化して再生するんだとしたら物理攻撃で攻めてもあいつを仕留められない。」

夏海:「分解してから再生するまでおよそ5秒ってところかしら?」

竜牙:「え”?測ってたのか?!」

夏海:「ええ。ケルベロスの耐久力を測る為の最初の一発、ケルベロスが分解してから再生するまでの時間を測る為の一発・・二発とも相手を分析するために放った弾丸よ。何か勘違いしているようだけど、私は戦闘中の相手に対して警戒を怠ったことはないわ。銃にセットできる弾丸の数だって限られている、無駄撃ちはできない。」

竜牙:「わ、悪りぃ・・早とちりして。」

夏海:「あ!ううん、合図もなしに攻撃をした私が悪いわ。気にしないで!それにもう一つ分かったことがあるの。」

竜牙:「何が分かったんだ?」

夏海:「地球弾(アースガン)の火力、トリニティストームの火力・・いずれにしても分解してから再生するまでのインターバルに変動はなかったわ。火力は地球弾(アースガン)の方が勝っているはず。つまり、あいつはどんな攻撃を受けた場合でも再生するまでに一定時間を費やしているってことよ。」

竜牙:「!」

スペード:「この数分間だけでなんつう分析力だ。」

竜牙:「やっぱ頼りになるぜ、夏海!」

ケルベロス:「グォォォッ!」

タッタッタッ!!

スペード:「とにかくあいつを近づけるのは危険だ!超必殺技・アメイジングトルネード!!」

スペードが剣を地面に思いっきり突き刺すと、地面からあふれ出たものすごい衝撃波がケルベロスを押し戻していくが・・。

シュルルルルッ!

ケルベロス:「グォォォゥゥッ!!」

ググッ・・!

ケルベロスは踏ん張りながらゆっくりと前進していく!

夏海:「火力が足りない!」

スペード:「くっ!」

夏海:「超必殺技・第三の弾・竜巻弾!」

ボォォォウウ!

夏海の竜巻弾がアメイジングトルネードに取り込まれて勢いを増す!!

シュルルルルッ!!

ケルベロス:「グ・・ガガガッ・・!!」

スペード:「すまねぇ木嶋。」

夏海:「気にしなくていいわ、とにかく今の間に打開策を考えないと。」

竜牙:「剣舞眼!」

(あいつの弱点・・この目を使えば分かるかもしれない。)

スペード:「どうなんだよ、何か分かったか??」

竜牙:「そうか・・首か!」

夏海:「首?」

竜牙:「夏海の弾丸を受けた時、あいつは心臓の部位から再生していた。つまり、心臓を狙って攻撃しても意味がないんだ。狙うなら・・。」

(ハヤブサランニングストーム!)

竜牙は一気にケルベロスとの間合いを詰め、剣を引き抜く!

ケルベロス:「!!」

竜牙:「X技・ギャラクシーブレードTHEFAINAL(ザ・ファイナル)!!」

ギャラクシーブレードの光り輝く刀身が太陽と月の力を同時に放出することで花火のように光弾ける刀身へと変化していく!!

竜牙:「くらえっ!!」

ケルベロス:「グアァウウ!!」

シュッ!・・バシィッ!!

ケルベロスは半回転し、尻尾を使って竜牙を地面に叩きつけた!

竜牙:「ぐっ・・はっ!!

夏海:「竜っ!!」

スペード:「そうか!頸動脈か!!」

夏海:「頸動脈?・・あっ!!」

スペード:「頸動脈は頸部にある太い動脈だ。一般的に顔面・脳などに血液を送る重要な役割をしているが、ケルベロスにはおそらくその頸動脈が3つ備わっている。再生が心臓から行われてるのなら、首を潰せばあいつは再生できない!」

夏海:「だね、首から上がなければ胴体だけじゃ身動きは取れないもの。頸動脈を狙えば、首から上にかけて血液が流れなくなる、そうなればいくらナンバーズと言えど再起不能な状態に陥るはず!」

竜牙:「気づいてくれたか、痛てて・・。」

夏海:「一人で無茶して特攻するからよ、いい?次は三人同時攻撃で行くわよ!」

竜牙:「よし、超必殺技・ドラグアーマー・バーストモード!!」

ボォォォウウッ!!

竜牙は片手を広げて、ドラグアーマーの炎を一点に手中させる。

竜牙:「くらえっ!」

ボォォォゥ!!

そのままバーストモードの炎をバーナーの炎みたく噴射していく!!

スペード:「超必殺技・アメイジングトルネード!!」

シュルルルルッ!!

夏海:「朱里、使わせてもらうわ。究極必殺技・第六の弾・銀河弾!!」

夏海が放った弾丸は勢いよくケルべロスの首の1つに当たると、ぶつかった弾丸が首を吸収していく!!

竜牙:「なんだよ、あの弾丸!」

スペード:「弾丸が対象物に当たると小さなブラックホールにでもなるっていうのか?」

夏海:「その通りよ、破壊せず、弾丸が対象物を吸収しながら収縮して消えていくから非常に殺傷力のある弾丸よ。弾丸自体が消滅するため、物的証拠も残さないまさに暗殺(アサシン)向けの弾丸。だけど、わずかなコントロールミスを許さない扱いの難しい弾丸よ。日本に戻るまでにマスターできてよかったわ。」

竜牙:「すげぇ・・!」

3人の同時攻撃がケルベロスの首を弾き飛ばしていく!!

ケルベロス:「グ・・ガガガッ・・!!」

ドッカァァアン!!

竜牙:「やった!」

夏海:「まだよ、胴体が残っているわ。あの胴体に再生する力が備わっている以上、完全に倒してしまわないと。」

竜牙:「けど・・どうしたら・・。」

夏海:「竜、まだ竜装は解いてないよね?」

竜牙:「え?あ、ああ・・。」

夏海は銃口を竜牙に向ける。

スペード:「は?」

竜牙:「お、おい・・何を!!」

ドカァン!!

夏海の銀河弾が竜牙の竜装に向けて放たれた。

スペード:「竜牙!!」

竜牙:「俺・・死・・。」

夏海:「なないわよ、ほら状態を起こして。」

竜牙:「ど、どうなってんだ・・生きてる?!」

夏海:「銀河弾にはドラグアーマーの鱗が素材として組み込まれているのよ。」

竜牙:「!」

夏海:「竜と私の武器は元々ハンターのものだしね。そういう繋がりがあっても不思議じゃないでしょ。とにかく、これであなたのドラグアーマーは一定時間銀河弾の力を会得したはず。」

竜牙:「ま、まじか・・。」

夏海:「私の銀河弾を放ってあの胴体を消したいところだけど、あの胴体には再生の力がある。私の弾丸が吸収していく中で何度も再生されれば吸収しきれない可能性があるわ。」

竜牙:「だからって何で俺の竜装に銀河弾を?」

夏海:「ハァ~。」

スペード:「なるほどな、ドラグアーマーは炎を噴射できる。」

竜牙:「!・・そういうことか!!」

(ハヤブサランニングストーム!)

竜牙は一気にケルベロスの胴体との間合いを詰め、手のひらで掴む!

竜牙:「こういうことだな?うおぉぉぉぉぉっ!!」

竜牙はバーストモードの炎を噴射しつつ、掴んだ手でケルベロスの胴体を吸収していく!!

ケルベロスの胴体もまた負けじと再生を繰り返すが・・。

スペード:「そうだ竜牙、あいつが再生を繰り返すならこっちがその度に壊していけばいいんだ!これであいつは胴体を再生できずに吸収されていく!」

夏海:「頑張れ!!」

竜牙:「うぉぉぉぉぉっ!!」

シュッ!!

竜牙は胴体を吸収しきった右手を握りしめる!

夏海:「これが私たちの合体必殺技・ドラグーンレジェンドよ。」

(教えてくれた朱里に感謝だわ。)

竜牙:「やったぜ!!」


106話/世界の破滅?!来るべき決戦に向けて


フォルテ:「ほう、改良したケルベロスを相手にここまで圧倒するとは・・。」

竜牙:「この声!」

スタッ。

フォルテ:「前に会った時よりも格段に強くなっているじゃないか。」

スペード:「その口ぶり、俺たちを試したのか?」

フォルテ:「お前たちも知っているように、モンスターワールドに封印されたデストロイヤが力を抑えきれなくなっている。一刻も早くあの次元の狭間を閉じなければならない。そうしなければこの先、今までと比較できない数のモンスターが人間界で猛威を振るう可能性がある。」

竜牙:「!」

夏海:「!」

スペード:「!」

フォルテ:「私としてもその状態はあまり好ましくない。時空間が大きく歪めば人間界やモンスターワールドだけでなく、このパラレルワールドにも大きな影響を及ぼすことになるだろう。」

竜牙:「よく言うぜ、お前が逃亡を続けていたせいで日本各地に小さな歪みが生じている。お前だって俺たちからすれば脅威以外の何者でもない。」

フォルテ:「こうなることを予測していたのだろうな、お前の兄は。」

竜牙:「何っ・・?!」

フォルテ:「各地に出現した歪みがその程度で済んでいるのはなぜだと思う?」

フォルテ:「そんな中、奴が現れた。」

竜牙:「?」

フォルテ:「剣崎鳥牙という名のセイバーズがな。」

竜牙:「兄貴?!」

フォルテ:「あいつは私に戦いを申し込んできた。私の力を奪う為に・・。」

ハンター:「フォルテの力を?」

フォルテ:「奴はジョーカーという名の伝説のモンスターの力を使ってきた、そのため私の力が全く歯が立たず、敗北を決してしまい、力も吸い取られてしまった。」

竜牙:「やっぱり・・ジョーカーを取り込んでやがったのか、兄貴のやつ。」

竜牙:「そうか・・兄貴がフォルテの力を奪ったからこの程度の被害で抑えられているんだ。」

フォルテ:「そういうことだ。」

竜牙:「歪み・・次元の狭間はパラレルワールドと直結している。力を持ったフォルテが人獣の実験を行う為に人間界とパラレルワールドを出入りしていることを知った兄貴は、力を奪うことでフォルテが異世界を移動することによって生じる歪みを最小限に抑え込もうとしていたんだ!」

夏海:「鳥牙さんの行動にそんな意図があったなんて・・。」

フォルテ:「フン、皮肉なことにあいつが私の力を奪ったことで今のこの状態が保たれているというわけだ。だが、それも長くは持つまい・・。」

スペード:「どういう事だ?」

フォルテ:「ロイヤルソルジャーが動き出したようだ。」

竜牙:「ロイヤルソルジャー?」

フォルテ:「四聖獣を守護する最強の騎士団、こいつらが異世界からの来訪者をモンスターワールドに近づけないようにひそかに動いている。」

竜牙:「四聖獣?何のことだか分かるように説明してくれないか?」

フォルテ:「よーするにモンスターワールドで何かが起こっているということだ。考えられる一番の要因はデストロイヤがいつ復活してもおかしくない状態にあるってところか?」

竜牙:「なっ・・マジかよ・・。」

フォルテ:「お前たちに集まってもらったのには理由がある。」

竜牙:「理由?」

フォルテ:「私と手を組め。」

スペード:「んだと・・。」

竜牙:「どういうつもりだ?」

フォルテ:「先程話した通りだ、私としてもデストロイヤにこのまま復活してもらうわけにはいかない。私の世界は私がこの手で守り抜く・・それだけだ。」

スペード:「犯罪者が・・何をふざけたことを!」

竜牙:「待て!」

スペード:「おい!」

夏海:「・・・。」

竜牙:「フォルテの実力は一度拳を交えた俺が一番知っている。これから先の戦いに向けてフォルテが力を貸してくれるって言うのなら俺たちにとっても悪い話じゃないはずだ。」

スペード:「本気なのか!」

竜牙:「敵はハンターたちでも討伐できなかったかつてない強敵だ。お互いに倒すべき相手が同じだと言うのなら一時休戦も悪くない話だ。」

スペード:「マジかよ・・。」

夏海:「私は竜に従うわ。」

スペード:「お前まで、相手はあのフォルテなんだぞ?」

夏海:「いがみ合ってる場合じゃないでしょ、こうしている間にもデストロイヤが動き出すかもしれないんだから。」

スペード:「っ・・。」

竜牙:「出口まで案内してくれ、みんなと合流しないと。」

フォルテ:「よし・・私の後について来い。」

覇王:「この扉がモンスターワールドへと続いているのか。」

速水:「開けましょう。」

神谷:「ええ。」

ガチャッ・・。

白鳥:「うわぁ・・すごい・・。」

本田:「雲の上?!どうなっているんだ・・。」

神谷:「ここは・・!」

小池:「知ってるのか?」

神谷:「あれを見て。」

神谷が指を差す方向には巨大な階段がそびえ立っていた。

炎斬:「なんだ・・あのバカデカい階段は・・。」

神谷:「天空階段よ。」

覇王:「天空階段?」

神谷:「ここは恐らくモンスターワールドの上空・・私たちは文字通り雲の上に立っているんだわ。」

速水:「う、嘘でしょ・・?!」

覇王:「間違いないんだな?」

神谷:「ええ・・。」

しかし、神谷は急に黙り込んでしまう。

白鳥:「どうしたんですか?」

神谷:「もしかしたら・・誘い込まれたのかもしれない・・。」

小池:「?」

神谷:「さっきまで滞在していた世界で私たちはロイヤルソルジャーと遭遇したの。」

炎斬:「ロイヤルソルジャー?」

神谷:「四聖獣を守護する最強の騎士団のことよ、四聖獣と呼ばれる神々はこの天空階段の先にある神の領域と呼ばれる場所で眠っている。」

小池:「言われてみれば・・あいつらはモンスターワールドに異世界からの来訪者が迷い込まないようにモンスターワールドへと繋がる扉を守護していた。そんな奴らが天空階段へと繋がるこの扉を守護していないわけがない。」

神谷はうなづく。

覇王:「どうやら気を引き締めて進んで方がよさそうだ。」

速水:「とにかくあの階段の手前まで進みませんか?」


モンスターワールドエリア外 神の領域 天空階段前。

ダイヤモンドナイト:「頃合いか。」

グランドべリアルナイト:「ああ、やつらの気配を感じるぜ。」

ダイヤモンドナイト:「いかなる場合でも四聖獣の神々をお守りすることが我らロイヤルソルジャーの使命だ。」

グランドべリアルナイト:「いいか?ここに来るセイバーズは何匹たりとも逃がすんじゃねぇぞ?」

クリスタルウォーナイト:「特に警戒すべきはセイバーズクイーン、神谷朱里だ。やつはギガメテオナイトを圧倒するほどの力を秘めている。侮ってはいけない。」

ボルバルザークナイト:「どうした?グランドべリアルナイトもクリスタルウォーナイトもやけに気合が入ってるじゃないか。」

ダイヤモンドナイト:「色々とあってな。」

ロードエンペラーナイト:「君は相変わらず冷静だね、ダイヤモンドナイト。」

ダイヤモンドナイト:「油断ならない相手だ、気を引き締めなければ。」

ロードエンペラーナイト:「まぁそう気を張り詰めるな。ギガメテオナイトは僕らの中では一番下級のランクだったし、気にすることはないよ。いざとなればこっちにだって切り札があるし。」

ダイヤモンドナイト:「何を言う!余程の事がない限り、我々だけで事を済ませるぞ。」

ボルバルザークナイト:「確かに奴の戦闘力は凄ましいが暴れるとそれはそれで厄介だ」

クリスタルウォーナイト:「奴に協調性があるとも思えない。好き勝手に動かれても面倒だ。」

ダイヤモンドナイト:「オーガブレイクナイトか。」


107話/集えセイバーズ!いざモンスターワールドへ!!


竜牙:「なんとか脱出できたな。」

スペード:「ところどころに散らばっていたティッシュペーパー、あれはやっぱり・・。」

夏海:「十中八九、朱里が仕組んだものでしょうね。」

竜牙:「ああ、おかげでここまで辿りつけた。」

スペード:「にしてもなんだここ・・雲の上?!」

フォルテ:「モンスターワールドの上空?」

竜牙:「じゃあこの下に広がっている荒野がモンスターワールドなのか?」

フォルテ:「とにかく先に進むぞ。」


モンスターワールドエリア外 神の領域 天空階段前。

速水:「改めて目の前にすると大きな階段ですね。」

白鳥:「先が見えないものね・・。」

神谷:「駆け上がるわよ。」

速水:「ほ、本気ですか?」

神谷:「当たり前よ、こんなところで立ち往生するわけにはいかないでしょ。」

白鳥:「・・・先は長いですね。」

竜牙:「みんな無事か?」

小池:「来たか。」

炎斬:「あれ、竜牙じゃないか!」

竜牙:「えっ?正一・・?!な、なんでここに・・。」

炎斬:「えっと・・・かくかくしかじかで・・。」

竜牙:「そっか、まぁまたこうしてお前と会えて嬉しいよ。」

炎斬:「ああ、俺もだ。」

白鳥:「ってか何で木嶋先輩がいるんですか?!」

夏海:「フッフッフ・・久しぶりね、白鳥さん。」

白鳥:「質問に答えてください!あなたは72話にてヒロインの座を降りたはず・・はっ?!ま、まさか・・私の憎しみが生んだ幻・・っ?!」

夏海:「ちょっと!ヒロインの座を降りた覚えはないんだけど?ってかメタ的な話をしていいのは私だけなんだから!!」

竜牙:「何を揉めてるんだお前ら・・。」

速水:「も~喧嘩は駄目ですって!!」

スペード:「なんだ、神谷に炎斬も来てたのか。」

神谷:「またよろしくね、銀河くん。」

炎斬:「おー全国大会の時以来だな、銀河。」

覇王:「夏海が来てくれたのはありがたい、だが・・なぜお前がここにいる?」

フォルテ:「・・・・。」

竜牙:「それが・・。」

事の経緯を竜牙は全員に説明していく・・。

小池:「なるほど。」

覇王:「フォルテ、妙な動きはするなよ。俺は竜牙みたく甘くはない。」

フォルテ:「お前の用心深さ身をもって知ってるよ、デューク。」

覇王:「足速師覇王だ。」

本田:「和気あいあいも大概にしておけよ、この先で待ち構えているやつはマジでやべぇんだ。」

竜牙:「この先には何が潜んでいるんだ?」

神谷:「ロイヤルソルジャーよ。」

竜牙:「!」

フォルテ:「やっばりな・・。」

本田:「あいつらはこれまで戦ったやつとはまた違う、本気で強い。現に俺と小池はコテンパンにされたんだ。」

竜牙:「二人が一方的に?・・マジかよ・・。」

小池:「次は負けん。」

夏海:「・・・。」

小池:「なんだ?」

夏海:「私もあなたも一度はセイバーズを辞めたはずなのにね。”押し”に弱いのはお互い様かな。」

小池:「フッ・・。そんな事はもうどうでもいい、お前だってそうだろ?」

夏海:「ええ。ここまで来た以上、最後まで戦い抜くわ。みんなの足を引っ張るわけにはいかないからね。」

小池:「ああ。」

クリスタルウォーナイト:「待っていたぞセイバーズ!」

全員:「「「?!」」」

クリスタルウォーナイト:「こんなところまでよく来たものだ、おとなしく引き下がっていればよいものを。」

神谷:「現れたわね、ロイヤルソルジャー!」

覇王:「あれが・・!」

グランドべリアルナイト:「おいおい、いつの間にかすごい人数じゃないか。こいつは狩りがいがあるぜ。」

神谷:「随分と強気じゃない。」

ダイヤモンドナイト:「ええ、今回ばかりは我々も本気です。この先にある神の領域には命を賭してでも通すわけにはいきませんから。」

フォルテ:「笑わせるな、私がこいつらの味方についた時点でお前たちの敗北は決まったようなものだ。」

ダイヤモンドナイト:「ほう・・。」

竜牙:「おい、まさかHELL(ヘル)フォルテにでもなる気か?」

フォルテ:「フン、お前程度に遅れをとる力なんぞもう必要ない。」

竜牙:「なっ・・!」

フォルテ:「私はもう・・私自身の力を扱えるようになっている。」

竜牙:「?!」

フォルテ:「復活したケルベロスを見ただろ、あいつは私の作り上げた細胞再生器の試作品だ。手順書通り起動するかどうかを見極めるためのな。」

竜牙:「細胞・・再生器だと?!」

フォルテ:「やつのおかげで実験は無事成功。私の中にあった細胞は洗練された細胞再生器によって全盛期のものと大差ないところまで回復している。」

シュッ!

ダイヤモンドナイト:「!・・消えた?!」

フォルテ:「はぁぁっ!!」

ドッカァアン!!

ダイヤモンドナイト:「くっ・・なんて攻撃力だ。」

攻撃を受けたダイヤモンドナイトの目線の先には姿を変えたフォルテの姿あった。

フォルテ:「これこそ私の真の姿、エンドレスフォルテだ。」

グランドべリアルナイト:「面白れェ、俺が相手してやるよ。」

スッ・・タッタッタッ!!

グランドべリアルナイト:「くらいな、アックスブレード!!」

フォルテ:「フン。」

・・トン。

本田:「なっ・・あの重たい斧を指一本で・・・。」

グランドべリアルナイト:「止めただと?!」

フォルテ:「フッ・・この程度か?」

シュッ!

グランドべリアルナイト:「くっ・・どこに消えやがった?!」

シュッ・・ズババッ!!

グランドべリアルナイト:「ぐっ・・がはっ!!」

フォルテ:「私はここだ。」

速水:「すごい・・姿が消えたと思った次の瞬間にはもう攻撃が決まっているなんて・・!」

フォルテ:「シューティングバスター!!」

バン!バン!バン!バン!

グランドべリアルナイト:「ちぃぃっ!うざってェ!!」

フォルテ:「究極奥義・アルティメットブレイク!!」

シュッ・・ズバッ!!

黒いオーラを纏った拳がグランドべリアルナイトの腹を貫通する!!

グランドべリアルナイト:「俺が・・こんなに簡単に・・やられる・・なん・・て。」

クリスタルウォーナイト:「おのれ・・ネバーエンディング・・。」

フォルテ:「究極奥義・アルティメットブレイクLV2!!」

シュッ・・ズバッ!!

クリスタルウォーナイト:「うっ・・ぐっ!!」

竜牙:「技を撃つ前に仕留めやがった!」

神谷:「究極奥義は使えば使うほど進化する最強の技。5段階進化でLV5まで進化すれば最初の頃とはもう別次元の技になる。」

竜牙:「すげぇ・・これが究極奥義!」

ダイヤモンドナイト:「何をしている、クリスタルウォーナイト。ロイヤルソルジャーとしての誇りを忘れたか?」

クリスタルウォーナイト:「くっ、このクリスタルウォーナイト。ロイヤルソルジャーとしての誇りを忘れたことなど・・!」

フォルテ:「来い、息の根を止めてやる。」

クリスタルウォーナイト:「サウザントブレイク!!」

フォルテ:「究極奥義・アルティメットブレイクLV2!!」

シュッ、ドカァァン!!

お互いの攻撃が激しく衝突し、土煙が舞う!

ダイヤモンドナイト:「クリスタルウォーナイトが押し負けただと?!なんてやつだ、1人で我らと渡り合っいるなんて。」

ロードエンペラーナイト:「僕の出番みたいだね。」

ボルバルザークナイト:「やらねばならん。」

竜牙:「まずい、俺たちも加勢するぞ!」

神風:「その必要はないよ!」

竜牙の横を見覚えのある人物が通り抜けていく!

神風:「おまたせ!」

竜牙:「神風?!」

神風:「僕だけじゃないさ。」

瓜生:「デスライトニングスピア!!」

瓜生は小型のサバイバルナイフのようなものを片手に飛び出す!

ズババッ!

ロードエンペラーナイト:「うわっ!なんだこいつ!!」

瓜生:「よォ、約束通り会いにきたぜぇ~デザートォ!!」

速水:「瓜生っ?!」

ロードエンペラーナイト:「誰だか知らないけど、僕たちはそう簡単に倒せないよ?」

ボルバルザークナイト:「・・倒す。」

瓜生:「ヒッヒッヒ・・そいつはどーかなァ?」

神風:「僕はもうあの頃の僕じゃないさ。」


~to be continued



番外編12/闇の中に潜む影


あれから俺はソウル・マリクの下で修行し、セイバーズとして力をつけていった。長き戦いを経て・・来るべき決戦の日、キングダムセイバーズがデストロイヤを封印しセントラル王国に平和が戻った。だが・・。

覇王:「日本?」

ソウル:「ああ、あるモンスターが日本に逃亡した。名は帝王フォルテ。」

覇王:「帝王・・フォルテ?」

ソウル:「調べを進めているレイクからの情報だ。フォルテはモンスターと人間を組み合わせた人獣という化け物を生み出そうとしているらしい。」

覇王:「なっ・・そんなこと・・できるわけが・・!」

ソウル:「ないとは言い切れない、そこで麒麟から協力要請が来た。覇王、お前にはフォルテを追ってもらいたい。」

覇王:「ソウルたちが行った方が手っ取り早いんじゃないのか?」

ソウル:「俺たちにはやるべき事がある。」

覇王:「やるべき事?」

ソウル:「デストロイヤの封印は一時凌ぎにすぎない。いずれ封印は弱まってしまう、あいつの力は強大だ。だからこそ俺たちは、次なる後継者を見つけなければならない。」

覇王:「後継者って・・お前らは普通の人間とは違う、そんな人間の後釜を一般人から探すとでもいうのか?」

ソウル:「後釜というよりは共に戦う仲間を探すという言い方の方が正しいのかもしれない。今の俺たちには戦力が不足している。デストロイヤが再び目覚めた時、万全の状態で立ち向かえるように備えなくてはいけないんだ。」

覇王:「戦いはまだ終わってないってことか?」

ソウルはうなづく。

ソウル:「これから俺たちキングダムセイバーズは日本各地に散らばり、新たなセイバーズとなる器を探し育成に専念する。」

覇王:「なぜ日本なんだ?」

ソウル:「魔王の力というものが封じられている土地があるらしい。それが原因なのかは定かでははいが、歪みらしきものを目撃したという情報が国王の耳に入ったそうだ。放置すればセントラル王国のような事態にもなりかねない。その捜索も兼ねている。」

覇王:「そんなものが・・。」

ソウル:「だから俺たちはフォルテの方まで手を回せないんだ。覇王、力を貸してくれないか?」

覇王:「やむを得ないな。けど、フォルテを追うだけじゃ深いところまで探れない。あいつの目的を知る必要はあるだろう。」

ソウル:「潜入捜査か。」

覇王:「ああ。長期に渡る潜入にはなるだろうが、やつの仲間として側にいればあいつを監視しやすい。」

ソウル:「分かった。そっちはお前にすべて任せる、情報は定期的に報告してほしい。」

覇王:「ああ。」

ソウル:「ヘマはできないぞ?」

覇王:「影でコソコソと動くのは得意分野だ。安心してくれ、借金を肩代わりしてもらった恩は必ず返す。」

ソウル:「潜入する上で約束してほしいことがある。何があっても麒麟のことは隠し通せ。無理にセイバーズの内情をやつに知らせる必要はない。」

覇王:「分かった。」

それから俺はフォルテの作り上げたKAOSビーストのデュークにすり替わり、フォルテの悪事を止めるべく敵の内部に潜り込んだ。それから間もなくしてあいつと遭遇したんだ。

竜牙:「!やる気か・・。」

烈火:「逃げろ、一般市民!」

神風:「あの人獣、早い!」

デューク:「終わったな、あの男。」

ズババッ!

デューク:「?!」

竜牙:「っと、この程度か?」

リオル:「ギギッ?!腕が・・僕ちんの腕がぁぁぁぁあああっ!!」

デューク:「逃げのそぶりもなく狙ってリオルの腕を切り落としただと・・お前、何者だ?」

烈火:「い、一般市民じゃねぇのか?!」

竜牙:「俺は剣崎竜牙、モンスターセイバーズだ。」

デューク:「!聞いたことのない名前だな・・もしや新しいセイバーズか?フッ、興味深い・・。」

(あの武器はハンターの物・・なるほど。あの男、ハンターが見つけた新たなモンスターセイバーズか。)

リオル:「こんのぉ、ガキやぁぁぁあっ!!」

竜牙:「ドラゴンソード!」

シュッ、ズバッ!ズバッ!

リオル:「ア”ア”ア”ッ!!」

デューク:「一端引くぞリオル。これに懲りたら勝手な行動は以後控えろ。」

リオル:「ちぃっ・・ただでは・・終わらんぞ?覚えておけェ・・。」

ここから先の展開は人獣編で見てもらいたい。先の話は省かせてもらう。竜牙と共にフォルテを倒した日から数日が経過した頃、俺はハンターを呼び出した。

ハンター:「まさかフォルテがパラレルワールドに潜んでいた生物だったなんて。」

覇王:「潜入している中であいつが双方の世界を出入りすることで生じる歪みが時空間にいずれ大きな影響を及ぼすと気づいたんだ。俺はそれを止めるべく動いてた。けどあいつは俺が動くよりも早く動いていたようだ。確か剣崎鳥牙という名前だった。彼がフォルテの力をあらかじめ奪い取ってくれていたからこそ、次元の狭間の増殖を未然に防ぐことができたんだ。」

ハンター:「そうだったのか。彼は確か、魔王力が暴走しかけた時にも僕らに力を貸してくれたんだ。相当頭がキレるみたいだね。」

ハンターは急に口ごもる。

覇王:「どうした?」

ハンター:「僕は数ヶ月前、鳥牙が持ち直してくれたデストロイヤの封印が正常に機能しているかを確認する為、オーロラ島に足を運んだんだ。けど、状態は悪化していた。複数のモンスターがオーロラマウンテンの中で生息していたんだよ。」

覇王:「何だって?!」

ハンター:「原因を調べてはいるんだけど、不明確な部分が多すぎて手を焼いてる。」

覇王:「・・それは無視できないな。」

ハンター:「君の方はどうだったんだい?潜入していたということは何が意図があるんだろ?」

覇王:「フォルテにこれ以上、次元の狭間を生じさせない為に俺はやつのところに潜入したわけだが、すでに手遅れだったようだ。」

ハンター:「人獣の事件は円満とまではいかないが解決したじゃないか、それに次元の狭間というものは何を差しているんだい?」

覇王:「事件自体は解決したが、奴はパラレルワールドを通して様々な世界を行き来きできる。それが理由なのかは分からんが、全国各地でモンスターの出現が確認された。」

ハンター:「なんだって!」

覇王:「フォルテがパラレルワールドを通して人間界にやってきたせいで、歪みが生じたみたいだ。その歪みを麒麟は次元の狭間と呼んでいる。」

ハンター:「それが次元の狭間か。」

覇王:「かつてセントラル王国で出没した穴と同等のものとみて間違いなさそうだ。5年前、お前たちキングダムセイバーズが閉じたあの穴だ。」

ハンター:「おいおい、セントラル王国の時と同様の穴なら・・さらに増えていく可能性があるぞ!」

覇王:「ああ。今存在しているモンスターセイバーズだけでは、これから増え続けるであろう次元の狭間。そして、その穴を通して姿を現すモンスターたちにいずれ対抗できなくなる恐れがある。」

ハンター:「分かっているとは思うが、剣崎くんたちはまだ高校生だ。いくら何でも全国で出没し始めたモンスターを討伐することまでは任せられないぞ?」

覇王:「話は最後まで聞いてくれ。だからこそ麒麟は全国各地でモンスターセイバーズを増やす方針を定めたようだ。」

ハンター:「!」

覇王:「竜牙たちの功績は俺の方から報告させてもらった。そのこともあってか、新米セイバーズたちのほとんどは高校生だ。」

ハンター:「おいおい、本気か。」

覇王:「若さゆえの発想、運動神経、知識、機転を考慮した上での決断らしい。そしてその新米セイバーズたちには、これから迫りくる脅威に立ち向かうための力をなるべく早い段階で身につけてもらわなければならない。お前ならどうする?」

ハンター:「そりゃ戦う力を身につけたいなら、より実戦形式でその子らを戦わせれば・・・まさか?」

覇王:「そのまさかだ。セイバーズによるセイバーズの為の全国大会を始めるようだ、参加者全員の潜在能力の向上を量る為にな。開催時期は今春の予定らしい。」

ハンター:「!それは・・ぞくぞくするねぇ。けど、そんな都合よく参加者が集まるのかい?」

覇王:「優勝賞金は1億5千万だ。」

ハンター:「え?!ええええっ!!」

覇王:「国を守る狩人を育成するための大会だ、それ相応の金額は出さないとな。これだけの大金ならいくらか人も集まるんじゃないか?」

ハンター:「どこからそんな大金を。」

覇王:「セントラル王国からの支援金の一部だ。かつて国を守ってくれたモンスターセイバーズに恩返しがしたいんだとよ。」

ハンター:「!・・国王は相変わらず寛大な人だな。」

覇王:「竜牙たちにもできれば参加してもらいたい、頼めるか?」

ハンター:「了解。君も参加するのかい?」

覇王:「ベテランセイバーズも参加するらしい、俺も参加して力をつけようと思ってる。」

ハンター:「よし!僕も・・「無理だぞ。」」

覇王:「初代モンスターセイバーズ・・そう、ハンターを初めとするキングダムセイバーズは実力が違いすぎる。参加は容認できないそうだ。」

ハンター:「そ、そんなぁ。」

覇王:「ハンターたちキングダムセイバーズには全国各地に散らばってほしいそうだ。モンスターセイバーズの育成に専念してほしいんだと。」

ハンター:「分かった、みんなにはそう伝えておくよ。」

覇王:「ああ、頼む。」

ハンター:「覇王、君に渡さなきゃいけないものがあったよ。」

ハンターは心の証を投げる。

覇王:「これは?」

ハンター:「究極の証だ。影で色々と動いてくれている君に麒麟からの感謝の印みたいなものかな。」

覇王:「!これ・・ソウルが持っていたのと似ている・・。」

ハンター:「それは心の証。選ばれたセイバーズのみに与えられるんだ、証は心の強さを表している。」

覇王:「心の強さを・・へぇ~大事にするよ。」

全国大会が終わった後、俺は夏海のプライベートジェットに乗せてもらいオーロラ島に向かうことにした。

以降、俺は本田と共にオーロラ島の調査に向かうわけだがザークのオルフェバンデモンと遭遇し、交戦することになる。この後の展開もページ数の調整の為、省略させてもらいたい。皆も知っての通り、一連の騒動の後、俺たちは次元の狭間を見つけることに成功した。事はその後に起きたんだ。


オーロラ島 大広間

覇王:「どうにか下山できたな。」

本田:「ここから船が出ているか確認してくる、ちょっと待っててくれ。」

覇王:「しかし喉が渇いたな・・この辺りに売店とかあるんだろうか・・ん?」

トン!

覇王:「痛っ・・。」

男:「おっと・・失礼。」

覇王:「・・・。」

男は慌てて駆け出す・・。

覇王:「おい!」

男:「!」

タッタッタッ!!

覇王:「あの慌てぶり・・それにあの声・・!!」

男:「くっ!」

覇王:「待て!」

本田:「おー覇王、どうやら明日の朝ここを発つことに・・ってあれ?」

覇王:「くそっ!どこに行きやがった!!」

男:「まさかお前がこの島に来てるなんてねぇ~(あきら)。」

覇王:「親父っ!」

覇王父:「借金の返済、ご苦労様。」

覇王:「だと・・このっ!!」

覇王父:「感動の再開を分かち合いたいところだが俺は今忙しいんだ。」

覇王:「てめぇの事情何て知ったことか!なんで俺に借金押し付けて行方を暗ましやがった!!」

覇王父:「なんでって・・自己破産した私じゃもう借金を返していけない。なら将来有望な息子に望みを託すしかないだろう?臓器売買ってのはいいモノだね、簡単に札束が手に入る。あ~せめて俺の子が娘だったらなぁ~人身売買でさらに高い値をつけて売りとばせたのに、残念だ。」

覇王:「こぉんのやろうっ!!」

覇王父:「おっと!君はセイバーズなんだろう?一般人に力を振るわけにはいかないよねぇ?」

覇王:「!なんでてめぇがセイバーズのことを知ってるんだ?」

覇王父:「ククク・・さァ?どうしてだろうぉうねぇ~。」

覇王:「吐け、お前は何を知っている?」

覇王父:「そうだねぇ~一千万をチャラにしてくれたんだ。ご褒美はやらないとねぇ~。」

覇王:「早く言えっ!!」

覇王父:「まず最初に言って置こう、俺も可奈も変装を得意としている。じゃなきゃ躍起になっている借金取りを相手に日本から遠く離れたこの島まで逃げ切れるわけがない。」

覇王:「・・・・!」

覇王父:「いいねぇ~その顔!さァ・・どっから仕組まれていたのか、よ~く考えてみ。シンキングタイムってやつだ。」

覇王:「まさか・・あの文美って女・・母さんか変装か?」

覇王父:「おおー!とりあえず一問目正解~。」

覇王:「な・・。」

覇王父:「あの日借金取り(やつら)から逃げている最中、俺はいい情報を盗み聞きしてよぉ~そいつはセントラル王国に従事している兵隊と借金取り(かれら)が腎臓の取引きをしているって話だった。ピン!と来たわけよ、コイツを利用すれば一千万をチャラに出来んじゃね?ってよォ。だから俺はあの日、おめぇに借金を押し付けた、若い男の腎臓は高く売れるからよォ~そりゃあ借金取り(かれら)も目の色変えて食いついて来ただろうぜ。そして、予定通りお前は例の取引きの為にセントラル王国に連れてこられた。だが、てめぇの腎臓を売りとばすためだけにここまでのシナリオを組んだわけじゃない。王国に協力すれば、多額の報奨金が得られる。俺の本当の狙いはそこだったわけよォ!!」

覇王:「!」

覇王父:「あらかじめ俺と可奈はセントラル王国に潜み、その機を伺っていたわけだ。そしておめぇは案の定、借金取り(かれら)の目を盗んで逃亡した。そのタイミングを見計らって俺はソウルの娘を誘拐。んで、マリク・ソウルの娘に成り代わった可奈がお前と接触。当時のセントラル王国は増え続けるモンスターに対して討伐が追いついていなかった。国の戦力不足ってやつだ。だからこそそこを逆手に取り、マリク・ソウルとお前を接触させたんだ。結果は良好、案の定国王のやつがマリク・ソウルに金を譲渡し、見事借金が相殺されたというわけだ。」

覇王:「どこまでも・・っ!!」

覇王父:「モンスターやセイバーズについてはセントラル王国に潜入して俺が独自に調査した。あれぇ~?あれれ~?既視感のある話だと思わないかァ?お前もやったんだろ、せ・ん・に・ゅ・う・ち・ょ・う・さ。」

覇王:「っ・・黙れっ!!」

覇王父:「俺と可奈の血が流れてんだなァ、ククク・・安心しろ、マリクが日本に飛ぶ時に娘は本物とすり替えている。もちろん、奴の娘は調教済みだ。間違っても俺らのことを口外することはないだろうよォ!」


覇王:「こんのっ・・ごみクズがぁぁぁっ!!」


バシィッ!!

覇王は不覚にも父親に手を上げてしまう!

覇王:「俺は!ず~っとお前の手の平の上で踊らされていたっていうのか?」

覇王父:「痛っ・・ まァ事実だからしょーがないわな。あ!それともう一つ、なんで俺がこの島にいるんでしょう~か?」

覇王:「馬鹿にしやがって・・いい加減にしやがれ!!」

覇王父:「答えろよォ~知りたいんだろ?」

覇王:「俺の人生はあんたのモノじゃない!」

覇王父は次の瞬間・・声が変わった。

覇王父:「フン・・だが次元の狭間の発生地を知られてしまった以上、手段は選んでいられないな。」

覇王:「声が・・低くなって・・!」

覇王父:「お前たち”家族”は私の為によく動いてくれている。感謝しているぞ。」

突如として変わった別人のような声に覇王は違和感を覚え口を開く・・。

覇王:「・・親父じゃない!何者だ・・・コイツ?!」

覇王父:「ザークの力の反応が消えたか。まぁだが今日に至るまで次元の狭間をやつらがかくまっていたおかげで私はこうして力の一部だけとはいえ、復活できた。」

覇王:「何をさっきから呟いて・・!」

覇王父:「そうか、まだ知らなかったなァ。オルフェバンデモンの正体は魔王力に乗っ取られたお前の母親だ。」

覇王:「な・・。」

覇王父:「そして、章・・お前もまた私の駒にすぎない。お前がフォルテを追い込んだことでセイバーズがつけ入る隙ができた。結果、追い詰められたフォルテは逃亡するようになる。おかげで小さな次元の狭間が日本各地で出現し、セイバーズたちはそこから出現するモンスターの討伐に手を焼いていたはずだ。これだけでも私が復活するまでの時間を確保するには充分事足りたが、ダミーの次元の狭間が出現していくたびにオーロラ島で発生しているオリジナルの次元の狭間を見つけ出すのもまた困難になっていたはずだ。これもすべてフォルテが逃亡を重ねてくてたおかげ。すべて私の思惑通り。」

覇王:「・・・すべて仕組まれていた?嘘だ・・お前の言ってることはでたらめだ。」

覇王父:「まだ分からないか?私はお前の父の体を乗っ取っているだけ、お前の父ではない。」

覇王:「やっぱり・・。」

デストロイヤ:「私の名は・・デストロイヤ。」

覇王:「!!」

デストロイヤ:「ハンターたちに封じられる前に力の一部をお前の両親に憑依させておいて正解だった。まぁ可奈が魔王力に乗っ取られたのは想定外だったが、瞳舞がオルフェバンデモンに次元の狭間を守るように命じてくれたおかげで間接的に二重に保険をかけることができた。ククク・・。」

覇王:「っ・・だがお前の本体はまだ封じられている。」

デストロイヤ:「そう言ってられるのも今の内だ。オーロラ島で発生した次元の狭間を見つけるのがもう一足早ければ良かったのにな・・ククク。もう間もなくして封印が解かれるだろう。でなければわざわざお前の前に姿を見せるわけがないだろう。」

覇王:「なら・・今お前をここで!」

次の瞬間、デストロイヤは紫の煙と化して覇王の中に入り込んでいく!

覇王:「なっ・・!く・・苦しっ・・!!」

デストロイヤ:「もう少し私の駒として働いてもらうぞ、足速師覇王。お前に憑依してセイバーズ共と行動を共にすれば必然とモンスターワールドに多辿りつけるだろうからなァ。封印が解かれた肉体に私の意識が入り込むことでデストロイヤは復活する。ククク・・選ばれしセイバーズたちをまとめてモンスターワールドに導き、私自身の手で全員に引導を渡してやる!三島和人、貴様がいかに愚かな策を練ようと私には遠く及ばない。」

本田:「お!いたいた・・お前、どこ行ってたんだよ。」

覇王:「あ、いや・・トイレにな。」

本田:「そっか、とりあえず飯にしようぜ。」

覇王(に取りついているデストロイヤ)は倒れている覇王父の体を見て呟く。

覇王:「コイツはもう用済みだな、記憶も抹消しているしこのまま救急車で病院に搬送させるか。」

本田:「おい覇王!何してんだよ~。」

覇王:「今行く。」

そして・・。

覇王:「そういうことだ。けど残念だったなフォルテ、お前はもう袋の鼠だ。」

フォルテ:「それは数の優位から物を申しているのか?」

覇王:「何?」

フォルテ:「Ⅹ技・ヘルズローリング!」

フォルテは両手から紫色のリングをつくりだし、地面に向けて投げつけた!

竜牙:「なっ!!」

シュルルルッ!!

白鳥:「キャァッ!!」

速水:「うわぁぁっ!!」

竜牙:「白鳥!速水!!」

スペード:「うおっ!!」

小池:「くっ!!」

本田:「くそっ、間に合わ・・!!」

竜牙:「っ・・ドラグアーマーで・・。」

シュルルルッ!!

竜牙:(駄目だ!発動が間に合わな・・!!)

ドカァアン!!

覇王:「みんな!!」

ハンター:「なんてことだ・・剣崎くんたちが次元の狭間の中に押し込まれてしまった!」

覇王:「くっ!ハンター俺は竜牙たちの後を追う!!」

(コイツァ好都合だ!このままこいつらと共にモンスターワールドに突き進んでくれる。私の肉体の元に!!)

シュッ!!

フォルテの手によって次元の狭間の内部へと押し込まれた俺たちはパラレルワールド内の世界を駆け巡る事になったが、その途中で仲間とはぐれてしまう。

覇王:「俺たちは俺たちで足を進めるか。」

炎斬:「例の地図だな?」

覇王:「そうだ、アレを出してくれ。」

炎斬は地図を広げる。

小池:「これは・・?」

神谷:「!」

覇王:「気づいたか、神谷。」

神谷:「差し詰め、モンスターワールドまでの行き先を書いた地図ってところかしら?」

覇王:「話が早くて助かる。」

本田:「マジかよ・・いつの間に!」

覇王:「俺たちみたく竜牙たちがパラレルワールドに辿りつく保証はない。だからこそ、俺たちは足を進めるべきだと判断した。幸い、パラレルワールドにこの地図を持って戻って来れたんだ。」

(フン、待ってなどいられない。少々強引にでもこいつらをモンスターワールドに誘導する。)

神谷:「それにしても意外だったわ、あなたたちがモンスターワールドに進むつもりで動いていたなんて。」

覇王:「いや、この地図を手にした時にそういう流れになったんだ。モンスターワールドに行ってしまえば、そこから次元の狭間を通じて人間界に帰れるかもしれないと思ってな。」

(理由付けは適当でいい、覇王(こいつ)の信頼を逆手に利用する。)

神谷:「そう・・まぁでも結果オーライね。」

覇王:「?」

小池:「このままデストロイヤの討伐に向けて動くらしいぞ。」

覇王:「なっ・・!」

速水:「は?!」

白鳥:「ほ、本気ですか?!」

炎斬:「デストロイヤって・・何だ?」

覇王:「お前はちょっと黙っててくれ!小池にでも説明してもらって来い。・・とにかく話を詳しく聞かせてくれないか神谷?」

小池:「おおい?!俺に回すなよ!・・ったく・・。」

覇王:(ほう、こいつは願ってもない展開だ。ククク・・。)


すべては仕組まれていた?!怒涛の急展開の最中、ついにロイヤルソルジャーが牙を剥く!!


足速師覇王過去編 THEEND

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