新たな出会い
全話、細かいところかもしれませんが修正しました。
これから定期的に更新していこうと思います。
最初に自称神と話をしていた樹海よりは、THE 森、という程ではないが、森の中をハヤトは足早に歩いていた。木々の間には、下は土だが、割と広い通れる道ができていた。地図を見る限りだと、この道をずっと北に行けばそこそこ大きな町があると示している。
ハヤトが足早に歩いているのは、森がとても静かでなんとも不気味な感じが漂っているからである。森は静かなのに、なぜだか胸騒ぎがしてならないハヤトは自然と早歩きになってしまっていたのだ。
ガサガサッ!
「っ!」
いきなり、目の前で草むらが音を立てて揺れたので、ハヤトは声にならない声をだし、すぐ左にあった木の後ろに体を隠した。ふぅと一息吐いて、恐る恐る木から顔を覗かせさっき音のした方を見てみると、1メートル位ある大きいウサギのような生き物が、木の実を拾って食べている所だった。よく見てみると、大きいウサギには、鋭い牙が生え、爪は鋭く、太股が物凄く筋肉が発達している。
ハヤトは後々知る事になるが、そのウサギの名は、エーラビットといい、魔物の中で1.2を争う雑魚として有名な魔物である。本当に魔物いるんだ・・・と唖然としいて、ハヤトはしばらくエーラビットが木の実を噛み砕いている所を凝視していた。しばらくすると、いきなりエーラビットがそのとても屈強な足二本で立ち上がり、ハヤトの方をピュンっ振り向く。
「………」
一匹と一人の視線が絡み合い、とても長い時間に感じられる一瞬の沈黙をエーラビットが破った。太腿の筋肉がたわんだと思ったら、土煙を撒き散らし、一瞬でハヤトにエーラビットが接近した。
「おい嘘だろ…!!」
ハヤトは、逃げようと必死に地面を蹴るが、靴がすべりそのまま地面に顔面を強打する。外から見るととても間抜けな光景であるが、それが幸いしたのか、エーラビットはそのままハヤトの頭上を通過し、ハヤトの居た先にあった木に思いっきり衝突して、ずるずると下に滑り落ちていった。今がチャンスだ!と言わんばかりにハヤトは走ってその場を去ろうとした時…
"あーあーあー、聞こえますかー"
「何だよ急に頭の中に話しかけるなよ!!お前、あの時の神様だろ!!ほとんど説明もせずにいきなり転送とか勘弁してくれよ!!こっちはいきなり死ぬところだったわ!!」
いきなり、頭の中に自称神からの声が響き渡り、激昂しながらハヤトが文句を言っているが、はははと笑いながら自称神は答える。
"あははー、ごめんねー。能力の事とかこの世界での戦い方とか何も説明してなかったねー。でもね、大丈夫だよ、あの程度の魔物蹴っ飛ばせば死んじゃうんじゃない?"
「そんなアホな…っていうか、なんで俺はここにいて、お前を知っていて、あれ…?」
ハヤトは、そんな事出来るわけないだろ!と思いつつもふと何かに気づき、ブツブツと語尾に行くたびに小さくなる声で呟き始めた。
"ほんとだよ!神様の私が言うんだから間違いない!言い忘れてたけど、名乗るの忘れてたわね。私の名前はペルセポネ。改めてよろしくねっ!"
ペルセポネは、ハヤトの呟きが聞こえていないのか、普通に語尾に星がついているような自己紹介をしている。
そんなペルセポネに対し、なんなんだよふざけやがって…とハヤトが愚痴った後、ペルセポネは、能力について語りだした。
"まず、あなたの能力の知り方についてなんだけど、この世界は魔法が使える世界なのよ。それでね…"
「ちょっと待て待て待て!!魔法!?なんだろそりゃ!あ、でも…いきなり頭の中に声が聞こえたり異世界転移したり…もういいや、どんな事起きても驚きやしないぞ、おう、続けろ」
ハヤトは混乱して少し取り乱すが、自己解決したのか、ペルセポネに話を続けろと促す続けさせる。なんなのよ人がせっかく親切に話してあげてるのに。まぁいいわ、話を続けるわよ。とぐちぐちいいながらペルセポネは話を続ける。
"まず、魔法で自分のステータスを見ることが出来るのよ。人差し指を前に向かって出しなさい。そうしたら―――"
ペルセポネが語った内容を要約するとこうなる。この世界は魔法が使える世界で、自分のステータスが見れる魔法陣があるということ。それは、人差し指を前に出し、自分の全身の身体を思い浮かべ、指の先に意識を集中させながら指を下にスライドすると魔法陣が現れ、SF映画にでも出てくるような半透明なスクリーンのような物が現れ、そこで自分のステータスを見れたり出来るというものであった。他にも、魔法は、炎、水、土、など沢山の属性の魔法があるということ。基本は、詠唱をして魔法を発動させる事が出来ること。魔法陣などを書いても発動できたりするなどということだ。
ハヤトはペルセポネの言うとおりに、指を意識を集中させて指を下にスライドさせた。すると、魔法陣がぽわーんと現れ、本当に画面が出現した。なんかのアニメでこんなの見た事あるなと思いながら、すげぇ…と感嘆の言葉を漏らしながら自分のステータスを確認した。
「どれどれ…」
神無月勇人!!
種族
・人間
技能
・神人通話
・言語理解
・眷属
自分のステータスと睨めっこしていたハヤトは唐突に顔上げ、不満たっぷりの顔したままペルセポネに向かって吠え出した。
「いつの間にお前の眷属になったんだ!?ってかこの名前の横の赤いビックリマークはなんだよ!」
その赤いビックリマークは私もよくわからないわ。ただ、神人通話っていうのは私達と会話できるって事よ!眷属については、そのー…ごにょごにょ…
ペルセポネは眷属については言葉を濁し始め、ハヤトは、もっと文句を言おうと口を開こうとした時、
"あ、じゃあタイムリミットだから、がんばってねー!"
ブツンッと音とともにいきなりペルセポネに会話を終わらされ、更なる不満をペルセポネに溜めながら、落胆全開の表情で溜息を吐くのであった。
ハヤトはその後、歩くのを止め、ステータスの!!がどうにかならないかと画面をタッチしたり、叩いたり、ダンスをするかのような振り回したが、!!は!!のままであった。その後、苦虫を噛み潰したかのような表情をしながら、石で木にペルセポネと彫刻をして、殴り続けていた挙句、気づいた時には木が木っ端微塵になっていた。その頃ペルセポネは、なんだか、寒気が…と言いながら鳥肌を立てて身震いをしていたというのは、また別の話だ。
ハヤトは、道なりに大きな町までの道を進んだ。ペルセポネが現れてからは、一度も魔物とは遭遇しないでこれてしまったので、結局自分の力もどの程度なのか分からず終いで、拍子抜けな程あっけなく森を抜けてしまったのだった。
そうすると、すぐ目の前に見上げるばかりの大きな門が見えてきて、漫画に出てきそうなテンプレな門番が、槍を持って仁王立ちをしていた。
「てか…あの猫耳男、大人一人抱えてあの森抜けたって事だよな……相当強いんじゃないか…?」
などと独り言をブツブツ言っていたハヤトに、目の前の門番から声が掛けられた。
「町に用があるならステータスの提示を頼む!」
あ、あぁ…とハヤトは素直にステータスを見せると、よし、と言われ普通に入る事を許可された。なにを確認したのかハヤトが聞いてみた所、犯罪した者には、ギルドにステータスを取られ、罰の軽いものから順に、青、黄色、オレンジ、赤、紫、と自分の名前が変えられて、帰ってくる仕組みになっているらしい。
ハヤトは、もちろん何もしていないのでただの黒字であって、普通に通されたという事になる。
「それにしても、ヨーロッパみたいな町並みの町だなぁ~。とりあえず、情報収集がてらギルドとやらにでも言ってみるか!」
ハヤトは町に入り、感嘆の声を漏らしながらギルドに向かっている。人が賑やかにごった返している商店街のような通路を抜けた先に、冒険者ギルド"ヨーカル支部"と書かれている看板を見つけ、レンガ造りの少し周りの家よりも大きい建物の中に入っていった。
入った直後酒の匂いが漂ってきて、何もかも忘れて酒に浸りたかったが、ハヤトは誘惑をぐっと堪え、酒場になっている隣の受付っぽい所にスタスタと向かった。
「いらっしゃいませー!今日はどういったご用件でしょうか!」
地球で言うところの、外国人風の金髪のいかにも受付嬢という感じの女性が、朗らかな笑みでハヤトを出迎えた。ハヤトは、こんな美女中々いないぞ…という顔で、受付嬢をぼーっと眺めている。
「あ、あのー…」
「あ、あぁ!すまん!!えっと…自分が何しにここにいるのかわからないんだが、どうしたらいい?」
「……は!?き、記憶喪失の方でございますか?」
「んー、いや、記憶はあるんだが、どっか抜けてる感じがして、俺はここの世界の者じゃないんだが、目的が分からない!」
「は、はぁ…かしこまりましたぁ…そういう事でしたら、商人、冒険者、etc...などの初心者入門の本がございますので、こちらをお渡しします。こちらは、無料配布してるものですので料金は結構ですので、もしあの…あれでしたら…医者等に行った方がよろしいかと…」
「おぉ、助かる!ありがとう!」
受付嬢は、何ともいえない顔でハヤトに本を渡した後、丁寧なお辞儀でハヤトを見送っている。ハヤトは、早く本を読みたいのか、ただ受付嬢が気になるのかそわそわしながらギルドを後にするのだった。
―――――――――――――――――――――――――――
ドタドタドタドタドタ、ズシャーーーー!
ある城の中で、扉に向かってスライディングするかのような勢いで、走ってきた者がいた。
「魔王様ー!」
「そんなに慌てて何事だ」
「は、はい!先ほどサインドラの地にて、何か強い力を持った者が召還されたと、観測室から連絡が入りました!」
「強い力だと…?妾よりも強い力か?」
「ま、魔王様より強い者等おりませんよ!!」
「そうか。具体的なステータスを観測室から測る事は出来そうか?おおよそでいいから出来たらやっておくれ」
「は、はい!かしこまりました!」
物凄く綺麗でキレのいい回れ右を決めて、さっき走ってきた者はまた来た道を戻って行った。
「ふふふ、面白そうな者がきたようじゃな」
満月に雲がゆらゆらと怪しくかかる。ある城の中で、先ほどの者に魔王と呼ばれていた者は、静かにほくそ笑み、くふふと不気味に笑うのだった。
―――――――――――――――――――――――――――
「わぁ!!!」
「どあっ!」
ハヤトは、何者かに蹴っ飛ばされて、目を覚ました。昨日ギルドのお姉さんに貰った本を朝まで読んでいたらそのまま寝てしまっていたらしく、いつか見た光景であるが、道の真ん中で倒れていた。
「え、だ、大丈夫ですか!ごめんなさい!」
「お、おぉ。おはよう」
「お、おはようございます…」
ハヤトは、ごしごし目を擦りながら、自分を蹴った相手を見ると驚愕のあまり腰を抜かして、また地面に倒れてしまった。
「大丈夫じゃないですか!!と、とりあえずお医者さんまで案内するんで肩に捕まってください!」
「いや、お、おう…」
ハヤトが驚愕のあまり腰を抜かしてしまった理由は、このハヤトを蹴っ飛ばした少女の容姿に理由がある。それは、この少女の容姿はハヤトの娘、やよいにそっくり、いや、同じと行っても過言ではないほど似ていたからである。だが、ハヤト自身自分が腰を抜かした事にびっくりし、それにすら気づいていないらしい。
「ぐっ!うっ…あ、頭が…」
ハヤトは、その少女の事をじっと見つめていたら、急に頭痛に襲われ、もがき苦しみ始める。
「ぐあああああああああっっ!!!」
「ほ、本当に大丈夫ですか!!!」
その少女はハヤトが苦しんでいるものの、何になんでこんなにも頭痛で苦しんでいるのか、何をすればいいのか分からず、あたふたと慌てふためいている。そんな状態のままどのくらい時間が経っただろうか。おそらく、10分位はそんな感じでいたかもしれない。ハヤトはずっと苦しんで、暴れまくって、どうしよう状態のその少女は精神的にもその10分でかなり消耗してしまっていた。
「あ……」
突然、そんな均衡を破るように、ハヤトが落ち着いた声音で小さく呟くように声を漏らした。
「そうだ…俺は…やよい…くそ!何で俺は…!」
「あ、あの…大丈夫ですか…?」
ハヤトの言葉から察するに、今の衝撃で、すべてを思い出したらしい。逆になんでこんな大切な事を忘れて、こんな事をしているんだと自分を叱りたい気持ちでいっぱいになった。
「き、君は…あぁ…君が…ありがとう」
ハヤトは、改めてその少女の容姿を見て、静かに納得した。この少女がやよいにそっくりなせいで、思い出す事が出来たのだと。そして、その事に心からの感謝の意を込めて、渾身のありがとうを紡ぐ。
「あ、え、はい、どういたしまして…?と、とりあえず良くなったみたいでよかったです!」
その少女は、何も知らないので、当然ハヤトが言っている意味を理解していない。しかし、その少女の性格がとてもいいらしく、本気でハヤトの事を心配してくれていたので、ハヤトが落ち着いてほっと安堵の息を零すのだった。
「君の名前は…?」
「ミーラです!えっと…」
二人とも落ち着いたタイミングで、ハヤトがやよいと瓜二つの少女に名前を聞いた所、名前は、ミーラというらしい。
「ハヤトだ。蹴られた事はとりあえず、置いといて、こっちの事情なんだが、本当にありがとう」
「ハヤトさんですね!け、蹴った事はしっかり覚えているんですね…なんだかよくわかりませんけど、お役に立てたならよかったです!」
ミーラは、蹴った事を覚えていたハヤトに何ともいえない顔をしていたが、役に立てて嬉しそうに満面の笑みでニコニコしていた。だが、いきなり、はっ!と、何かを思い出したように、挙動不審な動きになりつつ、ハヤトに縋るような、上目遣いをしながら、口を開いた。
「あの…ハヤトさん…。お願いがあるんです…聞いてくれますか?」
「ぐっ…ま、まぁ、今の俺に出来る事はほとんど無いと思うが、出来る事なら聞くが…」
「実は…」
ミーラのお願いというものが、親友がある罰で死刑が決まってしまったらしい。その死刑が一週間後で、その死刑にされそうになっている子を助けてくれというものであった。ミーラ曰く、その子は、普通の街道で、犬のような生き物がキャンキャンほえていて、邪魔だと、貴族に蹴っ飛ばされたその、犬のような生き物を助けたがためにこういう事になってしまったらしい。
普通なら、そんな事でここまで大きい事態にはならないのだが、後々調べた所、その生き物というのが魔物であったため、それを助けようとしたあの子は悪魔の使者だという事にされてしまい、死刑が決まってしまったという訳である。その時ハヤトは、そんな事で死刑になるのかよ…この世界大丈夫かな…みたいな感想を思っているような微妙な面持ちで聞いていた。
そして、その処刑されそうになっていた子というのが、ミーラと1番仲の良い友達だというのだ。ハヤトがそのお願いを、娘と瓜二つの女の子にお願いされて、断れるわけがない。いや、断れないではない。断らない、だ。
「でもなぁ~、俺が助ける事が出来るかどうか…」
「できますよ!ハヤトさんには何か、ものすごい潜在能力を感じます!」
「そ、そうなのか…」
「なんなら、執行日まで1週間ありますし!私と訓練しませんか!」
これは、断る気は無いのだが、自信が無いので不安そうな表情で渋っている。フリをしている。しかも、ハヤトにとっても悪い話ではない。世界征服をするのであれば、力は絶対に必要な物だ。さらに、自分のステータスでさえ、しっかり把握していないので、是非ともお願いしたい所である。しっかり把握してないのが、すべてはあの女神のせいであるのは言わずもがなであるが。
「そ、そういう事なら、いいだろう。その話乗ってやる」
何度も言うが、ハヤトは断るつもりは毛頭ない。なのに、渋々といった感じで頷いている。これは、やよいとそっくりの見た目だが、やはり感じる気というか、そういうものではやよいではないんだと直感的に察してしまうが故、本能的に何も考えず、はいそうします、と肯定する事が出来ないのかもしれない。
「ちなみに、私、強いですよ。魔法の適正はSランクです。しかも、全属性の魔法使えますし!よかったですね!私に教えて貰える事ができて!」
「なんか…いきなり調子乗ったな…」
「こー言うことです!」
突如ミーラがずずずとぶれたかと思えば3人になっていた。ハヤトはそれに対し、目を見開き、唖然としている。
「魔法ってのはすごいな…でも、すごい魔法適正持ちがどの程度までできるのか基準がわからないんだよな…」
「わかりましたよ~説明してあげますよしょうがないなぁ~。」
ミーラは、ハヤトの協力を得ることが出来て、満足げに自分は凄いんだと自慢げになっているが、実際ミーラが言っている事は、ミーラの説明からして虚言でもなんでもない事実だったので、ハヤトは反論できずぐぅっと押し黙る事しか出来ないのであった。
ちなみに、ミーラの説明は、こういう事である。まず、魔法には初級、中級、上級、最上級魔法があり、だいたい、国の王側近の魔術士ともなれば、これらすべてが、上級まで使えるのが目安らしい。で、一般人なんかは下級が使えればいい方で、冒険者のかなり有名な人などは、最上級魔法が使える人もいるらしい。あとは、ステータスは地球でいう、免許証的な存在でしかないので書いてないが、スキルというものがあり、これは生まれつきのものや、ある日突然開花したりという事もあるし、人によって全然違うので、どれが強いどれが弱いというのは何とも言えないらしい。よーは使い方しだいだ。
そして、ハヤトはいちおミーラのステータスも見せてもらっていた。
ミーラ
種族
・白虎族
冒険者ランク(シルバー)
ミーラは、魔法適正も高く努力家なのでかなり強いらしいのだが、1人じゃ不安だし、上には上がいるのでどうしようか悩んでいたらしい。実際に名前を挙げるならば、魔人族はかなり強者揃いらしいし、人族、獣人族にも、剣士なら流派があり、各流派の師範、魔法なら、歴史に名を残すような魔法使い、その辺の人はまじで化け物っていう噂らしい。後は英雄譚などに出ているような勇者、賢者、他の異世界から来ている人なんかも中々にみな別格だという話だ。
ついでに、ハヤトはミーラに自分のステータスの赤いビックリマークを見せようといたら、いつの間にかそれが消えていたのだった。
そうこうして、ハヤトはミーラに鍛えてもらう事になった訳である。一週間といういう短い時間であるが、この1週間本気で打ち込もうと意を決したような表情で、ハヤトは、ぎゅっと拳に力を入れるのであった。
そして、まず何から始めるかと相談した結果、ハヤトがこの世界の事について、何も知らな過ぎる事から、今日の残った一日を使って、この世界の事について色々と知識をぶっこもうという事らしい。そして、ここじゃなんだからと、飯屋に行って、今日はミーラの驕りでいいという事でそこで勉強することになった。
「それじゃ、行きますか!」
ミーラの掛け声に、ハヤトが、おう!と威勢よく答えると、二人はミーラお勧めの店に向かうのだった。
街中の”ワールドエンド”というお店に入る。どうやらこの店がこの街では結構有名でとてもおいしいらしい。食べると世界が終わってしまうんじゃないかいうような名前だが、味だけはほんとに信用できるらしい。二人は店員のいらっしゃいませ~、お好きな席へどうぞーという声で適当に空いている席に着く。
「さて、始めますか!」
「おう!よろしく!」
そして、ハヤトの勉強会が始まった。もしも、教科書があるなら目次はこうなるだろう。
1,お金について
2,生活について
3,ギルドについて
4,ハヤトからの質疑応答
まずは、お金についての説明を受けた。ミーラの説明をわかりやすくいうと、日本円で表すならば、
クズ貨 1円
鉄貨 10円
銅貨 100円
銀化 1,000円
金貨 10,000円
白金貨 1,000,000円
大白金貨 10,000,000円
と、いう事になっているらしく、これを稼ぐには様々な方法があるが、冒険者などは、ギルドで依頼を受けて、その報酬、または、自分で狩にでかけ、魔物など狩って集めた魔物の素材などを売ってお金を稼ぐのが主らしい。たまに同じ魔物でも希少種なんかがいたりして、そういう物の素材は武器防具を強く出来たり、売っても価値がかなりあるらしい。で、冒険者が一般的に、生活するには、武器防具の修理代、食費、宿代、生活費全部込みで金貨10枚位が相場らしい。
生活については、基本的に何か街で商売などしていない人などは、基本みんな自力で色んな町を点々としているので、自分の家は持たずに宿生活という人が多いらしい。
ギルドについては、冒険者が多く使うところであり、依頼の掲示板で自分のレベルに見合った依頼を受付で受注して、達成したら、報酬をもらえるという形だ。そして、冒険者にもランクがあるらしく、ブロンズ、シルバー、ゴールド、プラチナ、スター、ゴールドスター、プラチナスター、があるらしい。プラチナスターの人は世界でも数える程しかいなく、強さはもちろん無茶苦茶。っていう話である。ハヤトの目的である世界征服である訳なので、この時のハヤトは、そういった人達も超えなきゃいけないのか…え…俺に出来るのか…いや、やるんだ…と自分と戦っているような表情でミーラの話を聞いていた。
最後の質疑応答の時間になる頃には、二人の仲も勉強のおかげかだいぶ深まり、気づいた頃には、ミーラはハヤトにタメ口で普通に話をしていた。一回それに自分で気づき、頬を赤らめながらごめんなさい…というミーラに対して、いいや、そのままで構わない、というやり取りもあった。そういう事もあり、結局タメ口で会話する程度の仲にはなっていた。そんなこんなで話をしていたら、もう外も暗くなり始め、一日の終わりを告げるお月様が姿を現していた。
「こんな所かな!」
「まじでありがとう!だいぶこの世界の事知る事できたし、これなら一人になってもなんとかなりそうだ!」
「そっか…じゃあよかった!今日はもうどっかの宿とって明日から本格的に修行始めるわよ!」
ハヤトのお礼ともう一人でも大丈夫という心意気に、ミーラは一瞬なんとなく寂しそうな表情になったが、ぶんぶんと首を振り、前向きに明日もがんばるぞ!という活きで立ち上がると、さぁ、いくよいくよと歩き始めるのだった。
ハヤトは、絶賛無銭の男なので、宿代も、もちろんミーラ持ちである。宿は一人一人別の部屋を取り、もう時間も時間なので、二人は部屋の前で、また明日な!うん!また明日!と会話をすると、自分の部屋に入っていった。
部屋に着いているシャワーを浴びて、ベッドにばーんと横になると、寂しさがこみ上げてきたのか、ハヤトは、鼻をすすり始めた。男泣きというやつだ。だが、涙を出してはいるものの、その表情は強い決意に満ちており、誰が見ても、本気なのだなとわかるプレッシャーを放っている。
「あぁ~、アイカスすいてぇなぁ~」
ハヤトはアイカスが恋しくなり、ボソッと呟くが、そんな物この世界にあるはずも無く、ちくしょうと小さく呟き布団の中にうずくまった。しばらく、すると、寝息を立て始め、色んな事があり、疲れたのかすぐに寝てしまったようであった。
隣の部屋のミーラは、シャワーを浴びた後、軽く化粧水のような物をつけようと、鏡越しに自分を見ている所であった。だが、彼女は気づかない。彼女の周りに靄が纏わりついていることに。そして、彼女の周りに纏わりつく靄は、月明かりに照らされて、あざ笑うかのように霧散していくのだった。