更に一週間後
戦闘描写が上手く出来ず悩んでいたらこんなに期間が空いてました…
まだまだ納得してないのでいつか書き直すかも…
森の中で飛燕を正面に構え精神を研ぎ澄ませる
時折飛んで来る2種類の不可視の攻撃を避けたり受け流したりしながら、集中を途切れさせず本命に対して油断なく備える…
飛んでくる攻撃は武術スキルや格闘家の使うスキルにある【遠当て】という空気を打つ事で衝撃を対象に遠くからでも当てるスキルや【指弾】といったそこらに落ちている小石や果ては空気の塊を指で打ち出すスキルによる視認し辛い遠距離攻撃だ
【指弾】は空気や物を飛ばす攻撃の為自然が多いこの場所では認識するのは比較的簡単だ
多少慣れは必要だけど、石などの物であれば空気を切る音や草木が揺れる音、空気の塊は音こそはしないが草木が不自然に揺れて軌道が読める
ただそこに【遠当て】が混ざると脅威度が一気に上がる
遠当ては空気を振動させ狙った個所にそのまま衝撃を与える技だ
なので予備動作が見えていれば察知は出来るが、見えない所から打たれる遠当ては察知が非常に難しい
しかし、空気を振動させるため音…、高周波と言った方がいい物が発生するので微かな耳鳴りを頼りに集中していれば避ける事は可能だ
なのでこちらからは攻めず、相手が焦れてこちらに本命を仕掛けてくるまで相手の攻撃をかわすだけに留めておく…
攻撃を避け続けて数分後…
パキリ…
と自分の後ろから枝の折れる音
しかし、音を出したであろう気配はそちらに残っていない
誤って音を立てたのではなくわざと音を出したのだろうという警戒に留め…
右から飛んできた「遠当て」にあわせ左後方から迫ってきた指弾の跳弾にあわせて侍の職業スキル「柳」を発動させその場から動かずに攻撃をすべてすり抜けるようなわずかな動きで避ける
そして丁度枝の折れた音がした辺り、真後ろから放たれた「聖光斬撃」に飛燕から左手を離し、腕を振り、ユニークスキルの複合魔法で作り出した「ダークウォール」で闇属性の壁を作り対処する
その魔法を使った隙を逃すまいと正面から「縮地」で一瞬で飛び込んできながら打ち込まれた「寸剄・絶」に体術スキルを元に創った「共振」と「刹那の見切り」の同時使用で打ち込まれた衝撃と同じ衝撃を放ち返し無効化する
そのまま攻撃の後に生まれた隙に剣術スキル「隼」で右斜め上段からの袈裟切り、魔法を放った左手を戻しての左下段からの逆袈裟、勢いを殺さぬように右から左への胴薙ぎ、後ろに重心を寄せてから頸動脈を切り裂く様な喉元へ突き、最後に大上段からの唐竹割りと言った5連撃を一瞬で叩き込み、バックステップで先ほど作ったダークウォールに近付き、背後を守りながら相手が動かない事を確認して暫くして緊張を解いた
「ふ~、なんとかなった…。鏡花、セバスチャンの回復頼んだ」
緊張を解しながら戦闘訓練に付き合ってくていた二人に声をかける
「はい、かしこまりました。そして主様の戦闘の勘がほぼ戻られたようで何よりです」
さっき聖光斬撃が放たれた辺りからメイドロボの鏡花が先ほどの訓練の成果からみた俺の評価を口にしながら現した
「ありがと。協力してくれた二人には本当に感謝してるよ」
「いえ、私もセバスチャンも主様のお役に立てることが何よりの幸せですので」
「はは、それでも手伝ってくれた二人にはお礼を言わないとね」
「そういうものでしょうか?」
「そういうものだよ。」
そう言いながら腰を下ろして改めて考える
二人に戦闘訓練を手伝ってもらってから1週間
最初の頃はやってみようと思った行動が思う様に出来なかったけど、今では何が出来て、何が難しく、何が出来ないのかをしっかりと把握できた
結論から言えば人間である事を辞める動き以外は基本的に可能だった
そして人間を辞める様な動きは不可能だった
スキルを使わなければ
例えば良く漫画やアニメで見る壁走り
今の身体能力でやろうと思えば頑張れば横に10m、縦に5mぐらいは出来た
だけどいくら身体能力が高くても重力には逆らえず、壁を走る、つまり壁を蹴れば足は壁から離れる訳で縦方向への壁走り(壁上り)は問題なかったけど、横方向への壁を無理やり10m走りきった結果は地面とのキスだった
ところが忍者の職業スキルにある「壁走り」を使うと足の裏が付いた個所が地面だと判定するように垂直に壁であろうと天井であろうと立つ事ができた
だけど重力が無くなった訳ではないので天井を歩いていると頭に血が上って大変だった
という事などから、
身体能力は超人並みだけどあくまで人間的な常識はそれにあったスキルを使わない限り逸脱は出来ない
と結論付ける事が出来た
今日は戦闘面に関して問題が無いかの最終調整と言う事で二人で協力して俺と戦ってもらった
結果は見ての通りで二人相手でも問題ない事が分かった
そろそろセバスチャンの回復も終わった頃だろうと目を向ける
丁度回復が終わりこちらに二人揃って来始めていた
「主様、お見事でございました」
「セバスチャンもありがと。いろいろ仕事を押し付けておきながら戦闘訓練までさせて」
「いえいえ、主様から仕事を任せて頂けるのが執事として役割を頂いた私には嬉しいばかりでございます」
「鏡花にも言ったけどそれでも、だよ」
「分かりました。それではまたご用があればなんなりとお申し付け下さい」
「ありがとう。それじゃあいつもの仕事頼んだよ。俺はもう少しここで休んでいくから」
「かしこまりました。それでは何かご用があればお呼び下さい」
そう言って二人はホームへ向かって行った
「ふぅ~~」
大きく息を吐き出しながら、模擬戦闘で疲れた地面に横になり空を仰ぎ見る
横になって感じる草の感触と匂い、汗をかいた肌に触れる風、広がる青空と日差しを遮る木々
何一つゲームらしさは無く、もう何度も感じているが改めてここはフィクションではなくリアルなんだと実感する
戦闘訓練を始めてから1週間
改めて自分の能力が異常である事に気が付いた
それに気付いたのはスキルコンプリートをしていないスキルをコンプリートしてしまおうと試した時だ
まず結果から言えばゲーム時代であれば簡単に習得できたスキルであれ、今は習得が難しい…むしろ才能が無ければ不可能に近かった
その理由として初期職業の一つ【剣士】の最初の派生スキル【大斬撃】というのある
これの基本取得条件は
剣士の職業についている者が100回攻撃を当てる
となっている
ゲーム時代であれば1時間もしないうちにそこらの雑魚敵やら何やらを切りつけていつの間にか覚えてる様なスキルだが…
現実世界では難し過ぎるの一言
ゲームでは適当な時に100回攻撃ボタン
現実では粗悪な剣であれ数kgある武器を持ち、それを振り、攻撃を当てる
これを100回
最初の派生スキルでこれなのだから、その更に先は…
一応救済は無い訳でないけど今はいいだろう
なので、結論として俺がこの一週間で新たに覚えられたスキルは無かったが、そのおかげで今の時点でほぼすべてのスキルがコンプリートしている自分がどれだけ異常だと言う事か理解出来た
人が一生かかって一つのスキルツリーをコンプリートするのに、自分はほとんどのスキルツリーを系統問わずコンプリートしている
だからこそ…
「人前ではスキルを隠さないとな…」
誰に言うのでなく、自分に言い聞かせる為に呟き、目を閉じ、意識がまどろみの中に沈んでいった
スキル説明
【遠当て】格闘家スキル:空気を振動させ対象の位置に自身の攻撃力半分の攻撃力の衝撃を叩きこむ
【指弾】格闘家スキル:小石等の礫を指で弾き飛ばし相手に攻撃力1/10の威力でダメージを与える。熟練度が高くなると空気を飛ばす見えない指弾が可能になる
【聖光斬撃】聖騎士スキル:聖なる斬撃(光属性)を自身の射程内で振り下ろした武器から飛ばす事が出来る。威力は攻撃力では無く魔力に依存する
【縮地】移動スキル:線の移動では無く点から点への移動が可能になる。距離は熟練度に依存し、最長50m。瞬間移動では無いので点から点の移動の際に当たり判定は存在する
【寸剄・絶】格闘家スキル:奥義の一つ。自身の体が相手に接触している場合のみ発動可能。血が流れている存在であれば確実に超大ダメージを与える。くらった相手は様々なデバフがかかる
【柳】侍スキル:受けの奥義。体から余分な力を全て脱力させ敵の攻撃ほぼ全てを受け流す。柳の発動中は攻撃力が半減し、解除から数秒後半減した攻撃力は元に戻る。(解除から復元までの時間は熟練度に依存する)
【隼】侍スキル:攻めの奥義。自身の敏捷を超えた早さで最大5連激を相手に叩きこむ。攻撃個所は自身で決められるが無理な動きがあれば連激が続かないので注意が必要
【共振】オリジナルスキル(体術):衝撃波や振動系の攻撃にのみ使用可能。与えられた衝撃や振動と同じ衝撃などを発生させ相殺する
【刹那の見切り】オリジナルスキル(体術):動体視力を一時的に超強化。強化されるのは動体視力のみでステータスに効果は無い為、スキル発動中に動ける範囲はステータス準拠
【ダークウォール】複合魔法(闇土):闇属性の壁を発生させる。強度は魔力に依存