変わらぬ世界
『 お は よ う 』
モニターから聞こえるキミの声。
それだけで嫌気が指した。嫌気が指せる、と言うことは
まだ知性や理性は保たれている、と言うことだ。
その事実に少しだけ安心する。
『 調 子 は ど う だ い ? 』
良い筈がない。最悪だ。心からそう叫びたい。
だが、相手の機嫌を損ねるのは面倒なことに繋がる。
「普通。」
淡々とそう告げる。そう。と、キミは言う。
いつもの会話。変わらぬ風景。どう頑張っても抗えぬ日常。
辺りを見渡せど視界に入るのは大きなモニターと
必要最低限の物が揃った殺風景な部屋に一輪の花。
この花・・・なんて言うんだろう。
『 今 日 は 外 に 出 掛 け よ う 』
・・・どういう風の吹き回しだろうか。珍しい。
もしや、死期が近いのだろうか。
『 そ ん な に 驚 か な く て も 』
呆気に取られているとキミにそういわれる。
「・・・別に。」
心が躍るのを必死で抑えて着替え始める。
嬉しそうだね。とキミが言う。いつもは耳障りな声も
浮かれているからか不思議と嫌気はしない。
『 僕 も 一 緒 に 行 く け ど 良 い ? 』
一瞬考えたが外に出られるなら正直なんでも良い。
「あぁ。」
嬉しそうにキミが笑うとガチャリ、とドアの開く音がした。