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第4話 継承

「なんてことがあったんだ~」


 月曜日の朝、いつもと変わらず悠里ちゃんと登校する途中で、私は使徒再来時の出来事を話していた。

 あの時、苦しそうに電話をかけてきた悠里ちゃんは私が家に駆けつけた時には大分落ち着いていて、あれからはなんともない。


「そう。それじゃ、彩もお父さん達と一緒に戦うのね?」


「うん。私に出来ることなんて少ししかないだろうけど、それでもやるって決めたから。」


「立派ね、すごく。あんなに泣き虫だった小学校の頃が嘘みたい。」


「あはは~、そんな時もあったねぇ…」


「でも、気をつけなさいよ。彩が傷つくのは、私嫌だから。」


 そっけないけど、悠里ちゃんはとても私の事を心配してくれている。それがよく分かった。


「ありがと、悠里ちゃん。」


「それはそうと、宿題はやって来たの?」


「それはもうバッチリ!一航戦の皆に見てもらったのだ!!」


「変わらないどころか悪化してるわね…」


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 放課後、私は訓練のために作戦室を訪れた。


「副隊長さん、こんにちは!」


「お、来たね彩ちゃん。元気がよくて何よりだ。」


「今日は何をするんですか?」


「今日は彩ちゃんの翼の特徴を掴もうと思ってる。悠君の報告だと、翼に防御能力が備わっているって話だけど…それ以外に何か能力があるかも知れない。」


「あの時は夢中だったから、どんな風に使ったかあんまり覚えてないんですよ…」


「大丈夫、今のうちに使えるようになればいざという時に役に立つからね。ゆっくりやっていこう。」


「はい!」


 それから、私と副隊長さんは外の運動場へ。訓練の内容は、投げられるボールを翼で弾き返すというもの…なんだけど

 ポコッポコッ


「あう」


 ポコッポコッポコッ


「あうあう」


 翼を体の前に出してるのに、ボールは翼をすり抜けて私の体にポコポコ当たる。


「どうして上手くいかないんだろ。」


「彩ちゃん、翼の能力をイメージしてごらんよ。」


「イメージ?」


「ただ単に翼を広げるんじゃなくて、この翼にはこんな能力がある、ってイメージしながらだと上手くいくかもしれない」


「イメージする…」


 あの時、私はどんな風に翼を広げたっけ。

 パパを守りたい一心で、手に力を込めて、手の動きと一緒に翼を…


「副隊長さん、もう一度投げてください。次は出来る気がします。」


「いくよ、それっ!」


 投げられるボール、弾く、翼で弾く、それをイメージしながら手の動きに合わせて翼を広げる、すると…

 ポーーン!という小気味いい音とともにボールが遠くへ飛んでいった。


「あ、出来た。」


「ふーむ、こんなに早く出来るようになるなんて…これは悠くんを越える資質があるかも知れないね…」


 副隊長は腕組みしながらしきりに首を上下に動かす。私はというと、さっきの防御の感覚から、ある仮説を立てていた。


「副隊長さん、もう一度投げてもらえますか?」


「いいよ、それっ。」


 投げられたボールを、今度は弾くのではなく斬るようにイメージして手を水平に振る。

 手の動きとシンクロした翼は、私の予想通りボールを真っ二つに斬った。


「やっぱり出来るんだ、これも。」


「彩ちゃん、今のは…」


「防御が出来るなら攻撃も出来るんじゃないかって考えたんです。さっきは手のひらで弾くのをイメージしたから、今は手のひらで斬るのをイメージしてみたんですよ。」


「翼に攻防一体の能力があるっていうこと自体驚きだけど、それをこんな極短期間で身につけるだなんて…彩ちゃん、やっぱり君は悠くんと由乃ちゃんの子供なんだね。」


「うーん、あんまり実感ないですけど…。でもこれで、私なりの戦いが出来ますね!」


「今得た感覚を忘れないように、でも無茶はしちゃダメだよ?君が傷ついたら僕だって悲しいし、何よりも悠くんと由乃ちゃんが一番心配する。」


「それは分かってます。今日はありがとうございました!」


「はい、お疲れさま。気を付けてね」


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「影から見てないで、色々教えてあげたらいいのに。」


「いや、僕は先生には向かないですから。」


「そんなこと言っちゃって…由乃ちゃんの先生は悠くんだろう?」


「それはそうですけど…」


「それで、何か掴めたのかい?」


「ええ、彩の成長とこれから伸びるであろう資質。それらを踏まえた上で僕たちに出来ることを。」


「ふむ、悠くんの二刀流は今回も頼りにしようとしていたんだけど。」


「そろそろ腕が追いつかなくなってきましたよ、下手すると自分の腕を斬っちゃいそうで。」


「あ、年だって言いたいのかな?」


「僕だって30超えたんですよ?もうあの頃の戦いは出来ませんって。由乃と二人、力を合わせて一人前ですかね。」


「夫婦の絆ってやつかな?」


「からかわないでください。」


「ふふふ、ごめんごめん。悠くんはこれでどうするんだい?」


「旧訓練棟の205号室で待ち合わせです。」


「二人の始まりの場所…うん、うってつけの場所だね。」


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 帰りがけ、私はママに旧訓練棟の205号室へ呼び出されていた。

 扉を開けると、そこにはママとパパの姿があった。


「彩、おかえり。」


「え、ここは家じゃないよ?」


「僕たちにとっては家みたいなものなのさ、この部屋は。」


「ここはね、パパがママの先生だった時の教室なの。初めてお互いの翼を見せ合って…そして好きになった場所。」


「好きになった場所…」


 そう聞くと、なんだかとってもロマンチックだ。

 ママとパパの始まりの場所、そこに私を呼んだということは私にも何か始まりがあるんだろうか?


「彩、これを託したい。」


 パパは背中に背負っていた剣を差し出してきた。

 鞘だけじゃなく、柄まで真っ白な剣。それは部屋の明かりを受けてまばゆく光っていた。


「これは白雪(スノーホワイト)、「闇を払う剣」とも言われている。」


「闇を払う剣?」


「お父さんは昔、この剣を使ってゼロを倒した。この剣には人の想いを力に変える能力があるんだ、彩が何かを守りたい時、誰かを助けたい時、必ず力を貸してくれるはずだ。」


「それと、ママからはこれを。」


 今度はママが人差し指の指輪を外して、私の指にはめた。


「彩のしたいこと、願ったことを叶える力になってくれるはずよ。彩にならこの武蔵はきっと使いこなせるわ。」


 私は試しに指輪に力を送ってみた。すると、とても大きな盾が現れて、私の右腕と繋がる。大きいのに重くない、むしろママの思いがこもっているようにも感じた。


「これを私にくれるの?」


「ああ。確かに僕たちは英雄だったかもしれない、でも今になってあの頃の戦い方をやるのは難しいからね。」


「ママ達はママ達に出来ることを全力でやるわ。彩のサポートも任せなさい。でも、彩にしか出来ないことがあった時は…彩に出来ることを精一杯やりなさい。」


 私にしか出来ないこと、それがなんなのか今はよくわからないけど、パパとママにもらった二つの大きな力は、とっても頼もしく感じた。


「うん、私、頑張るよ!パパとママ、一航戦のみんなと一緒に今度こそ平和な空を掴みたいから。」


 私の背中で、私の意思に応えるように虹色の翼がはためいた。

いつになったら続きが出来るんだ!ごめんなさい、今やっと出来ました!


前回の更新がいつだったか忘れてしまうくらいには更新が途絶していました

あらかじめ頭の中で展開を作ってはいるのですが、今回はその幕間のような所で、どんな風に次の展開に繋げるか大いに悩んだ結果、こんなに時間がかかってしまいました。

己の力不足を痛感しています


…が、嘆いてばかりでも仕方ありませんので、次の展開を書き始めます。

次は今までとは少し違う、戦いだけど戦いではないという内容で1~2話ほど書き進めたいと思います。

浦風晴斗、これからかなり忙しい日々を過ごすようになりますが、頑張って参ります

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