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第3話 8つ目の翼

「彩、悠里ちゃんの様子はどうだった?」


「今は落ち着いたみたい、私が行ったときにはもう苦しくないって。」


「そう、ならよかったわね。」


「ね、ねぇママ。さっきのは……」


「安心して、今から全部話すわ。でしょ、パパ?」


「ああ、これは僕たちだけの問題じゃなくなったからね。」


 使徒撃退後、悠里ちゃんの様子を見に行ってから私はママとパパから話を聞くことにした。あの翼はなんなのか、使徒って一体なんなのかを。


「彩は一航戦やACFのみんなが、18年前に使徒を倒したっていう話は知っているんだよね?」


「うん、学校の授業でそこは習ったよ。」


「それじゃ、一航戦の7人にはある共通点があった…って言うことは知ってるかな?」


「共通点…?」


「僕や由乃、それ以外の5人とも翼を持っているんだ、今の彩と同じように。」


「私と、同じ…?」


「みんなそれぞれ色は違うんだ。僕は青、由乃は赤、それ以外にも橙、紫、藍、黄、緑の7色があるんだ。」


「7色…あ、虹の色だ。」


「いいところに気がついたね。昔神様が使徒と戦うために人間に虹の7つの翼を与えたっていうのが始まりみたいなんだ。それが代々色んな人に移って、18年前にまた全部が揃った。っていうわけ。」


「あれ、でもさっきのパパは白い翼を出してたよね?」


「それは、どの翼も白い翼に進化する可能性を秘めていたからなんだ。光は混ぜ合わさると白になる。黒に対抗するには白、っていうのが神様の理論。」


「それじゃ、私が出してた虹色の翼はなんなのかな?」


「それがよくわからないんだ。前にACFのデータベースで翼のことを調べた時も、虹色の翼について書いてはなかったし、僕たちも虹色の翼を見るのは初めてだからね。」


「そうなんだ…じゃあさ、使徒っていうのはなんなの?」


「僕たち人類を破滅させる存在…かな。使徒が現れてから10年の間に数を減らすか、使徒を倒さないとその星に終わりが訪れる…って言われている。」


「終わり…」


「でも、僕はみんなの力を借りて使徒の王、ゼロを倒した。だから今こうして僕や、彩が生きている。」


「ならどうしていまさらになって使徒がまた出てきたのかな?」


「それもわからない。これ以上のことを話すには今は情報が少なすぎるね。とにかく、彩が目覚めた翼についてはもう少し調べたいところなんだけど…」


「それならちょうど、いい話があるみたいよ?」


 ママがスマホの画面をパパに見せている。すると、パパの表情が少し笑顔になった。


「まったく、相変わらず話が早いな。」


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 それから1時間後、私はパパとママに連れられて空風駅前のとある施設に来ていた。


「航空自衛隊兵装保管施設…?なんかすごく物々しいね。」


「兵装保管って言っても、古い資料とかが置いてあるだけ。半分倉庫扱いになってるけど…ここの設備はすごいんだぞ?」


 パパは慣れたように施設の中を歩いていく、こんなところに入り慣れてるようにはとても見えないんだけど

 少しすると、一つの部屋の前にたどり着いた。扉には「一航戦作戦室」と古ぼけた字が書いてある。


「一航戦、篠宮悠、入ります!!」


 パパの兵隊さんみたいな声に少し驚きながら、開いた扉の中に入っていく。中には5人ほどの人影が見える。


「君たちが一番最後だ、悠、由乃。突然の召集だから無理もないか。」


「お久しぶりです、隊長。それにみなさんも…桜はそんなでもないけどな。」


「一言余計よ。」


「ねえパパ、この人たちは?」


「彩が前にあったのは3歳の時だもんな、覚えてるわけがないか。この人たちは、第一航空戦隊…一航戦のメンバーだよ。」


 なにかで見たことがあると思ってはいたけど、まさか一航戦の人たちが目の前にいるなんて。私は驚きを隠せなかった。


「っていうか、彩ちゃんを連れてきたんですか?もう中学生くらいなんだし、留守番くらい出来るんじゃないですか?」


「連れてきたのには意味があるんだよ海斗。」


「なんだ、俺たちに会わせたかったとかか?」


「会わせたいというか、見せたいものがあるんです。えっとですね…ここ最近、浜ノ宮を中心とするエリアに使徒が再来したって話、隊長発信で皆さん知ってると思うんですけど。ついさっき、我が家の目の前に現れました。」


「なんだって?」


「その時にですね、本当に不可解な出来事が起きました。…話すより見てもらった方が早いですね。」


 パパが私の方を見て、背中を指差す。さっきの翼を出せということなんだと思った私は、ふっと背中に力を込める。すると、あの虹色の翼が現れた。


「!?」


「は!?」


「なんてことだ…」


 一航戦の人たちが、みんな驚いて動かなくなっている。

 パパが隊長、と呼んだ女の人だけが私の翼を見て、何かを考えているようだった。


「…悠、この翼について何か分かっていることはあるか?」


「一つだけ、翼自体に防御能力が備わっています。おそらく使いようによっては攻撃も出来るんじゃないかと。」


白銀の翼(ホワイトネス)のような能力は?」


「それはないみたいです。翼の能力をかけ合わせて出来たものではないんだと思います。」


「私たちの翼を超越した新しい翼か…。悠と由乃の子供とはいえ、まさかそんな翼に目覚めるとはな。」


「もしかしたら、使徒の再来と何か関係があるのかも知れませんが、僕としては彩には戦わずに過ごして欲しいです。」


「まあ、そうだろうな。そう言うと思っていたよ。」


「でもパパ、私は…っ。」


 自分で空を飛んでみたかった。パパとママが空を飛んでいたって知った時からずっと、そう思っていた。そして、今の私にはそれを叶える翼がある。


「飛びたいよ、私だって!そして、パパ達が守った空を、私も一緒に守りたい!!」


 その場にいた全員の視線が私に向く。一瞬たじろぐけど、私はじっとパパを見続けた。


「…簡単な話じゃないぞ。彩の目の前で誰かが傷ついたり、彩自身が傷つく時だってある。」


「分かってる。それでも、私はやりたいの!」


 ここまで来たら引き下がりたくない、意地でもパパに「うん」と言わせる。そう決めた時だった。


「こうなったらテコでも動かないわよ、彩は。それはパパが一番分かってるんじゃないの?」


「それはそうだけど…」


「彩、一つだけ約束して。どっかの誰かさんみたいに、無理と無茶だけはしないこと、いい?」


「んっ、んん!」


 パパが咳払いをする。どっかの誰かさんっていうのは、多分パパのことなんだろう。


「分かったママ、約束する。」


「うん、いい子ね。」


 パパはまだ納得しきっていないようだったけど、頭を掻きながら隊長さんの方を向く。


「すみません隊長、一度言い始めたら聞かないもので…」


「いいじゃないか、元気があって。では、篠宮彩!」


「は、はい!」


「現時刻をもって第一航空戦隊に配属を命ずる!」


「ありがとうございます!!」


 かくして、私は一航戦の一員となった。これから始まる、大きな戦いの結末など知るよしもなく。

第3話、読んでいただきまして、ありがとうございます


今回の話では、悠と彩のやり取りが自分的には気に入ってます

空を飛んでみたい彩と、彩の身を心配する悠

最後は由乃が上手いことまとめて、一航戦入りを果たした彩ですが、本当はもう少し悠とのやり取りをさせたかったです


さて、8人になった一航戦、虹色の翼の能力はまだ明かされていませんがそれはこの先ということで


それでは、また会いましょう!

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