表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/19

第16話 最後の戦い Side 彩

「まだ戦える…?剣を1本にしたところであなたの未熟さは変わらないのよ?」


「剣の本数は関係ないよ。今の全力を出せるのがこれってだけだから」


 悠里ちゃんの表情が少しだけ険しくなって、レイピアを持つ手に力が入っているのが伝わってくる。

 さっきまでとは違って、悠里ちゃんがよく見える。そう、まるでランスロットと戦った時のように。


「…っ!!」


 だから、見えた。

 ガキィン!!という大きな音を立てて、レイピアの切っ先が白雪(スノーホワイト)の側面にぶつかる。

 悠里ちゃんが目を見開く、それも当然だった。

 私は今、突きを剣の「側面で防いだ」のだから。

 そのまま私は白雪(スノーホワイト)を斜めに傾けて、突きの勢いを後ろに逃がして、体勢が崩れた悠里ちゃんの体に思いっきり拳を叩きこむ。


「えっ…」


 意表を突かれた悠里ちゃんはその拳をまともに喰らって倒れこむ。


「なんで…この体は悠里のものなのに…」


「姿は悠里ちゃんでも、今のあなたは悠里ちゃんじゃない。私だけ覚悟を決めないなんて、一航戦のみんなに失礼だから…」


 白雪(スノーホワイト)の切っ先をユーリに向けて、私は身構える。


「もう一度言うよ、私は悠里ちゃんを助けるためにユーリ、あなたと戦う!!!」


 虹の翼(アルカンシエル)を広げて、私はユーリに突進する。

 ユーリが繰り出す突きは、ティアが翼を使って防いでくれる。

 私がやるべき事は、ユーリに全力で立ち向かう事だけ。

 今までと違う私の動きに、ユーリは戸惑いを隠せていない。


「彩は悠里がどうなってもいいの!?」


「よくないよ。よくないけど、今のあなたは……悠里ちゃんじゃない!!」


 甲高い音を立ててぶつかり合う剣と剣。戸惑いの色はあるけれどユーリの一撃はレイピアのものとは思えないくらい重い。

 一瞬でも気を抜いたら私がやられる、そんな怖さと真っ向から向き合う。


「シッ!!!」


「やぁぁぁ!!」


 互いの力が拮抗して、鍔迫り合いにもつれ込む。

 剣ごしにユーリと視線がぶつかる。そこにはもう、戸惑いはなかった。


「まさかこんな短時間でここまで目つきが変わるなんて…あなたを見くびっていたわ」


「そういうあなたこそ、さっきとは違って本気に見えるけど?」


「英雄の小娘が……!!!」


 ユーリが放つ気配に殺気が混じる。

 何か来る、そう思って身構えた瞬間、地を蹴ったユーリから目にも止まらない速さの突きが何発も繰り出された。


「速っ……」


『防御が間に合わない!』


 ティアの反応速度を上回る突きの連撃、翼で守りきれなかった何発かが私の体を掠め、私は思わずよろけてしまう。

 その隙を逃さんとばかりにユーリは身をかがめて低く走り、私の足を封じるためにさっきの連撃を繰り出す。


「はっ!」


 すんでのところで横に飛んで直撃は避けたものの、右足にレイピアが掠って赤い鮮血が走る。

 痛みのない左足だけで着地し、ユーリのいた方向に顔を向けるが、そこにユーリの姿はない。


「どこ…!?」


『彩、後ろ!!』


 ティアの声で後ろを振り返ると、そこにはレイピアを構えて必殺の一撃を打ち込もうとするユーリの姿があった。

 ティアの防御の翼も間に合わない、ユーリの突きが届くまで僅かの時間しかない。

 思考がフル回転する、この状況を打破するために私が出来ること、それは…


「お願いパパ、私に力を貸して!!」


 腰に下げていたエクスカリバーの柄を握り、振り返りざまに剣を抜く。

 剣を振った遠心力を利用してユーリと対面した私は、両手の剣を煌めかせて反撃の連続技を放つ。

 ユーリは黒い魔力をレイピアに纏わせ、私の一閃一閃を弾いていく。

 5度目の交錯、下からの斬り上げがレイピアの真ん中を捉え、ユーリの腕を無理やり上に持っていく。

 そこに生まれた僅かな隙を見逃さずに私は吠える。


「悠里ちゃん、今助けるよ!!」


 無防備なユーリ目掛け、私はパパから教わった連続技ースターダストレインーを繰り出す。

 7連続全ての攻撃がユーリに当たり、宙に鮮血が舞う。

 ユーリの体が前に倒れ込んでいく。でもその眼にはまだ光が宿っている。

 残された全ての力を込めるように、私を睨んだユーリは倒れかけた体を左足で踏ん張って支え、右腕から渾身の突きを放った。


「終わりだ、篠宮彩!!!」


 連続技の反動で動けない私の左肩に、レイピアが深々と突き刺さる。傷口に流れ込む黒い魔力が刃となって、私の左腕をそのまま斬り飛ばした。


「あああああああ!!!」


 肩に焼けるような痛みが走り、目が眩む。

 このまま倒れてしまいたい、けど、けど……

 ユーリに必殺技を当てるには、体勢を崩した今を逃す訳にはいかない。

 右手に握った白雪(スノーホワイト)にありったけの魔力を込めて、左腕で支えられない分、後ろから振りかぶって。


「アヴァランチ・ブレイザーーーー!!!」


 虹の翼(アルカンシエル)から溢れ出た魔力が小さな刃となって、ユーリを包み込んで………


 ついにユーリは地に伏した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ