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名探偵・藤崎誠シリーズ

名探偵藤崎誠のマック救済計画

作者: さきら天悟

ある小説家は、マックの経営不振に心を痛めていた。

なぜなら、彼はマックで小説を書くからだ。

マックグリドルソーセージのセットでホットコーヒーとチキンナゲット。

合計400円。これがいつものメニューだ。

約2時間居座って、短編1本を書く。

人がいるが、自宅よりなぜか集中できるのだ。

それに人がいると色々なアイデアも浮かぶ。

マックが経営不振で撤退したら、とっても困るのだ。


えっ?そもそもお前が2時間も居座るのがよくない?

一応気は使っている。

朝の8時から11時過ぎで、込み合う前には帰っている。

今回は、何かいい方法がないかと名探偵藤崎誠に相談してみた。



「WiFiを無料化しらいいんじゃないですか」

小説家は藤崎に提案してみた。


「確かに客はいっぱい来るでしょう」

藤崎は答えた。


小説家は満面な笑みを浮かべる。


「でも、そんなことしたらすぐに潰れますよ」


小説家は眉を寄せる。


「100円のコーヒーで何時間も粘る人で溢れます。

それに、そんな所へ子供連れの家族は行きません」


小説家はハッとして自分の思慮の浅さに気付いた。


「でも、なくはないですね。その案」


えっ、と小説家は言葉を漏らす。


「完全にマックのコンセプトを変える必要がありますが。

マンガ喫茶にしてしまうんです」


「マンガ喫茶?」

小説家は上擦った声を上げた。

「マンガを置くんですか?」


「いいえ、今の店舗に改装を加える必要はありません。

電子マンガ喫茶にするんです」


「なるほど、電子書籍ですか」

小説家は一つ頷いた。

「それならパソコンを持ってきてもらうだけでいいですね。

でも、料金はどうするんですか。

まさか無料じゃないですよね?」


「一席当たり30分、300円くらいでいいでしょう」


「ああ、そういうことか」

小説家は一つ手を打った。

「一席というのは、4、5人で来て、1台のPCをシェアしたら困るからですね。

でも、上手く料金徴収できますか」


「技術的には困難ではありません。

専用アプリをダウンロードするだけでいいし、

PCなら受信用USB機器を開発すればいいし。

漫画自体は配信サイトと契約するだけでいいし」


「でも、それじゃあ~

絶対、家族連れとか恋人たちとか来ませんね」

小説家は眉を寄せた。


「今までのマックのブランドは無くなってしまいます。

そして、ターゲット層はまったく変わってしまいます。

でもマック会員サイトを立ち上げて、

あなたのように小説を書いている人の作品を紹介することもできます」


小説家の口元は少し上がった。

「でも、そんなことになったらマックで書けません。

2時間いれば1000円以上かかってしまって」

小説家は、すぐに眉を寄せた。

「メニューとか変えればいいじゃないですか。

簡単でしょう」


「それが一番難しいんです。

日々メニューは研究されています。

味やコストだけなら、もっといい案があると思いますが、

マックは全国規模ですから、特に仕入れが問題になります。

安定供給できず、仕入価格が変動すれば大損です」


「それはそうですね」

小説家は肩を落とす。

小説家はハンバーガーを手に取る素振りをする。

「そう言えばフィレオフィッシュ。

あれ好きだったんですけどね。

包みが紙から発砲ケースに変わったんですよ。

それから美味しく感じなくなって食べなくなりました」


「そういうことはあるかもしれませんね。

日本人は木の椀とか器を手に取って、食べる文化がありますから。

手触りが食欲に影響するかもしれません。

そういうことはマックにクレームとして連絡すべきです」



小説家はテーブルに置かれたグラスを手に取って、ストローに口を付ける。

小説家は眉を寄せ、口をすぼめ、顔のパーツを中心に寄せた。


藤崎はその一瞬の表情を見逃さなかった。

藤崎は意味ありげに微笑んだ。

「名探偵にお任せあれ」

藤崎は胸に手を当てた。




1年が経った。

マックが藤崎の案が実現すると、レジに行列ができていた。

他のファストフードより確実に美味しいメニューが誕生したからだった。

それは100人いたら100人とも選ぶものだった。

「・・・セットでコーラ」

「コーラM」

レジで客が注文する。

そう、藤崎が改善提案したのはコーラだった。

コーラには誰もが思う弱点があった。

それは氷が溶けると味が薄くなることだ。

藤崎は味が変わらないコーラを提案したのだった。

単純な発想だった。

コーラを凍らせて氷を作ればいいのだ。

冷やしラーメンでスープが薄まらないよう、

出汁の氷を浮かべるのと同じ手法だ。

約1年間でコカコーラ社とマックが共同開発し、実現にこぎつけたのだった。


他のファストフードも真似るだろうって?

それなら好都合。

そうなればマックにロイヤリティが入る算段だ。


これによって、かち割りコーラなどのメニューも誕生した。

今後はアイスコーヒーにも導入されるという。


名探偵藤崎誠は小説家の一瞬の表情の変化から、この案を思いついたのだった。

がんばれ、マック!!

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― 新着の感想 ―
[一言] とても、マック愛に溢れた内容だと思います。 マックみたいな場所で小説を書くと何故か、捗りますよね。適度に音があり、適度に余計なものがないからでしょうか。 しかし、マックの店内は美味しい匂…
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