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落ちこぼれの魔術師団(パーティ)  作者: オッキーおくさん
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第1話 旅と勘当

 俺は今日、旅に出る。

 オヤジがアホなことをしたその真意を聞くために。

 だが今の俺にはオヤジはおろかオヤジの部下となったゼーヘル帝国の兵士たちに挑めるほどの力がない。

 だから暫くは強力な仲間を見つけることに専念することになるだろう。

 俺の暮らすこの国、アルワナ公国は少年少女の旅が盛んに行われている。

 力試しや全国一周、目的は様々だ。

 公国だからと言って何も国民が貴族に統治されているから、苦しい生活を強いられているわけではない。

 こんな風に各々で旅に出て国を知り、モンスターを倒して己を高めることだってする。

 ・・・そう、モンスターがいる。

 全国各地にモンスターがいて、旅人はモンスターを倒すことで自身の能力を高める。

 この国だって例外ではない。

 俺の家の周辺は比較的平和だそうな。

 だから生まれてこの方モンスターなんてものを見たことがない。

 さて、どうしたものか・・・。

 なんせ俺は・・・・・。


「っと、そろそろ出発だ。日記は後で書くとするか」


 俺は書きかけの日記を閉じ、リュックにつめた。

 俺の旅がこれから始まるんだ。

 ワケありとはいえ、やっぱり旅に出るとなるとワクワクするもんだ。

 部屋を出て、使用人たちが静かにお辞儀をする中、長い廊下をゆっくり歩いた。

 一応裕福な貴族の一端であるイーストバック家は使用人の数もそこそこ多い。

 

「ファーゼルさん、オルソンさん、アイリさん、・・・皆今日までありがとう」


 全ての使用人たちに挨拶をしながら、最後にもう一度皆にお礼を言った。

 すると使用人を代表して、初老を迎えたばかりのファーゼルが俺の元に来た。


「ルーイ様、我々もあらゆる手を施しましたが・・・、力及ばず」

「いや、ファーゼルさん達には本当にお世話になったよ。ありがとう」


 ファーゼルの言葉を遮り、俺は感謝の言葉を述べて深々と頭を下げた。


「どうか頼もしいお仲間を見つけて、無事に帰ってきて下さいませ・・・!」


 ファーゼルもまた頭を下げ、続くように他の支配人たちも頭を下げた。

 これから始まる旅は過酷になることは間違いない。

 だけど俺は死ぬ訳には行かない。

 アホなオヤジをぶん殴って連れ帰ってくる。

 絶対に生きて帰ってくる!


「ルーイ、本当に行っちゃうの?」


 俺が気を引き締めて、いざ旅に!と思っているところにオズオズと一人の女の子が隣に来た。

 使用人の中では最年少で俺と同い年。

 まるで幼馴染のように接してきたリリーナだ。

 金髪の長い髪を腰までおろした綺麗な子だ。


「ああ、リリー、今日までありがとな」

「本当に行っちゃうの?」

「え?あ、ああ、なんつーか俺がやらなきゃならんって言うか、使命っつーか・・・・って泣くな泣くな!帰ってくるから!ちゃんと帰ってくるから!!」


 泣き虫なところが昔から変わらないこいつの特徴だ。

 そしてそんな上目遣いで言われたら、せっかくの決意が揺らぐからやめてくれ!!


「う・・ぐす・・・・・ちゃんと、ちゃんと帰ってきてね?」

「わ、分かってるって。俺がいない間、頼んだぞ?」


 決まった。今の一言は女子的にはキュンとくるやつだ。

 そして当の本人はというと・・・


「うわああああああ、うぐ、うえええええええ・・・」


 ・・・・・こいつ、さっぱり人の話を聞いちゃいない。

 ため息を一つつき、背の低いリリーナの頭にポンと手を置く。

 そして慣れない手つきで撫でてやった。

 これで泣き止んでくれればいいが・・・。

 使用人たちの視線や笑顔が気になって小恥ずかしい。

 俺は気にしないフリをしてやり過ごした。



 家の門まで行くと、母さんがいた。

 どこか寂しそうな顔をして。

 それもそうだ。一人息子が旅に出るもんだから辛いよな。

 ずっと俺の後ろをついてくるリリーナの方を向いて泣き止んでも真っ赤になっている目を見た。


「母さんを頼むぜ?」

「うん!任せて!」


 よかった。リリーナも元気になったようだ。

 また振り返って今度は母さんの方を見る。


「それじゃ、行ってきます」

「ルーイ、気をつけてね」

「おう。真実を聞くついでにあのオヤジのヒゲ面、ぶん殴ってくるから!」

「うふふ、頼もしいわね。行ってらっしゃい、私の愛する息子、ルーイ」

 

 黒いマントを羽織り、門を出る。

 大きな門は鈍い音を立てながら屋敷と外を隔てた。

 

 (これからどうしようか・・・・)


 仲間を見つけるにもアテがない。

 まずはいつも行く街にでも行こう。

 見慣れた我が家の門が締まり切るのを見届けた後、踵を返した。

 すると目の前には俺と同じように自分の家の門をぼーっと見つめる少女がいた。

 その少女は門の前から少しも動かない。

 ただ黙って門を見つめていた。

 

 俺は少女に見覚えがあった。

 昔はよく遊んでいた。

 最近はあまり見かけることがなかったが、忘れてはいない。

 昔と変わらない特徴的なポニーテール。

 修道女のような清楚な白い服。

 ずっと動かないものだから俺から声をかけた。


「お前、アミナか?」


 その少女は自分の名を呼ばれたことに反応して振り返った。


「ルーイ?」

「お前、やっぱアミナか!久しぶりだなー!元気にしてたか?」

「そういうルーイも元気そうね」

「ところでお前ここで何してんだ?」

「ルーイこそ、その大きな荷物どうしたの?」

「俺はこれから旅に出るんだ。その、お前も知ってるだろ?俺の親父のこと」

「うん。あれを知らない人なんていないんじゃないかな?そう、旅なんだね。旅かー・・・。それもいいかもなー・・・」


 途中から独り言になって急に考え込み始めたアミナに俺はさっきの質問を思い出した。


「あ、お前はどうなんだよ。その荷物を見るとお前も旅じゃないのか?」

「え?私?私は・・・」


 アミナは衝撃的な一言を、さらっと言った。


「私なら家を追い出されたよ」

「えええええええええええええ!?」

 

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