二目
姫塚 椿と言う老婆が鬼のような顔で柊の家を訪れた。
簡単な挨拶を終え。向かい合う二人。
柊は何故椿がこれほど怒っているのか分からず、唯々困惑していた。
そんな様子を見た椿はため息をつき。まっすぐ見据えて言う。
「あんたは、あの姫神が祀られている祠が結界ごと壊されても何も手を打たないのかい?」
「姫神の祠って?壊されたって?」
姫神の祠があり、そこの管理責任を問われていることは何となく分かったが。
知らないよそんな祠とも言えず。
押し黙ってしまう。
「そうかい、まだ瞳を開いていないのかい。」
「瞳を開くって?」
「次期当主だと思ったんだけど、何も教えられてないのかい。」
「すみません。」
悪いことはしていないつもりだが、思わず謝罪する柊。
「教えられていないのなら仕方がないさね。」
そう言いながら、椿はこの家に来た理由を話す。
たまたま近くを通りかかったので、姫神の祠を見に行ったらそこが壊されて荒らされていたため、抗議しに来たとのこと。
家系と祀る祠が違うため、あまり出しゃばった真似は出来ないが、それでも見過ごせるレベルの話では無かったらしい。
椿は、何も知らない柊に瞳の力を持っている家系について色々と教えてくれた。老人特有の長い話だったので、以下の様に省略する。
・姫神は、もともと他の神が力を付けるためにだけに狩られ利用されるだけの非常に弱い存在である。
・瞳の力は、本家以外は三世代伝わるか伝わらないかぐらいの伝達率でしかない。
・姫塚家の瞳の力は、女系でしか伝わらない。
・姫塚家の男の瞳の能力者と一般人の子供は、瞳の力は発現しない。
・姫野家は男子でも瞳の力を伝える事が出来る。
※ただし劣化継承で半分程度しか伝えられない。
・姫塚家は、ある程度の年齢で発現する。
・姫野家は修行しなければ瞳の力は発現しない。
※発現させなかった場合には、次世代へは劣化継承となる。
このことから、姫塚家と姫野家は祀る姫神が違うのでは無いかと考えられているらしい。
椿が話し終わるころには日が暮れいた。
柊は、椿に祠の結界の事を相談しようと思ったが、それとなく断られてしまった。