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護るべきもの  作者: 狐孫(きつねのまご)
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プロローグ

 物心ついたときには、両親はいなかった。

育ててくれた2人の保護者が祖父母だと気がついたのは、小学校の高学年になってからだった。

祖父母を両親と疑わなかったのは、本当の娘のように大切に愛情を注いでくれたからだと思う。

授業参観の時にいつも疑問だった、保護者の年齢が違いすぎる件についての謎がついに解けた。

ところが今度は、両親が何故いないのか謎ができた、全くままならないものだ。

祖父母に両親の事をそれとなく聞いてみたが、いつも遠い所としか教えてもらえない。

両親は死んでいるのだろうか、それとも遠くて会いに行けないような場所なのだろうか。

祖父母に真剣に聞いてみたが結局分からなかった。

本当のところ、祖父母も知らないのかもしれない。


 私の名前は、姫野 柊 (ひめの ひいらぎ) 高校生2年で祖父母と一軒家で暮らしていた。

見た目は普通、不細工でもなく美人でもない。

町中に潜り込んだら人の波に溶け込んで見つからないぐらい特徴もない。

もう少し年齢を重ねたら、きっと美人になると心の中では期待している。

運動しやすい控えめすぎる胸とか・・・将来に期待するしかない・・・。

”暮らしていた”という過去形なのは、この前、2人は遠い所に旅立ってしまったからだ。

祖父は去年、満月の夜に誰にも気づかれず静かに息を引き取っていた。

朝、いつまでも起きてこない祖父を起こしに行ったら、冷たくなっていた。

大好きな祖父がこの世から旅立ったのは非常に悲しかったが、

最後に起こしに行ったときの、とても幸せそうな表情で息を引き取っていたのは少しうれしかった。

祖父が死んで3ヶ月後、祖母が死んだ。

祖父のことがよほどショックだったのか、もともと寿命が近かったのか分からない。

葬式の後も普段どおり、悲しむ様子すらなかった。

祖父がいつ現れても不思議ではない穏やかな日々が過ぎていった。

祖母も祖父のように最後は安らかに眠って逝ってしまった。

祖母まで亡くなったことで、とても混乱した。

幸い祖母を訪ねて来た弁護士の方が、葬儀の手配やその他諸々(もろもろ)を行ってくれた。

そのとき聞いた話によると、祖母から頼まれていたらしい。

死期を悟った祖母が、信頼できる弁護士を未成年後見人に指名して契約まで終わらせていたらしい。

そこらへんは、混乱しないように遺言書に細かく書いてあった。

祖母の知り合いで後見人となってくれた弁護士が兄弟がいることを突き止めてくれた。

温厚そうな彼が若干怒っている。

両親は行方不明で、兄弟は親戚が面倒を見ているとのこと。

本当にどうしたものか、1度会って話すことになった。

その前に姫野家の歴史を後見人の弁護氏から聞かされた。

非常にまじめな顔をして、畏まって彼が申すには。


「君の家は、代々姫神を守護する家系で君は姫野家の次期当主に決まっている。」

「何それ」


この人の話の意味が分からない。


「次期当主って誰が決めたのよ。私、次期当主になるなんて聞いてない。」


睨み付けるが、やわらかい笑顔で流される。


「決めたのは君の祖母で前の当主ですよ。

 なぜ教えられていないかは分かりませんが、たぶん安全のためでは?」

「・・・。」


とうとうこの弁護士頭が可笑しくなりやがりましたか。


「疑っているようですが、事実です。」


ドッキリやからかう以外で、嘘を言う理由が見当たらないので、ため息をつく。


「あと、姫野家は、瞳と呼ばれる魔眼が使える人が多いのです。」


さらにファンタジーな、要素がつかされるとは思っても居なかった。

瞳と言う魔眼持ちの家系。

絶対私をからかっている。

常識的に考えても納得できるわけがない。


「やっぱり、信じてもらえませんか。」

「ええ、突飛過ぎるわ。」

「では、これを見てください。」


差し出された祖母の手紙。

『柊ちゃん、やっほー。どうやら婆ちゃん死んじゃったみたいだね。

 今の今まで姫野家が瞳の家系ということは秘密にしてた。

 どう?びっくりした? まあ、突飛過ぎて信じられないかも知れないわね。

 でも、知らなければ瞳の力を使うこともないし、力を発現させなければ、

 他人と少し違っても成長前の変わった子供だからと、周囲の目をくらませることも可能だから。

 手紙を読んでるころには、私も祖父も、もうこの世に居ないからさ。

 あなたは、姫野家を継がなくてはならない。

 これはきっと運命で逃げられないわ。

 あなたの両親が生きていても、絶対に姫野家を継がせない。。

 あの2人は、瞳の力もなくしているでしょう。

 瞳の説明は、後見人の彼に頼んでおいたから。

 彼の言うことを信じるか信じないかは、自分で考えて判断しなさい。

 あなたは、次期当主になる器があると思うたぶんきっと。

 瞳の力の使い方を全く教えずに先立つのはほんの少し不安だけど、まあ何とかなるよ。

        あなたを愛する婆ちゃんより。』


祖母の軽い感じの手紙に、目が熱くなる。

どうやら、瞳の家系というのは本当らしい。

この後見人の話も今のところ程度本当のことだろう。

両親が祖父母だったという以外は、普通の家だったと記憶している。

それが何で、こんなことに。

私は、瞳の力の使い方も知らない。

それ以上に、祖父母以外の姫野家の人間とあったことが無い。

そんな私がどうして次期当主なんかに、結局その日は上の空でそれ以上後見人の話を理解することは出来なかった。



 やってみてから、走ってみてから。

後悔しようと思います。

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