姪と Private
攻撃は最大の防御だと良く言いますが、俺の攻撃は防御どころか相手を回復させちゃいます。
「んじゃ、もう一本いくぞー。避けるなよー」
「避けないっすよ。避けたら意味ないじゃないっすか」
後ろ向きにそう言ってきたレイ君に、俺は両手で持っている武器の標準を合わせる。腕をピンと伸ばした状態で軸線と視線とが一致しているのを確認。そして躊躇いなく引き金を引きました。
プシュッ……ビチャッ。
「回復ありっす」
「それが仕事だからな。また必要になったら言ってくれ。それまで寝てる」
「寝ちゃだめっすよ!? まだ戦闘中っすよ!?」
きっちりツッコミを入れてきてくれたレイ君に心の中で感謝の言葉を述べながら、俺は安全圏に移動します。そして今撃った弾が入っていた瓶を武器から取り外しました。
「その武器、いったいどこで売ってたんですか?」
「売ってたというよりも、無理言って作ってもらった。この瓶の制作者にな」
「よく作ってくれましたね。そんな風にポーションを飛ばして回復している人、見た事がありませんよ」
ユリアちゃんの質問に答えながら新しい瓶を鞄から取り出して、その特殊武器へと装着します。
「プチポボウというらしい」
「そのまんまですね」
元はクロスボウだったものを魔改造したため、見た目はほとんどクロスボウです。但し、矢の代わりにプチポの入った瓶を装着出来る様になっていたり、水鉄砲の玩具の様に手動で圧力を加える事でプチポ液を射出出来る様になっていたりします。
別に瓶ごとレイ君にぶち当てても良いんですけど、それだとノックバックが発生しちゃったり、一定時間消えてくれない割れた瓶の破片をレイ君が踏んでしまったりする危険性が発生しちゃうんですよ。なんかこのゲーム、微妙な所でリアルです。
というか、そもそもプチポって普通は戦闘中には使わない類のアイテムなんですよね。ドリンクですし。飲むと回復出来るアイテムです。でも実は身体に振りかけても回復出来ちゃいます。
高レベルの生産者が作った高級瓶ならば、割れた瞬間に霧散してくれるらしいです。だけど、俺が使ってるのは低レベルの生産者がレベル上げのために大量生産した安物ものなので、そういう便利機能は当然の事ながらついていません。
そこを解決したのが、このプチポボウという特殊武器です。これあると本当に便利です。命中率は使用者の腕次第な所がありますけど、遠くからプチポ液だけを対象にかけられるのです。これ、きっと量産したら流行りますね!
さてさて、レベルアップした御陰でスキルレベルが異常上昇し、とんでもない攻撃力を手に入れた俺ですが――ササメさんが作ってくれた短剣の性能も関係していると思うけどね――思いっきり前衛から外されて、後方から回復支援するポジションに落ち着いてしまいました。
なんでこんな事になっているかと言いますと……回想すたぁと!
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「カズミがおかしいと思う人、手あげるっす」
死に戻りしてすぐに、レイ君がそんな事を言ってきました。そしたら全員が手をあげちゃいました。マリリンとセンねぇちゃんもです。
おーい、ちみ達も手をあげてどうするんですか~。
「やはりカズミ氏も御自身でハッキリと自覚しているんですね」
いや、まぁ俺もしっかり手をあげてるんだけどさ。流石にこれはもう隠せそうにない気がしまして。これがほんとのお手上げです。
「詳しくはマリリンかセンねぇちゃんに聞いてくれ」
えい、槍を投げちゃえ。投げやり!
「カズねぇ、吟遊詩人。以上!」
あ、投げ返された。
「全然説明になってないっすよ!?」
「……いえ、納得しました。薄々そんな気はしていたのですが、やはりそうなのですね」
おおっと、流石シン君。レイ君とは持っている情報量の桁が違うみたいですね。過去のメイドシリーズをそれなりにやりこんでいるみたいですし、マリリンの一言で理解しちゃったみたいです。
「先程頂いたプチポの性能も、カズミ氏が吟遊詩人という事であれば理解出来ます。カズミ氏、レベルをあげましたね?」
返事はしないで、ここは思わせぶりな笑みだけ浮かべちゃいます。一見、肯定している様にも見えるけど、その実、俺はなーんにも自分で言わない事で、全てその話はシン君の推測によるものにしてしまいます。
バレてはいるけど100%にはさせない、ちょっと卑怯な大人の手法です。別に裁判沙汰になる訳じゃないから、そんな事しなくても良いんだけどね。でも最後の砦だけは作っちゃう。じゃないと、本当にヤバイ情報までバレちゃいそうで怖いんだもん。
「昨日、ユダちゃんのお店にプチポ100万個納品するっていう隠し条件達成して、レベルあがったんだって」
「ひゃ、100万個!?」
……って。ばらして欲しくない情報が早速マリリンにばらされちゃったよ! レイ君とユリアちゃんがめっちゃ驚いてます。
「やはりそれがレベルアップの隠し条件でしたか。ここ最近のカズミ氏からの納品数を僕もチェックしていましたので、もしやとは思っていたのですが……。まさか本当にそうだとは思いませんでした」
でもシン君の顔はクールなままでした。ちょっと格好良いです。惚れ直しそうですよ。理知的な童顔が俺の心をくすぐっちゃう。
「なんか良く分かんないっすけど、シンがそれだけ納得してるなら、カズミの異常さはちゃんと説明出来るものなんっすね。攻撃と防御がおっそろしくアンバランスな気がしないでもないっすけど、強さは本物なんすよね?」
「見ての通りだ、としか言えんな。俺もついさっき知ったばかりだしな」
「カズミちゃんが引き籠もりだったのは私が保証します」
いや、センねぇちゃん。そんな事、胸をはって保証しないで下さいよ。悲しくなるじゃないですか。
「シン、俺も色々カズミには聞きたい事はあるっすけど、この話は帰った後でも別にいいっすよね?」
「PTを組む以上、カズミ氏の実力は出来る限り今の内に知っておくべきだと僕は思います」
「ユリちゃんはどう思うっす?」
「私ですか? えっと……元々カズミさんは戦力外として考えてましたし」え、そうなの?「当初の予定通りアイテムサポートに徹してもらうのが良いんじゃないでしょうか? 前衛に組み込んでもカズミさんとうまく連携出来るとも思いませんし、その巫山戯た攻撃力頼みで戦っていくにはリスクが高すぎると思います」
ユリアちゃんに巫山戯た攻撃力って言われた!? 何気に酷い評価をもらいましたです、はい。まぁ間違ってはいないけどねぇ。
「それにカズミさん、今は衰弱中ですから、前に出すのはもっとリスクが高くなると思います」
「それはそうなのですが……」
「いいじゃん、カズねぇは切り札って事で温存しとけば。カズねぇが引き籠もりで戦闘に慣れてないのは本当だし、いくら強くても爆弾抱えたままじゃねー」
「そうですね。全ての攻撃を躱せる訳でもありませんし、法術が飛んできたらその時点でほぼアウトです。それならば離れた場所からプチポを投げてもらった方がここでは役に立つと思います」
「俺もあんまり前に出るのはな……却って迷惑をかけると思う」
マリリンとセンねぇちゃんとはここ最近一緒に狩りをしているので、だいたい俺の実力は知られています。勿論、手抜きの強さの方で、ですけどね。
レベル1のプレイヤーが戦う様な普通の雑魚敵さんと、オートバトルアシスト機能をONにした状態で悪戦苦闘を繰り広げてみたりして遊んでました。他にも、マリリン達の狩りに同行してプチポヒーラーとして二人をサポートして遊びましたね。そんな風に姪との一時を楽しんでまっす。
誤って死んじゃった時は御愛嬌です。レベル1なのでデスペナも全然気にしなくて良いし、結構気軽です。衰弱レベルが上がりすぎちゃった時は、ユダちゃんのお店にプチポ納品したり荷物配達クエストをしています。つまりここ最近は引き籠もりから見事に脱出しちゃってました。わーい。
別に全力全開で戦っても良いんですけど、どうも言いそびれちゃいまして。そのままずるずるとこんな事になっちゃってます。これを機に本気モード見せちゃおうかな~。でもなんか今よりももっと気まずくなりそうで怖いんですよね~。
それに今のバランスがとっても心地良いんです。色々と文句を言いながらも何かと構ってくれる姪がね、とっても可愛いんですよ。どんどん骨抜きにされちゃってます。俺、こんなに姪煩悩だったのかな~。初めて知りました。
「という訳っす。シン、謎解きはディナーの後でするっす」
「分かりました。まずはこのダンジョンの攻略を楽しみましょうか」
あ、シン君スルーした。気が付いてないっぽいです。それとも普段からレイ君はその言葉を連発でもしてたのかな?
「そういえばセンさん。ここってプライベードダンジョン扱いになるんでしょうか?」
「だと思います。これまで攻略した範囲では他のプレイヤーに出会った事はありません」
「となると、攻略すると消えてしまうタイプのエリアかもしれませんね。念のため、宝箱の取り零しがないように注意して進みましょうか。攻略済のエリアだけで構いませんので、地図アイテムをコピーさせて下さい」
「それなのですが、どうやらこのダンジョンは地図アイテム無効の特殊エリアらしく、地図アイテムは使った瞬間に燃えてしまいロストしてしまいます」
「ロストまでするんですか?」
「はい。なので、このダンジョンの攻略難易度はかなり高いとみて間違いないと思います」
「そういえば先程遭遇した蝙蝠さんは、街からかなり離れた場所にある洞窟にいるタイプでしたね。なるほど、これはしっかりと気を引き締めていかないといけないみたいですね」
俺も気を引き締めていかないといけませんね。だってどんな敵さんからも俺ちゃんは一撃で殺されますし! いくらべらぼうな攻撃力を持っていても、サドンデスルールじゃほとんど意味がありませんよね。
紙防御ならぬ、無防御です。流石に装備は新調してますけどね。でも所詮はレベル1装備ですから、レベル差が軽く30越えてればHPの低さも合わさって即死確定でっす。
「カズねぇ、何してるの? いっくよー」
「カズミちゃん、お姉ちゃんとお手々繋ぎましょうか? そしたらはぐれなくなりますよぉ……フフフ」
と言って、センねぇちゃんは俺の右腕を胸に抱いちゃいました。あれあれ、センねぇちゃんってバリバリの前衛ですよね? 剣士さんですよね? 俺にひっついちゃったらPT的に色々問題ありません?
それは兎も角、予想してたよりもアッサリと俺の職業問題が受け入れられてほっと致しました。やっぱ持つべきはフレンドですね。
「ところで、吟遊詩人ってどんな職なんすか?」
あ、まだ理解していない人がいた。分からないまま話を進めてたんですか!
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回想、じ・えんどっす。
「カズミ、もう一本欲しいっす」
これでいったい何度目の戦闘となるのか。襲い掛かってきた敵集団を無事に片付け終わり、一段落した所でレイ君が再びプチポを求めてくる。
「はいはい。今度も避けるなよー」
「それは流石に避けるっすよ!? 口の中に銃身を向けられたら普通誰でも避けようとするっすよ!」
「飲み物だから問題ないって。ほーら、あーん」
「そんなあーんイヤっすーー!!」
ダンジョンは地下3階に入り、敵の強さも数も増える一方です。ただそれでも、俺を除くこのPTメンバーの実力だと、そこまで苦戦する様な状況ではないみたいでした。
盾役のレイ君が集めてヘイト固定した敵を、左翼からシン君が堅実に攻め、右翼からセンねぇちゃんとマリリンが猛攻する。ユリアちゃんは補助法術をかけて全員の攻撃力/防御力などを底上げしたり、状態異常などの回復を行っています。そしてHP回復は、俺のプチポちゃん達のお仕事となっていました。
ユダちゃんが抜けた事で回復の手が足りなかったみたいですからね。俺が量産するプチポちゃんの被検体となってくれていたマリリン達が、きっとその効果を実感してこのPTに推挙してくれたのだと思います。
でも俺ちゃんはこう思い込んじゃいます。きっとマリリンとセンねぇちゃんは、俺ともっとイチャイチャしたいと思ってたんですよ。そうに違いありません。だって俺達(こっちじゃ三姉妹設定だから、私達?)、リアルではとっても仲良しですからね~。
姪にラブリーな俺ちゃんは、毎日甲斐甲斐しくお世話をしていまっす。だから二人も俺にラブリはじめてる筈!
ユキ「抜き足、差し足、忍び足。なのですの……」
リン「じー」
チー「じー」
ユキ「……ガードが堅くて今日も断念なのです。しくしく」




