姪 to friend
夕飯の時間になり、カレーを食べる姪二人。子供はカレーの子、育ち盛りなのを思って御飯を5合炊いていたのに余ってしまった。明日の朝食でまたカレーを食べるにはちょっと足りない。配分、難しい。
それよりも二人の視線が痛い。機嫌が悪そうだ。
「どうしたんだ?」
「べっつにー」
朝は普通だった。なのに昼頃から急にこんな感じ。何か俺が悪い事でもしたのだろうか?
勿論、そんな事は別にない。ただ、プレイ日数からして、そろそろだろうと俺は思っていた。二人がその事に少なからず後ろめたさを感じ始めるのは。
「……おじさん。今日、PT組む?」
「リンねぇ……それじゃ、ダメ」
ちょうど口にカレーを運んでいたので返答に遅れた。その間をチーちゃんが埋めてしまい、ちょっと言葉に困る。
「私がPTを組んであげるって言ってんだから、感謝しなさいよね!」
おーい、目線を上に修正してどうする。チーちゃんも何で納得してるんですかー? というか、いきなりのツンデレキャラ!?
「どっか連れてってくれるのか?」
「とっても良い所に……フフフ。連れてって、あげる……」
どっちの方角に染まりつつあるのかだいたい分かってきたけど、チーちゃん本当に理解して言ってますか? 最近のアニメは思わせぶりな台詞ばっかりで子供は理解しちゃダメな事が多いので困ります。
カレーまみれの口元をティッシュでウリウリしてお仕置きしておきます。まだまだチーちゃんはお子様です。今日の晩御飯もお子様です。星の王子様王女様ってロングセラー商品なんですね。
「時間なら山ほどあるから、どっか連れてってくれると助かるな。一人じゃ怖くて遠出できんし」
「だよねー。おじさんって、本当に出不精だしね!」
「生粋、です」
いや、生粋って。泣くよ? でもね、まぁそりゃぁ、あんな状況だからね。いくら戦ってもレベルが上がらないんじゃ、遠出する気なんて起こりません。
採集系とかのスキルも持ってないから、敵を倒す以外でアイテム取得する手段が基本的にないし。そこら辺に生えてる草は勿論収穫出来るけど、鑑定系のスキルもないから何の草だか分からないし。
雑草をお店に持って行って「買い取り可能か?」なんて言う勇気も当然ありません。
「というかね……ちょっとおじさんの事、放置しすぎたかなーって最近思うようになってきてねー」
最近というか、お昼頃ですね。リンちゃんってば、態度や顔で丸わかりだから。その辺、チーちゃんはポーカーフェイス気取ってるので少しだけ分かりにくいです。チーちゃん、現実世界ではどんなキャラを演じてるつもりなんだろ……。
「私達もあっちの世界にかなり慣れてきたし、そろそろ本格的に三姉妹活動を始めてもいいかなって。毎日毎日、戦闘ばかりじゃつまんないし」
「私は……前衛職なので、戦闘ばかりでも……楽しい、ですけど……」
「魔法使いの私にはちょっとつまんないの! チーちゃん強すぎて全然こっちに敵が向かないから、きったはったの緊張感が私にはウェルカムしてくれないんだもん!」
「頑張ってるのに……リンねぇ、我が儘」
「いっそ、私も前に出て戦おうかなー。……あっ! 超接近戦で闘う魔法使いって、意外と格好良くない?」
それ、魔法使いって言いません。むしろそんな状況下で、どうやって集中して淀みなく詠唱するんですか?
「無詠唱とか詠唱省略とかが出来るんなら、武道家っぽく闘いながらそれも可能だとは思うが……」
「そこまでするとスキル枠がまだ全然足りないんだよねー。それに火力重視のスキル構成してるのに、中途半端に前衛職スキルを組み込んじゃうと微妙職化しちゃうし。あー、どこかにサッと近づいてグァっと高威力魔法をぶっ放せるようになるスキルが転がってないかなー」
「リンねぇ、欲張り……」
組み合わせ次第では出来ない事もないだろうが、あんまりメリットはないよな。やっぱ魔法使いは安全圏からの超高火力攻撃が基本だろう。三人よれば災害、って感じの範囲と威力で。
それにしても、予想通り二人は俺の事を心配してくれているようだ。当初の予定では俺がログインした初日から一緒に遊ぶ予定だったと思うが、職選びに失敗した俺を結果的に突き放す形になってしまった。二人が俺をメイドオンラインの世界に誘ったにも関わらず。
最初の頃はゲームの世界が楽しくてほとんど気にならなかったのだが、一週間も経てばその熱もだんだん冷めてくる。そんな時、俺も毎日ゲームにログインしているという状況を思い出して、ちょっと罪悪感を感じ始めてしまう。
決して先に進むことの出来ない、永遠のレベル1キャラ。間接的ながら、その原因を作り出してしまった二人。いくら俺が大人だからといっても、二人は気にせずにはいられないだろう。
「んじゃ、どこで待ち合わせする?」
その気遣いを、俺は無碍にするつもりはない。それに、可愛い姪が折角誘ってくれてるのだ。喜ぶ以外にないだろう?
「おじさん、なんでニヤニヤしてるの? そんなに私達とデートがしたかったの?」
「当たり前だ。可愛い女の子と一緒に遊べるんだ。これが喜ばずにいられるか?」
「それ、嬉々として姪に言う台詞じゃないと思うけど……」
「近親……相姦……」
デコピン一発、っと言いたいところだけど、暴力はいけません。だからチーちゃんの明日の10時のおやつは抜きに致しました。そろそろ理解してくれると嬉しいんだけどなぁ。子供を叱るのって、精神的に凄くダメージ大きいんですよ。
♪♪♪♪♪♪♪♪姪とオンライン♪♪♪♪♪♪♪♪
「あの、どちら様でしょうか?」
「その言葉、そっくり嬢ちゃん達に返すとしようか。嬢ちゃん達は、センねぇちゃんとマリリンの友達でいいんだよな?」
予定の時間、予定された場所に向かうと先客がいた。どれも可愛い子ばかり。うち二人は男の子だったけど、子供だから許す!
「その分だと、二人からは何も聞いていないみたいだな。俺の名前はカズミだ。今日はお荷物として同行させて貰う予定なので、宜しく頼む」
俺も何も聞いていなかったけどね。でもここにいるんなら、たぶん間違いないだろう。センねぇちゃんとマリリンの、ちょっとしたハプニングイベントというやつだろうな。
「あ……これはご丁寧に、ありがとうございます。私はユリアと言います」
「あ、ども。レイっす」
「シンです」
「ユダでーす。お姉さんも今日の冒険に行くんですね! 私、ちょっと嬉しいです!」
うむ……見事になんか妙な関連性を持った名前が多いな。君達は気がついているのかな?
それよりも、ユダちゃんは危険印確定っと。名前だけじゃなく、色々な意味で君の視線は危険だよ? なんで出会って数秒でそんなに熱い視線を俺に送ってくるんですか。先に釘を刺しておこう。
「なお、口調からも分かる通り、俺は男だ。そういうつもりで接するように」
「「「はい?」」」
「はい!」
三人は予想通りの反応。一人は明らかに間違った反応していますね……。あ、目つきがもっとやばくなってる。不可抗力だったか。
「やっほー。みんなもう揃ってるんだねー。自己紹介は終わってるー?」
「遅くなりました。申し訳ありません」
暫く雑談してると、集合時間から結構遅れて二人が現れた。時間がルーズな所は母親譲りか。そのうち直させないとな。俺は時間にルーズな奴は嫌いだ。
「マリーベル様! セントアンヌ様! カズミお姉様をどうか私にください!」
「だから俺は男だ。だからお姉様と呼ぶのはやめてくれ」
いや、問題はそんな所にない?
すっかり癖になってしまった何度目かのチョップをユダちゃんの頭に叩き込みながら俺は言う。ちなみに、斜め45度。決まれば壊れたテレビが直る万国共通の超必殺技。といっても最新型のテレビには物理的な形がない訳だけど。進化しすぎた世界は指輪ぐらいの物でも簡単に3次元ホログラフィの立体映像を映し出してくれます。というか、もうそろそろ脳に直接映像をぶち込んできそうだな、テレビ業界も。VR技術があるぐらいだし。
「こんな可愛い男性がいる訳がありません! みんなもそう思うでしょ?」
「えーと……」
可愛い男の子筆頭だといえる容姿の持ち主であるシン君が複雑な顔をしていた。
「はーい、ユダっちには後でカズねぇを貸してあげるから」貸すなよ「今は落ち着いてねー。ユリアン、いつものようにPTリーダーお願いね」
愛称が色々飛んでる。覚えられるかな?
「はい。ですが……カズミさんはどう致しましょうか?」
「同伴ですので、ソロPTで構いません。護衛はマリリンが致します」
ユリアちゃんが俺をPTに誘い、俺がPTに加入。その間にセンねぇちゃんが他のメンバーをPTに入れたらしく、少ししたらPT同士がくっついて複合PT化する。それを確認後、ユリアちゃんが俺にPTリーダーを譲与してPT離脱。センねぇちゃんのPTに勧誘され、最後にリーダーを譲り受けてユリアちゃんが複合PTのリーダーに着任。
現実世界のオンラインゲームだと、コントローラー操作が必要だったりプレイヤー認識が必要だったりとかなり手間だったが、このVR世界だと脳の意識に直接アクセスするので一つ一つの動作にほとんど時間が掛からない。あっという間に6人PT+俺ぼっちPTが完成した。極めれば3秒ぐらいで作れそうだな。時代の進化は素晴らしい。
「「「「宜しくお願いしまーす」」」」
「よろしくー」「宜しくお願いしますね」「宜しく頼む」
4人は揃っての挨拶。対して俺達は別々。ちょっと羨ましい。
「なぁ……あの4人はリアルでも友達なのか?」
こっそりマリリンに確認する。チーちゃんは……もしかしたら気がついてるかもな。
「うん、そうみたいだよ。前のゲームでも一緒だったみたいだから、結構凄腕なんだよー」
「熟練プレイヤーか……納得」
「?」
見た目に騙されてはいけません。4人とも凄く子供っぽく見えるけど、実年齢は分かったものじゃないな。南斗六聖拳のうち4つも宿星が揃ってれば、分かる人にはすぐに分かる。
少し用心しておくか。
「それじゃ、しゅっぱーつ。しんこーだよー?」
なんで疑問形……。アレンジ多いよ、マリリン。
♪御意見、御感想をお待ちしています♪
リン「リンちゃんと」
チー「チーちゃんの」
「「あとがき劇場スーパー!!」」
リン「わー、わー、ぱちぱちぱちぱち」
チー「ドンドン、ぱふぱふ」
リン「第18話、はっじまっるよーん♪」
チー「はじまりはじまりなのですー」
リン「やっと出番が来たよー。待ちくたびれたー」
チー「今日から暫く、私達の話が続きますね♪」
リン「え、本当? やった♪ 暴れまくるぞー」
チー「えと……程々でお願いします。リンねぇが暴れると、また……」
リン「あー、昨日は御免ね。ちょっと火加減間違えて、森燃やしちゃった」
チー「辺り一面、焦土です……。消すの大変でしたです……」
リン「いやー、あれはちょっとやばかったねーー」
チー「ちょっとどころじゃないです……危うく焼き死に戻りする所でした」
リン「でも一緒に蟻さん達も燃えたから、結果オーライ」
チー「アイテム収集で行ったのに、全然回収出来なかったですけど……」
リン「そいえば、なんであの蟻さんのアイテム欲しかったの?」
チー「あの蟻さんは、レアな修理素材を落とすみたいなんです」
リン「へー。それって街の北にいるグランドアントが落とすのよりも上のやつ?」
チー「です。まだまだ需要は低いですけど、高額取引間違いなしの一品です♪」
リン「金策?」
チー「いえ。純粋に私が使っている武器の修理に使おうかと思ってます」
リン「わ。チーちゃんそんな高額取引アイテムを修理に使っちゃうんだ」
チー「え? というか、修理に使うから高額アイテムなんですけど?」
リン「ん? どゆこと?」
チー「あ……もしかしてリンねぇ、武器のグレードアップしてませんね」
リン「うん。修理するの面倒だから、いつも買い直してるよ」
チー「買い直してるって……その杖、結構高くありませんでしたっけ?」
リン「うん。結構値打ちものだよー。と言っても、徐々に安くなってるけどね」
チー「しかもプレイヤーメイド品……。リンねぇ、お金使いが荒いです……」
リン「そう? 私はチーちゃんが買い物してる時の方が荒いと思うけどなー」
チー「私は必要だから買ってるんです」
リン「あのたくさんのお菓子も?」
チー「う……必需品です……」
リン「新しいお菓子見つけたら、ほとんど即決で買ってるよねー。高くても」
チー「ひ、必要経費です」
リン「チーちゃん、今手持ちどれぐらいあるー? 勿論、お菓子の方ね」
チー「えと……ごにょごにょごにょ」
リン「それ、ほとんど所持限界近くまでアイテム覧埋まってるじゃん」
チー「街に帰り着く頃には……なくなってるから、大丈夫です……」
リン「太るよー」
チー「う……なんでゲームの世界なのに、体重変わっちゃうのでしょうか……」
リン「あ、それでいつもチーちゃん無駄に一杯動き回ってるんだ」
チー「き、気のせいです……」
リン「ねぇ、チーちゃんチーちゃん」
チー「……なんか嫌な予感がします。何でしょうか、リンねぇ」
リン「今日はチーちゃんに格好良く締めて貰いたいなー」
チー「え……? 格好良く、締めるですか?」
リン「うん。私からの、お・ね・が・い♪」
チー「うー……分かりました。出来るか分かりませんけど、頑張ってみます」
リン「わー、楽しみだなー。わくわく、わくわく」
チー「こほん。えー、お控えなすって、皆様方。本日は……」
リン「なんで堅気風!? というか、却下却下!」
チー「えー。ちょっと格好良くありません?」
リン「格好良くないない。むしろ可愛いぐらいだよ」
チー「そうなのですか……精一杯頑張ったのに……」
リン「頑張る方向間違っちゃったね、チーちゃん」
チー「うう……」
リン「仕方ない。ここは私が一発、格好良い締めを見せるとしましょうか」
チー「はい。宜しくお願いします」
リン「おう! じゃあな! フッ……また来いよ!」
チー「……」
リン「どう? 格好良かった?」
チー「今日はこれでお終いお終いです。では、またあしたー」
リン「なんかさらっと無視された!? とりあえず、みんなバイバーイ」
♪(こっちも)御意見、御感想をお待ちしています♪




