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姪とオンライン!  作者: 漆之黒褐
始節 『MADE ONLINE』?『MAID ONLINE』
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姪と Life

それでは張り切って第一話、いってみましょう♪


あとがき劇場も読んでね~♪

「うう……(さぶ)い」

 明朝の四時。何の因果か、俺は徹夜で発売前日の行列に並んでいた。人生初の体験。そういう事は生涯経験する事はないだろうと思っていた。

 季節はまだ肌寒い春。学生達は春休みの到来に浮かれ、苦渋を舐めた期末試験の事など綺麗さっぱり忘れている頃。俺にはもうそんな時期は過ぎ去っている。

 時々思い出したかのように、突然に暑くなったり寒くなったりを繰り返す日々。運悪く今日は寒い方の番だった。

 周りを見れば、明らかに重装備の強者達が所狭しと並んでいる。携帯コンロを持ち込み湯を沸かして珈琲を飲んでいる者、寝袋にくるまっている者、一番前の方ではテントまで見えた。いったい何日並んでいるのだろうと思う。

 その彼等の目は一様に期待に満ちている。そんなにもこれから手にする物が欲しかったのだろう。俺には分からない気持ちだが。

「何でもいいから携帯ゲーム機でも持ってくれば良かったか。あー、暇だ」

 携帯電話がゲーム機ばりのスペックを誇っていたのは遙か前。もはや万能機と化していた電話というコンテンツはいつのまにか駆逐され、今では常時ネット接続型の超小型端末さえ持っていれば、眼鏡だろうがヘッドホンだろうが電話機に早変わりする。だけでなく、意識ごとネット世界にダイブすら出来る時代になっているので、俺の言う携帯ゲーム機というのはもはや死語だった。

 だが古いタイプの人間である俺には、それで十分だった。未だ携帯電話を持ち歩いている部類の前世代組。今の十代の若者が見れば、大いに笑ってネタにする事だろう。

 しかし。

「……まったく。何で俺はこんな事をしてるんだろうなぁ」

 その答えは、数日前に遡った。



♪♪♪♪♪♪♪♪姪とオンライン♪♪♪♪♪♪♪♪



「やっほー。おじさん生きてるー?」

「こんにちはー」

「あぁ?」

 突然に家の鍵をガチャッと開けて謎の声とともに入ってきた不法侵入者。

 おいおい、いったいどこの盗人(ぬすっと)だよと気怠げに応対に出た俺の瞳に映ったのは、既にソファーで(くつろ)ぎ始めていた見知っている少女二人だった。

「なんだ、御前等か」

「なんだはないよー。可愛い可愛い(めい)が訪ねてきたんだから、もっと喜んでよー」

「はいはい。それは嬉しゅうござんした」

「お世話に……なります」

 買い置きのポテチまで開け始めた姪の姿に、俺は呆れを通り越していきなり諦めの境地。なぜか、なぜか。その傍らには随分とでかい旅行鞄が二つ並んでいた。

「ん? お世話にって?」

「はい、これ。読んで」

「あ、ああ……」

 冷蔵庫まで物色し始めた姪の後ろ姿を横目に、俺は手紙の封を開ける。というか封が開けられてるんだが、何故だろうな? あはは、と申し訳なさそうに笑っているもう一人の姪を見るが、答えは返ってこなかった。

「適当に座って寛いでていいぞ。無礼講だ」

「使い所が間違ってる気がしますけど……お言葉に甘えて、失礼します」

 まだ立っていた下の姪がソファーにその小さくて可愛い腰を降ろしたのを見てから、俺は手紙の中身を読む。というか、スカートが(しわ)にならないように手で押さえてゆっくり座る女の子の姿って、なんだかいいね。どかっと座ったもう一人の女の子ちゃん(?)とは段違いに可愛く見えちゃうよ。

 そんなまるで親のような?微笑ましい感想は今は置いておいて。手紙は、娘にあてて書かれた母親からのメッセージだった。


『やっほー。ちょっと旅に出てくるから、暫く探さないでねー』


「いやっ!? これちょっと一大事だからね!?」

 あろうことか、娘を放りだしていきなり家出するとは。我が姉ながら、酷すぎるだろ!

「あ、裏面もあるから」

「ん? ああ……」

 なんだ。ちょっとしたお茶目だったのか。

 それにしても、今時両面を使う人はレアな気がするんだがな。紙なんか捨てるほどあるし。裏面なんて透けて読みにくかったり手や紙が汚れたりしてデメリットも多いのに。

 たった一行で終わっていた手紙の端っこの方に宛先として姪の名前が書かれているのを確認した後、手紙を裏返す。

 視界の端では姪が冷蔵庫から取り出した2リットル入りの麦茶のペットボトルを空けてコップに注いでいた。それ、面倒だから俺が直接口を付けて飲んでたペットボトルなんだけどなぁ。まぁ黙ってれば問題ないか、血縁者だし。男の一人暮らしをなめちゃいけないよ?


『という訳で、よろしく♪』


 可愛く音符で締めくくっても全然嬉しくないから!? 裏面の端っこには、やはり申し訳程度の小さな字で宛先に俺の名前が書かれていた。

「お腹空いたから、おじさん何か作ってよ」

「……俺のこの感情はいったいどこにぶつければ……」

「少しなら、私にぶつけてくれても……」

 いや、そういう問題じゃないからね?

 というか、姪をいたぶって喜ぶような性癖を俺は持ち合わせていません。あ、でもあっちの姪はちょっとグリグリはしておきたいかも。寛ぎすぎです。

「はぁ……とりあえず、インスタントラーメンでいいか?」

「御飯がいい」

「パンがいいです」

 和食と洋食のダブルパンチかよ。それにパンは流石に作るには手間が掛かりすぎる。……って、パンって洋食だっけ? 

「んじゃ、適当に近くのスーパーへ買い出しに行くか」

 という最初の回想は、まだどうでもいい。

 本題は、それから二日が経った日の事だ。

 ようやく俺も落ち着いてきて、これからの事を考え始めた時にポロッと口に出してしまったあの一言。

「何か必要な物はあるかー? いや、この際欲しいものでもいいか。あるなら買ってきてやるぞー」

 生活に必要そうな物は昨日買い揃えていた。だがそれはあくまでも最低限の生活雑貨。

 年頃の女の子が二人も揃っているのに、欲しい物は何もないなんて事は絶対にない。特に上の姪は色々手がかかりそうだよな、おい。持ってきた旅行鞄の中身をごちゃっと広げて、いつの間にか部屋が散らかり始めている。ちゃんと二人のために一部屋空けてやったというのに、出来ればそっちで広げて欲しかったなー。昨日着ていた服まで居間に脱ぎ捨てる始末。

 姪達は、転校はしても宿題は都合良く免除して貰えなかったらしく、今は仲良くその処理に励んでいた。勿論、居間で。まぁ流石に二人の部屋にはまだ勉強机とか用意してないので――というか用意しないといけないのかな? かなり痛い出費のような――二人が宿題をしようとしたら必然的に唯一机がある居間でする事になる。俺の部屋にはそんなものないし。

 学校が変われど宿題は変わらず。意外とせっせと頑張る姪二人の姿を微笑ましく思いつつ聞いた所によると、学校ごとの学業レベル差を出来るだけ均一に保つために、今では長期休暇中の宿題は半分以上同一の内容にされているらしかった。残りの半分は各学校が自由に量/質ともに決められるらしい。意外にも、この取り決めは転校時には随分と役立っているとのこと。主に、先生側の手間暇の部分だとは思うけど。

「何でもいいの?」

「流石に母親をくれと言われても困るが、資金面ではあまり心配する必要はないかな?」

「いや、真顔でそんな事さらっと言われても。というか、おじさんって結構お金持ちだったんだ」

「別にそういう訳じゃないんだが……お金を使うような趣味がないから、貯まってく一方でね」

 男の一人暮らし。しかも姪が出来るぐらい生きていれば、それなりに融通出来るお金もあるというもの。少なくとも10Mぐらいはある。おっと、現実世界で使う言葉じゃなかったな。ちなみに単位はドルじゃないよ?

「えっと……実は、このゴタゴタでもうほとんど買うのを諦めてた物があるんだけど……」

「ゴタゴタがなければ買ってたって事は、お金はあるんだな。ま、これから何かと入り用になるかもしれんし、親の小遣いも期待出来ないんだから、それぐらいなら俺が出してやるよ」

 さりげなく小遣いあげないよ宣言をしてみたり。

「え!? 本当に?」

 驚く上の姪。

「男に二言は……いや、俺はそういうキャラじゃないな」

「いえ、おじさんはそういうキャラです!」

 ガシッといきなり俺の手を掴んできた下の姪。

 あれ? そういう君こそ、キャラ違うんじゃないですか?

「リンねぇ、あれ! あれ!」

「はいはい。もう……チーちゃんは、そこだけは私には負けないよねぇ」

 ガサゴソとまだ片付けていなかった旅行鞄を漁り始める上の姪。

 そういえば名前なんだったっけな。リン……リン……ああ、鈴の音だから、鈴音(すずね)ちゃんだったかな? なんともうまい名前を付けるよなぁ。鈴音(すずね)鈴音(リンね)鈴姉(リンねぇ)、リンねぇ、ね。俺もそんな楽しい渾名(あだな)が子供の頃に欲しかったよ。

「おーい。下着見えてるぞー」

 短めのスカートを履いてるのに、こちらにお尻を向けたらそりゃ見える。というよりも、旅行鞄からポイポイと投げ捨てられてく小さな布の塊の数の方が俺は気になるな。十個や二十個じゃねぇだろ、それ。また部屋が散らかっていく。誰がこれを片付けるんだか。

「あったあった」

 取り出したるは、A4サイズのただの紙。しかしその数は3枚。カラフルに彩られたクリアファイル――何かのアニメかな? 2次元の可愛い女の子が描かれてます――の中で厳重に保管されていたその紙には、(しわ)が全く見えなかった。さて、なんだろう?

「おじさん、これお願い!」



♪♪♪♪♪♪♪♪姪とオンライン♪♪♪♪♪♪♪♪



 そして今に至る、と。

 ああ、ようやく動き出した。もうそんな時間か。長かった。

 あの後すぐに家を追い出されて――俺の家なんだがなぁ――寒さに耐えること、12時間。丸々半日だよ? しかも夜の寒い中、まともな装備も持たされずにだ。返ったらお尻叩きペンペンの刑だな。

 時刻は朝6時。

 普通はこんな早い時間に開店する店じゃない筈なんだが、今日に限ってはそうではないようだ。誘導する店員も熱が入っているのか、随分と暑苦しい声をあげている。近所迷惑などアウトオブ眼中らしい。

 ああ、これも死語か。使ったのは初めてだが。

♪御意見、御感想をお待ちしています♪


リン「リンちゃんと」

チー「チーちゃんの」

「「あとがき劇場!!」」

リン「わー、わー、ぱちぱちぱちぱち」

チー「ドンドン、ぱふぱふ」


リン「いやー、遂に始まりましたねー。チーちゃん」

チー「はい。遂に始まりましたです。リンねぇ」

リン「このコーナーでは~~……えーと、なにしよチーちゃん」

チー「え? 考えてなかったんですか?」

リン「うん。とりあえず勢いで始めてみただけだから」

チー「相変わらずまっしぐらですね~、リンねぇ」

リン「んっ!! 突撃思考だよぉ♪」

チー「リ、リンねぇ……」

リン「というのは嘘で、ちゃんと考えてるから安心して。チーちゃん」

チー「本当に安心して良いんでしょうか……」

リン「さて、記念すべき第一話! はじまりはじまり~」

チー「えと……リンねぇ。あとがきだから、もう読み終わってるんじゃ……」

リン「じゃなくてー。あとがき劇場、第一話のはじまりねー」

チー「あ、そういう事ですか」

リン「うん、そういう事」

チー「それで、何をするんですか?」

リン「宣伝」

チー「……」

リン「この物語はフィクションであり、実在の人物とは……」

チー「それ、宣伝違います……」

リン「あれ、そうだっけ?」

チー「うん、そうです」

リン「おかしいな~。ドラマとか見ると、最後に必ずこの宣伝が入ってるんだけど」

チー「いや、だからそれ宣伝じゃ……」

リン「ならこっちだ! ぷれせんてぃっどゅ、ばい、めいとおんらいん!」

チー「あってるような……でもなんか違うような……」

リン「という訳で、姪とオンライン! みんなよろしくー!!」

チー「え? もう締め? えっと……あの……。

   本日は、御来読ありがとうございます。

またのお越しをお待ちしています」

リン「また見てねーー♪」



♪(こっちも)御意見、御感想をお待ちしています♪

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