表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

青と白

作者: 山茶花

とても短いです。

また、主人公と青年の関係を読者の方に想像してほしかったので、あえて途中で終わっています。ご注意ください。

ひとりでここに来ることはよくあった。



制服を脱ぎ捨て、白いTシャツに短いジーンズ地のズボン。蛍光ピンクのサンダルをつっかけて。何も持たずに、扉の閉まる大きな音を背に、のんびりと歩いていく。


夕方の空に広がる青空と入道雲を見上げながら、海に向かって坂を下っていくこと約15分。何にもない、誰もいない港の外れの岩場。自分だけの特別な場所。


特に何があるわけでもない、誰も来ないようなただの岩場。特別なのは、自分がここを特別だと思うからだ。私が、特別だと決めたからだ。


ただ海を眺めて、日暮れまでの時をつぶす。海も空も雲も、ここにいれば独り占めできる。無料で。




「いつもここにいるよね」


 


綺麗な声が、唐突に私の場所に踏み入った。


 不快感を伴って振り向いた先には、一人の青年が微笑んでいた。薄い白シャツを着た若い男。キレイな顔をした、その男。


 なぜか、逃げたくなった。怖くなった。だから、逃げた。


もう、あの場所へ行くことはなくなった。







あれから、10年ほど経った。久しぶりに見たこの町はあの頃と全く変わっていない。ふと、あの場所のことを思い出した。急に懐かしくなって、心が躍る。いや、きっとずっと気になっていたんだろう。




 白いワンピースに紫外線除けの麦わら帽子。踵の低いサンダルを履いて。鍵以外には何も持たずに、ゆっくりと扉を閉めて、のんびりと歩いていく。


 強い日差しの中、遠くから船の汽笛が聞こえる。途中で自転車に乗った汗だくの女の子とすれ違った。そういえば、港近くの高校は廃校になったと聞いた。


 岩場のある手前の塀がだんだん近くなってくる。人はいない。軽トラックが一台、魚市場の方へ走って行った。蝉の声が遠ざかった気がした。もう目の前だ。


変わらない、私の特別な場所。海と空と雲と、昔より少しだけ太陽が輝いて見えた。



少し眺めていると、昔座っていた岩の近くから発光した。思わず手を顔にかざす。


 何かが、光っている。いや、太陽の光を反射している何かがあるのか。足元を見て、その何かを取りに行こうか悩んでいた。その時。





「見つけたのか」





尋ねる声がした。


 振り返ると、白いワイシャツ姿の男がこちらを見ていた。表情はない。ただ、静かに問うてきた。





「見つけたのに、取りに行かないのか」




 距離を詰めてくる。もう、目の前だ。水分が喉から消えて、張り付くように乾いていた。少し引っかかったように、声を絞り出す。






「あなたは、取りにきたの」





男は少しだけ目を見開いて、それから笑った。昔と同じ、綺麗な微笑みだった。

この続きは、ラブでもホラーでもミステリーでもいけると思うのですがいかがでしたでしょうか^^

夏っぽさとほんの少しのノスタルジーを感じていただけたらうれしく思います。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ