「oFF LiNe」執筆考 (3)
すでに最終話を投稿し終え、どれくらい時間が経過したでしょうか。
だいぶ前、とっくの昔で完結させたにもかかわらず、その後のあとがきがここまで遅くなってしまい、まことに申し訳ございません。
ともあれ我が身の不徳は今一旦、脇に置いておきまして、拙作のあとがきらしきものを少しばかり綴らせていただきたいと思います。
思い返せば元々、この「oFF LiNe」という作品は既存のVRMMOものの作品に対するアンチテーゼが一割、私個人なりの独自解釈をした場合のVRMMOものはどういうふうになるのだろうという好奇心が三割、そして残りの六割は私の実体験を骨子として書き上げた作品です。
とはいえもちろん、実体験は実体験でも精神的体験であって、現実の体験ではありません。とりあえずのご注意までに(わざわざこう書かなくても普通に皆様、察してくださることとは思いますが、もし万が一、本気で受け取られると確実に頭の病気を疑われてしまいますから。私が)。
それは早いものでもう16年も昔のこと。私はとあるオンラインのRPGに没頭していました。
しかも、ここが肝なのですが、
当時、いろいろとあって人間関係のわずらわしさに辟易していた私は何を血迷ったのか、わざわざオンラインプレイがメインのこのゲームをまさしく徹頭徹尾、頑ななまでにオフラインのソロプレイだけで遊び続けていました。
そう、作品名にもいたしました、「oFF LiNe」を地で行っていたわけです。
結果、私は何を感じたかと言うと、
たまらない、それはもう純粋すぎるほどにたまらない、絶対的なまでの「孤独感」でした。
元より、オンラインで様々な方々と共にコミュニケーションをとりながら進めてゆくよう作られたゲームであったせいもあり、オフラインでしかもソロプレイ。
寂しさを感じないほうがむしろ異常な環境。
フィールドに出れば味方は自分ひとりだけ。他には誰もいませんし、いたとしても九分九厘が敵。
広大なマップ内をたったひとりで駆け回り、群がる敵から逃げ回り、いつしかそうして歩き回っているとき、運よく辿り着いた敵の目に付かない物陰へと身を潜めて息をつく。
そんなことを何度も繰り返しているうち、私の心の中はすっかり、暗く淀んだ孤独の色、その一色に染め上げられていきました(正直、感動以外の理由でゲーム中に泣きそうになったのは恐らく、これが始めてだったと思います)。
それでも、途中で知り合った味方(プログラム上のNPCでしかありませんが)との数少ない触れあいにわずかばかりも癒され、再び奮起し、必死に己の中の寂しさと眼前の敵とを相手に戦い続け、ついにゲームクリアまでこぎつけました。
が、しかしです。
迎えたエンディングはハッピーエンドなどとはまるきりかけ離れた、悲劇的な結末でした。
無論、自分も含めてその他、尽力してきたキャラクターたちや、犠牲となったキャラクターたちの努力がまったくの無駄だったというほどひどい結末ではありませんでしたが、だとしてもそれまで耐え難いまでの孤独に耐え、頼るものも無く、数多の敵へひとりきりで立ち向かわなければならない、恐怖に満ちた戦いを乗り越え、やっとの思いで辿り着いた終着点が、絶望ほどではないまでも失望に満ち満ちたものだったことは、今も私の心の中に整理がつかない感情として留まり続けています。
そういった中、昨今のVRMMOものの氾濫です。
断っておきますが、私は既存のVRMMOものの作品に対して微塵も不満や反抗の感情は持ち合わせていません。それらはエンターテイメントとしてとても優秀な作品群だと、心から思っております。
ただ、
あまりに正の面だけを描いた作品が多すぎると感じていたのは事実です。
それらがエンターテイメント作品だという点を差し引いても、それでも絶対数の偏りがひどすぎる。そう個人的に感じたことも事実です。
恐らく自己分析するに、こういった微妙に歪な思考へと私が至ったのは、まさしくこの過去、16年前に自分が味わった深い悲しみと寂しさを無意識、誰かと共有したいという思いからではないかと推測しています。
自ら望んでおこなったソロプレイ。
自ら望んでおこなったオフラインプレイ。
自ら望んで断ち切った人との繋がり。
だのに、
今になってそんな自分で決めた、自分で望み実行した孤独へと向かい、ひた走るような行動の結果、刻まれた負の感情を、人とのかかわりをことさら避け続けることで得た行動の結果、染み付いた負の感情を、今度は誰かに分かってもらいたいと考えている。
本当、自分の事ながら身勝手この上ないですね。自覚はしています。
さりとて作品として書き上げ、読んでいただこうとしたからには、そうした手前勝手な感情だけで書ききれるものではありません。
メッセージなんて言い方はいささか驕っていますが……そう、テーマのようなものは当初から定めて、最後まで伝えようとしたつもりです。
それが作品だけで読み手の方々に伝わったかどうか。そこは私にも分かりかねるところですが一応、以下のようなものでした。
『選択肢は無数にある。ただし、その中に「当たり」があるという保障はどこにもない。すべてが「ハズレ」であっても不思議ではない。結局、選んだ選択の結果が問題なのではなく、いかに「どんな結果となろうと、この選択をしたことを後悔しない」で済むような覚悟のもと、選択をするかが大切』
こんな感じです。
別にえらそうなことを言いたいわけではありません。
知った風な口をききたいわけでもありません。
さりながら、
長く生きてきて、楽しいことも苦しいこともそれなり体験してきた身として私の、あくまで私という個人の勝手な思想・価値観として、「こんな考え方をする人間もいるんですよ」と、知っていただきたかった。
畢竟、それだけのことだったのかもしれません。この作品は。
ともあれ、
途中で何度となく私的な事情からペースが劇的に落ち、危うく連載終了までに二年越しとなるのではと、顔が青くなること数え切れずの作品ではありましたが、なんにせよ完結させることができました。
遅くなりすぎるほどに遅くなりましたが、改めてこのような稚拙な作品に長らくお付き合いいただき、読み手の皆様には感謝をしてもしきれません。
もし次があるとしたなら、もう少し成長した作品をお見せできればと願わずにはおられません。
さて、
はっきり言ってまだまだ説明不足、書き切れていない部分も多くあろうかとは思いますが、これにて締めとさせていただきます。
それでは皆様、またいつかの機会に。