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私的執筆考  作者: 花街ナズナ
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執筆考という名の独り言(16)

創作に限らず、芸能などの自己表現全般に関して常について回るのは第三者……つまりは客観評価というものでしょう。


特に私のような精神的支柱の弱い者は、何か作品を発表するたび、その評価に一喜一憂してしまいます。


ここで少し補足を加えますなら、他者評価は無評価も含めて評価と捉えるべきでしょう。


「良い評価か悪い評価かという以前に、まず評価自体をしてもらえない」と嘆かれている書き手の皆様も多分にいらっしゃるようですが、これも見方を変えればひとつの評価です。


辛辣な言い方になりますが、これは自分にも当てはまることですので率直に述べますと、無評価はすなわち「評価するに値しない」とも受け取れるわけで、そうした底意をくみ取れば、これもまた形は違えどもひとつの評価と言えると思います。


さて、

実を言えばここまでは本題に入る前の準備のようなものです。


主題はここから。


前述しました通り、あらゆる創作・芸能などの自己表現活動は公に発表することが前提であるため、どうあっても客観評価を受けざるを得ません。


それが望む評価であろうとなかろうとに関わらず。


そこで考えるのが、表現者としての資質というものです。


無論、第一に必要と考えるのは表現の各分野に副った才能。


歌なら歌唱力や声質。絵画なら描写力や発想力。小説なら文章力や、これもやはり発想力が大事かもしれません。


が、これらはあくまでも結果的に必要性が出てくる資質であって、実際はもっと別に大切な資質があるように思うのです。


そしてそれは、「評価に対して一喜一憂といった感情的反応をするのではなく、今後さらに表現を続けるにあたって何を改善すべきかの純粋なヒントとして受け取る、冷静で理性的な精神」だと、私は考えます。


長く表現を続けるうえで、何が一番の妨げになるかというと、ほとんどの場合が「精神的に客観評価(おおむね無評価がもっとも応える評価でしょう)を受けることに耐えられなくなる」といった流れではないでしょうか。


そういう意味でも、如何に評価を感情ではなく理性で処理できるかが、表現活動において最も重要な資質のように感じるのです。


推理小説の大家、江戸川乱歩は戦時中、有名な「芋虫」という作品を検閲で全面削除された際、以下のように述べたことは知る人も多いことでしょう。


「夢を語る私の性格は、現実世界からどのような扱いを受けても一向、痛痒を感じないのである」と。


この言葉を単に額面通りで受け取るのは簡単ですが、大事な部分はまずこの言葉がどういった理由から出た言葉であるかです。


共感覚が弱く、客観評価に対して単に鈍いために発せられた言葉なのか。

堅牢な精神によって、揺らぐことのない心の軸が言わしめたものか。


前者であるなら、それはある種の純然たる才能であり、羨ましいと感じますし、後者であるなら、これはもう才能に加えて後天的な資質強化のための努力が必須であるゆえに、ただただ尊敬の念を抱くのみです。


しかしどちらにせよ共通しているのは、


どんな才能も、行動を起こさなければ花開くことは無い。

どんな才能も、行動を持続させなければ実を成すことはできない。


自らの才能を疑い、心折れることは容易いものですが、そうなる前にもう一度ご自分をより根本的なところから見つめ直してはいかがでしょうか。


もしかすると、形無き評価の中から本当に示されるべき道が見えてくるかもしれません。


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