執筆考という名の独り言(9)
以前にもそれとなくお話したかもしれませんが、私は娯楽に対して貪欲です。
そのためジャンルにこだわらず、ありとあらゆる娯楽に接しようと試みます。
小説は言うに及ばず、漫画、映画、アニメ、ドラマ、音楽、etc……。
ですので、作品の新旧は問いません。面白いか面白くないか。興味の方向はそこだけ。
そのため、しばしば何年も前の作品に触れ、震えるような感動を覚えます。
このことについては、新しいものや特定のジャンルにしか興味を示さない、狭窄した価値観に生まれなかった自分の幸運に感謝するばかりです。
閑話休題。
つい数日前。知人に何気無く「昔、放送していたカウボーイ・ビバップというアニメがとても好きだった」と話したところ、ふと知人は何も言わずにその場を立ち去り、しばらくして戻ってくると、
「なら、これにも目を通すべきだよ」と言い、どうやらどこからか持ってきたDVDボックスを私に手渡してきました。
それは「サムライ・チャンプルー」というアニメのDVD。もしかすれば、詳しい方なら話の流れからすでに察しがついていたかもしれませんね。その筋では相当にメジャーなアニメだそうなので。
見た感想を端的には表せません。
ただ、
面白くて、
笑えて、
悲しくて、
切なくて、
これほどひとつの作品で多くの感情を揺さぶられたのは久しぶりのことです。
ネタバレになってしまうので細かい話は一切しませんが、全26話のうち、20話を越えた辺りから、(続きを見たくない)という不思議な気持ちに苛まれました。
お分かりだと思いますが、決してつまらないから見たくないのではありません。見たくて見たくてたまらないのに、なのに見たくないのです。
終わってしまうから。
この素晴らしい時間が、体験が、終わってしまうから。
このような感覚には過去にも何度か囚われたことがありますが、そのすべてが例外無く極上の作品に出合った時でした。
つまり、これもまた極上の上にも極上な作品だったわけです。
おかげさまで年明け間際に良い充電をさせていただきました。
知人には礼を言っても言い尽くせない思いです。
年が明けて落ち着いたら、私も知人にDVDボックスを返す傍ら、自分用のDVDボックスを購入しようと思った12月末。小雨の降る寒いある日のことでした。