【FUTURE STRIDE】 執筆考(1)
およそ三カ月ぶりという、とてつもないブランクを空け、ようやく開始した新連載。
気分転換のために手慰みで連載していた剣客少女の番外編に同じく、手慣らしの部分も多々ありますが、決して手抜きをして書く気はありません。
長い時間を置いてしまったからこそ、内容に妥協はしないつもりです。
多くのしがらみから解放され、書きたいように書くからには、それに見合うだけのものを提供できるよう、最大限の努力をする覚悟でいます。
無論、判断は読み手の皆様がなさることですので、必ずしもご希望に沿えるとは限りませんが……。
さて、今回の作品では肝になるのが私の苦手とする(運命)です。
(運命)、(宿命)、(定め)……。どれも私が生理的に嫌悪する概念。現在、過去、未来に渡ってすべての事柄があらかじめ決められているという考え。
しかし今回の作品において、あえて私はこの(運命)を取り込みました。
考えてみれば(運命)というものには二面性があります。
都合の良い(運命)と、都合の悪い(運命)。
例えば、異世界へと突然に飛ばされて、そこで絶対的な力を獲得してご満悦。これがまあ都合の良い(運命)の典型でしょう。
対して、幸せな毎日を送っていたのに、急な病によって若くして命を落とす。これが都合の悪い(運命)を思った場合の一例。
私が運命を嫌う理由はこの後者が原因です。
別に構いはしません。幸せならば運命といえど。定められたことだとしても、それが幸せならば私は運命を憎んだりしません。
ですが、現実は違います。
往々にして運命は不幸な結末ばかりを連れてきます。
だからでしょう。フィクションの中では都合の良い運命が頻繁に描かれます。が、それに不満は無いのです。むしろ辛い現実を忘れるための、大切な要素だと思っています。
ところが困ったことに、坊主憎けれゃ袈裟まで憎い。
現実には辛い運命ばかりを目の当たりにしてきたため、もはや私は運命という概念そのものが嫌悪の対象となってしまったのです。
とはいえ、これはあくまで私的な感情。もうそろそろ卒業しても良い頃合いでしょう。
そう思い、今回の作品では主人公に大変大きな運命を背負わせました。
もちろん、私の性格を理解していらっしゃる方ならお察しと思いますが、決して都合の良い運命とは言えないものです。
ただし悪い運命かと問われれば、そうとも言えません。
定められたのは状況だけ。あとのことは主人公の行動に委ねられます。
すでに決められた立場と環境の中、彼が自分の意思によってどう動くか。
限定された状況下にあって、人間はどれだけのことができるのか。
そして自分の意思をどこまで貫けるのか。
先に断言しておきます。
この作品で、主人公が力による強さを見せることはありません。
その代り、主人公は愚直に己の意思を貫き通します。力とは違う、別の意味での強さを、彼には体現してもらうつもりです。
ともあれ、まだ物語はその舞台すら判然としていません。
全容も定かでない今、多くを語り過ぎるのも何でしょうし、今日はここまでとさせていただきたいと思います。