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私的執筆考  作者: 花街ナズナ
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次回作執筆考(8)

明けない夜は無い。冬来たりなば、春遠からじ。口で言うのは簡単な言葉ですが、正直この数カ月は言い過ぎで無く、紛れも無い厳冬そのものでした。


考えても考えても何も浮かばない。

書きたくても書きたくても手が動かない。


そんなまさしく地獄のような長い苦しみを経て、ようやく光明が見えてきました。


虚ろだった頭は好奇と想像に満ち、手は次々と与えられる仕事に歓喜する。


そう、私の求めていた理想の状態がついに訪れたのです。


しかし、必ずしも順風満帆というわけでもありません。


これも長すぎた不調の副作用とでも言うべきものでしょうか。想像力があまりに強くなりすぎ、それを文章に起こす作業がまるで追いつかず、今までとはまったく違う意味で弱り果てています。


はっきりとした骨組みが想像時点で出来上がっているものは三本。その他に、膨らませれば作品として仕上げられそうなアイディアが数本。


さすがに現実的な視点から見て、アイディアはアイディアで取っておくことにし、骨格が完成しているものに関して手をつけることにしました。


プロットの作成はほぼ必要無かったとはいえ、それでも三本。同時作業するにはいかんせん無茶な本数です。


無論、これが多作な作家さんなら問題無くこなせるでしょう。

ですが私は寡作とまでは言わないまでも、ごく平均的な人間です。一日に執筆できる量など、たかが知れています。


ならば一本ずつ、分けて書いてゆけばいいではないか。そうしたご意見もありましょう。


が、それが出来ないのが私という人間の不器用さ。我ながら嫌になります。


鉄は熱いうちに叩けという言葉がありますが、私はこの傾向が特に顕著なのです。

頭の中ですでにプロット段階まで完成している作品を、時間を置いて書くなど、私には考えることすら出来ません。


創作の情熱が、しかもようやっと燃え上がった情熱が、私を熱く燃え上がらせているというのに、それをどれかひとつに絞って他は後で……などということは少なくとも私には出来ないのです。


想像力が、形を与えてくれと私を急かしつける。好奇心が疲れ切った体から休息の欲求を奪い取ってゆく。

受け止め方によっては最高に幸福な状態とも言えます。


だから私は筆を止めません。

効率的とはお世辞にも言えない執筆作業を強いて、結果的に皆様をさらに長く待たせることになろうとも。


妥協の産物を皆様に提供するより、私は自己満足だと揶揄されようとも自分が納得できる形の作品を皆様に提供したい。

これは書き手である私の、利害や損得とは別の次元に存在する信念です。


ゆえにここだけは譲ることが出来ない一線だとご理解を頂きたい。

私という人間を構成するための極めて重要な芯であり、柱。


ここを譲ってしまっては、私は私自身を否定することになってしまいます。


もちろん、私も全力を尽くします。

単に自分のわがままだけを押し通すだけなど、そんな手前勝手な真似はいたしません。


骨身を削ってでも、出来得る限り早急に作品を仕上げるための努力は惜しまずおこなうつもりです。


ので、どうか皆様には今しばらくのご猶予を賜りたいと切にお願いいたします。


この身にようやく灯った想像と創造の情熱で、心地良く精神を焼き尽くされる愉悦を、命を燃やしながら味わう猶予を与えていただきたい。


今はただ、そうお願いをするばかりです。


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