次回作執筆考(6)
昔聞いた話によれば、スランプというのは一流の人間のみがなるもので、二流、三流の人間がスランプを起こしたなどというのはとてもおこがましいことだそうで。
とはいっても、現実に恐ろしいまでに筆の調子が悪い今日この頃。
はてさてどうしたものやらというのが本心です。
きっかけ自体はごく簡単なものでした。
いくつかの賞に向けて作品を投稿したのがある意味で悪いほうに転んだ形。
人様の求めるもの、読みたいもの。
そういったものに気が行き過ぎ、逆に何をどう書いていいのか分からなくなってしまったという感じでしょうか。
当然と言えば当然なのですが、読者層によって求められるものは全く異なります。
そして幸か不幸か、私には編集の仕事をなさっている知人がいます。
その方の助言をいただき、自分の作風を試行錯誤していたのですが、答えは思ったよりも極端な形で出てしまいました。
私はどうにもライトノベルに向きません。
考え方によっては当たり前なのですが、ライトノベルの読者層は十代から二十代。
私自身はすでに三十代のいい大人です。
夢を忘れた大人と卑下していただいても構いませんが、それが現実。
それでも、歩み寄る努力は自分なりに重ねてきたつもりですが、それが原因で逆に筆の調子をおかしくしてしまうとは、なんとも本末転倒と言わざるを得ません。
しかし、「自慰行為で作品を書いてはいけない」という私自身のルールからすれば、案外この状況は好機ともとれるのかもしれません。
間違っても、自分の好きなようには書けない状態で書く作品。
一体それがどんなものに仕上がるのか。
書き手の私自身ですら想像もつきませんが、どうか次回作については私の最大級の生みの苦しみを込めて皆様にお伝えしたいと存じます。
趣味でない作品。
主義でない作品。
執筆に際して苦痛しか生まない今度の作品が、果たして皆様にはどういった受け止め方をされるのか。
どうぞ今しばらくのお時間をいただきたく思います。