バイバイ
現実世界を捨てた
遊び三昧の日々。しかし永遠はこの世界にない。いったいいつまで続くのだろうか?
あれから10日は経っただろうか。ギャンブル、女、酒。すべてを繰り返して、まるでこの世界の悪を倒した伝説のプレイヤー、成功者にでもなった気分だ。
「王様バンーザイ、王様バンーザイ」
民衆が俺を崇める、これほどまでの地位や名誉、そして平和な世界いうことなしだ、これが一生続くと思っていた。
「私もう耐えられません、好きでもないあんな奴と…」
「耐えてくれ、アイツがここまで狂ったのも皆が頑張ってきたからだろ?君も頑張るんだあと少しだろ?1日60だ」
「はい…」
「ん?どうしたお前ら?」
「いいえ何でもありません、私が落し物をしたから彼女が届けてくれたんです」
「そうか!井手、若杉どこにいるかわかるか?」
「多分お風呂の掃除に行ってますよ」
「あいつそんなとこにいるのか」
捨てたはずの時計を見ている執事、ニヤリと笑った。
「後少しだ、アイツを飽きさせてはいけない」
「若杉ー若杉ー」
「王様どうしたんです?」
そう若杉とはあの青年である。
「俺のおもちゃを連れて来い」
「はい!わかりまして」
「連れてまいりました」
「おう今日はどうする?若杉」
「ん~殴るのも飽きたし、釜茹ででもしますか?(笑)」
「いいなそれ!よし!すぐに準備だ」
「すいませんすいません」
鋳鉄製の風呂釜に火をガンガン焚き縄で両手足を縛り無理やり入れた。
「うぁーー熱いーぎゃー」
「ひひひぃ最高だもっと火を焚け」
「ぎゃーぃだぅーしゃーずぃ、まぜん」
気を失った、すぐに何処かに運ばれていった。
「つまらん(怒)」
「若杉なんとかしろ」
「はい(汗)おいお前達踊れ」
「えっ、、」
「いいから早く踊れ」
メイド達の奇妙なダンスだが面白かった、そして若杉は何処かに行った。
時間が経ち、井出が来た。
「王様、食事の準備が出来ました」
「待て、お前も見てみろ楽しいから」
「はぁ…」
「大丈夫でしたか?」
「あぁなんとか助かったよ、若杉くん」
「いいえ、すごい演技でしたよ」
飯を食べ終わり、睡魔が襲ってきた。
「井手もう寝る…」
「おやすみなさいませ、王様」
深い眠りに着いた。
「おはようございます王様」
「おぅ風呂に入って目覚ましてくる、熱めによろしく」
まだ寝ぼけている、かなり熟睡してしまったみたいだ。熱い風呂に入り、ふと考えていた、現実世界で俺が居なくなって両親とかは心配しているんじゃないかと。
「いかん、何故この期に及んで現実世界なんぞに…」
風呂から出た俺は出口の扉に向かった、扉に手をかけようとした瞬間!!
「王様!!アイツが居ません!!」
「なに!?何故だ」
「それが…わかりません」
「すぐに探し出せ!!!見つけ次第俺のところに連れて来い!」
正直アイツに、もう飽きている。
「はいすぐに探し出します!!」
朝飯も豪華、フリーターで一人身の俺はこの時間が一番好きだった、絵に描いたような大富豪の朝飯だ。
「井手俺がここに残ってから何日経つんだ?」
「今日で20日目です」
「そんな経つのか…」
「どうしました?」
「いや、、なんでもない」
今日は何もしたくなかった、やる気が起きない。一人部屋に篭った、涙が止まらない。この世界で今までやってきたことを思い出す、人としての道理がまるでない、しかし今更現実世界なんてと思う。
「どうすればいいんだ?誰か教えてくれ!」
俺の事を怒る奴も居なければ、本気でぶつかってくる奴も居ない。皆が「はい」と言うだけ。人間の感情がない俺の言うことを聴くロボットに近い。
「もう嫌だ…現実世界に帰りたい、隙を見つけて黙って帰ろう」
「契約違反の代償は死かもしれないが、最後は両親に挨拶くらい…」
こっそり部屋から出て、出口の扉まで急いで走って行った。
「王様ー捕まえましたよ!!」
「おうそうか」
なんてタイミングの悪い奴だ、若杉よ。
「あれ?どうしたんです?帰ろうとしてたりとか?」
「んまぁ…」
「そんなことよりコイツどうします?(笑)」
「ん?もういいや」
「え!?せっかく捕まえたんだし火あぶりにでもしましょうよ」
「お前の好きにしろ」
「はぁ…わかりました」
帰るタイミングを逃したが、まだ大丈夫だチャンスはきっと来る。そう信じ今はじっとしておこう。また部屋に篭った。
「大丈夫ですか!?井出さん?今にも帰りそうですよ(汗)」
「マズイな何とかしろ!!今日が終われば我々の勝利だ!」
「何とかって、、どうすればいいんですかぁぁ」
「そうだ祭りだ!今から祭りを開催しろ!」
「祭り!?井出さん!!」
「俺達の祭りでもある、大至急祭りの準備だ!時間は俺がなんとかする!」
「はい!頑張ってみます」
大急ぎで街に走り出した。
コンコン、部屋の扉を叩く音がした。
「誰だ?」
「井出でございます」
「どうした?」
「お話が」
「入れ」
「失礼します」
「王様、気分はいかがですか?」
「悪い、ここに着てから初めてだ…」
「それは困った、そうだ王様っ!祭りにでもご主席されて見てはいかかですか?」
「祭り?そんな設定なんてした覚えがない…」
「それは王様に気分を上げてもらおうと思って、民衆が盛大に盛り上げてくれますよ」
「井手…」
「はい?」
「……現実世界に戻るよ」
「チャンスを窺って逃げようと思ったが、そんな皆を見捨てるような王様になりたくないんだ」
「王様・・・・」
二人とも目頭を熱くしている。
「わかりました…皆のために今日は頑張りましょう!」
「わかった」
現実世界に戻ることを怒らず、応援してくれた。ありがとう井手!!!!!
本当に盛大な祭りだ、皆が楽しそうだ。これが本当の人間の感情だ!皆普通に生きている。時が経つのを忘れ盛り上がる。
「王様!大変です!食料がなくなりました」
「構わん構わん!」
「もっと酒を持って来い」
「それがお酒の方もないです」
「なんだとキサマー(怒)」
ゴンっ!!目の前が暗くなった。
気づくとそこは城のベッドだった。
「あれ?昨日はどうしたんだっけ?いててて頭が重たい…」
「おはようございます」
「井手!朝飯の準備は出来てるか?」
「出来ていません」
「はぁ?どういうことだ?(怒)」
「どうもこうもありません、それでは…」
「おい!ちょっと待て井手ー」
井出が部屋から去った。何かしたのか昨日?不思議に思いすぐに追いかけた。
「なんだ?この静けさは?」
明らかに人がいない、いったい何があったんだ?
「井手ー?若杉ー?」
返事がない、いったいどうなっているんだ?
パン!パン!パン!
クラッカーのなる音だ!
「王様ー今までありがとー」
盛大な拍手と声援
「お前ら…」
感極まって涙を流した
「俺なんかのわがままに付き合ってくれて本当に嬉しかった、本当にありがとうございました」
そしてドアノブに手をかけた……………
「ジリリジリリ。終了~終了~」
「ん?この音って?あの時計じゃ?あれ時間が0:01に」
「やった、やったー」
皆が盛り上がっている、またドッキリかと思い俺もつられて喜ぶ。
時計が鳴り出す
「おめでとーおめでとー」
「おいこいつヤッチマウゾ」
いっせいに俺に襲い掛かってきた。
「やめろお前ら、俺が誰だかわかってるのか!?」
呆然と立ち尽くす井手と若杉。
「何してる!こいつら止めろー」
「………………」
「貴様ら全員死刑だー」
「やめろー」
それから幾度と暴行は続いた…
「どうい、言う、ことだ」
意識が朦朧としてきた、まさかこれが契約違反の代償なのか?だとしたら安く済んだ。
「ふースッキリしたぜ、さぁ皆帰ろう現実世界に!!」
「それではお元気で」
「じゃあな王様(笑)」
「井手ぇー、若杉ぃ」
痛くて涙が止まらない。
「長かった…、やっとこの時がきた」
「どうなっているんだ・・・」
「元はお前と同じ現実世界からやってきたもの達だ、契約を破りここに閉じ込められた」
「しかし俺はある期間だけこの世界から出ることを許された、条件付で」
1人の男が話しかけてきた
「お前が契約期間を過ぎて1日経つと、その、時を刻むでもない物のメーターが1つ下がる、言わばあれは人口時計だ、1日60人この世界から解放が約束される」
「お前は…」
「おもちゃにされてきたが今は違うぞ」
「何故だ、何故みんな契約を破っているのにこんなに人口が多いんだ、1日経つと60人解放されるんだろ?おかしいだろ」
「いや、ここの人口が1260人にならなければあの人口時計は作動しない」
「何故だ…」
「お前が1260人目にしてこの世界最初の出口の鍵だ」
「俺が…」
「ドアノブに触った瞬間、経った日にち分しか解放されない、しかし誰が解放されるのかもわからない、だから俺達は21日間お前をここに残らせようと頑張った。お前が21日間退屈しないようにするのは大変だったぜ(笑)」
「嘘だ、、、皆、俺を騙していたと言うのか…」
「契約を破ったのはお前だ、ここに残ると決めたのもお前自身だ!!」
「じゃあこれから俺はどうなるんだ!ここから出られるんだろ?」
「ふっ!まさか!今度の1260人目が来るのを待つんだな」
「じゃあな…」
「待ってくれぇぇぇ」
「バイバイ、朝倉…」
「お前はやっぱり、たち…ばな…だったのか…」
(完)
ついに完結しました。至らない点もありますが最後までお読みくださってありがとうございました。