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二一○  作者: IQ9
7/8

ケツダン

 翌朝、決心しバイトに行った。


「朝倉ぁぁ!昨日なんで来なかったんだ?」


「すいません店長、今日でバイト辞めます」


「なんでだ?」


「色々あって今日で辞めさせてもらいます」


「深くは聞かないが本当に辞めるのか?」


「はい…」


「わかった…今日も頑張れよ!」


俺の本気が伝わったのか、店長は昨日の事すら怒らなかった。


「おい~す」


「橘!元気だったか?少し痩せたな!」


「店長、明日から1ヶ月ほど休みもらえないっすか?」 


「どうした?お前も急に?」


「ちょっと大事な用事が…必ず1ヶ月後に戻ってきます!!」


「そうか、わかった!頼むぞ橘!」


「はい!」


なんだこの雰囲気まるで俺がいないみたいな、アイツがいるだけで俺が目立たなくなる、まるで空気に近い、腹立たしい。

 バイトも終わりを迎えた、荷物をまとめ店長やバイト仲間に挨拶に行った。しかし皆に挨拶していたのは橘であった。

「えー明日から1ヶ月ほど休みをもらうことになりました、色々迷惑をかけてしまいますが、大事な用事が終わるまで待っててください。本当にすいません」


行きづらい感じ、明るい感じなのに俺が辞める挨拶なんてしたら最悪だ、黙って帰ろう。涙を我慢し店を飛び出した。こんなハズじゃないのにこんなハズじゃないのにと、心の中で何度も叫んだ。

 公園に向かう途中目の前に橘が現れた!俺の人生を狂わせた最悪な奴、今すぐこの世から消してやりたい。

「朝倉今日でバイト辞めたんだ(笑)」


今更かよ、そしてお前に言われたくないんだけどと、心の中でツッコミを入れた


「あぁ!今までありがとよ」


嫌味ったらしく言ってやった。


「お前と俺は磁石で言うNとNだ、決してくっつく事はない一方がそこに入れば一方はそこを離れる運命だ」


黙って公園に向かった。お前に運命だの何だのと言われたくない、いちいち腹が立つ。そして公園に着き急いでトイレの奥の扉を開けた。


「おかえりなさいませ」


いつもと同じパターン、段々飽きてくる。


「今日はどうなさいます王様?」


この執事も同じことばかり。


「飯をすぐ用意だ!それからアイツを連れて来い!」


「かしこまりました」


すぐに用意ができる。こいつの目の前で美味しそうにご馳走を食う、生唾を飲み込むのがわかる。死にそうな体だ生気がないのがわかる、いっそ殺してしまいそうになる顔。


「すいませんすいません」


「しゃべるな!!!おいお前こいつを殴れ」


「はい」


執事は表情も変えず殴り続ける、声を出さないように必死で自分の手で口をふさぐ、涙がこぼれている。こいつは俺に痛めつけられるために生まれてきたんだ、皆アイツが殴られているのを見て笑っている。ここでは俺が目立つここが俺の住む世界なんだ。


 「まもなく30分でーす」


扉を開け現実世界に戻った。清々しいくらいの気持ちで家に帰った。


「あいつはまだこの世界でやりたいことがまだまだあるはずだ」


「あの目は覚悟を決めた目だ」



「大丈夫か?アンタ?」


「ここで…死んだ…ら何のためにアイツをここ…まで、つれ……唯一出…れるチャン…を…5年間も…待った…だぞ」


「俺なんか35年だ」


「私だって6年も…」


俺だって、私だって…………………。



 朝、大家にアパートを出ることを伝え今までの家賃を渡した。携帯ショップに行き解約の手続きをした。そしてリサイクルショップに行き家具や装飾品をすべて売り払った、手元に残ったお金は全額で597000円。


「これだけか…」


現実はこんなもだった、さすがフリーターだ。だが…

 

 そして公園に向かった。


「朝倉さん朝倉さん」


「これかが最後だな」


「えぇこれが最後です、いってらしゃいませ」


ニコリと道端の占い師が笑った。


そして扉に鍵を刺した、いきなり鍵が発光し消えていった。今更驚くことではない、これが最後なのだから。


「おかえりなさいませ」


「おう!今日は街を案内してくれ」


「かしこまりました」


馬車で街を走り出した。馬車の中は俺と執事の二人だけ…


「ここの人口って何人くらいなんだ?」


「王様の含めて1260人です」


「丁度1260人か、その中で一番偉いのが俺か」


「然様でございます」


「そういえばアンタの名前聞いてなかった、教えて」


「私は、井手と申します」


「井出か!呼びやすくていいな」


なんだかんだで街を一周してしまった。


「まもなく終了でーす」


「きちまったか…」


この時俺はもうケツダンしていた。そうここに住むと…


「王様?どうしました?」


「俺はまだここに居る、何か文句はあるか?井手」


「いいえ、とんでもございません」


意外とあっさり許してくれた、もしかして契約など破っても何も起こらないんじゃないか?第一あの道端の占い師はこの世界にいない。そうだこの世界は俺の世界なんだから。



 城に着いた瞬間


「終了ー終了ー」


どこからともなく聞こえるこの声の正体がやっとわかった、あの壊れた時計のアラームだった。


「本当に壊れているよこの時計」


「はぁ…」


その瞬間時計は21:0×分になった。


「なんだこれ(笑)こんなの捨てとけ」


「かしこまりました」


「さぁこれから何をしようか?」























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