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 そこには幾人もの筆跡で、狂気と崇拝の記録が綴られていた。


          ◇


【ページ.01 一級(花):ミリア】


○月×日

 今日は第一回『剪定』の日。

 実家では妾の子だと笑われて生きていた私だけど、アマリリス様は素晴らしい方だ。

 私を「花」だと認めてくださった。

 あの泣き虫の雑草がいなくなって清々したわ。

 この館で一番美しく咲くのは私よ。


〇月△日

 最近、夜になると不安になる。

 隣の部屋の子が、私を見る目が怖い。私の足を引っ張ろうとしているに違いない。

 負けられない。もっとアマリリス様に褒めてもらわないと。

 あの白い小瓶の香りを嗅ぐと、すべて忘れられる。あれがないと手が震えて眠れない。


×月×日

 ポチ(領主様)が羨ましい。

 四つん這いになって、首輪をつけて、アマリリス様の靴を舐めている。

 私もあそこに行きたい。

 人間なんて面倒なことやめて、アマリリス様のペットになりたい。

 今日、鏡を見たら、顔が笑ったまま戻らなくなった。幸せだなあ。


          ◇


【ページ.10 一級(花):氏名不詳】


△月△日

 今日、親友だったエリスを密告しました。

 彼女、隠れてパンを食べていたんです。

 アマリリス様は私の報告を聞いて、「よく気が付きましたね」と微笑んでくださいました。

 その瞬間、背筋がゾクゾクして、頭が真っ白になるほど嬉しかった。

 エリスが連れて行かれる時の悲鳴が、心地よい音楽のように聞こえました。

 あの方の笑顔のためなら、私、悪魔にだってなれます。


○月□日

 今日は第二回『剪定』の日。

 私のドレスが切り裂かれていた。

 代わりのドレスもなく、病気だという嘘をついて休んだ。

 花や土に報告され、選外となった。

 嵌められた。

 私はキレイなの。娼館に行きたくない。

 私キレイキレイキレイキレイキレイキレイ……

 きれ、い、たすけ、て……


(記述はここで途切れている)


          ◇


【ページ.15 特級(庭師):カトレア】


△月△日

 今日、父を売った。

 実家の隠し財産を密告したのだ。

 父は衛兵に連行される時、私を見て「裏切り者」と叫んだ。

 心臓が潰れそうだ。吐き気が止まらない。私はなんてことをしてしまったのだろう。


△月〇日

 アマリリス様が、私の計算能力を褒めてくださった。

 「貴女のその判断力が、この庭園を支えているのです」と。

 その言葉を聞いた瞬間、胸のつかえが取れた気がした。

 そうだ、私は間違っていない。無能な父を切り捨てたからこそ、私は選ばれたのだ。

 これは「罪」ではなく、「優秀さの証明」なのだ。


□月×日

 村の収穫量(密告数)が増えた。

 私の作成した「相互監視リスト」のおかげだ。

 かつての友人たちが、互いを売り合い、絶望する顔を見るのが……最近、少し心地よい。

 私は支配する側にいる。アマリリス様の隣にいる。

 ああ、もっと効率的に管理したい。もっとあの人の役に立ちたい。

 父さん、ありがとう。貴方の犠牲のおかげで、私はこんなに素晴らしい場所にいられるわ。


          ◇


【ページ.45 二級(土):トレイラ】


×月×日

 潜入に成功した。

 この館は狂っている。女たちは薬漬けにされ、村人たちは恐怖で支配されている。

 領主は完全に傀儡だ。

 元凶は「アマリリス」と名乗る女。

 私の魔法なら、あんな女、すぐに無力化できるはずだ。

 今夜、執務室に忍び込む。

 待ってて、みんな。私が必ず解放してあげるから。


(記述はここで途切れている。ページには紫色の染みが付着しており、甘い香りが残っていた)


          ◇


【ページ.50 二級(土):氏名不詳(雑用係)】


〇月〇日

 毎日毎日、掃除と洗濯ばかり。

 上の階の「花」たちが、私たちを見下して笑っている。悔しい。

 でも聞いたの。誰かの不正を見つけて報告すれば、上のランクに上がれるって。

 誰か失敗しないかな。

 誰か、ルールを破らないかな。

 お願い、誰か私の踏み台になって。私もあっち側に行きたいの。


○月□日

 今日は第二回『剪定』の日。

 何もしなかった私は選外とされた。

 いやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだ

 いやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだ

 いやだいや……


(記述はここで途切れている。ページには赤い染みが付着しており、乱暴に千切られた跡がある)


          ◇


【ページ.xx 選外(雑草):氏名不詳(娼館送りの女性)】


×月△日

 嘘よ。私が選外だなんて。

 あの子より私の方が綺麗だったはずよ。

 どうして? どうして私が?

 連れて行かないで。あの馬車に乗せないで。

 アマリリス様、ごめんなさい。次はもっと上手くやります。

 もっと上手に他人を蹴落としますから。

 だからお願い、私を捨てないでぇぇぇ


(文字は乱れ、最後は涙で滲んで判読できない)


          ◇


【Last Page 管理者:アマリリス】


 ――アリス様へ。


 ね?

 人間って、耕し方次第でこんなに面白く育つでしょう?

 貴女もいつか、こんな風に綺麗に咲いてくださいね。

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