5話「メイド王女と先祖代々、女王を崇拝せし古のオタク達」
「セテウス様!おっしゃられた通り、勇者・日々 臨様とVTuberの翠光 イチズ様を連れて参りました」
カエザはメイドの女王やオタクの騎士達に驚いて扉の前で立っている俺達を城の中へと引き入れる。
「ゆ…勇者が来たでござるよ!お待ちしていたでござる!!デュフ、デュフフフ」
ようやく来たのかと言わんばかりに、王の手前に跪いたオタク達の騎士達は立ち上がり様にこちらを振り向いて俺達を出迎える。
振り向く反動で各々の色とりどりの法被が靡く。
その姿はまさに戦隊もののヒーローのようだった。
「え…?今、何て?ござる?丸眼鏡に、法被にセテウスの顔がプリントされたTシャツ!?」
だれでも分かる情報量の多さだった。
背中に王女命と書かれた文字と、色とりどりな法被に気をとられていたが、よくよく見てみるとセテウスの顔がプリントされたTシャツを着ているではないか。
「なんだ、この絵に描いたようなオタクは…」
その格好はまさに典型的なオタクそのものだった。
やはり推しとオタクの国である以上、騎士達の格好もオタク全開らしい。
「その姿は、動画でしか見たことないけど懐かしさを感じるオタク味あるよね!」
イチズも同じ事を思っていたようだ。
「し…しかも!?その法被と推具は…。」
自分と同じような法被を羽織っており、鞘には推電棒を携えているという共通点。
その姿からこのオタク達も女神ヒストールに導かれた同じ転移者だろうか。と考察をたてながら直接聞いてみることにした。
「あ!あの~?質問なんですけど、その法被と推具ってもしかして、俺達と同じ転移者だったりします?俺も同じ感じの持ってるんですけど!!」と、自分の法被と推具を見せつけながらそう言うと。
「あ!私も臨くんと一緒の推具持ってるな~って思ってたの!!」
イチズも便乗する形で話に乗っかってくる。
「転移者?某が何を言ってるかは分からぬが、これは先祖代々受け継がれてきた由緒ある法被と推具でござるよ!!た、たしかご先祖様が言うには、め…女神ヒストールという者に授けられたと仰られていたでござる」
リーダー的な赤い法被に身を包むオタクの騎士が首をかしげながらそう言う。
すると青や、黄色、緑色のオタク騎士達も便乗する形で赤いオタク騎士の話に乗ってくる。
「そうでござる!!我らが各々の父上から授けられた!偉大な法被と推具であるが故に、大切にしているでござる!!」
「今でも、授けられたあの日を覚えているでござるな~!!懐かしいでござる」
「いやはや、あの時からもう数年経ったとは早いでござるな~!!」
あの感じだが、さすがは女神だ。何年も前からこの国に多くの転移者を導いていたとは。それに、そんな前からこの法被と推具は実在していたなんて。
そんな話を聞いた俺は、一つの疑問が生まれてきた。
それはなぜ、こんなに転移者を送りこんでも魔王を倒せないのか。
「あの!続いて質問なんですけど、騎士の方々も魔王退治とかってしたり、してるんですか?」
「そうそう!!こんな王女を守るくらいの実力だったら、魔王とか倒せるんじゃない?」
ふと、俺とイチズが抱いた疑問だった。
その疑問に対してリーダー的な赤いオタクの騎士は答える。
「我々の仕事は、主君である。セテウス様とこの国の民を御守りする事が義務であるが故、誠に済まぬが、魔王を倒すのは勇者殿にお任せするでござる。それに、今までも魔物は発見されていたものの、魔王軍が発見されたのはここ最近の出来事にござるよ!なので、我々もまだあまり把握できてない状況でして。誠にすまない」
意外にも魔王軍が発見されて、あまり日にちが経っていないらしい。
それに、オタクの騎士達には主君を守るという義務があるらしい。と俺は納得した。
「なるほど。わかりました!!俺達が貴方達の分まで、推しであるイチズちゃんと救ってみせますよ!!」
これはヒストールに確認する案件だと思った。
「それでは、任せるでござるよ!!我々も魔王軍の情報が入り次第、女王様の伝達スキルでお伝えするでござる」
魔王を倒して欲しいと、想いを託された俺はオタクの騎士達と握手をかわす
そうこうしているとようやくセテウスが口を開いた。
「まさか勇者にゃんも転移者だったにゃんて!驚いたよ。配信見たよ!いきなり呼び出したのにここまで来てくれてありがとう!まぁ私や騎士達の事について知らないだろうから諸々説明するね!まぁゆっくりしていってにゃん」
にゃんの語尾と無邪気な美しさに可愛さが溢れている。
「俺達も!?」
その言葉に引っ掛かった。
疑問に思った俺は、セテウスに質問する。
「あの!!俺達もってことなんですけど、もしかしてセテウス様も転移者だったりします?」
「確かに聞いてる感じだと、そんな気がする?」
その俺達の問いに対してセテウスが答える
「私は転移者じゃないにゃん!騎士達と同じく、ご先祖様が転移者にゃん!だから、私達は転移者の子孫ということになるにゃん!過去の出来事については、ご先祖様から代々聞かされてたにゃん!」
そう言ってセテウスは自己紹介を始めた。
「それじゃあ!紹介始めるにゃん!まず、私がこの子達の王である!セテウス・アルカリアっていうにゃん!好きな食べ物は、オムライスにゃん!嫌いな食べ物は~。特にはないにゃん!先祖代々、この国を守っているメイド王女一家であるセテウス家の24代王女にゃん!これからよろしくにゃん」
「え!?セテウス様もオムライス好きなの!?私も!私も!!」
自己紹介を終えて、共通の好きな食べ物により意気投合するイチズとセテウス。
意気投合できたことがよほど嬉しかったのか玉座から降りて、近寄ってきた。
「あ!イチズちゃんもオムライスが好きにゃん!?仲間にゃん!嬉しいにゃん!」
相変わらずマイペースなイチズとセテウスには、どこか似ている所を感じる。
推しの人間関係が豊かになる事は、喜ばしい事だ。
「そして!!ずっと前から気になってたその色とりどりなオタクの騎士達は一体誰なんですか?」
セテウス王女の事について知れたのは嬉しい事なのだが、肝心のこのオタクの騎士達についても知りたかった俺は聞いたのだ。
「まぁ我らが女王も名乗った事だし、我々も名乗るとするか!!」
その俺の言葉を聞いたリーダーである赤い法被に身を纏う騎士がそう言う。
すると四人のオタク達は、中二病的なポーズを決めながら全員で名乗る。
「「我らが女王を先祖代々、崇拝し、契約を交わした四人・その名も"古のオタク"ここに見参でござる!」」
見た目からはある程度、感じ取ってはいたがとてつもない癖の強さだった。
「い…古のオタク!?」
まさか、見た目のみならず組織の名前もまんまだったとは、と俺は驚く。
だが、名前の響きだけ聞いてみるとかっこよさを感じるかもしれない。
グループで名乗った後に、リーダー的な存在の赤い法被を身に纏うオタクが紹介を始めた。
「まず、拙者から名乗らせて頂くでござる。それがしの名は炎鵬。古より先祖代々、メイドの女王一家であるアルカリア家にお使いし古のオタクの一人にござるよ。推具に宿りし属性は火属性なり。臨氏よ、なんとまぁセテウス様にお呼ばれされるとはなんと羨ましい、それがしもお呼ばれされたいでこざるよ。オウフw失敬!失敬!つい欲が出てしまったでこざるよ。デュフ、デュフフフ」
なんとまぁ見た目や言動とは似つかわしかっこいい名前だろうか。しかも俺の推具とは違い、属性付きらしい。
そして、リーダーを筆頭に古のオタクのメンバーである氷属性の"氷聖"(ひょうせい)、雷属性の"雷武"(らいぶ)、治癒属性の"治核"(ちかく)、が次々と同じようなテンプレで、自己紹介をしていく。
自己紹介が終わったその時だった。
「バタンっ」
扉が開く。
すると、この城の兵らしき人物が血だらけになって今にも倒れそうな姿でこちらに歩いてくる。
「ま…魔王軍が襲撃してきました。幹部らしき人物も発見されています…。」
その言葉を言い残し、兵士は倒れこんだ。
「ど…どうしたにゃん!?何が起こってるにゃん!?」
血だらけになった兵士に慌てるセテウス達。
「魔王軍の襲撃!?さっき倒した奴らの仲間か!?」
「だ…大丈夫!?もしかしたら、さっきの魔物がまた攻めてきたかもしれないね」
俺とイチズはお互い顔を見合う。
俺達には、ここに来る前にさっき倒した魔物達という心当たりがあったのだ。
「くっ…。恐るべし魔王軍」
カエザも仲間が倒されたことに憎しみを抱いている。
「くっ…。俺らが仲間がやられるとは、許せん!敵を打ってくれよう!!」
「まさかもうここまで攻めてくるとは」
兵士が倒されたことに恨みを抱き、敵をうとうとする古のオタクのメンバーである、炎鵬、氷聖、雷武は城の外に駆け出す。
「拙者は治癒魔法でこの者を直す故、遅れてそちらに向かうでござる」
治核は、倒れ込んだ兵士の治癒活動に徹する。
魔王軍が襲撃とは、一体どういう事態なのだろうか。
俺達は古のオタクに続き、外に出て確認することにした。




