3話「推しとオシポ」
戦いが終わってゆっくりと幸せな一時を過ごす俺達には、まだ残されていた問題があった。
「あ!!そういえば、戦いが終わって一段落してるけど。推光棒が消えたんだった。これからどう戦えばいいんだろう。」
「確かに!!私の方はそういえば配信の理由が知らないままだった」
それは、俺の推光棒が消えた事と意味ありげにヒストールが言っていたイチズの配信の理由についてだ。
お互いに残された問題を解決するためには、やはりヒストールを呼ぶしかない。
再び青空に向かってヒストールを呼ぶ。
「ヒストール~!!」
「ヒスちゃん~!」
「はいはい!!再びヒストールちゃんの登場で~す!!次はどうしました?」
またあの独特な感じで顔を覗かせるヒストールに質問を投げ掛ける俺達
「あの!敵をすべて倒したのは良いんだけどさ、俺のサイリウム型の推具が消滅したんだけど」
「そうそう!!私の方も配信とオシポの関係をそろそろ知りたいかも!!」
すると、説明を始める前に、ヒストールは俺達の苦労を労うように褒めた。
「問題についてはわかったわ!!え~その前に、まずは戦闘お疲れ様!!あの量の魔物をよくぞ倒してくれたわ!!さすがは選ばれし者達よ!配信もとても面白かったわ!そうね!特に、イチズが配信の最初で視聴者の皆に向けたあの笑みと明るい表情がほんと可愛かったわ!他にはね~!やっぱり臨が魔物を一刀両断する所?あの所も爽快感があってとても良かったわ!あとは、あとは~…」
配信の興奮がよほど抑えきれないのか、オタク特有の早口と長文で良さを語るヒストール。
そのオタクと化したヒストールの語りを必死に止めようとするのも一苦労だ。
「ちょっと!ま…まって…ヒストール。気持ちはめっちゃわかるけど!説明をお願い!」
やはり俺達と過ごす中で心が打ち解け合い、ヒストールは俺とイチズを推すオタクとなっていた。
「ごほん!興奮で、つい取り乱してしまったわ…。ごめんなさい。改めてその問題だけど、とりあえず最初にステータスと叫んでみてよ!!」
ようやく、落ち着きを取り戻し本題の説明を始めるヒストール。
言われるがままに俺がステータスと言ってみた。
「ステータス」
その後に続き、イチズもステータスと言う。
「ステータス」
言った瞬間、目の前にモニターが表示される
「これが、あなた達のステータスです!!」
日々臨 レベル5
力 40
体力 40
素早さ 40
魔力 40
防御 40
オシポ 250
翠光イチズ レベル4
力60
体力 60
素早さ40
魔力 20
防御 40
オシポ 250
とそれぞれのステータスが表示されている。
「おお!!ステータスだ!!やっぱりあったか。
さっき敵を倒した影響でレベル上がってるよ!俺は全て平均値だな」
「まって…私の方はレベル4で力と体力の数値が他の数値よりも高いんだけど」
俺とイチズにはステータスの差があるようだ。
「あ!ほんとだ!!俺、全て平均だから羨ましい~!!」
「いや~!!臨くんよりも体力と力の数値が高いなんてまいっちゃうな~!!でも自惚れたらだめだよね。レベル4だし!!これから魔王を倒すためにもお互い、もっと強くならないと」
お互いがステータスについて話をしている最中、一際、目を惹かれる表示があった。
「あ!!ここになんかオシポ…?ってかいてない?しかも、240ポイントもついてるんだけど。スキルの影響とかだったりする?」
「そうそう!!こっちは250ポイントって書いてるんだけど。この差はなんだろう?ヒスちゃんが視聴者数がって言ってたし、何か関係してるのかな?」
オシポという表示に俺達は疑問を抱く
ようやく、その話題に触れてくれた事を待ち望んだような表情のヒストール
「ようやくそこに気づいてくれたわね!!」
「そう。それこそがこの世界を生き抜くために必要となってくるポイントよ!」
気付いてくれた事への喜びが、目を光らせて興奮している感じから伝わる。
「そうね!オシポを、あなた達にも分かりやすく言うなれば。スキルポイントの別名だと思ってくれたらいいわ!!」
どうやら、この世界ではスキルポイントはオシポというらしい
「なるほど!ということは、このオシポを使えば、俺の推具の能力も耐久度もアップ出来るという事か!でも、自分の推具がないなら意味がないじゃないか!?」
「確かに!!私の方はこのポイントを使って、推具を強くしたりできるけど。臨くんの方は、消えちゃったからどうすればいいんだろうね。」
そんな、俺達の疑問を聞いたヒストールはその質問が来る事を見越していたかのような自信と優越感を感じさせる頷きで聞いている。
「うんうん。そう来ると思ってたわ。そこでまた必要となってくるのがオシポよ」
このヒストールの感じだと、サイリウムの問題を解決する方法もオシポが関係してるのかもしれない。
「臨のオシポはね!スキルの発動によって自ずと、ずっと250オシポが貯まる仕組みなの。それを、推具をスキルをアップさせるか。消滅したサイリウムを修復するかのどちらかで用いる選択肢があるの!」
「そして!イチズのオシポはね。配信終了後までの視聴者数によって得た250ポイントなの!イチズの方は何もデメリットがないから手に入ったオシポはそのままスキルアップに使用して貰って大丈夫よ!」
消滅してしまった推光棒を、修復できるのはありがたいが。修復か、スキルアップに振るかの二択を迫られる、俺のオシポに対して。スキルアップに全振りできる、イチズのオシポとの差を実感する。
「あの~。イチズちゃんと俺の差が大きくない!?消費型の俺の推具に対して、消費なしのイチズの推具はさすがに差があるって!」
「まぁまぁ。あのね!確かに現時点で差が大きいって言われるのも分かるわ!でも、これから話す事を聞けば、考えが変わると思うわ」
まだ、イチズの方にも欠点があると言わんばかりにヒストールは説明を始める
「臨の方は見て貰ったらわかると思うけど、スキルを発動したから240ポイント貰えてるの!そして。イチズちゃんの方だけど。まず、さっきの質問の前に視聴者数5000人に対して250ポイントって表記されてる事に疑問はない?」
確かに!!見落としていたが、視聴者数が5000人に対して得られるオシポが250であることに疑問を感じた俺達
「でしょ!?そこで、やっと関係してくるのが動画配信の理由なのよ」
「おお!ようやく!あの配信が繋がってくるってわけか!」
「あ!そこでようやく関係してくるんだね」
ようやく、ここであの話が繋がってくるのかと俺達は驚いた。
「そうそう!イチズちゃんが配信したでしょ?その仕組みだけど、視聴者数1人あたり0.05オシポと計算するの、だから今回は最終的な視聴者数が5000人だから5000×0.05で250オシポって事になるって訳なの!」
最終的な動画配信の視聴者数が0.05のオシポとして加算させてるようだ。
「だから!戻るけど、さっきの差というのはね!一定で確実に得られるけど変動なしで尚且つ、スキルに全振りできない臨のオシポに対して、スキルに全振りできるけど、視聴者数によって左右されるイチズのオシポの差があるって事なの」
「まじか。単純だけど、視聴者を考えながら撮影するの大変だし。人気が出て、配信の視聴数が多ければ、多いほど自ずとオシポも増えるけど日によって変動するリスクもあるの大変だな。」
「配信して、視聴者数増やしてって、異世界でも私のやることって変わらない感じだね!確かにデメリットもあるけど!転移前の経験を生かせて、視聴者の皆に動画を届けれるのは嬉しいかな!」
確かに話を聞いて両方にデメリットがあり、差が均等に保たれてると思った俺達だが、もうひとつ疑問が残る。
「あの!疑問なんだけど!配信終了までという事だけど、そのやめるタイミングはどうなるの?」
疑問に思ったイチズがヒストールにそう問いかける
「そこは、臨の推具である推光棒の効果と同じ30分と考えてくれていいと思うわ!30分経ったら制限時間が来て自動的に停止する仕組みよ」
「なるほど!わかったよ!30分か~。頑張るね!」
という事は制限時間の30分以内に自分が出せる魅力をフル活用していかないといけないという事だ。
「えぇ!!VTuberだった。貴方の能力を生かせる推具だと思うわ!」
やはり、元VTuberのイチズだからこそ、受け継がれた仕組みだろうと思うのは俺も同感だ。
「やっぱり初配信にも関わらず5000人を達成できたのはイチズの魅力やかわいさがあってからこそだろうな!」と俺は呟いた。
「そうね!!私もイチズのそんな所に惹かれたわ。」
イチズの配信を真っ先に見て、応援するヒストールの姿と想いはもはや同志である。
「そんな褒めないでよ~!照れるじゃん」
照れているのが赤面した顔とその顔を手で隠し、後ろを向く感じから分かりやすく伝わる。
「ごめん!ごめん!褒めすぎたよ!てか…配信出来たって事は、今更だけど、この世界も動画を見れる媒体とかってあるんだ!!」
「あ!ほんとだ!!確かに!配信出来てたし!あるみたいだね!!」
戦闘に気を取られていて気にも止めなかったが。こちらの世界でも配信を見れる媒体がある事を改めて疑問に思う。
「うん!あ~。そうか!貴方達はまだこの世界の人達に出会ってないから知らないのね!この世界の人達もスマホやパソコンくらい持ってるわよ!さすがにテレビはないけど。あと、一つ余談だけど。この異世界の人達が持ってる普通のパソコンやスマホとイチズの推波懇とは性能が違うし、あと!!スマホは動画や配信を見るアプリしか備わってませんのでよろしく!!
まさか。この女神も世界の人達もスマホやパソコンを持ってるとは。と感心する。だが、現代では普通に使用できていたスマホとパソコンは異世界では動画や配信を見ることしか出来ないのも事実だ。
「ちなみにこちらは私のスマホです~!」
ヒストールはそう言いながらあの空間から自分のスマホを俺達に見せている。
「…ということは!?まさか」
ふとポケットに入ってた自分のスマホを手に取り、見てみるとアンテナが5本たっていた。
「え、まじか…。5G!?今、気づいたけどアンテナたってる!!すごっ」
「もちろん!この世界は当然配信を見るためのネット環境もバッチリなのよ!
アンテナが5本たっていることに驚いた俺は、ふと他のアプリを触ってみたが何も反応はなかった。
「あ!本当だ。何も反応しないや。」
「そうなのよ!触ってもらったから分かる通り、他のアプリは反応しないのよ。」
動画や配信を見ることしか出来ないが、ネット環境は異世界である事を忘れるくらいに完備されていた。
「でも、すごいな…異世界。」
「でしょ!?」
素晴らしいネット環境に俺は感心してしまった。
話しに区切りがついた所で、もう一つの疑問について聞くことにした。
あ!そういえば、ちなみにサイリウムの修復に必要なポイントはいくらなんです?」
「一本100ポイントよ!!割り振りやすいでしょ?」
「なるほど、一本100ポイントか。ということは現時点で250ポイント有るわけだからスキルに割り振れるのは残りの150ポイントか。結構あるな!わかったよ」
「ところでさ!!ある程度各々のオシポについては理解したけど!肝心の俺の推光棒の修復方法ってどうやるの?」
ポイントの割り振りを理解した俺は、肝心の推光棒の修復方法について聞くことにした。
「そんなのいたって簡単な事よ!二つの事をするだけ。まず、スキル《修復》と唱えて、推しの好きな所を一つ叫ぶだけで!!あら、不思議。いつの間にか修復されてるって訳なの。でも、注意点もあって、そのスキルは推しの心に響いて発揮されるスキルなの!だから、イチズの心に好きな所が響かなかったら修復できなくて、尚且つポイントだけを消費するだけの欠点に加えて、一度言った褒め言葉は二度は使えないからよろしくね!」
なるほど!そんなの容易いことだ。
だが、もしもの代償が大きすぎる。
大切なポイントだから無駄には出来ない。言葉選びを大切にしないと。と思った。
「わかった!!言ってるみよ。スキル発動《修復》。イチズの好きな所か~!!沢山あって迷うけど!!笑顔が素敵!」
「素敵だなんて!!ありがとう!!」
露骨に照れて、赤面したイチズの表情が可愛くてたまらない。
そう唱えた瞬間、手元が翠色に光だした。
「おお!?なんか手元が光ってる!!」
推光棒が突如として現れる。
「ほんとだ!?やっと推光棒が戻ってきた。こういう要領か。なるほど!!わかったよ」
要領を理解し、修復した推光棒をしまう俺
「そうそう!!その要領よ。よろしくね!」
「よし、推光棒が戻ってきたし、お待ちかねのオシポ使っていくか!!」
「だね!!ポイントめっちゃあるからどんな能力が手に入るのか楽しみ!」
ポイントを使うことにした俺達はヒストールに再び聞いてみる
「ヒストール~!!オシポを使うにはどうすればいいんだ~?」
「はいはい!!オシポの使用方法ね!要領は簡単よ!そこのオシポの文字の表記があるでしょ?そこを押してみて」
言われるがままに俺達は押してみた。
すると、何ポイント使いますかの表示が出てくる。
「なんか文字が出てきたな!」
「何ポイント使いますか?だって!これでいいんじゃない?」
「文字が出てきたわね!そしたら、あとは簡単よ!全部使うなら全部、取っとくなら使いたいポイントを言うだけで後は自動的にスキルアップするわ!あと!補足だけど、一回のスキルアップに必要なオシポは、500オシポなのよ!」
「500オシポで1スキルアップ!?サイリウムを修復しなければ容易い事だが、修復したら結構道のり長い感じだな!」と改めてこの世界での大変さとオシポの活用方法を吟味する事の大切さを俺は実感する
「確かに!!私は今の調子でいけば、次でスキルアップするかもしれないんだよね!臨くんをアシストするためにも頑張るよ」と俺の事を支えようとしてくれる彼女。
「だから。今所だと、臨の方は次の戦闘でスキルを使えば一確定で250オシポが手に入るけど、サイリウムに使えば残りは150ポイントで、今回と次回の150ポイントを合わせると300オシポだからまだ少し、届かない感じね。ちなみに推光棒無しでの戦闘も可能だけど推具との相性ってのもあるから。どれだけレベルアップをして、他の武器を使ったとしてせいぜい敵の攻撃を防ぐことしか出来ないからまず、倒すことはほぼ不可能だと考えてくれたらいいわ」
「なるほど!ということは推具は絶対必須というわけか」
俺は推光棒の必要性。そして、次回修復にオシポを振らなかった場合。イチズ一人に任せる事になる事を知った。つまりは、毎回の戦闘後は自ずと100ポイント消費するわけだ。
「イチズの方は視聴者数が今回も同じ250オシポだったら一回スキルアップ出来る事になるわ!もちろん!レベルが上がれば上がるほど必要な数値も上がっていくから頑張ってね!」
ヒストールはそう説明し、再びあの空間に頭を引っ込めた。
「よし、スキルアップまでの道のりは長いがポイントを割り振らないことには始まらない。150オシポを全部消費」と言って俺はオシポを全振りする
そして、イチズも俺に続いて「だね!もしもの時は私が頑張るから臨くんはスキルに全振りしてよ! 250オシポを全部消費」と気遣う姿を見せながらポイントを全振りする。
「あ…ありがとう!!俺も頑張るよ!」
再度、推しの優しさや気遣いが俺の心に染みるのと同時に俺も彼女を支えたいという思いがより一層強まった。
「これで一通りは終わったな~!!あとは街を目指すだけだ!!」
「だね!!」
オシポのポイントも振り終わった俺達は再び歩みを進める。
「ふぅ~!!道のり長かったけど、やっと街に辿り着いた。それにしても、まだ序盤だよ!?色々と有りすぎじゃないか!?」
「ほんとここまで色々とあったね!!でも、まだこれからどんな事があるのか楽しみだよ!」
序盤にも関わらず。大変だった初戦を生き抜いた俺達はようやく。街にたどり着いた。




